音圧が音楽に影響するもの、星野源の作品は「控えめ」その狙い
MusicVoice
<記者コラム:オトゴト>
星野源が過去に「音圧とダイナミズム」という点に触れて、自身の作品では音圧は控えめだがそれはあえて狙ったものだと語ったことがあった。
「音圧」の高い音源と、控えめな音源、それぞれの特色。前回(音圧の奥深さ、“海苔”か否か、それぞれの楽しみ方とは(前編))では、音源データの視覚的な考察を加え、“海苔波形”の音源は常に迫力満点、“非海苔波形”はダイナミズムに長けているという大きな違いがあった。音圧の高い音源は小さな音量でもしっかりどっしり聴こえて、ちょっといいヘッドフォンで聴くと陶酔感が味わえるパツパツの迫力の音源は確かな満足が得られるし、何しろ気持ちいい。でも、控えめな音量で“チル”な音楽をしっぽり楽しむのもまた粋だ。
一時期は「とにかく音源の音圧を高く」という風潮があったようだが、ここ数年はどうやらそうではないようだ。国内盤でも海外盤でも「ちょっと音小さくない?」と感じるものが増えてきている。もちろんそこは意図的なものだろう。
ラジオや有線放送でオンエアされる際に、音量的な迫力を差別化させる意図や、ビート(特にベースドラム)をクラブの臨場感並みに深く味わってもらう意図、重厚なギターサウンドを際立てたり、マスター音源よりもよりも圧縮したデータ情報量のmp3音源という環境(マスター音源の24bit, 32bitから16bitへ、など)で如何に迫力を出すかなど、音圧を上げる理由としては様々なものがあるという。
以前、星野源がラジオで前述の「音圧とダイナミズム」という点に触れ、自身の作品では音圧は控えめだがそれはあえて狙ったもの。「音小さいかな?」と感じたらプレイヤーの音量をちょっと上げれば最高のダイナミズムが楽しめるよ、と丁寧に説明していたのが印象的だった。そして、確かにその作品は演奏のダイナミズムが充分に味わえるものだった。これは、マスタリングで音圧を意図的に上げることをしなかったのは演奏の空気感を重要視したと捉えられる。
ダイナミズムが如実なのは特にクラシック音楽やジャズだろう。そのぶん、導入部分など、音量が控えめな部分は車内で聴いていたりすると外部のノイズに負けてあまり聴こえなかったりする。音圧バキバキのテクノなどは高速道路を飛ばして聴いていてもしっかり聴こえる。一長一短ある「音圧の適度」という角度で音源を捉えるのも乙だ。
実際、「この作品は音がショボ過ぎる」という判断を下した音源でも、「音圧」という角度で改めて考え、「ならば音をでかくして聴いてみよう」とした結果、「そういうことか!」と、納得する音源が多々あることを知った体験がある。具体的には、クラシック全般やプログレッシブロック、アンビエント系やちょっと年代の古い音源は、今一度プレイヤーの音量をいつもより1、2割くらい大きくして聴くと、きっと素敵な発見があるかもしれない。【平吉賢治】
- この記事の写真
ありません