特別試写会に登場した田中麗奈

 女優の田中麗奈が15日、都内でおこなわれた、映画『おもてなし』の特別試写会に登壇した。田中は、ハードだった撮影を振り返り、現場でうと寝した通訳者に代わり、中国語の通訳を“代役”したエピソードを語った。

 『おもてなし』は、田中と『九月に降る風』などの俳優・ワン・ポーチエを主要キャストに迎えて制作された日台の合同制作映画で、経営難に陥った琵琶湖畔のとある旅館を舞台に、立て直しを目指して奮闘する人々の中に見える「おもてなし」の意味を、さまざまな人間模様の中で描いたストーリー。

 田中はかつて企業に勤めながら、経営不振の旅館を一人で切り盛りする母を支えるために出戻った一人娘の梨花役を務める。また本作の音楽は、大橋トリオの活躍で注目を集める大橋好規が担当している。

特別試写会に登場した田中麗奈

 2006年にも日台合作の作品として映画『幻遊伝』に出演した経験のある田中は、その機会に台湾との縁を感じており「中国語も勉強していたので、また使えればと思っていたところでこの話をいただいたので、(今回の出演も)必然のような気もして、嬉しかったですね」と今回のオファーを快諾していた様子を振り返る。

 撮影現場で使用された言語は日本語、中国語、英語と多岐に亘ったが、ネイティブ並みに中国語が話せる田中は、本作でメガホンを取ったジェイ・チャン監督とも、現場では通訳もいたが、ジェイ監督のとの会話は直接中国語でスムーズにコミュニケーションを取っていたという。

 一方で、時に台湾をまたぎつつ、滋賀、京都で1カ月にも及んだという今回の撮影で、時には深夜にも渡るハードな撮影があったようで、通訳者が寝てしまったことも。田中は「監督の言葉が中国語なので聞ける方と聞けない方が出てきて、自然に私が通訳になって伝えていたという時間が数時間くらいありました」とその際のハプニングを振り返り、笑いを誘う。

 またジェイ監督の映像を見た際に、田中は「本当にきれいな映像で、こんなにピュアな目で日本を見てくれているんだと」とその感性に感動する一方で、台湾生まれのアメリカ育ちというジェイ監督に対して「すごく個性的な方で、監督もやりながら、脚本もプロデュースもして、さらにカメラマンもする、いくつもの顔を持ってらっしゃって、今は宣伝活動に奮闘されている、非常にアグレッシブな方で、そういう方とお会いするのは初めてだったので、スリリングな現場でした」とその人物イメージとともに現場を回想する。

特別試写会に登場した田中麗奈

 さらに「現場では鬼のように厳しい方で、お芝居の指示もしながら、カメラマンとしての立ち位置なんかで、1、2mmくらいまで目を見張られていた、と思えるくらい厳しい。ちょっとした角度とか傾きとか、見ていると変わってくるのが分かって、そういうところも見逃されずという感じでした」とその撮影作業の厳しさに、かなりショックを受けた様子も見せる。

 他方、大ベテランの女優・香川京子とのシーンには「お待ちいただいている時は、本当にたおやかでやわらかいのですが、本番になると声の野太さというか、丹田から声を出されているという感じを受けるその迫力がすごくて、共演できたのは貴重な経験でした」とその演技にも大いに刺激を受けた様子。

 また劇中の香川の共演シーンからも「映画の大先輩として、女優として教えていただいているようにも、そして見ていてくださるようにも、画面を見てそう感じるところもあって、不思議な感じでした私の役者の道のりも重ねて見えるような、そんなシーンでしたね」と非常に貴重な体験に心躍った様子も見せていた。

 この日田中は、当日にこのイベントに先立っておこなわれたイベント『第72回毎日映画コンクール』の授賞式に出席、映画『幼な子われらに生まれ』で女優助演賞を受賞、その式に続いてこのイベントに駆けつけた。

 イエローを基調としたドレスで登場した田中は、この日は観衆からの質疑応答を受け付けるという粋な計らいを見せ、10代の頃から田中の演技に魅せられている観衆から「美容の秘訣は?」などと質問を受け「スキンケアが好きで、パックを毎日したり、乾燥肌なので乳液をたくさんつけたりとか、潤いを与えております」と丁寧に回答。

 また「温泉はよくいかれますか? お勧めの温泉などは?」とたずねられ「温泉好きですね。東京から車で乗っていけるので、箱根とかよく行くのですが、台湾にある温泉にも、行ってみたいです」と回答し、会場を沸かせていた。【取材・撮影=桂 伸也】

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