解散ライブを行った、ギルガメッシュ(撮影・西槙太一)

解散ライブを行った、ギルガメッシュ(撮影・西槙太一)

 ヴィジュアル系バンドのギルガメッシュが10日、ラストライブ『girugamesh ONEMAN TOUR 2016 "鵺-period-"』をZepp DiverCityでおこなった。約40曲、4時間にも渡る熱演でバンドの12年間に及ぶ活動に終止符を打った。セットリストは最新作から1stアルバムに至るまで、これまでの総決算と言える内容。長時間の演奏で、これまでにない疲労を感じさせる様子は見せたが、ボーカルの左迅は最後まで「音楽の神様がこんなもんじゃ終われねえって言ってんだよ! お前らもっといけんだろ!」とオーディエンスを煽り続け観客を盛り立てた。最後は「Forever 4492days girugamesh Thank you」の文字と共に、解散を惜しむオーディエンス達による大歓声と拍手が会場にいつまでも鳴り響いた。このギルガメッシュの最終公演を以下にレポートする。

■ラストライブ

 今年1月にミニアルバム『鵺-chimera-』を発表し、全国16カ所を廻るワンマンツアーを開催したギルガメッシュ。その後、彼らは国内での最終公演を残し、7カ国12公演に渡る海外ツアー『girugamesh TOUR 2016 "鵺-chimera-" in EUROPE』へ出発することになっていた。

 しかし、5度目のヨーロッパツアーを目前に控えた5月2日、予定していたZepp DiverCityでのツアーファイナルをもって、12年間に渡る活動に幕をおろすことを発表。国籍や性別、ファンや関係者を問わず、彼らを愛する多くの人々が悲しみに暮れる中、バンドはそのままヨーロッパへ。これまで支えてくれた海外のファンに感謝を告げ、いよいよラストライヴ当日を迎えた。

 17時06分。会場に流れていたBGMが止まり、無音のままゆっくりと幕が開いていく。

 そして、仄暗い雰囲気のSEが流れ始め、ステージ背面全体に張り渡されたスクリーンに、ツアータイトルと『鵺-chimera-』の世界観を彷彿とさせるおどろおどろしい映像が映し出された。追加席まで完売し、超満員状態になっている会場だったが、誰も物音ひとつ立てず、スクリーンを見つめている。

 そして、SEに変わり、弐、愁、Яyoの3人がステージに登場。えげつない重音で、大歓声をあげるオーディエンス達を煽っているところに、左迅がゆっくりと姿を現わし、ライヴは最新作のタイトル曲である「鵺-chimera-」で幕を開けた。

■カオスと化したフロア

 ギルガメッシュの初期を彷彿とさせる閉塞感をたたえたサウンドを、現在の4人でアップデートさせたような手触りのある曲で、一気にフロアを焚きつける。また、バンドのロゴマークの形に組まれた照明など、大迫力のライティングも楽曲に華を添えていた。

 そこから立て続けに「wither mind」を披露すると、「精一杯の声を聞かせてくれ!」と叫ぶ左迅。それに呼応したオーディエンスの絶叫と、弐が放つ強烈なフィードバックノイズがフロアに響き渡る中、タイトルコールされたのは「お前に捧げる醜い声」。活動初期からのキラーチューンの登場に、フロアは瞬く間にカオティックな様相へ。モッシュやヘッドバンギングで波打つフロアを、愁はいつも以上に激しく叫び、煽り倒す。

左迅(Vo) ・愁(B)(撮影・西槙太一)

左迅(Vo) ・愁(B)(撮影・西槙太一)

 そして、「千葉県からやってきましたギルガメッシュです!」という左迅の一言から、この日初めてのMCへ。そして、これが解散発表後、国内のファンに向けて、初めて直接言葉を伝える場面となった。「こういう大事なワンマンライヴの日には大雨が降ったり、台風が来たりするギルガメッシュなんですけども、今日は夢かまことか、快晴でございます!」とMCした左迅。さらに「明日、雪が降るんじゃねえかっていうぐらい珍しいんだけど」と続ける左迅の語り口はいつも通りのテンションで、フロアの空気が和らいだ。

 もちろん、オーディエンス全員が今日を全身全霊で楽しむつもりで来ていただろうが、はたしてどんな空気になるのかと、少し身構えていたところもあったはず。

 そこからも左迅は、マニュピレーターの大熊氏の紹介や、本番前に所属事務所の先輩であるMUCCの逹瑯が楽屋に来たことなど、ラフな雰囲気で話を続けていくと、フロアからは笑い声も起こり始めた。凶悪なまでにヘヴィなサウンドを轟かせながらも、決して重苦しい空気のままライヴが進行していくわけではなく、オーディエンスを笑顔にさせるところが、活動初期の頃とは違う、今のギルガメッシュだ。

■『鵺-chimera-』の総決算

 先にお伝えしておくと、この日のライヴは2部構成になっていて、第1部はミニアルバム『鵺-chimera-』を掲げたツアーの総決算的セットリストとなっていた。

 左迅「28本のツアーで『鵺-chimera-』というモンスターを成長させてきたんで、このZepp DiverCityでそのモンスターを大暴れさせようと思ってます。そして、メンバー全員、体力の限界が来るまでこのステージに立って、ギルガメッシュの音楽をここにいる全員に伝えて行きたいと思ってます! だからお前らも声が枯れるまで、明日動けなくなるぐらい、精一杯騒いでいきましょう!今日は長げえぞ! 最後までおもいっきり騒ごうや!」
そして「私のターンです、ウェイヨー!」と、ステージ中央まで躍り出た弐が、高速なギターリフを畳み掛けて「ROCKER'S」、そこから「Dance Rock Night」と初期曲を2連発。

 続く「VOLTAGE」では、サークルモッシュが発生。Яyoの叩き上げる激烈なビートと、猛然と踏みつけられるバスドラムの連打がフロアの狂騒を煽れば、強烈なブレイクビーツに合わせてオーディエンスがオイコールをすると、愁が不敵にベースを奏でて「CRAZY-FLAG」へ。さらに超攻撃的な「slip out」を叩き込み、会場をひたすら激しく揺らし続ける。
そんな狂乱状態から一転、「crying rain」や「睡蓮」といったメロディアスなミディアムナンバーを披露。獰猛なサウンドがピックアップされがちなギルガメッシュだが、やはりこのバンドの魅力は、そのメロディにあり、だからこそ多くのリスナーを夢中にしてきたのだと、改めて思い知らされた。

 ヨーロッパツアーの思い出話を挟み、「Drain」の猛撃で後半戦がスタート。再びフロアを灼熱状態にさせ、そのまま「Horizon」になだれ込んでいったのだが、「演奏中に前へ出たいと、12年間、口酸っぱく言い続けていたЯyoの夢を叶えよう」ということで、ハードでバキバキなエレクトロサウンドが鳴り響く中、ステージ前まで出てきたЯyoがフロアへめがけて2度のダイブを敢行!長年の夢を叶えたЯyoは「楽しい!」と満足そうに叫んでいた。

 続けて披露された「Another way」では、「ここにいる2500人の歌声を、俺達に思いっきり届けてください!」というアジテーションから、大音量のシンガロングが巻き起こり、「gravitation」では、再びサークルモッシュするオーディエンスや、クラウドサーファーも出現。

 そして、本編のラストを飾ったのは『鵺-chimera-』のクローザーでもある「END」。燃えさかる炎が映し出される中、楽器隊が放つ沈痛なまでの重低音と、左迅の壮絶な咆哮が絡み合い、観る者すべてを圧倒するディープな世界観を繰り広げて第1部は終了。ステージには幕がかけられた。

■歴史の総決算

 18時34分。後日リリースされるラストライヴを収録したDVDの告知映像がスクリーンに映し出されると、オーディエンスから大歓声があがり、そのまま第2部がスタートした。幕が開くと、既にスタンバイしていたメンバー達は、「volcano」「Vermillion」「ULTIMATE 4」を3連発で叩きつける。おびただしいほどに並べられたアンプ型ストロボライトが激しく明滅する中、フロアにはヘッドバンギングが吹き荒れた。

 第2部は、バンドの歴史を総括するセットリスト。USへヴィロックに影響を受けた彼らのサウンドをひとつ確立させた『Girugamesh』や、ラウド×エレクトロ路線へ踏み切った『MUSIC』、それに続く『NOW』など、比較的初期?中期に発表された楽曲が多くを占めていた。

 中でも圧巻だったのは、1stアルバム『13's reborn』の楽曲をメドレー形式で披露するというもの。大量のスモークが上下から吹き出す中、「Jarring fly」を皮切りに、「遮断」「robust conviction」「Deceived Mad Pain」と続け、ラストの「開戦宣言」までノンストップで駆け抜けていった。

 中盤では、イントロが鳴り響いた瞬間に驚きの声があがった超初期曲の「腐界の闇」や、あまりライヴでは披露されてこなかった「縁enishi」、そして「ファンに対して感謝の気持ちを込めて作った」という「shining」を披露。そこから、弐、愁、Яyoが向かい合い、音を柔らかく重ね合わせ始めると、左迅がバンドの解散について、ゆっくりと話し始めた。

 左迅「5月2日に解散することを発表しまして。突然のことで、みんなすごくビックリしたと思いますけど、『鵺-chimera-』ツアーの真ん中ぐらいで、正式に決定したというのが、ぶっちゃけたところなんですけど。まだまだこんなにギルガメッシュのことを観に来てくれる人達がいるんだなって、俺はすげえ感激しました。今日は本当に集まってくれてありがとうございます」

 会場から大きな拍手が送られる中、左迅はギルガメッシュというバンドが生まれてから今に至るまでのことを話し始めた。弐とЯyoの兄弟と、幼馴染みの愁が集まったバンドに、自分は後から加入したこと。活動を始めてからファンが、事務所に所属したことでスタッフが、また、結成当初は少なかった友達も徐々に増えて行き、ギルガメッシュというバンドの輪がどんどん広がっていくのを実感したこと。そして、その輪が広がっていくたびに、音楽に対しての責任が生まれて行ったこと。

 左迅「辛いこともあったよ。苦しいこともあった。ムカつくこともあったし、メンバー同士ケンカしあうこともありました。でも、それ以上に、俺達はこのステージでたくさんの笑顔を見れました。俺達自身も、たくさんの笑顔をみんなに見せれたと思います。本当に宝物です」

 オーディエンス達は拍手を送りながらも、左迅の言葉を真剣に聞いている。

 左迅「俺自身、ほとんど学校に行かずにゲームばっかやってて、生きる目標とか、生きる意味とかなかったんですけど、このギルガメッシュっていうバンドに出会えて──まぁ、楽屋に帰ったらこんなこと言えないんで、今言いますけど──12年間、一緒に歩き続けてくれて、どうもありがとうございます」

 フロアに向かって話していた左迅だったが、後ろを振り返り、涙で声を震わせながら3人にそう告げると、深々と一礼。再びフロアのほうを向く。

 左迅「俺に生きる意味を、生きる目標をくれたのはこのバンドと、そして、ここにいるみんなのおかげです。本当に心からどうもありがとうございます!曲もだんだん少なくなってきたけど、一曲一曲噛み締めて歌うから。最後までみんなついて来てくれよ!」

 そこからライヴはクライマックスへ向けて一気に加速して行った。「driving time」では、これまで発表してきた作品題やツアータイトルが、「Never ending story」では、歴代のバンドロゴとミュージックビデオが歴史を遡るように高速で映し出される中、オーディエンス達はヘッドバンギングをしたり、モッシュをしたりと、激しくフロアで暴れ回る。
そして、ライヴの鉄板ナンバーである「evolution」で最高の狂騒を巻き起こし、第2部本編は終了となった。

 大音量のアンコールに応えて、弐、愁、Яyoの3人が登場。弐が「絶頂BANG!!」の導入としてギターを豪快に弾き始めたのだが、突如演奏を止め、「俺は今、バンドを12年やってきて、一番疲れてる。プロがこんなこと言っちゃいけないんだけど、言わせてくれ……疲れてる!」と宣言。さらには、先ほどの左迅のMCで弟のЯyoが泣いていたことを暴露して、フロアを盛り上げていた。

 本来はそのまま曲にいく予定だったらしいのだが、最後のステージで何か話したくなったのだろう。そんな感情のままにライヴを繰り広げるところも、ギルガメッシュらしかった。

 弐「だがしかし! お兄ちゃんは泣きません! 俺は最後まで笑顔で君たちを送り出します! でも、俺の両腕はもう限界だ! 間違えても勘弁してください!」

 そして再びギターを弾き始め、「絶頂BANG!!」に突入。会場を本日何度目かの狂乱状態に持ち込んだ後、終わりと未来」「arrow」を続けて披露した。

 <終わりが来ても重ねたモノは残っていて>(終わりと未来)、<もし涙零したら その数前に進めば いつか僕等 笑えるから>(arrow)という、今の彼らにふさわしい言葉が綴られた楽曲が、オーディエンスに届けられる。

 そして、「壊れていく世界」へ。そのタイトルや、一聴すると絶望を感じさせるバンドサウンドから、ダークな楽曲に受け止められそうだが、そんな絶望の奥底にわずかに光る希望を感じさせる、ギルガメッシュ屈指の名バラードだ。

■終焉

 左迅「俺達は、今日、2016年7月10日に解散します。でも、俺達が生み出したギルガメッシュの曲達は、永遠にこの世に生き続けます。この先、みんなの大切な人、家族、友達に、こんなカッコいい曲があるんだよとか、こんなかっけえバンドいたんだよって語り繋いでくれたら、俺らが12年間音楽やってきた意味を持てます。これからギルガメッシュを生かすも殺すも、ここにいるみんな次第だからな!12年間本当に応援ありがとうございました!」

 そして、最後の曲として、「明日からみんなが笑顔で生きれるように」という想いを込めた作った「Break Down」をドロップ。おそらく体力的にも極限状態だったはずだが、その場にぶっ倒れる覚悟で音をかきならし、叫び上げる4人と、拳をふりあげるオーディエンス達。最後のサビでは、メンバーのメッセージが書かれた銀テープも発射され、大団円のアンコールとなった。

 オーディエンス達と記念撮影をし、愁は「ありがとう!」とまっすぐに感謝を告げ、弐とЯyoは「音楽はやめらんねえ!」と絶叫。ピックやドラムスティックを大量にばらまき、ステージを去って行くメンバー達に惜しみない歓声と拍手が送られ、終演のアナウンスが流れ始めた。

 しかし、拍手がなかなか鳴り止まず、徐々にアンコールの声も上がり始める。そして、次第に高まって行った声に応えるように4人が登場!……したのだが、「お前らもっと早くアンコール言えや! もっと聞かせろ! アンコール! アンコール!」と、自らオーディエンスにアンコールを要求するという、暴挙に出る左迅。

 そして「こんなキレイな感じで終わるバンドじゃねえんだよバカが! とどめに一発行くぞ!」と、最後の最後に披露されたのは「お前に捧げる醜い声」。「一番すげえの見せてくれよ!」と凄まじいボルテージで音を放ち始めたが、イントロでギタートラブルが発生し、音が突如ストップ。「もう一回いきます!」と左迅が絶叫する。

 左迅「音楽の神様がこんなもんじゃ終われねえって言ってんだよ!お前らもっといけんだろ!そんなもんか!2階も1階に落ちてくるぐらいいけよ!いくぞ!(弐を見て)まだ終わんねえのかおめえは!」

 弐「あんた元気だな?(笑)」

 左迅「あー! 俺は今日燃え尽きるんだよ!早くしろ!間が持たねえんだよ!」

 その後すぐにギターは復旧。改めて「お前に捧げる醜い声」へ。ステージもフロアも一体となり、死力を尽くした壮絶な光景を作り上げ、「もう終わりだからとっとと帰れ!」という、彼ららしい最期の言葉と、ギルガメッシュ史上最大のカオスでもって、全37曲(メドレーで披露された各曲を1曲としてカウント、最後のアンコールである2回目の「お前に捧げる醜い声」入れるとすると全43曲)、約4時間に及ぶラストライブの幕が降りた。

 そして、ステージにかけられた幕に「Forever 4492days girugamesh Thank you」の文字が映し出された。オーディエンス達による大歓声と鳴り止まない拍手が、いつまでも会場に鳴り響いていた。(文・山口哲生)

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