フレデリック「オンリーワンダー」を読み解く、原点回帰と確信
否定されて続けた過去
今の流行りではないから――。デビュー前、ライブのブッキングスタッフに言われた言葉だった。今の流行りの音楽ではないから、このライブにはブッキングできない、と何度も言われてきたという。そうした苦汁を舐めた想いを心の底に抱えたまま走ってきた。しかし、それが解けたのが今回のツアーでもあり、その後に生まれた「オンリーワンダー」だった。
オンリーワンダー。三部作を継承する、それまでのディスコロックを基調とする完全なるフレデリックサウンドだ。この新曲は今年1月からライブで度々披露してきた。健司は語る。「最初に披露した時よりも曲調も歌詞も変わってきています」。まさにライブを重ねてファンとブラシュアップしてきた、迷いなき歌である。
そして、その想いは歌詞にも表れている。
「どうなったってさ 最後まで 君は君のもの」
「ほっとけ ほっとけ ほっとけないほど 大切なんです」
「悲しみがなんだってんだ 歌ってんだ 歌ってんだ ずっとずっと」
「扉を開くのは ワンダーテンダー オンリーワンダーなんだ」
すべてはここに集約されている。
昨年12月、NHK『MUSIC JAPAN』の収録に密着した際、康司がニヤリとして語った。「既に楽曲の構想はあります」。自信をのぞかせたその表情の意味が今作で明らかになった。彼らの強い確信は、楽曲からあふれ出て、歌詞の意味さえも超えた「応援歌」になっている。「他人がどういようと、自分が思う道を進むべきである」、音でそう語っているように。
初のシングルでリリース
そして、その楽曲を、自身初のシングルとしてリリースすることも意味深い。これが彼らの新たな代名詞とも言わんばかりだ。この楽曲を高らかに掲げておこなう『フレデリズムツアー』第2弾は、会場もZEPP規模と大きくなる。しかも、チケットはソールドアウト。「トウメイニンゲン」で問いかけた、実感のない“数値”はそれぞれの会場で“視覚化”されるのである。
成長著しい彼らにとっては、一つひとつが彼らの音楽人生における歴史的価値を有する。しかし、今回の「オンリーワンダー」、そして『フレデリズムツアー』は迷いし昨年の分岐点をしっかりと選んで進んだ一歩。そういう意味においても重要な作品なのである。(文・木村陽仁)
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