INTERVIEW

二宮和也

「親子への向き合い方、考えさせられた」子ども向け映画で見つけた新たな気づき:『シナぷしゅTHE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』


記者:村上順一

写真:コウ ユウシエン

掲載:25年04月20日

読了時間:約8分

 二宮和也が、毎週月~金曜あさ7時30分放送中の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』(テレ東系)の映画第2弾となる『シナぷしゅTHE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』に出演。陽気なタクシードライバー「ぱるてぃ」の声を担当する。

 本作は、パペット・アニメ・CG・粘土など各クリエイターによる質感の異なる映像で、赤ちゃんから楽しめるストーリーパート約40分と写真撮影タイムで構成している。今回の物語は、バカンス中の主人公「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、あるアクシデントをきっかけに新キャラクター「ぱるてぃ」とともに南の島「どんぐりアイランド」を大冒険するオリジナルストーリー。

 また、本作の主題歌「VIBEしゅ」は歌手活動だけでなく新時代を切りひらく女性として、そして私生活では子育てをする親として幅広い世代から支持されているシンガーソングライターのMINMIが担当した。

 インタビューでは、アニメ映画『鉄コン筋クリート』(2006年公開)以来の声の出演に挑戦した二宮に、子ども向け作品に対する姿勢や、主題歌「VIBEしゅ」を聴いて感じたこと、自身の幼少期の思い出について話を聞いた。(取材=村上順一)

どんな感動や喜びワクワクを与えられるのか一つの挑戦だった

二宮和也(撮影=コウ ユウシエン)

――約20年ぶりとなる声の出演でしたが、赤ちゃん向けの作品ということで、過去に参加された作品との収録の違いはありましたか。

 手法としてはそこまで変わりはないと思います。ただ、映像が全て出来上がっていたのは大きな違いでした。以前は絵コンテの状態で、バリエーションとして2パターンとか3パターン録ることもありました。今回はほぼそういうのはなく完全に出来上がった状態で声を入れたので、色味だったり音だったり、動きだったりというものを共有しながらできるというのはすごく助かりました。

――オファーを引き受けた決め手は?

 家族というものの中の一つのエンタメとして、そこまで言葉を喋らずストーリーが展開していく中で、どんな感動や喜び、ワクワクを与えられるのか一つの挑戦だなと思ったので、それがお引き受けした理由の一つです。また、本作は普通の映画から見れば特殊なので、現場も見てみたくて、とても興味がありました。

――ぱるてぃを演じるにあたり意識していたことは?

 ぱるてぃのキャラクターとか、物語の立ち位置も含めてなのですが、僕は明るい方がいいなと考えていたので、現場で監督と話し合いながら進めていました。玉木宏くんはとても声が低いんです(笑)玉木くんとの対比としてはわかりやすい方がいいだろうし、ぷしゅぷしゅの声のキーも僕らのちょうど真ん中くらいで、ぷしゅぷしゅの冒険活劇なんだというのをわかってもらうためにも、声の高低の住み分けがあった方がアドベンチャー感が出ると感じていました。また、僕は割とせっかちなので、早口になりがちなのですが、わざとらしくならないように抑えること。子どもたちがメインで観る作品なので、物語の展開やスピード感に気を配り、押し付けがましくならないように意識しました。

――完成した作品を観て感じたことは?

 たとえば僕が本作のような40分間の作品を作るとなったら、割とスピード感を持っていろんな情報や展開を詰めていかなければ、と考えると思います。本作は見事にその逆でゆったりと進んでいくのですが、これぐらいのスピード感じゃないと子どもたちは観ていても「楽しかったな」と感じることがまだできないのかもしれない。0歳からの子どもが楽しめるよう、制作の方々がしっかり分析しているのだと感じました。

 僕ら嵐のコンサートでは親子席というものを多く設けていたグループの一つだったと思います。親子席では立つのも座るのも自由、もし子供が泣いてしまったら会場から出ても大丈夫、といったルールを設けながらやっていたので、親子へのアプローチの方法というのは、割とわかっていたつもりではあったのですが、それは、自分たちの環境下でのルールなだけであって、映画というエンタメに置いたとき、親子への向き合い方に関する価値観というものは、今回改めて考えさせられました。

――ぱるてぃの見た目はいかがですか。

©SPMOVIE2025

 ぱるてぃにはグリーンのタグがついていて、それがとてもお気に入りなんです。細かいところも凝っているなと思いましたし、ぱるてぃへの愛情がこういうところにも表れていて、制作やデザイナーさんの愛を感じました。

――玉木宏さんが前作に引き続き、タオルのようせい・にゅうの声を担当します。二宮さんから見た玉木さんはどんな方ですか。

 気づいたら隣にいる人です。とにかく安心感がすごくあります。今回もこういった取材で「本当に毎回よく会うよね」という話をしていました。度量が広く、何でも受け止めてくれる方なので、安心して演じられました。明確な理由はないのですが、何があっても大丈夫だろうなと思っていました。玉木くんとは共演回数も多いですが、まさかこの作品で一緒に共演するとは思ってもいなかったので笑ってしまいました。

――MINMIさんが歌う主題歌「VIBEしゅ」を聴いていかがでした?

 改めて座組を見ると、ちょっと不思議な組み合わせですよね(笑)。玉木宏、MINMI、二宮和也というちょっと変わった3人に関連してくるもので言うと、無償の愛情で集まれる強さみたいなものをすごく感じました。楽曲にはMINMIさんらしさがしっかりあり、小さな子どもたちにも自然と響く楽曲になっていて、そうではないパーソナルな動きもあるのかなと思うと、聴いていてとても感動できる曲でした。

――短い言葉、セリフに挑戦されていかがでした?

 監督や制作の方に「大丈夫ですよ」と言ってもらいながら展開していけるというのはモチベーションを下げずに、自信を持っていいんだなと進めていけたので、すごくありがたかったです。こねくり回して何回もやってみようとなることもなく、素直にやったアプローチで進めていけたので、とても気持ちが良かったです。

 僕はどちらかというと台本とかに書かれていることを一度疑って、「本当にこれで大丈夫か?」というのを現場で模索し、他にない表現方法を狙っていくタイプなのですが、今回は多面的にやるより、ちゃんとわかってもらうために表現していく。自分が実写ドラマや映画に出るときよりも、素直な表現を意識していました。変わったことをして、子どもたちがポカンとしてしまったら、それは僕にとっても楽しくないですから。

――新しい表現の扉を開けたような感覚も?

 はい。今回のような素直な表現を堂々とやるというのは、ある種この年代になってくると怖いことの一つでもあるので、それがぱるてぃという媒介を通してできるというのはすごくありがたい機会でした。

幼少期の思い出

二宮和也(撮影=コウ ユウシエン)

――自身が幼い頃のエピソードはありますか。

 親戚はほとんど女の子だったので、「おままごと」や「あやとり」などで遊ぶことが多かったです。祖父が工場をやっていたので、ようやく代継ができたということですごく喜んでくれて、僕のことをとてもかわいがってくれました。当時はなんでも聞いてもらえたから、ちょっと性格が悪かったと思います(笑)。

――具体的には?

 僕が野球をやりたいというと道具を揃えてくれたり。ただ僕は左利きだったので右利きに直すことは徹底されました。祖父の工場を継ぐ教育のようなものが始まったのは小さい頃からで、大きな定規がついてる机に向かって図面を書くときに、左利きだと図面を隠しながら書くことになるので…。厳しかったのはそれぐらいでした。

――二宮さんが初めて訪れた映画館での思い出はありますか。

 僕が小さい頃の映画館って、今の映画館とは違っていたと感じています。映画館は満席で、席と席の間の階段に座って観たりとか、席を取るのも大変だった記憶があります。おそらく僕は夏のアニメ映画2本立ての作品を観たのが最初だと思うのですが、子どもはアニメが好きで観ていて、付き添いの大人は涼しいから寝てるみたいな(笑)、それはそれで楽しかったです。

――最後に作品の見どころ、映画館で観ることへの体験の魅力について教えてください

 いろんな受け取り方、家族の形があるので一概には言えませんが、「映画館でこの映画を観た」という成功体験は非常に大きいと感じています。もう1回観に行きたいと言う子もいれば、旅行に行ってみたいと思う子も出てくると思っていて。例えば、子どもたちが旅行に行きたいとなったら、旅行に行くには飛行機に乗るんだとか、いろいろな会話ができるいいきっかけになるんじゃないかと思います。僕は今回この作品を演じる前、ぷしゅぷしゅが旅行に行っていろんな展開があって、それが一つの冒険になっている単純なストーリーなのかな、と勝手ながら思っていたのですが、一歩引いて観てみると、能動的に物事を起こすきっかけとなる可能性を秘めていて、映画を観れば子どもが次のステップにいけるみたいな作りになっているな、と思いました。

(おわり)

『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺ ダンシングPARTY』ポスター©SPMOVIE2025

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コウ ユウシエン

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