シンガーソングライターのNakamuraEmiが1月31日、神奈川・KT Zepp Yokohamaで自身が主催する対バンイベント『NakamuraEmi 10th Anniversary「背負い投げ 4本目」』を開催した。ゲストにUVERworldを迎えた2マンライブだ。過去には竹原ピストル、Furui Riho、C&Kを招いて行われてきた本イベントは、ジャンルの垣根を超え、演者が互いの魂をぶつけ合うパフォーマンスが見どころとなっている。4本目となる今回は、NakamuraEmiが多大な影響を受けたというUVERworldとの共演が実現。UVERworldが「7日目の決意」など8曲を熱演すれば、NakamuraEmiは最新曲「UBU」や、TAKUYA∞(Vo)を呼び込んでの「マッシュアップ」を披露。この記念すべき一夜の模様をレポートする。(取材=村上順一)

気合の入ったバチバチの対バンがしたかった(TAKUYA∞)

UVERworld

 開演時刻になりカウントダウンがビジョンに投影される。トップバッターを務めるUVERworldは、SEの「WICKED boy」に続いて真太郎(Dr)のドラムソロからスタート。克哉(Gt)、彰(Gt)、信人(Ba)、誠果(Sax /MANIPULATOR)がステージに。最後にTAKUYA∞が颯爽とステージに登場し「のっけから行こうか!誰も聴いたことがない新曲!」と咆哮し、「ZERO BREAKOUT POINT」で幕を開けた。「音楽にジャンルの壁なんてない」と叫ぶTAKUYA∞。序盤からボルテージは最高潮。圧倒的なグルーヴとサウンドで観客を捩じ伏せ、「NakamuraEmiが始まる前にくたばっちまおうぜ。そして何度も蘇る」と「PHOENIX AX」へ。<絶唱>のコールで会場を一つに束ねていく姿は、まさに王者の風格だ。

 「なぜNakamuraEmiが俺たちをあなたに見せたかったのか、まだ謎だと思う。でもこのライブが終わる頃にはっきりわかるよ絶対に」とNakamuraEmiのファンたちに投げかけるTAKUYA∞。「今日はあなたたちにもしっかり刺さるいい曲ばかりをチョイスしてセットリストを組んできました」と話し、「PRAYING RUN」を披露。努力が必ず報われるとは限らない現実を突きつけながらも、挑み続ける尊さを歌い上げた。

 「今日はNakamuraEmiのファンにありのままの俺たちを愛されに行こうぜ」とUVERworldファンに向かって話すTAKUYA∞。「ダメなところも弱いところもいいところも全部さらけ出して、それでも愛してくれて支えてくれる人を倍の愛情で返していく。これを本物の人生と呼ぼうよ」と熱い言葉でオーディエンスを扇情し、「Eye’s Sentry」で更なる高みへ誘う。

 特筆すべきは、彼がこの対バンを引き受けた理由を語った場面だ。過去に様々なバンドから対バンを誘われたが断ることも多かったとTAKUYA∞は。今回の対バンについて「ただ純粋に(NakamuraEmiが)かっこいいと思ったから引き受けただけ。俺たちは本当に心から感謝してこの大切なステージでライブやらせてもらってます。気合いの入ったバチバチの対バンがしたかった」とその言葉に嘘がないことは、続く「ALL ALONE」の熱演が証明していた。

 そして、「50分という決められた時間の中で、あなたにどれだけの思い、言葉、音楽、メッセージ、メロディーを伝えられるかと考えた時に、どうしてもこの曲だけを届けたい」と「EN」を披露。言葉の強さを感じさせ、オーディエンスも手を掲げバンドの音とメッセージに全力で応える。「音楽はビジネスなんかじゃねえ」、鮮烈なこの言葉が響き渡る。

 ライブはラストスパートへ突入。「Ø choir 」を投下し、会場の熱はさらに高まっていく。ここにいる全員がUVERworldのパフォーマンスに感化されていく。TAKUYA∞は「やり切った、出し切った、これ以上ねえ」と今の気持ちを吐き出す。「たった一度だけ生まれて、たった一度だけ死んでいく」と人間の真理を語りラストに「7日目の決意」を披露。TAKUYA∞自身の経験から放たれる熱い想いが音に乗って会場に降り注ぐ。オーディエンスはクラップをしながら、その言葉に耳を傾けているようだった。

 一瞬たりとも手加減なしの50分間。UVERworldは、NakamuraEmiのファンにも、消えない爪痕を深く刻み込み、ステージを後にした。

私の人生で一番空気を読まないお誘いです(NakamuraEmi)

NakamuraEmi

 熱狂のバトンを受け取ったNakamuraEmiがステージに登場。プロデューサーのカワムラヒロシのギターをバックに「メジャーデビュー」でライブの幕は開けた。当時の心境を綴ったナンバーは、10周年を迎えて初めてのライブに最高の選曲だ。続いての「火をつけろ」では身体を揺らさずにはいられない至高のグルーヴの中、ノリノリに飛び跳ねながら歌う彼女の姿も印象的だ。続けてアグレッシブなナンバー「かかってこいよ」を投下。小柄な身体から放たれる、弾丸のような言葉の数々が観客を撃ち抜いていく。

 MCでは、憧れの存在であるUVERworldへの畏怖と敬意を率直に語った。

 「UVERworldさんお引き受けくださって、とんでもねえライブをぶちかましていただき、本当にありがとうございます。私、デビューは10周年なんですが、音楽を始めて25年、こんなに覚悟がある人を見たことがなくて、そういう覚悟がある人たちと同じステージに立つなんて超怖いことで…」と心境を吐露。続けて「今の自分がもっと強くなるためには、覚悟が決まったとんでもない王者たちと一緒になれば、自分はもっと強くなれるかなって」と対バンへの思いを明かした。「私の人生で一番空気を読まないお誘いです」という言葉には彼女の強烈な覚悟が詰まっていた。

 そんなMCに続いて届けられたのは「使命」。彼女の経験から紡がれたリアルな言葉たちにオーディエンスのテンションも上がっていくのがわかる。そして、世界観をガラッと変えた「雪模様」へ。NakamuraEmiの地元、厚木に雪が降り積もる景色を楽曲にしたためた一曲だ。目を閉じればその景色が見えてくるような説得力。オーディエンスもその歌声に静かに耳を傾けていた。

 NakamuraEmiは、「去年『UVERworldさんがお引き受けくださいました』ってスタッフから連絡が来てから、1日たりとも今日のことを考えなかった日は本当になかった。この1年この日に向かって走ってきた」とこのライブに懸ける思いは並々ならぬものだったという。

 「たくさんUVERworldさんが好きな理由はあるけど、NakamuraEmiファンだと思う方々も一生懸命に手を振って手拍子して楽しそうにいる姿を見た。対バンってこういうことなのかなって思わせてもらいました」と対バンの楽しさを実感している様子。

 コロナ禍に書かれた楽曲「投げキッス」は、彼女のスケール感がまた一段階上がったことを感じさせる楽曲だ。サウンドもこれまでのソリッドなものからウェット感のある包み込まれるかのような広がりを感じさせた。そして、代表曲の一つ「YAMABIKO」。オーディエンスのシンガロングも響き渡り、最高の一体感を生み出していく。その響き渡る声に嬉しそうなNakamuraEmiの姿も印象的だった。彼女がこれまで歩んできた道は、間違いなくこの最高の景色へと続いていた。

 ハイライトは、二人の魂が重なり合った瞬間だった。NakamuraEmiの「スケボーマン」とUVERworldの「PRAYING RUN」の歌詞をマッシュアップしたナンバーを披露するという。「皆さんの心に刻んでいただけたら」とTAKUYA∞をステージに呼び込み、覚悟と覚悟のぶつかり合い、魂の共演がここに実現した。互いのリリックを交差させ、叫び合う二人。時にハーモニーを生み出し、それは、音楽という共通言語を持つ者同士にしか到達できない、聖域のような空間だった。この2曲が重なった瞬間、会場には「ボロボロになっても走り続ける者の美学」が充満した。それは「歌の共演」というより、お互いの人生の証明書の交換に近い光景だった。

NakamuraEmi&TAKUYA∞(UVERworld)

 出番を終えたTAKUYA∞が「最高を更新して!」とエールを送り去ると、彼女は「カッケェ……。なんであんなに発光してるんでしょう」と漏らし、「私もあんな風に、10年先も音楽を続けていきたい」と前を見据えた。

 ラストは10周年当日に配信リリースされた新曲の「UBU」をライブ初披露。UVERworldとの対バンが決まりこの日のライブで披露することを想像しながら書いた曲だと説明。

 「10年の思いと、そしてこんな強い人と一緒に立つという思い、いろんなものがこの曲の歌詞を書かせてくれました。UVERworldさんとのこの日がなかったら絶対に生まれてない歌詞なので感謝を込めて」とこの曲を届けた。今の彼女にしか書けない楽曲、このライブのラストに相応しいナンバーだ。10周年という節目に、あえて「初心(初々しさ)」や「産声」を想起させるタイトル。王者のパフォーマンスを浴びた直後に、真っさらな自分を提示する。これは彼女がUVERworldからエネルギーを吸い取り、自分自身を再定義するかのようなパフォーマンスだった。

 魂と魂の共鳴。まさにそんな言葉が相応しい対バンだった。ジャンルなんか関係ない、大切なのは信念や気持ちだということが伝わってきた。さらに共通しているのは我々を鼓舞してくれる言葉や音楽だということ。2組のエネルギーや想いが確実に観客にも伝わっていたと思う。対バンライブの真髄を体感できた特別な一夜となった。

 終演後『背負い投げ』の5本目と6本目の開催が発表された。4月18日に代官山UNITでRHYMESTER、5月15日にF.A.D YOKOHAMAでTHA BLUE HERBと対バンする。

(撮影=福政良治)

セットリスト

■UVERworld

SE.WICKED boy
01.ZERO BREAKOUT POINT
02.PHOENIX AX
03.PRAYING RUN
04.Eye's Sentry
05.ALL ALONE
06.EN
07.Ø choir
08.7日目の決意

■NakamuraEmi

01.メジャーデビュー
02.火をつけろ
03.かかってこいよ
04.使命
05.雪模様
06.Rebirth -MPC ver-
07.梅田の夜
08.投げキッス
09.YAMABIKO
10.PRAYING RUN × スケボーマン w/TAKUYA∞
11.UBU

<プレイリスト>(一部楽曲を除く)
https://lnk.to/nNP81IDH

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