フォレスタというコーラスグループをご存じだろうか。メンバー全員が音楽大学出身。女声ボーカル7名、男声ボーカル5名、ピアノ2名の14名(2021年1月現在)で構成される実力派チームだ。

 結成は2003年。現在もBS日テレで放送中の音楽番組『日本・こころの歌』(月曜19時)から生まれたグループで、唱歌・童謡から、歌謡曲、洋楽まで、ジャンルを超えた名曲を比類なきコーラスワークで聴かせてくれる。年間100公演を超えるコンサートは常に満席。主な客層は中高年だが、シニアから児童まで、3世代を魅了する本格的な歌声と多彩なレパートリーで人気を集めている。

 抜群の動員力を誇る彼らは2018年に両A面シングル「故郷(ふるさと)に、いま帰る/あなたといるとき」でメジャーデビュー。前途は洋々と思われたが、昨年はコロナ禍により8ヶ月間、すべてのコンサートが中止となり、活動自粛を余儀なくされた。だが、そのピンチが新しいチャンスを生む。全国各地のコンサートとテレビの収録で多忙を極めていた彼らに時間ができたことで、アルバムの制作が可能となったのだ。

 2020年11月4日にリリースされたメジャー初のフルアルバム『フォレスタ珠玉の名曲集vol.1 ~あなたといるとき~』は、昨年の朝ドラで注目された古関裕而が作曲を手がけた「イヨマンテの夜」「高原列車は行く」「長崎の鐘」をはじめ、「浜辺の歌」などの唱歌、中島みゆき「麦の唄」やカンツォーネ、そして新しく録音されたオリジナル曲など、全18曲を収録。

『フォレスタ珠玉の名曲集vol.1 ~あなたといるとき~』ジャケ写

 ジャンルを問わない幅広い選曲はフォレスタの真骨頂といえるが、ステージに立てない期間が長かっただけに、レコーディングでは歌える喜びが爆発したのだろう。リーダーの大野隆は「我々が培ってきたものを出し惜しみせずにすべて詰め込んだ。1枚目にして集大成と言ってもいい」と手応えを語る。

 その言葉を裏付けるがごとく、同アルバムは早々にチャート入りを果たし、各種レビューでも好評を博している。コロナ禍で人との触れ合いが制限される昨今、力強さと清涼感を兼ね備えた彼らの歌声が、聴き手に癒しや温もり、そして活力を与えているからに違いない。

 同時期に、感染拡大防止対策を徹底したうえでコンサートを再開するが、逆境がグループとしての一体感を高めたようで、再開時の公演では観客を前にして歌える喜びと幸せをメンバー全員で共有したという。

 そして迎えた2021年。コロナについては予断を許さない状況が続くが、大野は「必ず平穏な日常が訪れることを信じ、常に技術の研鑽に努め、いつでも100%の力が出せるように備えたい」と語る。この真摯な姿勢もフォレスタの大きな魅力。あくなき向上心で進化を続けるプロの集団なのだ。

 今後は配信コンサートや、オペラの公演、オーケストラやビッグバンドとのコラボレーションにも挑戦したいというから、さらなる飛躍は必至。今からでも遅くないので、今年はぜひフォレスタの動向に注目してほしい。【濱口英樹】

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