乃木坂46橋本奈々未、最後のステージで見せたグループ愛と存在感

深々と頭を下げる乃木坂46橋本奈々未
乃木坂46が20日・21日・22日に、埼玉県・さいたま市のさいたまスーパーアリーナで、結成5周年記念のバースデーライブを実施。20日には、メンバーの橋本奈々未(24)の卒業ステージ「乃木坂46 5th YEAR BIRTHDAY LIVE ~橋本奈々未 卒業コンサート~」をおこなった。橋本を中心とした選曲で観客を魅了した。また、メンバーによる橋本へのサプライズのメッセージも送られた。橋本は周りのメンバーを引き立てるような動きを見せ、それが逆に彼女の存在を輝かせていた。
乃木坂46は毎年結成記念のバースデーライブを実施、グループの持つ全曲を披露するという趣旨でおこなっている。今年はグループの単独公演としては初の場所となるさいたまスーパーアリーナで3Daysのステージ。その初日となる20日は、橋本の24歳の誕生日で、卒業公演ということもあり、この日のセットは橋本を中心とした選曲でリストが組まれていた。
この日はもともと発売された3万枚のチケットが即完売となり、見切れ席やステージ裏にまで席を用意し、5000枚を追加したがそれもすぐに売り切れたという。今回はこのライブの模様を以下にレポートする。
緑色に染まる会場
この日の開場は15時。平日の昼間にそもそもそんなに人が…と思われる方もいるかもしれない。ところが午後4~5時にもなると、すでに会場の最寄り駅には多くの人だまりが、会場に向かって動き出していた。また一方で、会場近くのショッピングモールには乃木坂46のタオルを首にかけ、あるいは手にしながら嬉しそうに歩く人の姿があちこちで見られた。
会場は横80m、縦120mのアリーナをフルサイズで使用、長方形の短辺の一方に設置されたステージに対し、フロアにはステージと合わせて”王”の文字となる形の花道が設置され、さらにステージ裏にもモニタが設置と、360度どこからでも乃木坂46が見られるという構成。
広大なアリーナの中はステージスタートより前からすでに大勢の観客が入っており、それぞれの手に持つサイリウムを「橋本のカラー」である緑の色に光らせて、彼女たちを、そして橋本の登場を待っていた。
会場が暗転すると、ワーッという歓声が上がる。花道の中央にスポットライトが当てられ、そこには橋本が一人、凛とした表情で立っていた。その姿に再び沸き上がる歓声。そして橋本が深く一礼をすると、会場には大きな拍手が響き渡る。こうしてステージは始まりの時を迎えた。
曲のイントロよりリズムに合わせて、フロアや観客席より「オイ! オイ!」と歓声が上がる。この日のオープニングナンバーは「サヨナラの意味」。軽やかなリズムに爽やかなハーモニー。しかしそこに載せられた<サヨナラに強くなれ この出会いに意味がある♪>という詞は、まさしくこの橋本との別れの時を演出しているようだ。曲の始まりとともに、メンバーと合流し歌い始めた橋本の表情は、この日初めて人々の前に見せた時の表情と変わらず、気丈にその歌と踊りを披露する。
頭にこびりついて離れないステージ
橋本がセンターのまま「気づいたら片思い」へ。フロアからは相変わらず「ななみーん!」と橋本への呼び声がひっきりなしに飛ぶ。その勢いもあってか、この時乃木坂46のメンバーが見せた動きは、可憐で楽しそうで…そして力強くもあるように見えた。その姿は一人ひとりが「橋本に無様な姿は見せられない」その覚悟で、一丸となってこのショーに取り組んでいるようでもあった。
さらに会場は盛り上がりを見せる。しかし心なしか、メンバーの何人かは、必死に表情を崩すまいとしながら、すでに目を真っ赤に腫らしていた者もいた。
それでもなおもステージは続く。1回目のMCで「今日のショーをどんなものにしたいか?」とたずねられ、橋本は「こんな景色を見られることはない。だからみんなにこの景色を、頭に焼き付けてあげたい。そしてショーが終わって帰っても、こびりついで離れない景色を見せてあげたい」と語った。言わずもがなとばかりに、観客はみな最後までさらなる熱気を積み上げていた。
7曲目には橋本、白石麻衣(24)に加えて秋元真夏(23)、高山一実(23)の4人によるユニットで「偶然を言い訳にして」を披露。フロアに設置された四つの櫓(やぐら)にそれぞれ4人は登り、4方の観客に向けてアピールをする。
そんな中、橋本を除く3人は、サプライズでそれぞれが橋本への想いを綴ったメッセージボードを披露。その言葉一つひとつに橋本は驚きながらも笑顔を見せる。その表情を眩しいと思ったのか、思い余って白石は涙を見せてしまった。しかし、橋本はそんな白石を優しく、そして力強くリードしていた。
そんな一場面が、彼女らのパフォーマンスをさらに鋭く、研ぎ澄まされたものにしていく。この日のステージでは、いつも橋本が中心にいた。「行くよ!」と生駒里奈(20)が率先して掴みをとった時にも、そしてユニット編成としては橋本がいない時ですら、見えないはずのポジションに立つ橋本の存在があるようだった。
この日のステージは黒一色で統一されたセットになっており、そこへプロジェクションマッピングの投影で海へ山へ、そして果ては宇宙にまでもと、この日観客を乃木坂46との旅へといざなうようなステージだった。
さらにはステージ裏という特殊な座席に座らざるを得なくなった観客のためにと「ハウス!」では、1期生メンバーが見切れ席やステージ裏側席から見える位置に立ってのパフォーマンス。観客一人ひとりを大事にする心遣いが見て取れた。
また、この日のセットの構想には、橋本の思いも込められ、「アンダー」と呼ばれる若いメンバーのセットも組まれた上に、この日、橋本と同じく誕生日を迎えた伊藤万理華(21)のサプライズを率先しておこなったりと、メンバーをさらに後押しする。メンバーを引き立てようとする姿は橋本という存在を、逆にこの日一番光らせて見せていたようでもあった。
「私が選んだその道の先には、正解があると信じています」
36曲という曲が、大盛り上がりのうちにあっという間に披露され、最後の時はやってきた。「最後の時間がやって来ました」橋本自ら、その事実を口にした。そしてステージのラストナンバー「孤独な青空」へ。アクティブな4つ打ちのリズムと爽やかなメロディの中、青春の切ない瞬間を表した言葉が歌われる。この時その詞の内容を実感した様子の橋本は、それでも賢明に涙をこらえ、涙を見せないでいた。
そんな橋本を、高山と白石が両横で支える。続いてやって来た、エンディング。「ここまで一緒に盛り上がってくれて、ありがとうございました!」橋本はその言葉とともに、深い一例を観客にささげた。そして、退場。フロアに向けて笑顔を見せながら、メンバーはステージを後にした。
彼女たちが退場し、会場が暗くなると、あちこちからポツリポツリと「ななみん!」と叫ぶ声が上がる。その声は徐々に大きくなり、やがて広大なさいたまスーパーアリーナの空間を隅から隅まで埋め尽くしていた。
その言葉に一人でステージに登場した橋本。「今日で、卒業します」橋本はその言葉から話し始めた。「卒業する時にもらった曲で、自分の中では本当に大事な曲。大好きだし、これからも人生の節目節目で聴いていくんだろうな、って感じています」と、この後披露する曲「ないものねだり」への思いを語る。
一方で「私は『ないものねだりはしたくない』と歌っているのに…こんなに素敵な景色を何度も見ているのに、別の道を進みたいと思うのが、一番ないものねだりだと感じてしまう」と、胸の内に残した少しの寂しさを口にする。「でも、私が選んだその道の先には、正解があると信じています」と、改めて決意の一言を、気丈に言葉にした。
その言葉に、会場からは「5年間、本当にありがとう!」「これからも応援しているよ!」と橋本へのねぎらいと励ましの声が、フロアから上がった。その言葉にこらえきれなくなり、橋本はついに大粒の涙をボロボロと流し始めた。
そして改めて「皆さんの道の先にも、これでよかったと思えることがたくさんあることを願っています。今までたくさんの応援をありがとうございます!」とお礼の言葉を述べて「ないものねだり」を披露。途中、思い溢れて言葉が出なくなる場面にも「がんばれ!」という観衆からの声に支えられ、思いを込めた一曲を披露した。
彼女が残してきたもの
橋本が歌い終わると、大きな拍手が会場を包んだ。そしてステージに再び現れた乃木坂46の面々。メンバーの中でも最もつながりの深かった白石が、メンバーを代表してしたためた手紙を読み上げた。乃木坂46の中でもシンメトリー(対称)なポジションに位置する多かった橋本と白石。時にこらえきれず、何度も宙を仰ぎながら、白石は橋本と一緒に笑った時、そして悩んだ時に相談に乗ってもらったことなどを振り返りながら「最高のパートナー」と称賛、「ななみんという一人の女の子に出会えたことは、人生最高の自慢だと思っています。これからはななみんらしい人生を歩んでね。5年間本当にありがとう。ずっと大好きです!」と最後のメッセージを伝えると、二人は抱き合い、堰を切ったようにさらに涙を流した。
そして、いよいよ別れの時。この日1曲目に披露された「サヨナラの意味」を、全員で披露する。ステージでは直立でひたすら歌に想いを込めるメンバー。そして橋本は、フロアを移動する台座に載り、観衆一人ひとりに手を振り、改めてこの日のステージ、そしてこの乃木坂46のメンバーとして過ごした日々を支えてくれた人々への感謝を表していく。
最後にステージで一礼、一人、また一人とステージを後にするメンバーと別れの言葉を交わし、ある者とは抱擁を交わし、最後に白石との別れの言葉を交わす。涙で顔を上げられない白石を優しく笑顔で励まし、そして再び抱きしめる橋本。その白石を見送り、ステージには橋本が一人となった。橋本は改めて、乃木坂46として活躍できたことへの感謝を告げながら、ステージに降ろされたゴンドラに乗り「ありがとうございました。皆さん、さようなら」と最後の挨拶。そして深々と一礼し、ステージの遥か上に登っていくゴンドラとともに、会場を後にした。
自身の卒業にもかかわらず、最後まで乃木坂46を支えた橋本。そんな彼女がいた、乃木坂46というグループ。もちろん、この日迎えた乃木坂46の5周年という歴史の中にも、彼女の築いてきたものは大きな支えとなっている。それを改めて感じさせてくれるライブだったのではないだろうか。彼女がグループに残してきたものが、今後どう花を咲かせるか? それは乃木坂46が今後真価を発揮する重要なものだろう。橋本がこの日見せたものは、そのカギにもなっていくに違いない。(取材=桂伸也)
■セットリスト
「乃木坂46 5th YEAR BIRTHDAY LIVE ~橋本奈々未コンサート~」 01. サヨナラの意味 |
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