歌手の北山たけしが2月24日、東京・浅草六区 ゆめまち劇場で毎年恒例となったバースデーライブをおこなった。24日と25日の2日間で3公演をおこなうというもの。24日の公演には弟・大江 裕がサプライズで駆けつけ、兄の誕生日と、25日にリリースの北島兄弟の2ndシングル「兄弟連歌」の発売を祝いライブで初披露した。本番前には囲み取材もおこなわれ、北山は「今年は『兄弟連歌』で年末に向けてあの舞台に立てるように頑張りたい」と紅白出場への意気込みを語った。24日の模様を以下にレポートする。【取材・撮影=村上順一】

年末に向けてあの舞台に立てるように頑張りたい

北山たけしと大江裕

 2004年に「片道切符」でデビューし今年15周年を迎える北山たけし。毎年恒例となっているバースデイライブは北山本人のプロデュース構成で、通常のコンサートでは聴けない曲や和楽器の生演奏など盛り込まれたスペシャルなステージ。この日のステージでは剣舞や尺八など歌だけではない演出で盛り上がった。コンサート後半では大江がバースデーケーキの着ぐるみで登場し、北山の生誕を祝い、訪れた観客を楽しませた。

 本番前の囲み取材では、大江 裕も参加。現在はツアーも2人で回っているという。「お互いを感じながらコンサートを回っています」と話す北山は「支払いはいつも僕なんですけど、食費がけっこう大変なんです(笑)」と吐露。寿司が好きだという大江の最初のオーダーが大トロ、中トロ20貫という大江の“食事情”を明かし「食費は大変ですけど、頑張って行きたい」とユーモアを交えながら北島兄弟としての活動にも意欲をみせた。

 2人は15歳離れているが年の差も感じさせず、お互いの悪いところも言いあえる本当の兄弟のように仲良し。だが、舞台の作り方に関しては時々ケンカをすることもあるという。そのときに決まって折れるのは北山。それもあり、お互いの直して欲しいところを聞かれると北山は、「僕も意外と頑固なんですけど、裕はもっと頑固なんですよ。どちらかが折れないと先に進まない。いつも僕が折れるんですけど、僕が先輩なのでそこは折れてもらいたい(笑)」と話すと、大江は「ステージに対しては厳しいんですけど、兄さんは優しすぎるんです(笑)。見習いたいところではあるんですけど…」と、弟思いの兄という2人の良い関係性が伺えた。

 バースデープレゼントについて聞かれると、大江からはスニーカーをもらったという。北山は「毎年、僕の好きなメーカーのスニーカーを頂いています」と嬉しそうに話した。

 昨年の北島三郎との『紅白歌合戦』について聞かれると大江は「北島先生と紅白に出るのが夢だった。先生が紅白の出場を卒業すると聞いたときに自分の夢はなくなったんだなと思いました。でも、夢はずっと持ち続ければ叶う」と北島と紅白に特別枠で出演できた喜びを述べた。さらに大江は「昨年は北島先生と皆様のお力をお借りしたという感じなんですけど、今年は恩返し出来るような1年にしたい」と話すと、北山は「10年ぶりに(紅白に)出させて頂いて、本当にすごい舞台でした。より一層気持ちが膨らんで来ましたので、今年は『兄弟連歌』で年末に向けてあの舞台に立てるように頑張りたい」と意気込みを語った。

幸せな時間を本当に皆様ありがとうございました

北山たけし

 開場と同時に続々と会場に入ってくる観客はペンライトや団扇など各々準備してきたグッズを手に開演を待ちわびる。開演時刻になり、三味線の音が響くなか北山たけしが真っ赤な紋付き袴で登場。オープニングを飾ったのは「夢色吹雪」でコンサートの幕は開け、会場には北山の凛とした力強い歌声が響き渡った。

 「北山たけしの色んな一面を感じて頂きたい、色んなことに挑戦していきます」とユーモアを交えたトークを挟みつつ、迫真の表情が緊迫した空気感を作り上げ、鮮烈な立ち回りで剣舞を披露。そして、尺八を見事に奏で目と耳の両方を満足させてくれた。さらに北山に新しい世界を開いたムード歌謡の「霧笛の酒場」は、北山の豊かな低音を堪能できた1曲だった。

 ここからは北山が好きな曲、歌ってみたい曲をカバーするコーナーへ。スターダストレビューの「木蘭の涙」や昨年末の『紅白歌合戦』で一緒になった、郷ひろみとのエピソードから「言えないよ」を情感を込め歌い上げる北山。さらに今度はピアノに挑戦したいという。来年の披露に向けて頑張ることを告げ、しかし、まだピアノは弾けないということで、西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」を届けた。観客一人ひとりに語りかけるように中島みゆきの「糸」など様々な楽曲をエピソードともに歌い上げた。

 そして「緊張する」と話しながらアコースティックギターを手に取り、椅子に座り披露したのは、元力士・稀勢の里が自身を奮い立たせるためによく歌っていたという1曲で、北山もこの曲を聴くと頑張ろうと思えるという、馬場俊英の「スタートライン」。力強さと儚さが混じった歌声で紡いでいく。そして、北山作曲による「友よ」。一昨年前に亡くなった愛猫への想いを綴った一曲だ。付き人時代から励ましてくれた、一緒に歩んでくれた“友”へ向けギター演奏とともに歌を届けた。

北山たけし

 続いて、この15年を振り返り「沢山の人との出会いや別れもありました。大切な方が残してくれた言葉というのは、ずっとずっとこの胸から消えることはありません…」と話し、その思いを歌にした「灯~いつまでも忘れない~」。この15年、いや45年の想いが乗った歌声に多くの人が耳を傾けた。

 続いて「兄弟連歌」のカップリングに収録された「手紙」。昨年他界した北島三郎の息子である大地土子(大野 誠)から渡された詞(手紙)を朗読する北山。読み終えたあとの北山の目には涙が浮かんでいた。その涙を噛み締めながら、詞に込められた想いをメロディに乗せ熱唱するその姿が印象的だった。

大江裕

 コンサートも後半戦。ここで、大江 裕がバースデーケーキの着ぐるみを着用し、ステージにサプライズ登場。客席からは「可愛い!」といった声が寄せられた。その後に豪華なバースデーケーキも登場し、「Happy Birthday」を全員で歌い、ロウソクの火を北山が吹き消し、45歳の誕生日を観客とともに祝った。

 北島兄弟2人が揃ったということで、まずは昨年リリースし、レコード大賞の企画賞を受賞し、紅白でも披露された「ブラザー」を歌唱。1+1は2ではなく、3にも4にもなることを感じさせるパワフルな歌声。聴くものに活力を与えてくれる、音楽のあるべき姿のひとつを見せてくれた。そして、新曲の「兄弟連歌」もライブ初披露。「この曲で皆様のお力を借りて、年末のあの舞台に立てるように頑張りたい」と、絆を感じさせてくれる前向きな歌声に、多幸感溢れる空間が広がった。最後の決めポースでしゃがんだ大江が立ち上がるのをサポートする、北山の姿に兄弟愛を感じさせた。

北山たけしと大江裕

 25日に発売の「兄弟連歌」について、北島もこの曲が大のお気に入りのようで、よく口ずさんでいるという。その「兄弟連歌」もこの日のコンサートでは初披露され、手拍子とともに兄弟愛に満ちた歌を2人で届けた。ラストスパートは力強い<ドッコイショ>の掛け声が痛快な「男の出船」や、故郷の海を歌った「有明海」と壮大な海をテーマにした楽曲を立て続けに披露。

 北山は「もうすぐ16年になりますが、まだ16年です。こんな私ではありますけど、ついてきて下さい!」と、スクリーンに過去のライブ写真などが次々と流れるなか歌い上げた「数え切れない想い」で締めくくった。北山は「幸せな時間を本当に皆様ありがとうございました」と感謝を告げ、コンサートは多幸感に溢れるなか、大団円を迎えた。

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)