期待と不安、LUCKY TAPES 胸が高鳴る瞬間を描いた「22」
INTERVIEW

期待と不安、LUCKY TAPES 胸が高鳴る瞬間を描いた「22」


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年05月25日

読了時間:約14分

全曲鍵盤から作り始めた

左から高橋海、高橋健介、田口恵人(撮影=榑林史章)

──そんなみなさんのメジャーデビュー作『22』は、何かテーマを設けて作ったんですか?

高橋海 作り始める時に、これといったテーマはなかったし、季節や時間帯も特に絞っていたわけではなくて。どちらかと言うと、タイトルトラックの「22」が、全体のイメージを作っている感じですね。「22」というタイトルは、夜が幕を開ける22時、一般的に大学を卒業して社会へ出る22歳、という二つの意味合いを持っていて。何かが始まることへの期待と不安に胸が高鳴るその瞬間を描いています。自分の場合、22歳というと、LUCKY TAPESを結成した歳なんです。

田口恵人 海くんが打ち込みで作ったデモを僕らは聴くんですけど、「22」を聴いたときは、めちゃめちゃワクワクしました。めっちゃいいじゃんって。

高橋海 いつもはデモが出来たらデータで送るんですけど、最近はリアクションがあまりに無いので、ライブの楽屋で直接聴いてもらったんです。そうしたら、2人の反応が予想以上に良くて。

田口恵人 本当にそのくらい良かったから。

──海さんのボーカルは、ウィスパーっぽいファルセットのスタイルですけど、昔からそういうスタイルですか?

高橋海 そうですね、もともとは人前に出たり歌うことがあまり好きではなくて。カラオケに行ったら歌わずに聴いてる側だったくらい。それからボーカリストになって、ちゃんとした発声の仕方もいまいちわからないまま、好きなシンガーのスタイルを見よう見まねで歌っていたら、ウィスパー気味なスタイルになっていきました。あとは実家で曲作りをしていたので、家族や近所を気にして大声を出せなかったのもあると思います。

高橋健介 その歌い方や声とサウンドのコントラストが、LUCKY TAPESの魅力の1つだと思います。

高橋海 一般的なソウルミュージックというと、ソウルフルに歌い上げるのが一般的なのに対して、自分たちの場合は、どっしりとしたグルーブ感のあるサウンドに、ふわっとした自分の声が乗ることで、LUCKY TAPESらしさが生まれていると思います。

──個人的には、最後の「MOOD」が、自分たちの信条を込めた歌詞のメッセージも含めてすごく良かったです。

高橋健介 この曲が、さっき話に出た「デモを送ったのにリアクションがあまりにも無かった」と海くんが怒っていた曲です。

高橋海 いい曲が生まれて、歌詞も凄くいいものを書けた、と手応えを感じてワクワクしながらメンバーに共有したら、2人のリアクションが全くなかった。その後にライブなんかで会っても、この曲にはなかなか触れてくれなくて。個人的には気に入っていたけど、2人は微妙だったのかな? とずっと思っていました。

田口恵人 いやいや、めちゃめちゃいいですよ。歌詞とか特に。

高橋健介 前作の『Gravity』くらいから、海くんの書く歌詞がちょっと変わったのを感じていて。この曲もすごく歌詞が響きました。

高橋海 それを最初の段階で伝えて欲しいよ(笑)。以前は、音や発音を優先して言葉を選んでいたんです。ダンスミュージックだから意味よりも聴いたときの心地よさを優先していて。でも前作の『Gravity』から、自分の内面のことを書くようになったら、ライブで歌う時に感情が入るようになったんです。それが伝染して他のメンバーやオーディエンスにも広がっていく。そんな現象や光景が素晴らしくて、今作に繋がっています。

高橋健介 ライブでやっても、実際に歌詞についての反応が多いです。それだけいろんな人に響く、歌詞になっているんだなって思います。

──ホーンのフレーズも印象的でした。

高橋海 サポートの管楽器隊のみなさんには、たまにソロやバッキングのアレンジをお願いするんですけど、今作では管楽器もほとんど自分がアレンジを作りました。中学のときに吹奏楽部でテナーサックスをやっていたこともあって、何となくホーンやセクションのイメージは頭の中で描けるので、それをMIDI音源で打ち込んで渡しています。

──お2人がレコーディングで印象に残っている曲は何ですか?

田口恵人 「MOOD」のレコーディングときは、ツアーサポートで参加しているアーティストさんのライブがあって、少し焦りながら録っていた記憶が。

高橋海 でも、そういうときのほうが、肩の力が抜けていて良かったりするんです。この曲もそうだった。「いいテイクを録るぞ!」と力んで挑み過ぎると、逆にどんどん沼にハマっていくよね。

田口恵人 だから「NUDE」とか「EASY」は、逆に時間がかかりました。

──「NUDE」は、途中でリズムが変わって面白いですね。

高橋海 そこは、トリプレットを2個ずつ取ってテンポチェンジしています。ここの展開は、今回のEPの中ではいちばん最後にできた部分で。2番以降をどうしようか悩んで暫く止まっていたところ、健ちゃんからアイデアがあがってきたりして。

高橋健介 それはボツになっちゃったけど(笑)。

高橋海 結局家で、パソコンに向かって一人で考えたのがこのリズムチェンジでした。

──メンバーからアイデアを募ることもあるんですね。

高橋海 前作までは、ギターフレーズから膨らませたり、ベースフレーズから作っていった曲もあって。健ちゃんも宅録ができるから、展開を相談したりすることもあります。

高橋健介 でも今作は、完全に海くんの曲とアレンジだけで構成されています。

──誰が元を作ったかで、曲の色が変わる。今作は海さんが作った曲だけで構成されているので、より統一感が生まれてコンセプチャルなものを感じます。

高橋海 今作はギター先行でできた曲が一つもなくて、全曲鍵盤から作り始めているので、余計にだと思います。

高橋健介 むしろデモの段階で十分アレンジがされていたので「この曲ギターいる?」って(笑)。でも、作品としてのまとまりが生まれたので、良かったです。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事