INTERVIEW

佐野勇斗

自身初の誘拐犯役 役作りを捨てた“勇気ある決断”の裏側


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:25年10月22日

読了時間:約7分

 佐野勇斗が、日本テレビ系水曜ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(毎週水曜よる10時~11時)で桜田ひよりとW主演を務める。本作で佐野は、誘拐犯グループの一人、林田大介役を演じ、民放キー局GP帯連続ドラマに初主演となる。

 物語は、大企業社長令嬢・八神結以(桜田ひより)を誘拐するはずが、計画は失敗。人質のはずの令嬢に「私と一緒に逃げて!」と言われ、“人質と誘拐犯”という奇妙な二人の逃避行が始まる予測不能な逃亡劇だ。心震わすスリリングな展開のヒューマンサスペンス作品。

 インタビューでは、誘拐犯役を演じたことで感じたこと、W主演の桜田ひよりとの撮影エピソードに加え、朝ドラ『おむすび』など、近年多くの作品で重要な役どころを務める佐野に、いま感じる芝居への思いについて話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

破天荒な役”をやりたかった

佐野勇斗

――撮影中とのことですが、今の率直なお気持ちをお聞かせください。

 誘拐犯を演じるシリアスな役なので、皆さん現場の雰囲気はシリアスな感じなのかなというイメージを持たれるかもしれないのですが、アドリブがあったり、桜田さんともすごく良い関係性でお芝居させていただいているので、毎日現場に行くのがとても楽しみです。

 今まではオタクっぽい役や内向的な役が多かったので、初めて『誘拐犯』という演じたことがない役柄のオファーをいただいてとても嬉しかったです。僕自身、林田大介のような“ちょっと破天荒な役”をやりたかったのかもしれません。

――今回、民放キー局GP帯連ドラ初主演という形ですが、初主演というところに特別な思いはありますか?(GP帯はゴールデン・プライム帯の略で午後7時~11時の時間帯を指す)

 10年間俳優をやってきて、ゴールデン・プライムタイムで主演をやりたいと思っていました。決まった時はとても嬉しかったです。他の作品とやることは変わるわけではないのですが、責任感といいますか、数字はやっぱり意識していますし、プレッシャーはありますが、真正面から向き合っていきたいなと思います。

――佐野さんが演じられる林田大介はどういった役になりますか?

 シンプルな言葉で言えば、地元のヤンキーみたいな役です。今回の誘拐事件を起こす前に窃盗をしてしまったという過去があります。根はすごく優しくて人の気持ちがわかる男です。

――佐野さんが注目してほしいポイントは?

 今まで10年役者をやってきて初めて見せる僕の姿が多々あります。ビジュアル面では金髪でドラマに出るのもなかったですし、あまり表には出していない僕の顔が見られると思うので、そこはぜひ注目してほしいポイントです。

演じていて違和感がない林田は自分に近い

佐野勇斗

――今回演じる林田大介の荒っぽい口調など、佐野さんに今までにない角度からのセリフが新鮮でした。演じてみていかがですか?

 演じていて違和感がなくて、他の役(オタクの役など)よりもアドリブとかもスムーズに出てきました。大介はけっこう自分に近いかもしれないです。地元の名古屋はちょっと口調が荒い傾向があるので、言いやすいんですかね(笑)。

――アドリブは結構されているんですね。

 もちろん無駄なところではしないですが、脚本から「アドリブしていいよ」という余白を感じたら、入れるようにしています。基本は桜田さんとのやり取りの中で、喧嘩シーンでのアドリブが多いのですが、桜田さんも即座に返してくれるので、とてもやりやすいです。

――佐野さんにはアドリブが上手というイメージがあります。実際はいかがですか?

 実は僕アドリブが一番苦手です。その場での突発的なアドリブは本当に苦手なんですけど、今回はそれも意外とできた感覚があります。正直、完成した映像を見てみないとわからないですけど、やっていて楽しかったという意味では手応えはあります。

――桜田さんの演技がうまいとコメントされていましたが、それを感じた具体的な部分は?

 細かい感情の変化はもちろんですが、セリフという感じではなく、本当に(八神)結以が言っているように聞こえるんです。とても自然に落とし込んでいるところがすごいなと思いました。

――桜田さんのお芝居に引っ張られることはありますか?

 桜田さんのお芝居に引っ張られ、いつもよりセリフとかも言いやすいのかもしれないです。普段喋っている時に近い呼吸で芝居ができている感じがあります。

――桜田さんの合気道のシーンはいかがでしたか?

 かっこよかったです。運動神経がいいみたいで、合気道をやる人の姿勢になっていました。合気道の先生に「姿勢がいい方が合気道うまく見えるから」と言われて矯正した、と話していました。僕が投げ飛ばされるシーンがあるのですが、体を動かすのが好きなので、僕自身やっていてとても楽しかったです。

――演じる役に関して、何か気を付けた点や苦労された点はありますか?

 気をつけた点は、役を作りすぎないことです。本読みの時に何パターンか作っていったのですが、あまりハマらなくて、休憩中に桜田さんと喋っている感じが林田大介に近いと言われ、そのままでいいということになりました。役者側としては勇気ある決断ですが、キャラの設定を作るのをやめました。

――林田と結以が手錠で繋がれて移動するシーンなど、コンビネーションが試されるシーンもあったかと思いますが、大変でしたか?

 シンプルに自分の片方の手が使えないので、「引っ張っちゃったら桜田さんが痛いかな?」と思ったところもありましたし、逆に桜田さんも気を遣ってくれていました。お互いに大変なシーンでした。

――今回、結木滉星さんと共演されていますが、一緒にやってみていかがでしたか?

 改めて話すこととかは特にないんです(笑)。年齢的には滉星は少し先輩なのですが、人を包んでくれるような安心感があります。僕はあまり人に甘えられないんですけど、彼には甘えられるという本当に不思議な関係なんです。クランクインの時も滉星がいてくれたので、安心して臨めました。

――プライベートでも仲が良いのでしょうか。

 意外と僕らプライベートでは会ったことはないんです。連絡も取り合わなくて、今回も会ったのはおそらく1年ぶりとかなんですけど、僕の中ですごく仲がいいと感じていて。話さなくてもわかる関係値でもあったり、プライベートで仲のいい友達とは歴が全然違うはずなのに、同じくらいの感覚になれるという、本当に不思議な存在です。

芝居って自由にやっていいんだ

佐野勇斗

――今回、初めて誘拐犯役を演じられますが、役者としての楽しみ方や醍醐味に何か変化はありましたか?

 去年は「楽しい」って何なんだろう、と分からなくなるモードに入っていました。ドラマ作品、バラエティ、グループ活動と目まぐるしい日々を送る中で、10年もやっていると大体なんとなくわかっている状態と言いますか、時間がただただ流れていっている気がして、「楽しい」という感情が分からなくなった時期がありました。

――朝ドラ『おむすび』など多忙を極めてましたよね。

 ただ、今年は去年より気持ち的に余裕ができたのか、今回の作品の前に数ヶ月お芝居に少しだけ触れていない時期があり、このドラマをやって「すごく楽しいな」という感情が改めて芽生えました。余裕って大事だなと思いましたし、芝居って自由にやっていいんだ、という感覚を取り戻した感じはあります。今回の現場は学生時代の部活のような雰囲気があります。

――最後にドラマを楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

 僕はこのドラマから「誰もが幸せになっていいんだよ」というメッセージを受け取りました。皆さんに立ち向かう勇気を与えられたらいいなと思っています。ぜひ、逃げる2人がどうなっていくのか、楽しんで観ていただけたら嬉しいです。

(おわり)

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村上順一

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