INTERVIEW

小芝風花&吉原光夫

「正常な流れが生まれた」“対照的な声”の共鳴 「えんとつ町のプペル」アフレコの裏側


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:26年03月29日

読了時間:約8分

 小芝風花と吉原光夫が、『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』(公開中)に出演。小芝は美しい歌声を持つ人に化けた植物・ナギを、吉原はある約束を100年間待ち続ける時計師・ガスを熱演する。本作は2020年に公開された『映画 えんとつ町のプペル』のその後を描く、感動の冒険ファンタジーだ。製作総指揮・原作・脚本の西野亮廣(キングコング)の「信じて待つ」という切実な原体験が投影され、STUDIO4°Cによる圧倒的な映像美が物語を彩る。インタビューでは対照的な声質を持つ二人が共鳴し、作品に何を見出したのか。『えんとつ町のプペル』ワールドの魅力やアフレコの裏側について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

責任重大、プレッシャーを感じた(小芝風花)

小芝風花&吉原光夫

――多くのファンを持つ「プペル」という世界観の魅力は、どこにあると感じていますか。

小芝風花 圧倒的な映像の美しさと、キャラクターの豊かさです。周りに何を言われようと、自分が信じたものを信じ抜く難しさと素晴らしさが、隅々まで詰め込まれています。大人も子供も引き込まれる世界観だと思います。

吉原光夫 西野さんとは長い付き合いで、ミュージカルではブルーノ役を演じさせていただきました。今の世の中では少しうざがられてしまうような、信じることや夢を語るというシンプルなことが、この作品では真っ直ぐに描かれています。青臭いと言われるかもしれませんが、それをしっかりと提示しているのがこの作品の強みであり、魅力だと思います。

――西野さんは、今作がご自身の「キングコング」としての原体験に基づいていると仰っています。演じる上で、その「生々しさ」は感じましたか。

吉原光夫 西野さんから「結構めんどうくさい(複雑な思いが詰まった)作品だ」という話は聞いていました。でも、完成した映像を観てそのテイストは全く感じなかったですし、演じている最中も、西野さんと梶原(雄太)さんの繋がりをあえて意識させるような生々しさは感じませんでした。ただ、リスクを背負って「待つ」ことを選択するガスの姿は、当時の西野さんの孤独な決断と重なる部分があるのかもしれません。西野さんも、当時は自宅に引きこもったと話していました。

小芝風花 私はアフレコ前にそのお話を聞いて、責任重大だなとプレッシャーを感じました。ナギが「ガスが待っていること」を知らないのと同様に、梶原さんも「西野さんが待っている」とは知らなかったとお聞きしました。そのお話を聞いて、お二人のことなんだと分かる部分もありますが、ナギとガスの関係性がしっかりと描かれているので、普通に観たら(その背景には)気づかないと思います。

吉原光夫 西野さんは意図があって、あえてその背景を話したんだと思います。これは僕の憶測ですが、この作品をあまりファンタジーという面だけで観てほしくないから、「皆さんにも起こりうることなんだよ」という生々しい話を引っ張ってきたんじゃないかな、と。

――小芝さんは今回、劇中でHYの失恋ソング「366日」を歌唱し、素晴らしい歌声を披露されています。ボイストレーニングにも通われたそうですが、完成した映像を観られていかがでしたか。

小芝風花 ちょっとまだ自分では客観的になれていないので、公開されたら気になってエゴサしてしまいそうです(笑)。

吉原光夫 とても歌、良かったですよ。エゴサする必要はないんじゃないかな。

小芝風花 ありがとうございます。ナギの歌唱シーンを流しながら、表情や息の吐き方に合わせてニュアンスが合うように、すごく意識して練習しました。「366日」は高低差がある難しい曲で、テンポも少し落としてあるので、最初は息が続かなくて苦労しました。

――西野さんからのディレクションもあったのでしょうか。

小芝風花 最初は個人的にボイトレに通っていたのですが、収録前に「今回の作品で担当してくださる方のレッスンを受けたいです」とお願いしました。きっと西野さんの意図や、求められているニュアンスを熟知されている方だと思ったからです。録音時に西野さんはいらっしゃらなくて、その先生と相談しながら作り上げました。

吉原光夫 それまでの工程は3人で細かく作っていった感じだったので、歌の時は西野さんいないのかと思いました(笑)。

――吉原さん演じるガスは「100年間待ち続ける」という非常に重い設定の役どころですが、どのような思いで臨まれましたか。

吉原光夫 ガスが一人で孤独に待っていた、という感覚ではないんです。時計台が一緒に待ってくれていた、時計台に意思があるような感覚で演じていました。だからこそ、決して寂しくて辛いだけの日々ではなかったのだと思います。また、ナギと繋がっている、それを信じたいという感覚もあったんじゃないかなと感じました。

西野さんはアグレッシブな判断の早さがあった(吉原光夫)

小芝風花&吉原光夫

――今回のアフレコは、お二人ご一緒に収録されたと伺いました。

吉原光夫 初の声合わせは結構な緊張感があって、相手がどう出てくるのか、自分の解釈が合っているのか、色々なものに阻まれながらスタートするものですが、小芝さんのナギの声は質感がとてもナチュラルだったので、僕は自分の声をぶつけるだけでよかった。とてもクリエイティブで楽しい時間でした。

小芝風花 吉原さんの声は低くて落ち着いていて、本当にかっこいいんです。ナギとガスはゆくゆくは恋心を抱く相手なので、親子みたいにならないよう、そのバランスを西野さんに細かくディレクションしていただきました。客観的に自分の声は分からないので、とにかく西野さんを信じて頑張りました。また、吉原さんとの掛け合いはとてもやりやすかったです。

――西野亮廣さんのディレクションで、特に印象に残っていることはありますか。

吉原光夫 西野さんは「瞬間の人」ですね。その瞬間感じたことを実現しようとする力が強く、良くないと思えばすぐに脚本を書き直すような、アグレッシブな判断の早さがありました。いい意味でこだわりがなくて、何回もやり直すというよりは、良くないものはバッサリ切れる方だと思います。

小芝風花 アフレコが終わった後にも書き直したりしていました。その場その場で「要・不要」の判断がすごく早くて。西野さんの中で完成形が見えているんだなと思いました。なので、ディレクションや演出面で不安になることは一切なかったです。

年齢も世界も違う二人が交わったからこそ、正常な流れが生まれた

©西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

――特に注目してほしいシーンやセリフがあれば教えてください。

吉原光夫 僕は病室のシーンが好きです。人間同士の思いやりや愛おしさが詰まったやり取りになっていて、お客さんにもガスの思いが伝わる重要な場面だと思います。

小芝風花 そのシーンでガスから「絶対来いよ」と言われて、ナギが「おう!」と言い返すのですが、何回もリテイクしたのを覚えています。シンプルな「おう!」なのですが、女の子っぽくというよりは、ちょっと男同士みたいな...そういう感じを求められ、とても苦戦したので、注目してもらえたら嬉しいです。

――ナギがイヤリングをガスに返すシーンで、ガスがそれを受け取らないというのは、また会う口実になるというのも良かったです。これ、現実でも使えそうだなと思いました(笑)。

小芝風花 あはは(笑)。あのシーンのミソなのは、ふざけて言わないところです。ガスは他のシーンでは割とふざけているのに、そのギャップにとてもトキメキました。現実でやる場合は「ふざけない」、そこに注意してください(笑)。

――お二人の声の性質の違いも、この作品の深みを生んでいるように感じます。

吉原光夫 年齢も世界も違う二人が交わったからこそ、健全な、それでいて「交わってはいけない二人が出会った」という正常な流れが生まれたのかもしれません。僕のロートーンと小芝さんのハイトーンの差が、作品に良い効果をもたらしていたら嬉しいです。

――最後に、公開を楽しみにしている読者の皆様へメッセージをお願いいたします。

吉原光夫 シンプルに「信じて待つ」ことの大切さを感じてほしいです。この作品は時間に追われる現代社会の中で、ゆっくりと時間や相手と向き合うことの尊さを教えてくれます。劇場でその豊かな時間を味わってください。

小芝風花 どれだけ苦しい時でも、信じて待てばいつか必ず会えるというメッセージが詰まっています。大人の方も考えさせられ、ぐっと来るシーンがたくさんあります。ぜひ劇場の大スクリーンで、この美しい映像を体験してください!

(おわり)

作品情報

©西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

タイトル:『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』
公開:絶賛公開中
製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣
監督:廣田裕介
出演:永瀬ゆずな 窪田正孝 / MEGUMI
小芝風花 吉原光夫 土屋アンナ 山寺宏一
藤森慎吾 伊藤沙莉 / 東野幸治 錦鯉 / 森久保祥太郎
アニメーション制作:STUDIO4°C
原案:「チックタック ~約束の時計台~」にしのあきひろ著(幻冬舎)
主題歌:「えんとつ町のプペル」ロザリーナ(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝・CHIMNEY TOWN
© 西野亮廣/「映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~」製作委員会

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