大阪出身3人組ボーカルユニットのベリーグッドマンが3月8日に、ミニアルバム『Spring Spring Spring』をリリースした。昨年3月9日にシングル「ありがとう~旅立ちの声~」でメジャーデビュー。本作は「春にまつわる人生のエピソードを曲にした」という。メンバーの母親への楽曲「おかん〜yet〜 」やMOCAの息子に宛てた曲「My Baby」も収録され、実にプライベートな内容ながらも普遍性を携えた作品となった。今回はメンバーのうちRoverとMOCAにインタビュー。彼らがリアルなメッセージに託す想いとは?
シチュエーションではなく、想いや熱量にリンクしてくれる
――今回はシングルではなくミニアルバムですね。
Rover 同じくらいの値段でCDを買ってもらうなら、曲数が多いほうがいいと思って。それに今の10代や20代は、シングルCDを買うよりダウンロードで聴くほうが多いと思うんです。
MOCA 正直に言って、自分たちもシングルってほとんど買わないですから。それって、自分ではカレーを食べないのに、カレー屋さんを経営しているみたいなもので、どこか不誠実と言うか、違和感があると思っていて。
Rover それに、ツアーをやることを考えたとき、新曲は多いほうが、お客さんとしてもうれしいと思いますし。ミニアルバムのほうが、新曲を多く収録できるので、ライブの予習のしがいもあると思いまして。
――『Spring Spring Spring』というタイトルですが、春をテーマに?
Rover 春の季節感とか情景と言うよりも、春特有の出会いと別れの切なさや温かさ、新生活のスタートで思う家族のこととか前向きさとか。春にまつわる人生のエピソードを曲にしていきました。
――卒業ソングの「さくら」という曲が収録されていますが、「さくら」という曲は、すごくたくさんありますよね?
Rover そうですね。もし誰かとかぶっても、それはそれでもう仕方がないです。僕自身は、中学2年生のときに森山直太朗さんの「さくら〜独唱〜」を聴いて歌をやりたいと思ったので、リスペクトの気持ちもすごく込めています。
MOCA 歴史って、10年周期で巡る感覚があって。僕らの世代なら森山直太朗さんの「さくら〜独唱〜」を思い出すように、今の10代が10年後に「さくら」と聞いて思い出すのが、ベリーグッドマンだったら良いなと思います。ひらがなで「さくら」というタイトルも、逆に今の子たちには新鮮だと思うし。
――歌詞には、それぞれの卒業の思い出が散りばめられていて。メンバー個人の体験に、よりスポットが当たっている感じがしました。
MOCA ここ最近は、より具体的な情景を歌詞にしたいと思っています。たとえばドラマや映画の恋愛シーンがあったとして、それを見てる人が同じ経験をしたことがなくても、ときめいたり感動したりできますよね。それってきっとシチュエーションではなく、そこにある想いや熱量にリンクするからだと思って。
「おかん〜yet〜」という曲では、僕らの母親のエピソードを書いているんですけど、久しぶりに電話してみようと思ってくれたり、その人の母親のことを思い出したりしてくれたら良いなと思ったし。だから、まったく同じ経験をしてなくても、一つのワードをフックにして自分はこうだったと思ったりとかできるんじゃないかと思って。
Rover MOCAはラップで、言葉数も多く入れられるので、そうやって実体験を細かく描写していく。それが、MOCAの役割だと思っていて。僕は、考えさせるものが好きなので、卒業を巣立つひな鳥に例えたり、落書きという言葉を使って、誰もが想像できる普遍的な部分でまとめあげている感じです。そういう両方があって、バランスが取れて伝わるものになっていると思います。
奥さんとお腹の子どもを励ませる曲があったらいいなと
――「おかん〜yet〜」は、とにかく泣けますね。
MOCA 昨年12月30日に大阪・なんばHatchで歌ったときは、泣きながら聴いてくれる人や、この曲がいちばん良かったと言ってくれる人がたくさんいて。やっぱり、おかんって誰にとっても特別な存在なんだなと思いました。
Rover 僕は、新幹線で歌詞を書いて。声を出せないので頭で何度も繰り返し歌いながら書いていたんですけど、グッとくる瞬間が何度もありました。あまりに想いが溢れすぎて、最初はすごく長い歌詞になってしまったので、最終的には削ったんですけど。
――作ってる本人がそういう気持ちにならないと、聴く人に伝わらないですよね。
MOCA それだけに、今後ずっと長く歌っていきたいと思う曲になりましたね。逆に「エキスパンダー」みたいなノリのいい盛り上げ曲は、その都度新しく作って行くと思うんですけど、こういう普遍的なテーマを持った曲は、何曲も作るわけにはいかないですから。
――それぞれの母親の味が出てくるのも、一つのポイントですね。
Rover そこは人によってとか世代によって違うと思うんですけど。メンバーのHiDEXはハヤシライスを挙げていて、僕は、そこは焼き魚を書いています。ひとり暮らしを始めると魚ってあまり食べなくなるから、焼き魚っていうと実家に帰ったときに食べるものという印象なんですよね。もっと一般的な、肉じゃがやみそ汁とかを書こうとも思ったけど、やっぱりリアルなことを正直に書いたほうが、より伝わると思ったので。
――MOCAさんのお母さんは、歌詞からすごく明るくて楽しいおばちゃんという感じが伝わります。
MOCA おしゃべりが好きなんです。近所のおばちゃんたちが集まる喫茶店があって、1日に2〜3回行ってしゃべってるんで(笑)。
――そして「My Baby」という曲は、MOCAさんのお子さんが生まれたことをきっかけに書いた曲。
MOCA 昨年の1月20日に生まれて、名前は太郎。名付け親はRoverなんですよ。最初はふざけてると思ったんですけど、いろいろ考えているうちに、一周回って太郎がすごくいいんじゃないかと思って付けました。
「My Baby」は、僕がほとんど一人で歌ってる曲。実は妊娠中には、お腹の子どもや妻の身体が危険な時期もあって、妻と子どもの両方を励ませる曲があったらいいなと思って作ったんです。
――出産って、やっぱりすごく命がけの部分がありますからね。
MOCA だからこそ、生まれてきてくれてありがとうと思ったし、妻の頑張りをすごく褒めてあげたかったし。逆に自分の親も、こういう気持ちだったんだなって、改めて気づくことができました。子どもがいる人にはすごく分かってもらえると思うし、これを聴いた若い子たちが、自分たちの親の気持ちを想像してもらえたら嬉しいですね。
Rover 僕らはそんなMOCAを間近で見ていて……ベリーグッドマンをもっと大きくして、しっかり家族を養って行けるようにすることが、僕らの仕事だと思っていました。MOCAの家族は、僕の家族ですから。
あと、子どもが生まれてから、MOCAの書く歌詞が少し変わった気がします。前から優しかったけど、めっちゃ優しくなった感じがありました。前は、少し「オラオラ系」なところがあって、負けん気の強さが出ていたと言うか。そういう曲もすごく良いんですけど、その反面、今は優しさがにじみ出るようになったと言うか。
――守るものができたことで変わったとか?
MOCA 自分ではあまり分からないけど、そうなのかもしれないです。
Rover 最後の英語のフレーズのところだけは、ちょっと意味が分かんないですけどね(笑)。
MOCA そこは、外そうって言ったやん! それをみんなが「入れたほうが良い」って言うから(笑)。でもそこは、ワールドピースと言うか、世界に通じるメッセージと言うか。100%自分のことばかりでもあれだと思ったので、英語で<My Angel,My Special…>とか入れてみました。
存在だけでレジェンドみたいな、生き様を届けて行きたい
――みなさんのように、ストレートにてらいなく自分のことや気持ちを歌詞に書けるのは、なかなか希有なことだと思います。なぜそんなに、包み隠さず書けるんですか?
Rover 何ででしょうね(笑)。僕らは、レゲエとかヒップホップがルーツなんですけど、どこか、フォークソングの時代の精神もあると思っていて。最近よく上田正樹さんとかBOROさんとかを聴くんですけど、大阪のフォークソングの方は、皆さんめっちゃリアルなメッセージを歌っているんです。
そういう音楽は、いつの時代にも必要なものなんじゃないかって思うんです。だから究極を言えば、存在してるだけでレジェンドみたいな、生き様を届けていきたいんですよね。それにはきれいなことやカッコイイことばかりだけを歌っててもダメだし、でもリアルばかりでもダメで、両方をバランスよく持っていることが大事なのかと思っています。
MOCA それが、シンガーソングライターの責任かなと思います。同じ言葉を歌うにしても、そこに持っている熱量で伝わり方がまったく違うと思うし。メロディと言葉でどっちを優先するかで悩むとしたら、絶対に言葉のほうを優先します。
――このミニアルバムは、ぜひ歌詞カードを読みながら聴いてほしいですね。では、最後にツアーの話を。
Rover 今回は、大阪・Zepp Osaka Baysideで始まって、東京・Zepp DiverCity Tokyoで終わるという。ゼップって、やっぱり新人アーティストにとっては憧れなんで。
MOCA HiDEXは、「大阪・なんばHatchまではイメージ出来てた」と言ってましたけど、さすがにゼップ以上は未知ですからね。
Rover でも、コアファンも新規ファンも、みんなを楽しませるセットリストを組みたいです。あとは、もう当たり前だけど真剣にやるだけです!
MOCA 今作では「エキスパンダー」という、ノリの良い筋肉系の曲もあるので、この曲ではブーメランパンツ一丁になるくらい盛り上げます。楽しみにしていてほしいです!
(取材・撮影=榑林史章)
◆ベリーグッドマン Rover(Vo,G,Tp)、MOCA(Vo,MC)、HiDEX(Vo, TrackMaker, Pf, Gt, Perc)の3人で、2013年に大阪で結成。3声の美しすぎるハーモニーとラップ、秀逸なトラック、リリックが世代を越えた共感を呼び、インディーズ活動を経て昨年3月にシングル「ありがとう〜旅立ちの声〜」でメジャーデビュー。10月に通算4枚目のアルバム『SING SING SING 4』をリリースした。スポーツ選手にファンも多く、元広島カープの前田健太投手や鈴木誠也選手などが、登場曲に彼らの楽曲を起用。オリンピック体操金メダリストの白井健三選手もファンを公言し、テレビ番組では自身の応援ソングとして「ライトスタンド」を紹介した。
作品情報
ベリーグッドマン 『Spring Spring Spring』
初回盤(CD+DVD) 通常盤(CD) CD収録楽曲 初回盤DVD「ベリー・アコースティック・ライブ Vol.1」収録楽曲 |
ライブ情報
▽3X UP Tour 2017 3月23日(木) 会場:SHIBUYA CLUB QUATTRO 出演:ベリーグッドマン/ SPiCYSOL / MOROHA 3月24日(金) 会場:NAGOYA CLUB QUATTRO 3月27日(月) 会場:UMEDA CLUB QUATTRO ▽2017全国ツアー『“てっぺんとるぞ宣言”ツアー2017〜超好感男の証明〜』 5月5日(金・祝) 会場 大阪Zepp Osaka Bayside |