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上白石萌歌が、映画『パリピ孔明 THE MOVIE』(公開中)に出演。ドラマ版に引き続き、アマチュアシンガー月見英子を演じる。本作は累計発行部数250万部突破の漫画(講談社「ヤングマガジン」連載中)を実写化したテレビドラマ「パリピ孔明」の映画化。三国志の天才軍師・諸葛孔明(向井理)が、なぜか現代の渋谷に転生。アマチュアシンガー月見英子(上白石萌歌)の歌声に心奪われた孔明は、英子とともに音楽の力で“天下泰平”を目指す。『パリピ孔明 THE MOVIE』では、日本を代表する3大音楽レーベルが頂点を競う、史上最大の音楽バトルフェスが開幕し、孔明と英子の2人も参戦する。ライブシーンは実際のフェスさながらの迫力ある映像が見どころとなっている。インタビューでは、連続ドラマの映画化作品に出演するのは初めてだという上白石萌歌に、撮影で欠かせなかったアイテムや、幾田りら、詩羽、上白石の3人でコラボしたエンディングテーマ「Sing along!!!」について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)
完成した映像を観て驚いた
――完成した『パリピ孔明 THE MOVIE』を観て、どのように感じましたか?
これまでにない音楽映画が完成したなと思いました。私は試写室で椅子に座って観ていたのですが、ライブシーンでは思わず立ち上がって観ているような臨場感を味わいました。ドラマ版の時から映像と音にこだわっていましたが、映画館という最高の環境で『パリピ孔明』を観てもらえることがとても嬉しいです。何より、連続ドラマから映画化するのは私にとって初めての経験で、英子を再び演じることができて、本当に楽しかったです。
――完成した映像を観て、驚いたシーンはありましたか?
ライブシーンは、自分が思っていた以上に光の演出やカメラワークが素晴らしく、改めてチームの力を感じました。撮影当日はライブさながらの緊張感があり、正直細かい部分まで感じ取る余裕がなかったので、完成した映像を観た時に「こんなふうになっていたんだ」と驚きました。特に、自分が歌っている背中越しに観客が映るカットでは、「こんなに大勢の人の前で歌っていたんだ」とグッとくるものがありました。渋江監督の作品は、完成した映像を観て初めて気づくことも多く、とても新鮮な気持ちで映画を楽しめました。
――映画では新キャラクターも登場しましたが、特に印象に残ったキャラはいますか?
詩羽ちゃんが演じたshinはとても魅力的でした。shinとしての歌は普段とは違う力強い歌い方で、新しい一面を感じました。劇中ではギターの弾き語りシーンもあり、彼女の演技と歌の融合がとても素晴らしかったです。shinは英子のライバルとして登場しますが、私は以前から詩羽ちゃんのファンだったので、さらに好きになりました。
――この人の演技がすごい、表現がすごいと感じた方は?
それこそ詩羽ちゃんのお芝居が素敵だなと思いました。詩羽ちゃんは近年たくさんお芝居をされていますが、「なぜ私は彼女みたいなお芝居ができないんだろう」とすごく落ち込んだことがありました。詩羽ちゃんはおそらくお芝居だと思ってやっていないといいますか、きっと水曜日のカンパネラの時も、曲のタイトルが「金剛力士像」や「エジソン」など人の名前が多いので、演じながら歌ってきた人なんだと思いました。お芝居の経験の長さなどは全く関係なくて、その人がそこで何を生み出せるかに尽きるんだなって。すごく刺激になりましたし、この作品を観て本当に素晴らしいなと感じて、とても尊敬しています。
英子らしい歌声を表現できていたら嬉しい
――今回のように役を通して歌うことと、ご自身の作品として歌うことに違いはありますか。
はい。英子の曲はアレンジも曲調もadieuとはまったく異なります。adieuは内省的で心の日記のような楽曲、自分のじめっとした部分を表現することが多いです。一方で、英子は基本的に朗らかな女の子なので、普段の自分の声よりも少しブライトなトーンになるように意識して歌いました。
今回の映画で、Saucy Dogの石原さんからいただいた「Count on me」を聴いたとき、どの部分もサビのような構成で、「これは普段の自分の歌い方では歌いこなせないかもしれない」と思いました。そこで、信頼しているボイストレーナーの方のところに通い、叫ぶように響かせる歌い方を模索しました。英子らしい歌声を表現できていたら嬉しいです。
――エンディングでは、上白石さん、詩羽さん、幾田りらさんの3人でコラボされています。
連続ドラマのときに、自分が英子という人物をイメージしたとき、「リアルだったらどんな人だろう?」と考えたんです。そのとき、真っ先に浮かんだのが詩羽ちゃんと幾田りらちゃんでした。まさかその3人でエンディングを歌わせていただけるとは思ってもいなかったので、ご縁を感じました。
――エンドロールでは、楽しそうなビハインドシーンもありました。
本当に楽しくて、その雰囲気がそのまま映っていると思いました。あの日、3人で会うのは初めてだったのですが、話が尽きなくて。「いつも歌う前に何してるの?」「お休みの日は何してる?」といった話をしていました。同世代で、すごく尊敬する2人なので、ご一緒できて本当に嬉しかったです。
――その後も交流は続いていますか。
はい。1回、3人でカラオケに行きました。詩羽ちゃんが「エジソン」を歌ってくれたり、幾田りらちゃんは「アイドル」を歌ってくれたりして、もうライブ会場が何個あっても足りない!みたいな(笑)。お客さん気分で楽しませてもらいました。
――上白石さんはカラオケで何を歌われました?
2人がadieuの曲を好きだと言ってくれたので、その中から何曲か歌いました。また、お互いに「この曲を歌ってほしい!」とリクエストし合いながら歌うというのもやっていました。
――その3人でコラボされたエンディングテーマ「Sing along!!!」の注目ポイントを教えてください。
今回も、連続ドラマに続いて幾田りらちゃんが楽曲を書いてくれました。私は、誰かと一緒に歌う機会はあまりなかったのですが、今回は3人でフィーチャリングのような形で歌わせてもらいました。おそらく、幾田りらちゃんはそれぞれの声の個性や歌詞のニュアンスなどすごく研究してくれたと感じました。
たとえば、詩羽ちゃんはラップから始まるパートがあるのですが、幾田りらちゃんはYOASOBIでラップを歌っていますが、自分でラップを書いたのは今回が初めてだったそうです。実際に歌ってみて、みんなの声の魅力を最大限に引き出してくれた曲だと感じました。しかも、レコーディング当日に完成した楽曲で、幾田りらちゃんが多忙の中、全力で作ってくれたこともあり、3人で噛み締めながら歌ったのを覚えています。
――歌いやすかったですか?
はい。でも、りらちゃんの作る曲はかなり難しいんです(笑)。「DREAMER」もそうでしたが、かなり高いハードルを用意してくれるんです。ただ、私の声の良さを理解したうえで作ってくださったので、挑戦しつつも楽しく歌うことができました。
――注目ポイントはそれぞれの声の個性ですね。
詩羽ちゃんが、「私たち、画材が全然違うよね。クレヨンと水彩画と絵の具みたいな感じ」と表現していたのですが、本当にその通りだなと思いました。
本を読んで気持ちをフラットにする
――映画の撮影は大変だったと思いますが、撮影を乗り切るために欠かせなかったアイテムはありますか?
はい。今日も持ってきているのですが本です。本を読むのが大好きで、1冊は必ず現場に持って行っています。緊張感のあるシーンの撮影のときはあまり読まないのですが、移動中に読んで気持ちをフラットにすることが多いです。リラックスにもなりますし、俳優という仕事は脚本などの活字を読み、それを想像して演じるものなので、本を読むことで発想の幅が広がると感じています。その本の主人公っぽく振る舞ってみたり、一つ思考をもらえる感覚があるので、本を読むことは私にとって、とても大切な時間になっています。
――役作りにあたって、本がどのように役に立つことはありますか?
台本を読んで、自分なりに想像を膨らませながら人物像を作り上げていくので、人や場所をイメージする力が養われる気がします。今読んでいる作品も、登場人物の感情表現が鋭く、心に突き刺さる表現が多いんです。そういった作品に触れることで、自分もセリフを通して人の心に刺さる表現ができるようになりたいです。
――孔明役の向井さんとのお付き合いも長くなったと思いますが、今作ではいかがでしたか?
連ドラも経て映画も撮るとなると、一緒にいることがとても自然になってきて、私も話したいことをたくさん言えるようになりましたし、向井さんも撮影前に話し合う機会を設けてくださったり、より良い関係性になれた気がしています。
――向井さんと印象的だった出来事はありますか。
印象的だったのは2日間有明ガーデンを借りて撮影したライブシーンでのことです。リハの日に向井さんが来られたのですが、その日の向井さんはリハもなく、ご自身の出演もないのに、わざわざ会場まで来てくださったんです。私がリハで歌っている姿をスマホで撮影してくださって、「こんなふうに映っていたよ」とか「この表情、寄りで撮られていたよ」など、音の感じも含めて教えてくださいました。その時、本当に軍師だなと確信しました。
――撮影していない時でも孔明だったんですね。
次の日の本番も、向井さん演じる孔明とお客さんに全力で届けようという気持ちが芽生えたので、とても感謝しています。また、クランクアップの日も、私だけのアップだったのですが、向井さんは遠くの現場まで来てくださって、お祝いをしてくれました。改めてとても愛のある方だなと思いました。
心に響いた土屋太鳳の言葉
――さて、音楽は記憶との結びつきが強いと感じています。上白石さんがこの曲を聴くと当時のことを思い出すという曲はありますか?
今パッと浮かんだのは、H Jungle with tさんの「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」です。とても大好きな曲で、体力的にしんどい時や、もう限界だと感じた時によく聴いています。歌詞も曲調も素晴らしいですし、何より浜田さんの歌い方がとても胸に染みます。
――どんなきっかけでこの曲を聴くようになったのでしょうか?
一番この曲を聴いていたのが、2年前のドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS)の撮影でした。その撮影がかなり過酷で、何日も山奥で撮影をしていて、スケジュールも厳しく、移動中にしか寝られなかったり、トイレにも簡単に行けないような現場でした。「WOW WAR TONIGHT」を聴いて踏ん張って撮影していたので、この曲を聴くと当時を思い出しますし、「あの撮影を乗り越えられた自分がいるんだから頑張ろう!」と思えるので、今でも大好きな曲です。
――最後に、弱い自分を乗り越えていく秘訣は?
緊張や不安との戦いは年々自分の課題になっています。年々緊張しやすくなっている気がしていて、何も知らない10代の頃の方が思い切ってやれていたような気もします。セリフを言うたびに心臓がドキドキ鳴ってしまったり、カメラも何もかも怖いと感じる時もあります。でも、そういう時は、いろんな人にいまの気持ちを話して、緊張を緩和させたりしています。
――人に話すことでちょっと楽になりますよね。
はい。以前、土屋太鳳さんがMCをされていた音楽番組に出演させていただいた時、生放送だったこともあり、「すごく緊張しています」と初対面の太鳳さんに話したら、「緊張している時の人の目ってすごくキラキラするんだよ」とおっしゃっていて、その言葉を思い出しながらやるようにしています。また、緊張するということは、それだけ責任があるということなんだろうなと年々感じています。“緊張するっていいこと”と開き直るようにしていて、悪いことばかりではないと緊張を楽しんでいます。
(おわり)
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