フェス「NAONのYAON」から見える女性ロックの今

　近年、SCANDALなどのガールズロックバンドの活躍が目覚ましく、日本のロックシーンで「女性のロック」が大きく注目を集めている。しかし、そもそも「『女性のロック』とは何か？」という根本的な定義を行うことは難しい。音楽やロックの細分化が急速に進んでいる現在では、バンドがそれぞれに持つ個性は多様に存在しており、厳密にカテゴライズすることは難しいからだ。

　そうした中、女性のロックアーティストのみによるフェスティバルイベント『NAONのYAON』は、その女性のロックシーンの中でも、毎年、開催が発表されるとともに、大きな注目を浴び、女性ロックを語る上では外せない存在となっている。

　ミュージックヴォイスでは先日、女性ロックの雄・SHOW-YAの存在力を分析する記事を掲載したが、そのSHOW-YAがプロデュースし1987年から行われているのがこのイベントだ。1991年に一度その足跡は断ったものの、1999年に番外編が実施された後に、2008年より再開され続け、「女性のロック」を、一つの象徴として存在している。

　SHOW-YAを中心に、ベテランからフレッシュなバンドまで多彩な面子をそろえながら、一方で過去には夏木マリや八代亜紀、神取忍などのロックアーティスト以外のバラエティに富んだゲストをも集めながら、毎年盛大なイベントが開催されている。今回はこのイベントから見える一つの「女性のロック」のスタイル、そしてこのテーマに与える影響より、その存在意義を考察してみたい。

今年も白熱した『NAONのYAON 2015』

　2015年４月29日、９回目の『NAONのYAON』。午後３時にはオープニングアクトのプレーが終わり、定刻には司会として現れたSHOW-YAの寺田恵子の開会宣言により、ステージの幕は開けられた。トップバッターには『NAONのYAON』でもすっかり常連となっている相川七瀬が登場。彼女の代名詞ともいえるナンバー「夢見る少女じゃいられない」が会場に鳴り響くと、フロアはすべて総立ちでリズムに身をゆだね、大きな声でサビをコーラスし始めた。

　女性のアーティストというよりはJ-POP、J-ROCKというカテゴリで見ても「ビッグネーム」という呼称がふさわしい相川。彼女のステージを皮切りに、時間を追う毎に会場の熱気は増していった。主催者のSHOW-YAを筆頭に、今年はベテラン勢として山下久美子、杏子、中村あゆみ、田村直美といったそうそうたるメンバーに、再結成を果たしたPINK SAPPHIREと、80年代を通過したロックファンにはたまらない布陣が出揃った。

　さらには矢沢洋子率いるPIGGY BANKSや土屋アンナに加えて、Gacharic Spin、FLiP、シシド・カフカなど、現在さまざまなシーンを騒がせているアーティストが目白押し。さらに多忙の合間を縫って登場した平野綾、神取忍、サポートでは元PRINCESS PRINCESSの渡辺敦子、富田京子が見せ場を作り、女性だけで作り上げたステージを盛り上げる要素もふんだんに用意された。

　また、スペシャルゲストとして登場した未唯mieと共に寺田、中村、相川がピンク・レディーの往年の名曲をダンスでセッションを行ったり、地下アイドルの注目株である仮面女子が白熱のステージを展開したりと、異様なほどの盛り上がりを見せた。

　ラストはSHOW-YAのステージ。代表曲のヒット曲「私は嵐」から、昨年発表したカバーアルバム『GRAMOLOUS SHOW』より、沢田研二のヒット曲「勝手にしやがれ」のカバー、そしてラストは彼女らの代表曲「限界LOVERS」にて、サビの「Back to the fire！」という叫び声が、この日も日比谷公園の夜空に大きく響いた。

　そして、イベント大詰めは出演者全員によるセッション。かつてこの『NAONのYAON』にも出演、先日逝去した女性ボーカリストのシーナさんへのオマージュを込め、シーナ＆ザ・ロケッツの「レモンティー」で、この日のイベントは幕を閉じた。