INTERVIEW

岩田剛典

迷った時に立ち返る“初期衝動” ブレない軸を持つためのマイルール:映画「金髪」


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:25年12月03日

読了時間:約5分

 岩田剛典が、公開中の映画「金髪」で主演を務める。演じるのは、自分を客観視できていない“イタい”中学校教師・市川で自身初の教師役に挑戦。本作は、日本独特の校則、教師のブラックな職場環境、暴走するSNSといったリアルな問題を描きながら、大人になりきれない教師が成長していく姿をコミカルに描き出す。voisでは動画インタビューを実施。役作りを「特にしなかった」という岩田が、なぜ「セリフを言っているようにセリフを読まない」ことを意識したのか、その演技の真髄に迫る。さらに、浮き沈みの激しい芸能界で「マイルールを持つことが大事」だと語るその真意とは?  厳しい世界で自分を見失わないための「自分基準」、そして彼が立ち返る「初期衝動」について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

セリフを言っているようにセリフを読まない

岩田剛典

――今回教師役で、「三枚目」という役柄です。市川というキャラクターをどのように捉え、演じましたか?

 今回の役柄は、ついつい愚痴ばかり言っているような人間を演じました。本当に今を生きる若者、おそらく心の声というか、思っていてもなかなか人には共有できないような愚痴みたいなものが、この映画では市川というフィルターを通して、コミカルに心の声をどんどん描かれていくというものでした。役作りは特にしませんでしたが、「なるべくセリフを言っているようにセリフを読まない」ということはすごく意識していました。なおかつ市川というキャラクターは、早口でまくしたてるセリフ回しが多かったので、カメラが回って本番となった瞬間の集中力というのはすごく現場の思い出として残っています。

――撮影を振り返って、特に印象的だったシーンを教えてください。

 印象的だったシーンは学校のシーンで、板緑(演・白鳥玉季)とのツーショットのシーンです。学校の廊下で、ほぼセリフなしで、二人のテンポのいい掛け合いがいくつかあります。あのシーンは、現場に入る前に監督と二人でリハーサルを何回かやったシーンでもあって、すごく思い出に残っています。個人的に『金髪』といえば、あのシーンが象徴的だと思っています。

――隠れたみどころはありますか。

 ランニングをするシーンがあったんですけど、その日がすごい大雨で。本当は晴れている中で撮る予定だったのですが、外に出ているシーンはもう全部雨の中で撮り切ってしまいました。でも結果、それがすごく内容とも親和性があり、すごくいいシーンになったと思っています。基本的には静かなテンションで時間が流れていく映画ではあるんですけど、学校の廊下の奥にいる生徒たちの配置とかも、すごいこだわって実はやっていました。大体一連で撮るシーンが多かったんですけど、その一連の中でエキストラの方々と、板緑と市川の芝居と、ワンカットだからこその呼吸の合わせ方。そういうものが映像に収められていると思います。

マイルールを設けることでぶれない自分でいることができる

岩田剛典

――市川は失いかけていた実年齢の感覚を生徒によって取り戻していきますが、感情も含めて浮き沈みが激しい芸能界にいて、自分をどう律している、あるいはバランスを取っていますか。

 確かにこの芸能界というのは本当に浮き沈みの激しい世界ですし、いい時もあれば悪い時もあるという、不安定な世界だと思います。そうした中で僕が基準にしていることは、周りの評価などに囚われてしまうと、自分を見失うということが多々あるからです。いい評価をいただける時もあれば、決して良くない評価をいただくこともあって。でもそれが芸能界というところなので、だからこそ、自分の心の寄り所として、「マイルール」ですね、言ったら、「自分基準」みたいなところで物差しを一つ持っておくことが、自分のメンタルも安定する要因になっていると思います。何があってもぶれない自分でいることができるのかなと個人的には思っています。

――その「マイルール」、物差しとはどのようなものですか。

 基本的に「やりたいことだけをやればいい」という作業で成り立っている時間ってそんなに多くはないお仕事なんです。だからこそ、「本当はやりたくないけど、やりたいことをやるためにはやらなきゃいけない」ということも、ある程度許容しなければいけない。それがこの世界で生きていくということなんだな、というのを僕は理解してやってきたわけです。

 そんな中でマイルールというと、自分の感情が動いた瞬間のことは記憶していくということかなと個人的には思っています。なんとなくだけで携わるのではなくて、しっかりそこに自分の意思を持つ。最初の初期衝動、自分が本来何が好きなのか、何がやりたいのかという気持ちが、一番迷ったり、つまづいた時に立ち返ることができる。自分は何者なのか、ということです。だからその基準で「今、選ぶべき選択肢はどっちなのか」ということをよく自問自答しています。

――最近、心が動いた出来事はありましたか。

 韓国のバラエティ番組に出演させていただいているので、韓国に最近よく行っています。その番組はオーディション番組なんですけど、若い世代の人たちが夢を追いかけるというところで、一生懸命(自分の)人生にフォーカスして、そのオーディションに立ち向かっている姿にすごく心を打たれます。自分ももっともっと頑張らなきゃいけないな、という刺激をいただきました。

――映画『金髪』から受け取ってほしいメッセージはありますか。

 コメディなので、受け取ってほしいメッセージという感じのタイプの映画でもないのですが、社会に対しての皮肉だったり、社会風刺という意味では、すごく共感していただける内容になっています。共感していただけたら嬉しいです。

(おわり)

岩田剛典

スタイリスト:渡辺康裕
ヘアメイク:下川真矢(所属:BERYL)

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村上順一

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