一昔前は、“酒と煙草とロック”は切っても切れない関係だった。そう感じたのは、本メディアが先日おこなった浅井健一のインタビューで「煙草は普段全く吸わないんだけど、酒を飲むときだけ吸う感じ——」。という一節を聞いたときだ。

 元BLANKEY JET CITY/SHERBETS/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSと、日本を代表するロッカーである浅井健一のその発言は、少々意外と感じるものだった。酒も「たまにやめたりする」とのことだった。

 アーティスト写真などで見るロック・アイコンには、煙草や酒の影がついてまわるロッカーは山ほどいた。ジミ・ヘンドリックスは煙草がよく似合う。カートコバーンもそう、ブロンドの長髪で煙草をくゆらし、セクシーな雰囲気を醸していた。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやディープ・パープルのリッチー・ブラックモアは、煙草をギターのヘッドに挟んでライブでプレイしていた。

 ビートルズは煙草を吸いながら記者会見をおこなっていた。今では考えられない光景である。オジー・オズボーンは日々、ジンのボトルをまるまる空けていたというし、エディ・ヴァンヘイレンは一時期、連続飲酒状態であったそう。オアシスのギャラガー兄弟は共に酒と煙草が大好きだというし、U2のボノは恐ろしいほどの酒豪だという。

 このようにレジェンド・ロッカーの酒と煙草にまつわる話はキリがないほど出てくる。しかし、現在はどうだろう。アーティスト写真にしても、ライブ映像にしても、酒と煙草の影はほとんど見られなくなってきたように思える。

 世間風潮的な温度だと、煙草は問答無用で身体に悪し。酒はほどほどこそ良し。ルールとマナーを守った上で、というのがトレンドだろう。それはそうである。やらない人間からしたら煙草の煙は、やはり気持ち良いものではない。酒と煙草を伴う“不良的カッコ良さ”という、ロッカーのパブリック・イメージは廃れつつある。

 「セックス・ドラッグ・ロックンロール」という三拍子のキャッチフレーズが受け入れられたのは、80年代〜90年代初期あたりまでだろうか。今それを掲げたら「お前は一体何を言っているんだ」と言われてしまいそうである。ドラッグに関しては違法のものを指すため、論外である。

 そういった意味での「酒と煙草」の話なのだが、これらは、ロックミュージックとセットで、社会に対してのカウンターカルチャーであった時期があった。過去形でそう言うのは、先述のようないくつかの理由により「廃れた」と感じてしまうからだ。

 昔ながらのロックファンとしては、“ロックと酒と煙草”というカルチャースタイルが滅びてしまうのは少々寂しさを感じる。しかし、ノンアルコールで、クリーンな空気のライブもダンスフロアだって楽しい。

 そういった複雑な思いもあって、浅井健一の「普段は吸わないけど、酒を飲むときだけ」というスタイルは、ある種、今最もクールな“酒と煙草”との付き合い方なのかもしれないと、酒と煙草とロッカーいう観点から、ロックのスタイルの移り変わりを感じさせられた。【平吉賢治】

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