3周年目へ力強く一歩を踏み出した、まねきケチャ

 4人組アイドルグループのまねきケチャが13日、東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTで、『まねきケチャ2周年記念ライブ~まねかれナイト~』を開催。来年1月7日に、自己最大規模となるTOKYO DOME CITY HALLでの単独公演開催を発表。宮内凛は「日本武道館に行くために満杯にしたい」と意気込んだ。今年5月にメンバーが5人から4人へとなった。当時の葛藤やこれまでの活動を振り返り松下玲緒菜らは涙を流し「辛かった」と本音ものぞかせたが、一方で藤川千愛は「このメンバーなら夢が叶うと確信している」と自信をみせれば、中川美優も「来年もこのメンバーで周年を迎えたい」と力強く語るなど、この日、更なる飛躍を望む3周年へ確かな一歩を踏み出した。

歌声もかき消すファンの声援

松下玲緒菜

 場内は溢れんばかりのファンで埋め尽くされていた。2階席までカラフルなペンライトが彩った。そのなかで女性ファンも多くいた。興奮の度合いを高める雑踏のざわつきを打ち消すように、大音量のBGMが流れる。数秒足らずでその音が絞られると、ステージ背面に設置されたスクリーンに、現在の心境を語るメンバーの映像が流れた。

 「夢は紅白」「ロックフェスに出たい」「国民的アイドルになりたい」「感謝」――、それぞれの思いが届けられたところで暗転。間もなくしてレーザー光線がステージから場内へと放たれる。やがてスポットライトも加わり、胸打つEDMサウンドがけたたましく鳴る。カウントダウンが始まると歓声が更に大きくなる。「0」になったとき、松下が「盛り上がっていくぞ!」と投げかけ、それを合図に銀テープが噴射される。

 記念公演は「冗談じゃないね」で始まった。のっけからフルスロットルのアゲアゲナンバー。この日は5人のバックダンサーも加わり華やかが増す。そして、まねきケチャの音楽に多くみられる擬音を使った歌詞のシンガロングが更に高揚感を高まらせる。メンバーの歌声がかき消されてしまいそうなほどの場内の歓声や合いの手。まさに熱狂の渦だった。

 1曲目を終えて藤川が「盛り上がる準備は出来ていますか?」と再確認。既にファンの体は温まっている。続けて「好きですか?」(宮内)「愛していますか?」(松下)「盛り上がれますか?」(中川)と煽る。そのなかで宮内は「タオルもっていますか?」と確認。タオルを持っていないにも関わらず「ハイ」と返事したファンには「持っていないのにハイと言わないの」と愛嬌良くたしなめ、心をぎゅっと摘んだ。

 そうした煽りからの2曲目「SPLASH」。藤川が、出だしのソロパートを持ち前の声量を活かして情感たっぷりに歌い上げると、Aメロから一転、EDMサウンドがうなる。ステージ前ではCO2がめまぐるしく噴射され、ファンの“声量”も一段と上がる。タオルを持ったメンバーが一斉にステージを左右に移動すれば、フロアも見真似で同じように大移動、大陸がきしむような音が聞こえてきそうな激しさをともなっていた。まさにロック会場さながらの光景が広がるなかで、愛嬌よくパフォーマンスするメンバー。中川はタオルで頬の汗をぬぐう仕草さも。最後にはメンバー全員、手に持っていたタオルを場内に投げ込んだ。

もう一つの魅力、衣装

藤川千愛

 上がり切った熱量を冷ますように3曲目にはメッセージ性の強いミディアムナンバー「青息吐息」を送る。藤川をはじめ、松下は力強く歌い、宮内と中川や歌詞の一句一句を優しく届ける。「僕」という一人称で綴られる歌詞は「自分らしさ」を自問自答しているかのような世界観。アゲアゲナンバーだけでなく、こうした曲もしっかりみせてファンの心を掴んだ。

 4曲目「妄想桜」で再びアゲアゲにしたところで、自己紹介。この日を迎えられた喜びとファンへの感謝の想い、そして、決意の胸のうちをそれぞれ伝えた。そのなかで話題はこの日の衣装に。宮内がリリベで着ていたという衣装を参考に、ヒーロー戦隊風の衣装を採用。「可愛いよね」と自画自賛の衣装で、メンバーそれぞれ一回転して戦隊ポーズを決めた。ファッションイベントさながらの光景にファンの喜びもひとしお。

 そうしたほっこりとした空間を切り裂くように5曲目「僕が僕を」からもアゲアゲナンバーが続いた。ゆったりと歌ったかと思えば激しくなるなど、この時期の天候を表したような奇想天外な6曲目「妄想日記」ではメンバーそれぞれが「君しか見えない」という言葉を送ってファンの理性を外させた。続く7曲目「一刀両断」ではペンライトを剣に見立てて、空気を切りまくった。

 ここで宮内が「私たちがユルユルなのでキレキレダンスで気合が入る。皆さんたちのお蔭でステージが一気に華やかになった」と讃えたバックダンサーを紹介。その後、衣装チェンジということで一旦、ステージに下がり、それまでの間、ツアー映像が届けられた。

 ツアー映像にまで合いの手を贈るファン。彼女達が居なくても熱気が冷める様子はない。空気感を保ったまま衣装チェンジした彼女達を出迎えた。そんな彼女達は水玉模様のスカートに白のブラウスとお姫様の様な可憐かつかわいげのある衣装。髪には花飾りも。ファンの歓声に笑みを贈るメンバー。改めてこの日を迎えられたことの感謝を言葉で送った。

まねきケチャワールド

中川美優

 まねきケチャ独特の世界観は8曲目「愛言葉」にも表れていた。マリオネット人形に扮したメンバーは静止。歌を重ねていくごとに腕や足を動かしていく。童話の世界観を感じさせるスローなメロディも中盤から激しくなる。めまぐるしく動く“音符”。おもちゃ箱のように様々なメロディ、そして音が1曲に詰まっている。それをただただ感情で受け止め大歓声を送るファン。

 そうした、激しい“転調”はセットリスト全体にも表れていた。9曲目「SEVENTH HEAVEN」はロックビートのなかで盛り上げたかと思えば、10曲目「どうでもいいや」はメッセージ性の強いバラード。一転、11曲目「モンスターとケチャ」は深い森の中が舞台であるような物語風の見せ方をおこなっていた。この曲では、床に濃いスモークが張られ、CO2も激しく噴射する。大量のCO2は森のモヤの役割も果たしていた。そして、ダンサーは魔女のような恰好。メンバーは身を顰めるように慎重に歩を進める。ゆったりとした空気感だが、これも中盤から激しいサウンドにとってかわる。まるでアトラクションのようだ。

 そして、この日のライブに歌として花を添えたのはそれぞれの個性だ。藤井は持ち前の歌唱力を活かして情感たっぷりに且つ力強く歌い、時折ファルセットで心を射抜いた。ダイナミックでキュートな松下のダンスと歌声、声は小さいながらも独特の茶目っ気でファンの心をくすぐった中川、そして、ファンへの気配りが随所に表れたのはしっかりものの宮内だった。

葛藤と決意表明

宮内凛

 本編終了まで1曲を残してのMCでは、ファンから花束と寄せ書きが書かれたTシャツを送られた。改めて感謝の言葉を口にするとともに、2周年を迎えた心境、そして今後の心意気を、涙をにじませながら包み隠さずに明かした。

 藤川は「皆さんの支えがあったから…。自分ではまだまだダメだと思うところもあって。自信もないし、メンタルも弱い。馬鹿にされてきた、無理だと言われて来たけど、22年間夢をあきらめないでやってきた。このメンバーなら夢も叶うと確信している。歌うためにアイドルになったので、心に届くように響くような歌を届けていきたい」と途中声を詰まらせながら語った。

 宮内は「ファンの皆にちゃんと恩返しができてなく、力不足を感じる。この4人で絶対に紅白に出たい。(卒業した)まゆかちゃんにも見せたい。まゆかちゃんは抜けたけど、夢は一緒だと思っている。忘れなきゃいけないと思っているファンも多いと思うけど、その点は心配しないで。新人だと甘えることも出来ない。天狗にならずに精一杯に頑張りたい」としっかりとした口調で述べた。

 松下は「この2年間、ものすごいスピードで過ぎていった。楽しい事も辛いことも沢山あって。色んな事があり過ぎて…。でも色んな人に携われて楽しい。4人で2周年ライブを迎えられたのは本当に嬉しい。でも4人でこの日を迎えるとも思っていなくて…5人でと思っていたから…。凄く泣いて、これからどうなるんだろうと不安になって、あの時は本当にしんどかった。でも紅白の夢は変わっていなくて、だから紅白を目指して頑張りたいので応援をお願いします」と涙ながらに決意を表明した。

 中川は持ち前のキャラでファンを笑わせながらも、途中、目をうるませながら「よく2年もったなあと言われる。辞めたいと思ったことは365日。でもファンの方と話してもっと続けたいと思えた2年だったので、まゆかちゃんが卒業したり、メンバーが変わったり環境は変わったけど、来年も4人で迎えられるように頑張りたい」と力強く述べた。

 そして、ラストに選んだのは「きみわずらい」。アップテンポなナンバーだがメッセージ性のある強い曲。次のステップを踏むように3周年目に走り出すように力強く歌った。飛び跳ねるファンの姿は大きな波を打つ大海原のようで、帆を広げた彼女達の船出を、大きな追い風をもって送り出しているようだった。

 アンコールも盛大だった。最後は「冗談じゃないね」を披露。この日の公演の序盤の流れを汲むような疲れ知らずのアップナンバーは、ファン、そしてメンバーの記憶に高揚感と興奮、絆を強く焼き付けた。【取材=木村陽仁】

セットリスト

M01 冗談じゃないね
M02 SPLASH
M03 青息吐息
M04 妄想桜
M05 僕が僕を
M06 妄想日記
M07 一刀両断
M08 愛言葉
M09 SEVENTH HEAVEN
M10 どうでもいいや
M11 モンスターとケチャ
M12 タイムマシン
M13 奇跡
M14 きみわずらい

アンコール
EN01 告白のすすめ
EN02 ありきたりな言葉で
EN03 冗談じゃないね

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