佐藤友祐が、映画『星空のむこうの国』(16日公開)に出演する。小中和哉監督が1986年に発表した長編映画を35年ぶりにセルフリメイク。パラレルワールドに迷い込んだ高校生の恋の模様を描く。佐藤は、鈴鹿央士が扮する主人公・昭雄の親友・尾崎誠を演じる。lol -エルオーエル-のメンバーとして活躍する彼だがもともと芝居への意欲を持っていた。それを強く意識し、役者としての心構えを根付かせたのは、満身創痍で臨んだ2019年上演の舞台『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』。「自分を変えてくれました」と感謝する。そんな彼がどのような思いで本作に挑んだのか。【取材・撮影=木村武雄】
念願の役どころ、台本を熟読
――出演が決まった時の心境は。
ずっと映像作品に出たいという思いと、ストーリーを動かすような存在の役をやってみたいという思いがありました。お話を頂いた時は、もともとSFは好きでしたし、役回りも自分がやりたいものにぴったりでしたので「是非頑張らせて下さい」と伝えました。
――芝居はデビュー当時からやりたかったのですか?
もともと役者志望でした。映画にも出させて頂きましたが、これほどまでにセリフが多くあるのは初めてで、嬉しかったです。
――昨年のインタビューで「平坦な一年にしたくない」と話されていましたが、そのなかでの今回の出演はどう思いますか。
コロナの状況は長くなるだろうとは思っていました。でも最初の期間は何をやっていいかも分からず無駄にしてしまったという思いでした。今は芝居のお仕事も少しずつ頂いていますし、自分の趣味を見つけたり、特技も伸ばせる時間が作れている感じですし、一つ一つのチャンスを掴んでいきたいなと思っています。
――その中で本作の誠ですが、自然な芝居が印象的です。臨むにあたってプランは立てられた?
プランはあまり立てないんです。でも、誰よりも台本を読んでいます。
――台本を読んだイメージと現場とでは異なると思いますが、現場に入った時の瞬間はどうでしたか。
緊張して自分を出さずに終わるのは嫌だったので、自分が出来ることを100%やり、更にその上で120%出すためにはどうすればいいのかということを考えました。誰よりも物語を理解しようと思いましたし、色んな方とコミュニケーションを取ることも意識しました。
――ということは相当、台本を読み込んだんですね。
長ゼリフが多かったですし、セリフ量がたぶん一番多いと思うんです。セリフを覚えるのは苦手ではないですが、物語自体がファンタジーですし、理解するためにも何回も読んで、もし実際に起こったらどうだろうかということを考えました。
――物語は、昭雄が死んだ世界と生きている世界になっていて、昭雄が死んだ世界に昭雄が現れますが、その時のリアクションがとても自然でした。一発撮りのような気もしたんですが。
あのシーンは何度もやりました。もともとあのシーンはワンショットでやるということが前提にありましたので、リハーサルも結構しました。でも演技への不安は全くなかったです。台本を読み込んだというのもあります。それと、自分の中でこう演じたいというのもあり監督に自分の考えも伝えて、その上で監督からアドバイスを頂いて。納得したりひらめきも多かったです。
共演者に影響
――役者の仕事は想像力も問われますよね。想像力を養うためにやっていることはありますか。
映画をたくさん観ます。クランクインする前は特に色んな映画を観ます。例えば今回のようなパラレルワールドの世界でしたらSFや学生ものを観てインスピレーションをもらっています。いい意味でも悪い意味でも人の影響を受けやすいタイプなので、人の演技を観て良い部分を吸収するようにしています。他の方の演技を観て、いいなと思う所は自分にも活かしたいと。なので、映画を観る時って勉強する意識になってしまうんです。これは悩みですね(笑)。ホラー映画を観てもカットチェンジとか撮り方が気になってしまって(笑)。
――影響を受けやすいという事は、共演者からも大きく影響を受けますか。
すごく受けます。川久保(拓司)さん(理沙の主治医・上田聡役)や有森(也実)さん(理沙の母親・恭子役)は大御所ですが、一緒に演技させて頂く時は自然と力が入ってしまって。有森さんが号泣するシーンがあるんですけど自然と僕も涙が出てきて。すごく良い影響を受けました。有森さんには「あんた、そんな声が小さかったら私が理沙を奪っちゃうわよ」と言われたり(笑)。川久保さんともまたご一緒したいですねということをお話しさせて頂きました。
――有森さんはすごいですよね。
役への入り方がすごいですよね。急に切り替えられるので怖いですもん(笑)。すごく勉強させて頂きました。自分の演技と比べて落胆しつつ、やっぱりあの境地に行きたいという思いもあって。
――鈴鹿さんはどうですか。
ナチュラルで抑えめの演技をされる方で、昭雄の役にも合っていたと思います。だからこそ自分が誠というキャラクターをもう少し際立たせないと思いました。話し合っていませんが、お互いに自然と意識してバランスを取っていたと思います。
――当初、自分が描いていた誠と少し変わりましたか。
多少はあったかもしれません。鈴鹿さんと秋田汐梨さんが演じる昭雄や理沙と、自分が感じていた昭雄や理沙というのは少し違っていて。その辺は話し合いました。
『熱海殺人事件―』が変えた
――これから芝居経験を重ねていくなかで、すでに現場の雰囲気に合わせられるのはすごいですね。
それは、舞台『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』(2019年)に出演したことが大きいです。基礎を叩き込んで頂いたと言いますか。カット割りなど映像作品への対応力はまだまだですが、演技への向き合い方や思いなど役者としての心構えを教えて頂けて、それがあればなんとかやっていけるというのはあります。
――その『熱海殺人事件―』もそうですが、何か確信めいたものはありましたか。
ちゃんと向き合っていれば、些細な困り方はしないといいますか。自分の中で大切にしているのは、監督やスタッフ、共演者も含めてみんなとコミュニケーションを取るということです。そのなかで、分からないことがあったらすぐに聞きに行きますし、そもそも学びの場でもあると思っていますので、自分の出来ることを全力でやるという気持ちは常に持っています。
――昔からそういう性格ですか。
全然違いました。本当に調子に乗っていました(笑)
――いつから変わったんですか。
それも『熱海殺人事件―』もからです。
――『熱海殺人事件―』が全てを変えたんですね。
『熱海殺人事件―』はもともとダブルキャストの予定でした。でも22公演、ダブルキャストなしでやりました。犯人役で声を荒げることも多かったので喉をつぶしてしまって。ステロイド薬を投与して乗り切っていたので毎日通院していました。殴られるシーンもあって体もあざだらけ。もうボロボロになって、でも当時はまだコロナ禍前でしたので、演技を終えたらみんなで飲みに行って演技を何時間も語るという感じでした。その時間は自分にとってはかけがえのないもので、運命すら感じられて、本当に感謝しています。
原動力
――ところで誠ですが、真面目なキャラクターでしたが、ビジュアルはもともと決まっていたんですか?または衣装合わせの時にこんな感じで行こうみたいな?
メガネは自分で選びました。髪の毛は学生でオタクなので、ガッツリセンター分けでペタッとしました。でも普段の自分もあんな感じなんですよ(笑)。メガネをかけて髪の毛も後ろにして。普段の僕みたいな感じでした(笑)。
――いかがですか。試写して自分が演じた誠は?
「もうちょっと出来たな」というのは常に自分のなかにはあって。だから自分の作品は観たくないんです。満足することはないので。もちろん上手く出来たなと思う時もありますが、まだまだと思う事の方が多いので。それでも1、2回は観るんですけどね。何回も観ることはないです。
――自分ではもうちょっとやりたいと言っても、監督がOK出したらそれ以上は出来ませんよね。
演じている姿はその時は映像でも観れないですからね。MusicVideoの撮影だったら自分がダメならもう一回踊ったり出来るんですけど、役者は一回勝負みたいな所があるので、そこで出せる人がすごいなと思います。そこを常に目指しています。映像と言いつつ、生ものなので。
――そんな佐藤さんの原動力は?
自分がこうなりたいというビジョンが原動力です。もう一つは、今は親孝行です。自分が選んだ道を厳しいながらも背中を押してくれた親がいて、そんな親に対して自分の成長した姿を見せたいですし、おじいちゃんおばあちゃんになってから安心した暮らしをしてほしいと思いがあります。とは言っても、そんなきれい事だけじゃなくて、自分がなりたいものになるという、自分が描いている自分というのが原動力です。
――描いている自分とは?
こういう映画に出て、こういう家に住んで、こういう車に乗ってとか。
――もちろんlol -エルオーエル-としても?
もちろんです。こういうステージに立って、こういう楽曲を出してというのはあります。あとは、ゴールデンレトリバーを飼いたいです(笑)
――相当大きな家じゃないと(笑)。
大型犬は1人じゃ無理なので、後輩を同居させます(笑)。
(おわり)
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