「夢」と「現実」のバランス
――さきほど凜さんは、「ここまで光だけじゃなく進んできた」と言ってましたよね。凜さん自身も、夢を見ながらも現実を知り、そのうえで成長してきた経験もあったのでしょうか。
わたしの歌にはよく「夢」というワードが出てきます。夢というのは、ただ思っているだけでは実現出来るものじゃないのは誰もがわかっていること。でも、現実と夢って絶対に共存出来ると思っています。現実を捉えたうえで、自分の夢や理想をどこまで実現出来るのか、どうすれば現実のものにしていけるのか。その夢を現実に変えていくためには、常に努力が必要ですし、しっかりと考えて方向を決めていくことも大事だなと思います。もちろん、その都度軌道修正しながら追いかけていくのも必要なことです。ただ漠然と夢を見ているだけじゃ前に進めないどころか、迷走もしてしまいます。だからこそ夢と現実、その両方のバランスが大事なんだとわたしは思っています。
――夢を漠然とした妄想ではなく、現実化するための具体的なものとして捉えているところがいいですね。
一つのプロジェクトを成功させるためには、いろんな計画や段階を組み立てることが必要じゃないですか。もちろん、「わたしはこの商品をみなさんに届けたい」という熱意は大事だし、その熱意が人間の本質だと思うんです。だけど、ただ思っているだけでは足りないんです。それを伝え広げる方法を考え、現実を捉えて何をするかを考えるべき。それでこそ初めて、夢が現実へ近づくんだと思います。
――今回、新しい作品を出すまでに約1年間の月日を要しました。その期間、焦りを覚えることはあったのでしょうか?
もちろん焦る気持ちはありました。もっともっと多くの方々に自分の歌を届けたいですし、シンガーとして成功もしたいんですけど。わたしにとって、それは決してシンガーとして一番の目標ではありません。わたしが何を一番求めてるかというと、「もっと人の心と繋がりたい」「人の心と重なりたい」という気持ち。そうやって、自分の存在価値を確かめていたいんだと思います。
――自分の意思が明確に見えているところが、凜さんの強みですよね。
一般的に求められている成功って、経済的なゆとりや社会的な成功、出世、結婚などかも知れません。でも、それが自分にとって本当に必要なのかと言えば違います。みんなが欲しがるものが、必ずしも自分も欲しがる物事だとは限らない。繰り返しになりますが、わたしが欲しいのはシンガーとして「人の心と繋がりあう」こと。そこを純粋に追求していきたいなと思っています。
職人の方や、芸のためにいろんなことを捨て、その道を追求していく人たちを本当に尊敬しています。自分の価値観をしっかり持って、人に左右されずに生きる。わたしもそういう生き方をしていきたい。「どうやったらみんなの心と繋がりあえるのか」を、これからもわたしは考え続けていきたいです。
――完成した「Early Days」、凛さんはどんな風に受け止めていますか?
今までのわたしはヲタクで、闇が大好きで、闇の曲しか聴かない傾向がありました。だけど、自分が歌を届ける立場になり、「人々に希望を抱かせにはどうすれば出来るのか」と考えるようにもなれば、いろんな面で希望を抱けるようにもなりました。人生ってそんな甘いものじゃないけど、そんなに苦しいものでもない。闇もあって光もあって、涙もあって笑顔もあって、それらを合わせての人生なんですよね。昔のわたしは闇しか見なかったし歌わなかったんですけど。「マモリツナグ」や「Early Days」など希望の曲も歌うようになって、わたし自身もより心が立体的になれたと思います。
――世の中には「闇属性」という言葉もあるように、そこへ強く惹かれたり、痛みに安心感を覚える人たちがいるのもわかりますけどね。
一概には言えないんですけど、わたし自身の経験から言うと、「闇属性」の方は現実に対して夢を抱きたい、希望を持って生きたい、だからこそあえて「どうせ、そんな希望ねぇだろ」と言って、心が傷かないように上手く守ろうとしている印象を覚えます。なぜなら、昔のわたしがそうだったから。だって、ホントに絶望したらそんなことは言わないんですよ。「闇だよね」と口に出せるということは、まだ自分を変えたい、まだ何かに対して希望を抱いてるからなんです。わたし自身もそこから成長してきた人だからこそ、そう思います。







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