INTERVIEW

吉田美月喜

あまりの頭脳ワークに「16時間睡眠」ドラマ『世界で一番早い春』で挑む複雑な時間軸


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:25年07月24日

読了時間:約8分

 俳優の吉田美月喜が、放送中のドラマ特区『世界で一番早い春』(MBSドラマ特区枠毎週木曜 深夜0時59分~)に出演。昨年は劇場アニメ『ルックバック』で声優に初挑戦、また、今年の1月にはドラマ『恋愛革命』でヒロインを務め、演技の幅を広げている吉田美月喜。そんな彼女が、川端志季氏の原作を実写化したドラマ『世界で一番早い春』で高校時代にタイムスリップする漫画家・晴田真帆を演じている。真帆はタイムスリップした高校時代で、後悔を胸に“先輩に作品を返す”ため、もう一度高校時代をやり直す。さらに、タイムスリップした世界で、先輩の死にまつわるある事実が発覚し…。インタビューでは、吉田が思う本作の見どころ、撮影中に印象的だったこと、そしてタイムスリップにちなんで、吉田の時間の使い方を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

役者として鍛えられる

吉田美月喜

――川端志季先生の作品は、もともと読まれていたとのことですが、今回のドラマに出演が決まったときの心境はいかがでしたか。

 川端先生の漫画を読んでいたこともあり、今回作品に関わらせていただけることを大変嬉しく思っています。漫画の世界観が本当に素敵で、タイムスリップ作品ですので、「どうやって実写でやるのだろう」と、とても楽しみにしていました。

――川端先生の作品の印象的なところはどこだと感じていますか。

 以前『宇宙を駆けるよだか』を読んでいて、キャラクターの絶望した時の目、死んだような目の描写がすごく印象に残っています。その「死んだ目」の描写については、漫画での表現の仕方とは違いますが、演じる時もできるだけ意識して表現してみたので、注目してもらえると嬉しいです。

――『世界で一番早い春』の原作を読まれてどんなことを感じましたか。

『世界で一番早い春』場面カット©︎川端志季/講談社 ©︎「世界で一番早い春」製作委員会・MBS

 まず登場するキャラクターが濃いなと感じました。登場人物のピュアさから、私の中でこの作品のイメージが「薄い水色と薄いピンク」なんです。それぞれが色々な行動を起こし、それに対して後悔をしたりするのですが、その後悔の深さみたいなものが、すごく見えてくる作品だと思いました。

 そして、タイムスリップ作品は難しそう、ややこしいと思われがちですが、漫画で読んでいる時はイラストや構成のおかげか、スッと頭に入ってきやすかったです。

――MBSドラマ特区にどのようなイメージをお持ちですか。

 ドラマ特区は登場人物が多くない、少数精鋭な印象と挑戦的な作品が多いイメージです。私が以前出演させていただいた『マイストロベリーフィルム』はドラマシャワー枠でしたが、またMBSさんの作品に参加できて嬉しいです。

――演じられる真帆は、吉田さんから見てどんな人物だと分析していますか。

 とても素直でまっすぐで、ポジティブなエネルギーを持っている子、元気をもらえるキャラクターだと感じています。だからこそ、雪嶋先輩に対して素直に行動し過ぎてしまって後悔する、というような一面もあります。

――役を演じる上で難しいと感じていたところ、大切にされているところはどこでしたか。

 難しかったところは、初めの雪嶋先輩とのシーンで、中身は26歳だけど高校生として接するので、どこまで大人の真帆を出すかというところです。ただ、真帆はとても素直な子なので、あまり大人っぽすぎるのも違うなと思いました。何周目でどれくらい大人としての経験値を出すか、またタイムスリップした周回によって雪嶋先輩への気持ちも募っていくので、それをどのように出すか、というのは監督と常に話し合いながら撮っていました。

――推理をする時のセリフも大変そうですね。

 そういったシーンは私と大倉空人くんの二人で進めていくことが多いのですが、撮影スケジュールを見て、二人のシーンが並んでいるとセリフの量で、その日の大変さが予想できます(笑)。大倉くんが台本6ページ分をほぼ一人で喋っているシーンはとても大変そうでした。タイトなスケジュールの中でも、休憩時間などにみんなでセリフ合わせをするなど協力しながら、楽しく撮影しています。

 そして撮影は順撮り(シナリオの冒頭から順番に撮影を進める方法)ではないので、いま何周目なのか分からなくなってしまうこともあります。スタッフさんが一覧表を作ってくださって、それが本当に助かっています。こういった複雑な作品は自分も深く考えて整理できていないと、視聴者に伝わらないので、役者として鍛えられる部分があり、今後の俳優活動にも生きる部分がたくさんあると感じています。

藤原樹が持つ空気感

吉田美月喜

――W主演の藤原樹さんの印象を教えてください。

 藤原さんは、とても優しくてふわっとした空気感を持っていらっしゃる方です。私は今回初めてお会いしたのですが、勝手にクールな方なのかな? と思っていたら、とても接しやすく、藤原さんの周りの空気がゆっくり進んでいるような、そんな感覚がありました。その空気感が、少し雪嶋先輩の持つマイペースな部分に通じるところがあるなと感じました。

――THE RAMPAGEでダンサーの藤原さんですが、それを感じる瞬間もありますか。

 私が見ているなかで、現場でダンスをしていることは全くないんです。私の経験上、ダンスや歌をやっている方は、休み時間などちょっとした合間に体を動かしていたり、歌っているのを見ることがあるのですが、藤原さんにはそれがなく意外でした。

――富田監督との現場でのやり取りはいかがでしたか。

『世界で一番早い春』場面カット©︎川端志季/講談社 ©︎「世界で一番早い春」製作委員会・MBS

 富田監督は、とても話しやすい空気感を作ってくださっています。本作のベースはミステリアスなサスペンス要素が色濃く入っていますが、コメディチックな描写もあって、だからこそコメディタッチにできるところを際立たせたいと考えていたようです。段取りの時から、私では思い浮かばないような動きを提案してくださり、それはとても勉強になっています。

――印象的だったリクエストは?

 印象的だったのは、今回の作品では真帆の言葉の強さ、明るい面をしっかり際立たせたいとのことでした。動きながら話すというよりは「話し終わってから動く」というリクエストがあり、それはやってみて面白いなと思い、新しい発見でした。

――今回の作品は、吉田さんの中でどんな立ち位置の作品になりそうだと感じていますか。

 何度もタイムスリップする役を演じる中で、こういった作品はできる時にやっておくべきだと感じました。真帆は雪嶋先輩が生きている間、再びタイムスリップが起きてしまう前に「これをやらなきゃ」と常に追われているキャラクターです。それが実行できなかったときは、後悔を強く感じます。「やらない後悔よりやる後悔」とよく言いますが、本当にそうだということを改めて感じさせてもらえている作品です。

吉田美月喜の時間の使い方

吉田美月喜

――タイムスリップ作品ですが、それにちなんで吉田さんご自身の「時間の使い方」について聞かせてください。

 休みの日は、整体に行った後にヨガに行って、その後キックボクシングに行くなど、スケジュールは割とぎっしり詰めてしまうタイプです。何もしない時間があまり好きじゃないといいますか、一人でのんびりするような時間を作るのがあまり得意じゃないんです。だから、ぼーっとする時間はあまりないかもしれません。

 たとえば「ドラマを観たい!」と思ったら、細かく時間を決めてしまいます。キックボクシングから帰ってシャワーを浴びて、何分間で顔を洗って、何時からドラマを観る、という感じです。夜寝る時も何時には寝たいから、お風呂は何分くらいと逆算して考えることもあります。

――ゴールが決まっているんですね。そうなるとお風呂もタイトな時間になってしまう。

 私は長風呂なので、1時間半から2時間くらい入って、そこはのんびりしています。汗をかいてすっきりしたくて(笑)。

――睡眠時間もきっちりとるタイプですか。

『世界で一番早い春』場面カット©︎川端志季/講談社 ©︎「世界で一番早い春」製作委員会・MBS

 ドラマの撮影中は忙しかったりするので、その時によって変わりますが、基本8時間は取りたいと思っています。ただこのドラマの撮影中はすごく頭を使っているのか、先日、撮休のとき16時間も寝てしまいました。一度も起きなかったので、自分でもびっくりしました。改めてそれくらい今回の作品は頭のエネルギーを使っているんだなと思いました。

――16時間は凄すぎます! 最後に本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

 この作品は何度もタイムスリップすることによって色々なことが複雑に絡まってきます。おそらく1回観ただけでは理解できない部分もあると思います。タイムスリップの細かいところも丁寧に描いているので、配信でも観ていただくことで、新たな発見や考察も生まれると思うので、ぜひ何度も観てもらえたら嬉しいです!

(おわり)

ヘアメイク:田中陽子
スタイリスト:有本 祐輔(7回の裏)

衣装:

ドレス
63,800円
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サンダル
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イヤリング
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KAORU / カオル(KAORU ルミネ有楽町店)
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