ブルエン、新曲「囮囚」は現代の縮図!? ドラマ「ボイスII」主題歌に迫る
INTERVIEW

BLUE ENCOUNT

新曲「囮囚」は現代の縮図!? ドラマ「ボイスII」主題歌に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年09月11日

読了時間:約10分

 熊本出身の超共感型ロックバンドBLUE ENCOUNT(ブルエン)が9月8日、1年ぶりとなるニューシングル「囮囚」(読み:ばけもの)をリリース。表題曲は日本テレビ系土曜ドラマ「ボイスII 110緊急指令室」の主題歌で、シリアスなサウンドと歌詞が印象的なナンバー。カップリングにはアメリカ出身のDJ/プロデューサーでフューチャー・ベーストップアーティストSlushii(スラッシー)が楽曲の新たな魅力を引き出した「ポラリス(Slushii Remix)-Sakura Chill Beats Singles 」を収録。そして、初回盤にはライブ音源として4月に行われた横浜アリーナ公演から厳選された10曲を収録。ライブバンドの真骨頂が味わえる1枚となった。インタビューでは、ブルエンの次に繋がる曲にしたかったと話す「囮囚」の制作背景に迫った。【取材=村上順一】

「囮囚」は現代の縮図

「囮囚」通常盤ジャケ写

――「囮囚」が完成しましたが、どんな曲にしたいと考えて制作されたのでしょうか。

田邊駿一 まず、ドラマの前作で主題歌に「バッドパラドックス」を書き下ろさせていただいていたのもあり、このキャストでまたドラマの続きが見れるんだ、と想像したらすごく興奮しました。でも、逆にどうしようという不安もあったんです。続編というのはドラマでは初めてのことだったので。今回はどういうアプローチをしようかと悩みました。バンドシーンとしての新曲を出すのか、いろんなことを考えて制作を始めて。まず、僕が何曲かデモを作ったんですけど、ブルエンの次に繋がる曲にしたいというのがありました。

――「囮囚」というタイトルも印象的ですね。なかなか使わない字ですよね?

田邊駿一 善と悪、表裏一体というのが今回のテーマでした。それはドラマのテーマでもあるんですけど、善人だった人が何かの弱さにつけ込まれて悪になってしまった、というもので。すごく広いテーマではあるんですけど、それは僕らでもありうることなんだろうなと思いました。正しいと思っていたことでも誰かを傷つけてしまっていたり、常日頃あるものだと思いました。そういった表裏一体のものをこの曲では表現していて、どういうタイトルにしようか悩みました。

 最初は一文字で囮(おとり)がいいかなとか、しっくりこないなあと思い、囚人にしてみたり。でも納得がいかなくてこれを一緒にしてみたらどうだろうと、“囮”と“囚”の2文字を並べてみたらカッコいいなと感じて。“化人”でバケモノとも読めるし、そのバケモノが□の中に囲われていて身動きが取れなくなっている、それが現代の縮図みたいにも感じて。実際本当に悪い人というのはほとんどいなくて、ルールの中で悪さをしている、結局悪人やバケモノさえも囚われているんだなと。偶発的に生まれたものですけど、この物語に相応しいと思いました。

――すごく良いのが見つかりましたね。ちなみに仮タイトルとかあったんですか。

田邊駿一 仮タイトルは歌詞に<張り詰められた蜘蛛の巣に>とあったので「スパイダー」にしていました。スタッフさんもこれでいくんだろうなと思っていたみたいで、ジャケ写も「スパイダー」のイメージで進めていたみたいで。なので、「囮囚」になって慌てたみたいなんですけど(笑)。

――ジャケ写もかっこいいですね!

田邊駿一 ありがとうございます。CGではなくて実際に描いていただいたので、実物の絵が存在しています。触るのにも手袋をしなければいけないくらい価値のある絵画なんです。実際にあるものを写真で撮影したからこそ、この質感が出たんだと思います。

――これは家に飾りたいですね。さて、高村さんが今回演奏するにあたってこだわったところは?

高村佳秀 今回まず僕だけ先に録りました。基本的には4人で決めたフレーズを確定してからレコーディングするんですけど、今回はプロデューサーさんにも入ってもらって、さらにブラッシュアップしながらレコーディングしていく流れで。今回は試したいフレーズもいくつかあったので部分的にも録ったりもして、何パターンも試したので最後の最後までアレンジを練っていたようなレコーディングでした。

 その中ですごくこだわったところがスネアを2拍目と4拍目以外のどこに入れるかというものでした。細かいところなんですけど、聞こえないようなゴーストノートなど最後の最後までこだわってレコーディングしました。入れすぎても五月蝿くなってしまう、引きすぎてもダメで、1つの音を足すか足さないか、こだわりました。

――グルーヴに大きく影響しますよね。辻村さんのこだわりポイントは?

辻村勇太 ベースラインはある程度決まっていたので、試行錯誤したという感じではなかったんです。曲を聴いて感じたままレコーディングした感じでした。考えたところはドラムのビートに対してどうベースを突き詰めていくか、というところでした。ベースが入るタイミングによって壮大になったり、ギュッとなってよりアッパーになったりするので、グルーヴとしての細かいせめぎ合いはありました。

――2番で聴けるスラップ奏法はアグレシッブで盛り上がりますね。

辻村勇太 ありがとうございます。あのスラップは手ぐせに近いです。今まではそういった手ぐせのようなものは敢えてあまり出してこなかったんですけど、これからはそういう部分も少しずつ出していこうかなと思っています。

――“辻村節”が堪能できる1曲ですね。江口さんはいかがでしたか。

江口雄也 イントロで聴けるリフは田邊がデモの段階で僕だったらこう弾くだろう、というのをイメージして考えて作ってくれていたと思うんです。それで僕の中でも全体の構成がイメージできたので、イントロのリフを中心に展開していきました。それもあってアレンジ作業はすごく早かったですし、レコーディング関してもスムーズに録れたと思います。その中で苦戦したのはミックスダウンでした。

――バランスを取る作業ですね。

江口雄也 この曲はシーケンスフレーズが多かったので、他の楽器とのバランスを取るのが難しかったんです。シーケンスの音はこれまでアレンジャーさんに作ってもらうことが多かったんですけど、今回は辻村が全部作ったんですよ。これは初めてのことだったので、逆に考えた部分でもありました。なので、課題として残る部分もあったんですけど、この形もやり方としてありだなと思ったので、今後またどうブラッシュアップしていくのか、というのは楽しみなところでもあります。

――新しい試みもあったんですね。それにしてもイントロのあのコード感の中でメロディを乗せるスキルがブルエンは高いなと感じました。

田邊駿一 これはもうELLEGARDENに鍛えられて身についたものですね。ELLEGARDENの「Mr.Feather」という曲ははまさにそんな感じの曲で。当時「Mr.Feather」のメロディの乗せ方について友達と論議をしたぐらい好きで、和音にとらわれないメロディというのが僕は好きなんです。

――ちなみにドラマ『ボイス 110緊急指令室』1作目の主題歌だった「バッドパラドックス」を引き継いでいる部分もあったりします?

田邊駿一 ノリの良さというのは引き継いでいる部分かもしれません。確かにドラマが続編ということもあり、系譜にするのか、逸脱したものにするのかというのは考えました。でも、今回は逸脱したものを選びました。続編となった時は系譜を浮かべることはあると思うんです。そう考えたときにこの曲にもどこかに系譜が感じられたらいいなというのはあります。それはノリの良さにも繋がるサビの言葉の発音は「バッドパラドックス」の感覚を踏襲しているんじゃないかなと思います。

――カップリングの「ポラリス(Slushii Remix)-Sakura Chill Beats Singles」は聴いてみてどう感じました?

高村佳秀 ゲーム『Fortnite』(フォートナイト)の曲でSlushiiさんのことは知っていたので、いい意味で裏切られたリミックスでした。聴く前まですごくワクワクしていて、その気持ちのまま最後まで聴くことができました。Slushiiさんが「ポラリス」を解釈するとこうなるのかみたいな。僕らの曲ではなくてSlushiiさんの曲になっているなと思いました。

田邊駿一 僕がこれまで聴いてきたリミックス音源は、大体オリジナルよりもテンポをあげて派手になるイメージがあったんですけど、この「ポラリス」を聴いてそうではなかったので嬉しかったです。この曲は悲しい曲なんです。それをロックというもので包んで強さに変えようとしている主人公の気持ちがあって。それを憂いの部分で包んでいただけたのはすごく嬉しくて。

江口雄也 メロディがいいというのは正義だなと思いました。どんなアレンジになってもいい曲になって。オリジナルから展開やサウンドが離れていっても、良さは変わらないことは自分の中で新しい発見でした。

辻村勇太 僕はEDMも好きなのでスクリレックスを彷彿させるアレンジを聴いて感動しました。物語の展開だったり、フェイザーの使い方とか、日本語の捉え方とか面白いなって。サビじゃないところで盛り上がっているんですけど、Slushiiさんにはこういうふうに聞こえているんだなって。すごく勉強になりましたし、逆に英語バージョンでやったらどうなるのか、とワクワクした部分もあったリミックスでした。

ライブはスタジオ盤を超えろ

――シングルの初回盤には、4月に行なわれた『BLUE ENCOUNT ~Q.E.D : INITIALIZE~」2021.04.17&18 at YOKOHAMA ARENA』のライブ音源も付いていますね。

江口雄也 ライブ映像も10月27日にリリースするんですけど、その前にライブに来ることが出来なかったお客さんもいるので、まずは音源だけで楽しんでもらいたい、という思いがありました。その後に一緒にDVDも楽しんでもらえたらいいなと。

――CDには10曲が厳選されて収録されていますけど、どのような選曲だったのでしょうか。

辻村勇太 調子が良かった曲です(笑)。

田邊駿一 それも間違いない(笑)。いま行っているツアーの流れに沿った楽曲になっています。なので、今のブルエンの武器というのがこのライブ音源には詰まっていると思います。このシングルで僕らに出会ってくれた方にも名刺代わりとして良い選曲になっているんじゃないかなと。でも、これまで応援してきてくれて、このライブに来れなかった人にも、「みんなそこにいたんだよ」という気持ちを音源に込めたところもあります。

――「ハミングバード」の終わり方がライブ感があってすごくいいですね。

田邊駿一 スタジオ盤はフェードアウトだったので、まさにライブバージョンですね。アウトロをちょっと短くしたり色々考えたんですけど、これに落ち着きました。今後これがスタンダードになっていくんじゃないかなと感じています。

――それにしてもライブのクオリティすごく高いですよね。スタジオ盤を超えてくる感じと言いますか。

田邊駿一 それは意識している所でもあります。先輩たちも言っていたことですけど、ライブはスタジオ盤を超えろと。

――ちなみに皆さんライブ音源で好きなアルバムはありますか。

高村佳秀 Souliveというスリーピースのジャズファンクバンドが好きなんですけど、僕はそのバンドを知ってドラムを始めたくらい影響されていて。ジャズバンドなのでアルバムごとにやっていることが違う、メロディ感が同じくらいでかなりアレンジを変えてきます。僕の中ではライブアルバムがスタジオ盤超えているバンドのひとつで、その時にしか出せない3人の演奏が本当に最高で。ライブの中で自分が何を出せるのか、それが面白いところなんだということを教えてくれたバンドでした。

田邊駿一 僕はライブアルバムではなくDVDになってしまうんですけど、森山直太朗さんの『永遠はオルゴールの中に』という作品です。和風家屋でノーカットで8曲を歌い続けるというライブで、途中で声が裏返ってしまったりもするんですけど、それもそのまま入っていて。僕が高校生の時に音だけダビングしてよく聴いていました。人間味の良さを学ばせてもらった作品で、ノーカットでしか出せないドキドキ感というのを体験させてもらいました。

辻村勇太 僕はゴスペル系の音楽も好きなのですが、ゴスペルは生でしか聴けないことが多くて、レコーディングしたものというのはそんなに多くはないんです。その少ない中からライブの音源を探してよく聴いていました。ゴスペルクワイアは100人くらい人数がいるのに3本くらいしかマイクを使っていなくて、そこにエネルギーがすごく詰まっている、ハッピーな曲だったらよりハッピーな雰囲気がそのままパッケージされていて。

――ロックなイメージがあったのでゴスペルというのは意外でした。

辻村勇太 僕はファンクとかも好きですし、ベーシストでいうとマーカス・ミラーも好きで、それもライブ音源が好きで聴いていました。

江口雄也 僕はアルバムはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Live at the Grand Olympic Auditorium」です。それはよっちゃん(高村)から勧めてもらって、スタジオ盤よりもさらにカッコ良くて当時よく聴いていたのを覚えています。もしかしたらライブ盤を先に聴いてたから、そのイメージが強くなってしまったのかもしれないんですけど。

田邊駿一 それはあるよね。インディーズ時代に初めて対バンしたバンドのライブを観て、「このバンド、カッコいいな」と思ってCDを購入して帰りに聴いてみるんですけど、ライブのイメージが強すぎて、レコーディングしたものが微妙に感じることが昔よくありましたから。

江口雄也 あれ!?、意外と大人しいなみたいな。

辻村勇太 それ、あるあるだよね(笑)。

(おわり)

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