澤部渡のソロプロジェクトであるスカートが7月19日、東京・渋谷 CLUB QUATTROでツアー『スカート Major 2nd Album リリースツアー “トワイライト”』のファイナル公演をおこなった。ツアーはメジャー2ndアルバム『トワイライト』を引っさげ、6月28日の北海道・札幌BESSIE HALLを皮切りに名古屋、大阪、東京の4カ所をまわるというもの。札幌では台風クラブ、名古屋と大阪ではグッドラックヘイワをゲストに迎え、東京公演のゲストにおはDJとしてカーネーションの直枝政広とバンドにHelsinki Lambda Clubを招いた。スカートは『トワイライト』の楽曲を中心に「ストーリー」など懐かしい曲も披露。アンコール含め20曲を届けた。ライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

東京のローカルバンドだという意識がある

澤部渡(撮影=廣田達也)

 開演前、ゲストの直枝政広による選曲のBGMが会場を彩るなか、Helsinki Lambda Clubがステージに登場。昨年リリースしたミニアルバム『Tourist』から「何とかしなくちゃ」や『メッカで朝食を』から「ユアンと踊れ」など全9曲を熱演。極上のグッドメロディとグルーヴで会場を盛り上げ、スカートへと繋いだ。

 パーカッションなど多くの楽器がステージにセッティングされるなか、澤部自らがサウンドチェックを行い、いよいよ今日の主役であるスカートのメンバーがステージに登場。澤部がメンバーのスタンバイを確認し「四月のばらの歌のこと」で幕は開けた。アルバムの最後に収録されている穏やかな一曲は、ゆっくりとスカートの世界観へ誘ってくれる。澤部の奏でる口笛も、楽曲のアクセントとなって印象的だった。

 軽く挨拶をしたあと、軽快なカントリーのエッセンスも感じさせる「ずっとつづく」を披露。アコースティックギターの煌びやかなサウンドを前面に押し出し、そこに乗る澤部の歌声も伸びやか。春の清々しい空気を会場に振りまいた。

 2013年リリースのアルバム『ひみつ』に収録された懐かしい1曲「ともす灯 やどす灯」、そして、メジャー1st アルバム『20/20』に収録の「視界良好」は、マイナーナインスの少しアンニュイなコードの雰囲気から、メジャーセブンスに流れ込む、まさに視界が晴れていくような、爽やかな風を運ぶアレンジに、オーディエンスもその風に体を委ね揺らす光景が広がっていた。

 リズミックなナンバーで盛り上げたところで、「大盛り上がりのところ悪いけどバラードやります」と少し申し訳なさそうにミディアムバラードの「遠い春」へ。優しく包み込むような包容力を感じさせ、メリハリのある流れで楽しませてくれた。

 澤部は「自分たちは東京のローカルバンドだという意識があります。東京のバンドというのは山手線の内側というイメージがあって、我々はそれに異を唱えたい」と自分たちの立ち位置を話し、山手線の外側から内側に向かっていく曲だという「高田馬場で乗り換えて」を披露。澤部はギターをリッケンバッカーに持ち替え、DJ MARUKOME&スカート feat. tofubeats名義で発表したバージョンとはまた違った趣。都会の慌ただしさを表現するかのように、徐々にテンポアップしていく粋なアレンジだ。エンディングでの岩崎なおみ(Ba)のコーラスワークも楽曲の良いアクセントになっていた。

 ワクワク感のあるイントロでの16ビートのリズムが、よりオーディエンスの身体を揺さぶった「さよなら!さよなら!」はBセクションでのグルーヴチェンジが心地良く、単調ではない生きたグルーヴで会場を席巻。そして、一気にギアを上げた疾走感溢れる「セブンスター」は、ギターを掻き毟る澤部のアグレッシブな一面を見せる。

 集まったオーディエンスに感謝。Helsinki Lambda Clubのステージを「すごく良いライブでしたね」と絶賛し、今日のオーディエンスの感触に「東京のローカルバンドをやっていて良かった」と笑顔を見せる澤部。

大喝采で迎えられて胸がいっぱいです

ライブの模様(撮影=廣田達也)

 ライブは中盤戦へ。懐かしい1曲「CALL」、イントロの“キメ”が緊張感を醸し出した「回想」は、シマダボーイ(Perc)によるパーカッションの乾いた音色が心弾ませる。佐藤優介(Key)によるエレピの温かい音色に、クールなギターカッティング、安定感のあるリズム隊とのシナジーで大人の空間を作り上げていく。

 「沈黙」は歌詞を煮詰まっていたところで、萩尾望都氏の作品「トーマの心臓」を読み返していたところからインスピレーションを受け、歌詞を書き上げたというエピソードを明かし、澤部はアコースティックギターに持ち替え、パーカッシブなストロークで、ファンキーに聴かせ、佐久間裕太(Dr)のグルーヴィーなドラムに絡む、岩崎のアグレッシブなベースも印象的だった。

「それぞれの悪路」、「花束にかえて」とアルバム『トワイライト』に収録されたナンバーを立て続けに披露し、アルバムの表題曲で同じ景色を共有できなかった寂しさを歌った曲「トワイライト」へ。寂しさの中にも、次に繋がっていくかのような明るい希望が見える一曲は、音楽の持つ美しさを届けてくれた。

 澤部はフロアからの大きな拍手に「最終日にこうやって皆さんの大喝采で迎えられて胸がいっぱいです」と述べ、約2年前に新潟在住3人組ユニット・Negiccoのkaedeに楽曲提供した「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」を届けた。澤部は楽曲が完成し、東北道を走る中で、暗闇の中で見えた、わずかな光が思い出されたとエピソードを話してくれた。記憶の片隅にあったものが楽曲を生み出す、スカートの音楽の根底にあるものが見えたような気がした。本編ラストは「静かな夜がいい」を響かせた。澤部の力強いロングトーンに大きな歓声も巻起こり、澤部はこのステージの手応えをガッツポーズで表現し、ステージをあとにした。

 アンコールに応え、ステージに再び澤部とメンバーが登場。澤部はこの渋谷 CLUB QUATTROは自身のフェイバリットアーティストたちが立ってきたステージということもあり、この場所でライブが出来る事への喜びを話し、アンコールはテレキャスターで「君がいるなら」。今作を作る上で軸となった一曲を丁寧に歌い紡いでいく。

 2010年の『エス・オー・エス』のリリースからCDデビュー10年目に突入したということで、昔の曲も録り直したいとぽつりと呟く。さらに「スカートの音楽はジャンルとして贅沢品だと思うんです。みんなで盛り上がる感じでもなく、心に寄り添う感じでもない…。本来必要のないもので…。今みたいな環境で音楽を作れることは当たり前じゃない、そう思うことがあるんです。我々は絶滅危惧種に近いものがあると思うので、やりたいうちにやれることはやろう。明るい未来が待っていることを見据えて」と、希望を託しラストは「ストーリー」を届けた。この曲は今回披露された曲の中でも最古。それもあってか初期衝動に満ちたエネルギーが、この曲からより強く感じられた。

 常にグッドメロディを作り出す澤部の楽曲は本当に居心地が良い。様々な思考が張り巡らされた楽曲たちではあるが、聴く者にとっては良い意味で難解さを感じさせない、そこにはポップミュージックのあるべき姿、真髄があった。まだこの先のことは考えていないと話した澤部だが、グッドメロディという信念は変わることなく、新しいものを発信してくれるはずだ。

セットリスト

7月19日@東京・渋谷 CLUB QUATTRO
『スカート Major 2nd Album リリースツアー “トワイライト”』

▽Helsinki Lambda Club

01 何とかしなくちゃ
02 ユアンと踊れ
03 PIZZASHAKE
04 lipstick
05 引っ越し
06 Time,Time,Time
07 Jokebox
08 ロックンロール・プランクスター
09 Skin

▽スカート

01.四月のばらの歌のこと
02.ずっとつづく
03.ともす灯 やどす灯
04.視界良好
05.遠い春
06.高田馬場で乗り換えて
07.さよなら!さよなら!
08.セブンスター
09.ハローと言いたい
10.アンダーカレント
11.CALL
12.回想
13.沈黙
14.それぞれの悪路
15.花束にかえて
16.トワイライト
17.あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
18.静かな夜がいい

ENCORE

EN1.君がいるなら
EN2.ストーリー

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