ダミアン浜田陛下、メロディとリフの重要性 メタルへのこだわりと愛
INTERVIEW

ダミアン浜田陛下

メロディとリフの重要性 ヘヴィメタルへのこだわりと愛


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年12月12日

読了時間:約11分

 地球デビュー前に魔界に帰還した聖飢魔IIの創始者、地獄の大魔王・ダミアン浜田陛下が11月25日、悪魔の聖典「旧約魔界聖書 第 I 章」を発表。さらに12月23日には「旧約魔界聖書 第II章」を発表する。聖飢魔II地球デビュー35周年を迎えた魔暦22年(2020年)、聖飢魔IIが果たした人類への悪魔による洗脳をより強固なものにすべく再び人間界に顕現。

 ボーカリストの伊舎堂さくら、プログレッシヴ・ロック・バンド『金属恵比須』のメンバーという選ばれし6人を洗脳、悪魔の僕(シモベ)として“改臟人間”にし、ヘヴィメタルバンド『Damian Hamada’s Creatures』(以下D.H.C)を結成した。ダミアン陛下自らが全曲作詞作曲している。ダミアン陛下は「蝋人形の館」をはじめ、聖飢魔IIの初期の大教典(アルバムのようなもの)3作品に収録の楽曲のほとんどを手掛けている。

 インタビューではD.H.Cを結成した経緯から、ヘヴィメタルを作曲する上で重要視していること、聖飢魔II「蝋人形の館」のイントロのセリフの生まれた背景など多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一】

「流行りに流されない」

Damian Hamada’s Creatures

――世を忍ぶ仮の姿でされていた教員を早期退職されたのはなぜでしょうか。

 やりつくした感があった。担任を受け持った3年間のうち2年の頃から「俺はもうこれで最後にしよう」と決めていて、思い残すことなく有終の美を飾れたと思っている。

――再び音楽をやろうと思うまでの気持ちの変化は?

 退職して自由を感じながら過ごしていたがそれは1カ月で飽きてしまった。1年中ゴールデンウィーク、ゴールデンマンスみたいな感じで満喫していたつもりだが、そういう目的のない生活は悪魔といえども飽きてしまうものだな。

――Twitterを更新されていましたが、文字数制限がある中でびっしりと内容を書いておられますね。

 極力ツイートを2つ以上にしたくなくて、できるだけ1つにまとめたい。6666ツイートで打ち止めにしようと思っているので、1ツイート1ツイートを大事にしようとしたらこういう感じになった(笑)。

――1ツイートの重みがありますね。

 凄くある。なので私は簡単にリツイートはしない。

――そういった面が作詞などに影響もするのでしょうか。

 作詞の方が歴史が長いので、そちらの影響がSNSで出ていると思う。でも、「限られた言葉の中で」という面ではそれもあるかもしれない。あと、大きいのは教員時代で担任持つと必ず小論文指導をしないといけないので、そこで身についたものもある。

――SNSで問題が起きていますが、それについてどう感じていますか。

 悪魔的には、人間は皆どんどん堕ちていけと(笑)。しかし、一旦、聖飢魔IIが1999年に地球を地球を征服して洗脳してしまったので、もっとみんな賢くなってほしいとは思うかな。最近は中学や高校でも情報モラル教育をちゃんとやっているのだが、人間はすぐに忘れるから、適当な間隔で何か注意を促さないといけないと思っている。 

 洗脳から21年が経過し、人間達に対する慈しみの心が湧いてきた(笑)。いまは人間は可愛いと思う。一つの例として、詞の中でもやたら人が死ななくなった(笑)。昔は1曲で必ず1人は死んでいたからな。

――聖飢魔IIに関してなのですが、デビュー前に魔界に帰還されてしまったダミアン陛下が今回のような周年の節目に思うことは?

 毎回「よくここまできたな」と思う。魔暦元年(1999年)の本解散の時は「よくぞ達成してくれた」という思いがあった。でもその後にまさかの再集結があって、再集結毎にどんどん盛り上がり度がアップしているという現状には驚いている。

――その中でダミアン陛下の音楽はどのように進化してきていますか。

 新しいことには取り組んでいるが、根本的なスタイルが今のメタルとは全然違う。最近のメタルを聴くと、アレンジが自分向きではないというのが多々ある。自分の好きなアレンジや世界観を含めて、簡単に言うと「流行りに流されない」ものにはなっているかな。

古き良き時代のロックを求めている人にも聴いて欲しい

ダミアン浜田陛下

――メタルを作る上で一番こだわっていることは?

 メロディとリフ。この2つが私の中でダントツで重要だ。

――どのような流れで作っていくことが多いですか。

 私の場合はイントロから作ってAメロ、Bメロ、サビと頭から順番に作っていく。たまにサビから作る時もあって、今回2つの聖典で計13曲を発表するのだが、サビから作ったのは「Which Do You Like?」だけで、この曲は歌詞も同時に出てきた。他の曲とはちょっと違う作り方になっていて、私のヘヴィメタルへの愛が存分に込められた曲になった。

――全13曲というのも悪魔と密接に関わりのある「13」という数字に?

 これはたまたまだな。途中まで12曲だったが侍従長から「CDで出すだけではなくてちゃんとバンドでやってライブもできるようにしましょう」と言われたので、ライブでやるんだったら創世記(聖飢魔IIの黒ミサでの登場曲)みたいな感じのオーバーチュアがほしいなと思い「聖詠」を作って、結果13曲になったわけだ。その時に「13は悪魔にとって縁起がいい数字だ」と思ったが結局2つにわけることになった。

――2枚に分けたのも意図が?

 それは侍従長から「1曲1曲が凄く濃いので全部まとめて聴くと消化不良起こす」と言われた。金属恵比須とさくら“シエル”伊舎堂が加わって出来上がったのを聴くとさらに濃くなったので、これはやっぱり2つにわけて聴いた方がいいと思った。

――2カ月連続でリリースされるので楽しみも増えました。

 そうだな。ちなみに私が最も好きなアルバムがレインボーの『虹を翔る覇者』なのだが、これは6曲しか入っていない。収録曲の時間も33分台で、聴く側としてはこれがちょうどいい長さだ。これは私がハードロック、ヘヴィメタルに目覚めたアルバムなのだが、これ以上曲が入っていない方がいいなと感じた作品でもある。そこで物語が完結されているようなところがあって、収録曲は多ければいいものではないなと。もし、わけることによってリスナーの魂をしっかり掴む効果があるならむしろ6、7曲の方がいいんじゃないかと思った。言ってみればこれは「詰め込みすぎてはいかん!」という悪魔教のゆとり教育だ。

――最近私はメタルから遠ざかっていたのですが、今作を聴いてまたメタル熱が再燃してきまして。これを聴けば、最近メタルから遠ざかっているという方は何か感じるものがあると思うんです。

 私の中で凄く強く思っていることで、60歳くらいの人はディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスあたりから入って、恐らくジューダス・プリーストやスコーピオンズあたりが青春時代まっさかりのヘヴィメタルやハードロックだと思うのだ。特に古き良き時代のロックを求めている人にはぜひ聴いて欲しいと思う。最近はメロディよりもリズム隊の方が重視されるメタルがとても多くなってきているので、自分はリズムも当然大事だが、やっぱりメロディだなというのはずっと思っている。

さくら“シエル”伊舎堂が歌うことで作品像を大幅に超えた

Damian Hamada’s Creatures

――今回ボーカリストはさくら“シエル”伊舎堂さんですが、女性というところには何か理由があるのでしょうか。

 デモは私が歌っていて、もともと男性ボーカルを意識していた。だから音域もハイC(最も高い音が“ド”)までだった。しかし男性ボーカルだとどうしてもデーモン閣下と比較される。それは本人にとってもつらいことになるんじゃないかと思い、女性にしたという経緯もある。

――女性のキーに変えないといけないという問題が出てきますよね?

 開放弦を使っているリフがとても多いので、場合によってはリフ自体を変えないと演奏が無理なのではと思ったが、シエルは非常に音域が広く、開放弦がつかえる音域にもっていけたので結果的にことなきを得た。

――さくら“シエル”伊舎堂さんが歌うことによって聖飢魔IIとはまた全く別のカラーになったと思います。

 シエルはデーモン閣下を非常にリスペクトしている。その中でダミアン作品に自分が関係するということになって、これは想像だが、彼女なりの悪魔の世界、魔界のイメージで歌い切ることの研究を相当したと思う。これは侍従から聴いたのだが、シエルに会いに沖縄に行った時に13曲入りのデモを「50、60回聴きました」と言われたらしい。おそらく聴くだけではなく当然同じ回数だけ歌ってみたとも思うし、いかにしてダミアン作品に参加するかという研究を凄くしたことが伝わってきた。

――聴いた回数からだけでもそこは垣間見える部分ですね。

 結果として私が感じたのは、当初イメージしていた「彼女が歌ったらこういう作品になるだろう」という作品像を大幅に超えたものが出来たので、シエルにして正解だったなと思っている。

――ちなみに特にすごかったと感じた収録曲をあげるとしたらどの曲でしょうか。

 「Heaven to Hell」は感動した。彼女はレコーディングの時にこぶしまわしを注意されていたが、最後のサビの部分で少しこぶしがまわっている所があって、逆に私はそれが凄く気に入り「これを2番でも3番でもやってくれ」と、メールで送った。この曲は自分の想像をずっと超えてきた。あと、シャウト満載の「Which Do You Like?」もだな。

「蝋人形の館」のセリフはMCがきっかけ

ダミアン浜田陛下

――ダミアン陛下はギタリストというイメージが強いのですが、最近はあまり弾かれていないとお聞きしました。

 暇つぶしで弾いているくらいだな。今、生涯で一番曲がどんどん出てきていて、もう次の聖典も準備している。実は頼まれていないが、その次の作品も勝手に作っている(笑)。

――創作意欲が溢れていますね。

 聖飢魔IIの時はデビュー前に「俺はもうここでやり尽くしたんだ」という感覚があり脱退した。24年前に個悪魔大教典(ソロアルバム)『照魔鏡』を出したが、そこでも出し尽くした。毎回そんな感覚なのだが、不思議なことに今回は全然思わない。

――ダミアン陛下が音楽に戻ってきたのは嬉しいことですし、またダミアン陛下の曲が届くとなると信者やメタルファンの方も嬉しいことだと思います。いずれレコーディングやミサでもギターは弾いて頂きたいです。

 今のところ考えていないが、リハビリを頑張ってみるかな。

――さて、MVで使われていたフェルナンデスのギターは昔から使われていたものでしょうか。

 聖飢魔II結成前、38年間くらい使っているものだ。某雑誌の広告で見て豹柄デザインを気に入って1秒で買おうと思った。在庫を電話で確認して店で試し弾きもしないで購入した。

――運命的な出会いがあったんですね。買った当時はどれくらいギターの練習をしていたのでしょうか。

 当時は作曲よりもギターを弾く方が好きだったから、毎日2、3時間は弾いていたな。そこから徐々に作曲の比重が高くなり今のような感じになった。

――聖飢魔IIの「蝋人形の館」もそのギターから生まれたのでしょうか。

 そうだ。あの曲はいきなりリフが出来て次に曲名が出来て、Aメロ、Bメロ、サビを作ってあとから歌詞をつけたのを覚えている。

――最初のセリフもダミアン陛下が考えたのでしょうか。

 あれはデモには入っていなかったが、ミサの時にMCを色々言っており、そのMCは当時デーモン閣下と私で考えていた。まあ閣下が勝手に考えて話す時もあるが、大抵はMCについての相談が私にくるので、「蝋人形の館」もだんだんあの形になって、それがそのまま教典に入った。

――MCからの流れだったのですね。

 <お前も蝋人形にしてやろうか>は、「蝋人形の館」の初公開の時からそうだったはずだ。「セリフを言い終ると同時にギター始めてください」と言われたのを覚えている。

――この間、国際フォーラムで行われたヴィデオ黒ミサを拝見しましたが、その中でのトークコーナーの時に、デーモン閣下がダミアン陛下に天地逆転唱法(デーモン閣下が天と地をひっくり返して歌唱すると言う荒技)を見せていた、というお話がありましたが覚えていますか。

 天地逆転唱法は事前に確認したのは覚えている。当時はまだミサという言葉は使っていなかったがライブでいかにウケるか、盛り上げるかというのは当時から色々考えていたからな。他にも面白いものだと「悪魔組曲」を最初に披露した時はドラムはエース清水長官(地球デビューでは本来のギタリストに戻る)のだが、「悪魔の穴」という曲でドラムのスタンドを叩いたり、そのうちドラムから離れて床を叩いたり、そんなことをやっていて。

――ダミアン陛下はここから先、音楽がどのようなものになっていけばいいと思われていますか。

 まずはこのコロナ禍だな。ゼウスの史上最大の妨害なのだが、これが収まってくれないと。ソーシャルディスタンスをとらなくても、マスクをしなくても大きい声を出しても大丈夫なようなライブ、ミサが1日も早く訪れることを願っている。

――今開催されている、ヴィデオ黒ミサはダミアン陛下の中でどう映ったのでしょうか。

 はっきり言ってゼウスの妨害を完全に逆手に取った別の形での盛り上がり方ができたんじゃないかなと思う。大きな声を出せないので囁き声でみんなで言ったり、身体だけを使って反応したり、普段あんなことできない。いい意味で逆手に取れたなと思う。あと音が最高によかった。マルチで録音した音源を使って、既に音量のピークがわかっているし、ハウリングも起きないので普段よりもギリギリまで音量が上げられたと聞いた。そういう意味からも普段のミサよりも迫力があり良い音で届けられたというところもあって、あれはあれで良かったと思う。今年限りのイベントとしては大成功だったんじゃないかなと。

――確かにすごい迫力でした。最後にD.H.C.は今後ライブはどうなるのでしょう。

 ライブも視野に入れてバンドを組んだわけで、日程は未定だがいつかは生で届けたいと思う。というか私が観客の一人になって観たいかな(笑)。

(おわり)

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