奄美出身の歌手・城南海が6月20日にシングル「西郷どん紀行〜奄美大島・沖永良部島編〜」をリリースした。今作に収録されている3曲は、NHK大河ドラマ『西郷どん』の劇中歌と、本編後にゆかりの地を巡る「大河紀行」のテーマとなっている。リード曲でのジャズピアニスト・山下洋輔とのコラボレーションは、打ち合わせなしのスリリングなものだったという。城自身も「飛び込んでみた感じ」と表現し、このレコーディングのドキドキ感を表現している。奄美の方言での作詞も城の筆によるもの。これに向けて実際に島の歌い手に取材もしたということで、この作品にかける城の想いを感じさせる。この新作への想いを、奄美の歴史や、奄美歌手の交流についても交え、城にインタビューした。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】
自身でも取材
――大河ドラマの音楽という事で、オファーを受けた時はいかがですか?
西郷さんがドラマになると去年から聞いていました。彼が奄美にいて、奄美の奥さんもいてというのは知っていて。ドラマでは奄美もかなり描かれるとの事で、歌わせて頂ける事は島出身者としては本当にありがたい事だなと。お話を受けてからレコーディングまで、ずっとドキドキしながら過ごしていました。
最初は歌詞もなかったので、直前までどういう形になるのかはわかりませんでしたが、レコーディング1週間前くらいに歌詞を書いてほしいとオファーを頂きました。それまではなんとなく西郷さんや愛加那さんの事を知ってはいましたが、いろいろ調べないといけないなと思って、奄美の西郷さん研究をされている方にインタビューさせてもらったりして。そこから1週間で作る事ができました。
――まさか実際に取材までされているとは思いませんでした。
もちろんネットや本で調べたり、原作も読みました。でもやっぱり島の人が知っている情報があるんじゃないかなと思って。いつもお世話になっている方に3人紹介してもらったんです。その方々にお電話をして伺ったら。本にはない情報も聞けましたね。
「何か知っていますか?」とお話すると「自分たちも資料が残っていないから、ちょっとした情報から推測することしかできない。それでも良いですか?」と皆さん仰るんです。残っている物が少ないので「自分が思うには」というお話を皆さんしてくださいました。女性も男性もいたので、女性目線や男性目線のお話もあったりして。とても勉強になりましたね。
――調べた情報をもとに作詞する際に苦労などは?
西郷さんと愛加那さんが住んでいたのは、龍郷(たつごう)という集落。私が住んでいたところではありませんでしたが、そこの言葉で作詞をお願いされていました。今の私の世代や親の世代で本当の島の言葉を話せる人はいないんですよ。本当の島の言葉が何で残っているかというと、歌なんです。なので歌として残っているから唄者(うたしゃ・島唄の歌い手)の人に教えてもらうのが良いかなと。
なので龍郷に住んでいる唄者の方にお電話をして「こういう歌詞を書いたんですけど」と私が作った標準語の歌詞を聞いてもらって、発音を教わりながら訳してもらいました。島ならではの言い方などもあるのでそれも参考になりましたね。
島の中を転々としてながら暮らしていて、奄美大島でも言葉が色々ある事は感じていましたが、龍郷ならではの語尾とかイントネーションもあって面白いです。<咲きゅんくとぅだりょろ(意=咲くことでしょう)>とかは、私は知らなかったです。
――ドラマの劇中歌になった「愛加那」の作詞も同様でしょうか。
そうですね。同時に作っていました。制作期間は大阪や鹿児島でコンサートがあったので、そちらに向かう前に本をたくさん買って、移動時間に読みました。調べた期間は4、5日で歌詞は1日で書き上げましたよ。