INTERVIEW

STU48

「今の私たちと重なる」新曲から感じたメッセージ


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:25年01月15日

読了時間:約12分

 秋元康プロデュースによる国内6番目のAKB48グループとして2017年3月に誕生したSTU48が15日、通算11枚目となるシングル「地平線を見ているか?」をリリース。3期生の曽川咲葵が初選抜で初センターに大抜てき。表題曲は昭和歌謡調の楽曲にのせて、夢を追いかける“僕”の挫折や葛藤を描いている。インタビューでは、石田千穂、曽川咲葵、中村舞に「地平線を見ているか?」を聴いて感じたメッセージや、昨年の活動をそれぞれに振り返ってもらった。【取材・撮影=村上順一】

インパクトを与えられるように頑張りたい

――初の選抜、初センターとのことでプレッシャーもあると思いますが、改めて今どんな気持ちですか。

曽川咲葵 プレッシャーを一番感じたのは、私宛にセンターについてのお手紙をいただいたときでした。私には無理、でも頑張ろうなどいろいろな葛藤を経て、今はひたすら頑張るしかない、といった気持ちです。

曽川咲葵

――お二人はどんな気持ちでいま曽川さんのことを見守っていますか。

石田千穂 安心して見守っています。とてもしっかりしていますし、考え方も素敵だなと思う部分がたくさんあります。初選抜で初センター、初めてのことがいっぱいで、これからいろいろ経験すると思うので、みんなで支えていけたらなと思っています。

――考え方も素敵とのことですが、どんなところにそれを感じましたか。

石田千穂 こういった取材などを通して「かっこいい先輩になりたい」と言っていたり、グループ愛も強いところです。自分がグループをより良くしていきたい、といった気持ちを言葉から感じることがあります。私はこういう子が後輩から生まれたことが嬉しくて。後輩から率先して良くしていきたい、コンサート盛り上げたいと言ってくれているのがとても嬉しいです。

中村舞 センター発表の配信があったのですが、その時に「責任を持って頑張りたい」と話していて、その「責任」というワードが心に刺さりました。センターをやり遂げようとしている決意が伝わってきました。私たちはそれにしっかりついていきたいなと思いますし、何か悩みなどあったらすぐ助けたいですし、そんな関係でありたいです。

――曽川さんはお2人のどんな姿を見習っていきたいですか。

曽川咲葵 大先輩なので、一緒にいるだけでも吸収することがたくさんあります。センターを経験されてきた先輩方なのでたくさんお聞きしたいです。

――いま聞いてもいいと思いますよ。

曽川咲葵 いま一番心配しているのは初披露のことです。お2人が初パフォーマンス、初お披露目の時はどんな気持ちだったのかお聞きしたいです。

石田千穂 私がセンターを務めた「独り言で語るくらいなら」の時は選抜発表も日本武道館で、曲も発表のあとすぐ初披露という流れでした。ファンの方もびっくりした状態のまますぐ曲が始まって、そこにいる全員がびっくりした状態で、私もその勢いでパフォーマンスしたのを覚えています。

中村舞 私、そのときのことはよく覚えてます。千穂ちゃんにスポットライトが当たって、音楽が鳴り始めるといった演出で、本当にかっこよかったです。

石田千穂 あれが人生のピークだったんじゃないかと思えるような出来事でした(笑)。パフォーマンス初披露のときは緊張すると思うのですが、お客さんが誰もいないと思ってやると、個人的にはそれが一番パフォーマンスに集中できるのでおすすめです。

石田千穂

中村舞 初披露のときは振りなど間違ってしまわないか不安で、ドキドキしていたのですが、その曲を初めて披露する時は、まだお客さんが振りを知らないため、その場で披露したものが正解になります。もし、振り付けが飛んでしまったとしても、センターだから堂々とパフォーマンスするのがいいと思います。もしかしたらあとで怒られるかもしれないけど(笑)。

曽川咲葵 参考になります(笑)。初披露の時にみんなから「すごい!」と思ってもらいたいので、インパクトを与えられるように頑張りたいです。

夢を追いかけている今の私たちと重なる「地平線を見ているか?」

――11枚目のシングルのタイトルは 「地平線を見ているか?」。私の中でSTU48は水平線のイメージなのですが、意外なタイトルの曲が来ました。

石田千穂 ステップアップを感じ、STU48が新たなステージに立ったんだと思っています。STU48の場合、ちょっと暗めの曲が続いたら、次は明るい曲が来るので、予想として次は明るい曲かなと思っていたら、まさかの初めての曲調、歌謡曲テイストだったのでびっくりしました。これを“さっちー”(曽川咲葵の愛称)がセンターでパフォーマンスするところを想像したらとてもワクワクしました。

中村舞 取材でシングルを出すたびに「今までにない感じの曲です」とよく言っていたのですが、今まで以上にSTU48の中で新しい感じの曲だと思いました。昭和歌謡テイストの楽曲をアイドルが歌うことは珍しく、とても新鮮に感じました。覚えやすいメロディーなので、幅広い世代に愛してもらえる楽曲になればいいなと思っています。

――曽川さんはこの曲を聴いたとき、どんなことを思いましたか。

曽川咲葵 ドキドキしながら聴いたのですが、すごく心に刺さりましたし、感情の込めやすい曲だと思いました。感情を表現しやすい瞬間がたくさんあってお気に入りの曲になりました。

――プライベートで歌謡曲は聴かれますか。

曽川咲葵 そんなに多くはないのですが聴きます! 澤田知可子さんの「会いたい」が好きです。乃木坂46さんが昭和の曲を歌っている番組があって、そこで中西アルノさんが歌っているのを聴いて好きになりました。

――そうだったんですね。さて、「地平線を見ているか?」の歌詞から感じたことは?

曽川咲葵 歌詞を読んですぐ情景が思い浮かぶ歌詞だなと思いました。1番と2番、ラストのサビまでストーリーがしっかりとあって分かりやすく浸れる曲だと感じました。

――<人は誰もみな 挫折しながら 当たり前のように大人になる>という歌詞がありますが、これまでに挫折を感じたことはありましたか。

曽川咲葵 私、めちゃくちゃポジティブなんです。挫折はあったのかもしれないのですが、挫折だと思っていない気がします。それがいいのかはわからないのですが、嫌なことはけっこう忘れるタイプなんです。

――石田さんは挫折を味わったことは?

石田千穂 休養した時が圧倒的人生ナンバーワンのBADな時期でした。2〜3ヶ月ほど休んでいたのですが、その期間はいろんなことを考えました。アイドルになってから挫折も喜びも一通りいろんなことを経験しました。私は選抜外から始まって様々なポジションをさせていただいたから、この歌詞のように大人になれたなと思います。なので、さっちーが挫折しそうになったら相談してほしいです。

曽川咲葵 はい!

――相談に乗ってくださる方がいて良かったですね。中村さんはいかがですか。

中村舞 挫折はあると思うんですけど、私もさっちーと同じく挫折だと思わないようにしている節があります。それは選択だと思っていて、くじけて心が折れるというよりは自分が選んだ方法で、その選択があったから、今の自分があると思っていて、挫折は悪いことじゃないと思っています。

――秋元先生がこのタイトルや歌詞に込めた、STU48への期待はどのようなものだと思いますか。

石田千穂 曲調は初めての感じでしたが、私はSTU48っぽい曲だなと思いました。昭和歌謡が今、海外で流行っていると思うので、海外にも向けた部分があるのかなと思いましたし、私は海外の方々にもぜひ聴いていただきたいと思いました。

中村舞 <窓の向こうには高層ビルと>であるので、高層ビルという描写は都会に出てきたということだと思っていて、水平線は見えていない。それが夢を追いかけている今の私たちと重なって、秋元先生からの“頑張れ”というメッセージなのかなととらえました。

石田千穂 すごくしっくりきた!

――曽川さんは自分と重なる部分はありましたか。

曽川咲葵 <こんな遠くまで夢を追いかけて 弱音を吐くなんて悔しいけれど>という歌詞がお気に入りです。私は山口から広島に引っ越してきて、ホームシックになってしまったんです。それは最初の頃で今は大丈夫なんですけど、山口から夢を追いかけて出てきたけど、そこには母もいなくて、私にはできないと思った瞬間があったので、この歌詞がとても自分と重なりました。

――どのくらいの期間ホームシックだったんですか。

曽川咲葵 広島に来たその夜から2週間くらいホームシックになっていました。お披露目イベントのレッスン期間が一番ひどくて、それを知った母が一度広島まで来てくれて、一緒に山口に帰りました。もう一度頑張ろうとそこで気持ちを切り替えて自炊をして親子丼を作ったら、ホームシックを乗り越えることができました。

中村舞 親子丼というのがいいね!

曽川咲葵 作るのが比較的シンプルな親子丼を作り、自分にもできるんだと自信を持つことができました。

――お二人はホームシックの経験は?

石田千穂 一人暮らしをしたり、舞台の仕事で1〜2ヶ月ほどホテル暮らしをすることもありますが、ホームシックは全くならないです(笑)。

中村舞 私もホームシックを全く感じませんでした。高校を卒業して次の日に愛媛から広島に来ました。私は明るい未来と希望しか見えてなかったので、後々親に言われたことがあって、あの時は「目が輝きすぎて、家族と離れることが全然寂しそうじゃなくて悲しかった」と言われて、ちょっとは名残惜しそうにして欲しかったみたいです(笑)。

中村舞

“アイドル×和”が新鮮なミュージックビデオ

――MV(ミュージックビデオ)撮影で印象に残っていることはありますか。

曽川咲葵 昭和の雰囲気がある場所で撮影しました。私は特にダンスシーンが好きで周りに松があって、衣装は茶色系の落ち着いた感じなのですが、それが松の緑と色味がマッチしていてとてもいいなと思いました。

中村舞 他にも長い廊下や障子など和を感じさせる空間で撮ったので、“アイドル×和”というのが新鮮な感じがしました。とてもいいなと思いました。

――撮影はスムーズに終りましたか?

石田千穂 個人的には過去一スムーズな撮影だったなと思いました。前回「愛の重さ」のMV撮影が過去一を更新したんですけど、今回はさらに更新しました。すぐ素敵なカットが撮れたのでスムーズに進んでいきました。ただ、さっちーはソロシーンもあったから大変だったかもしれないのですが。

曽川咲葵 ソロで撮影したシーンもとても楽しく、あっという間に終わったという印象です。

――石田さんは印象的だった出来事は?

石田千穂 倉敷で撮影したんですけど、有名なデニムのお店があって、お店の“看板猫ちゃん”と“看板おじさん”と仲良くなりました。いっぱいお話しをして、猫ちゃんともいっぱい写真を撮って戯れて、本当にここで撮影ができて良かったなと思いました。

それぞれの2024年

STU48

――2024年を振り返るとそれぞれどんな1年になりましたか。

曽川咲葵 同期への愛がとても深まった1年でした。

石田千穂 ステキ!

曽川咲葵 もともと仲は良かったのですが、お仕事など真面目な話をより具体的にできるようになりました。去年は同期がたくさん卒業してしまったのですが、今いるみんなと一緒にがんばりたいと強く思いました。卒業してしまった子たちがいて、その切なさや悲しさを感じてしまったからこそ、これ以上いなくならないでほしいと願っています。

――センターに決まって、卒業されてしまった人たちから連絡が来たりも?

曽川咲葵 はい。「すごいね」と言ってくれて嬉しかったです。本当に同期への愛が深まった1年でした。

――石田さんは2024年を振り返ってみていかがですか。

石田千穂 私もさっちーと同じようなところもあるのですが、同期などたくさんのメンバー卒業が重なった1年だったので、目まぐるしく人が変わっていき、同期も10人近く減ってしまったので、自分がしっかりしなければという思いが強くなりました。1stシングル「暗闇」から選抜に選んでいただいて、その時から残っているメンバーも福ちゃん(福田朱里)と私だけになってしまいました。その頃の良さを伝えていけるのは私たち1期生だから、そういったものを伝えていける人になりたいと思った1年でした。

――特に後輩たちに伝えていきたいことは?

石田千穂 当時のスタッフさんにビシバシ育てていただいて、1期生は挨拶がしっかりしていると自負しているので、挨拶の大切さは特に伝えていきたいです。背中で語っていけたらなと思います。

――そんなに厳しかったんですか?

中村舞 とても厳しかったです。

石田千穂 一般的な挨拶からマナー、リハへの姿勢とか全てにおいてしっかり教わったので、とても大事な期間だったなと思います。

――中村さんは2024年を振り返るといかがですか。

中村舞 私がSTU48に入って7年目だったのですが、一番と言っていいくらいいろいろなこと経験させていただいた1年でした。冬から春にかけては卒業コンサートが多かったので、メンバーが減ってしまうことに大丈夫かなという不安もあったのですが、春にアルバム『懐かしい明日』をリリースして、アルバムリード曲「愛の重さ」で初めて1人でセンターを任せてもらったことや、夢だった1st写真集『嫌いの反対』を出せたのも自分の中で大きな出来事で、バレエミュージカル『Giselle in Haunted book store』にも挑戦して、何年分も詰まったような1年間を過ごしたなと思っています。喜びや楽しかったことはもちろん怒って泣いて、喜怒哀楽もあった1年でした。

――どんな時に怒りを感じるんですか。

中村舞 自分に対してはもちろん、この世に対してもあります。しょうもないこともいっぱいあるのですが、そういうのも受け入れながら一人でプンプンしたりしていました(笑)。マイナスなことも含めて、それも全部人生だと思うようにしています。

――石田さんは自分に対して怒ったりしますか。

石田千穂 私はお腹がすいたら、ちょっと機嫌が悪くなります。STU48のご飯担当をやらせてもらっているので、食事にはうるさいです(笑)。

――ご飯担当なんですね! 曽川さんはSTU48のなかで担当はありますか。

曽川咲葵 この前、アンケートでボブ(ヘア)担当って書いたのでそれかな? 他にはギターも弾けるので、ギター弾き語り担当もいけたらいいなと思います。

――ギターの弾き語りいいですね! ライブでも期待しています。

石田千穂 あと、さっちーは横から見る鼻の形がとても綺麗なので、“鼻担当”で!

(おわり)

STU48 11thシングル『地平線を見ているか?』
発売日:2025年1月15日発売
CD:https://lnk.to/stu48_11th_tokuten
配信:https://lnk.to/TnT4bm2p

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