pachae「可愛い」と「超絶技巧」が交差 新曲「アイノリユニオン」制作秘話&ライブへのこだわり
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「可愛い」と「超絶技巧」が交差 新曲「アイノリユニオン」制作秘話&ライブへのこだわり


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:24年11月04日

読了時間:約12分

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 癖のあるアレンジと超絶技巧の演奏テクニックで裏付けされた、大阪発のバンドpachae(読み:ぱちぇ)が、10月7日に4th digital Single「アイノリユニオン」を配信リリースした。1st Digital Single「チョウチンカップル」、2ndDigital Single「非友達」、3rd Digital Single「ダンシング・エモーション」に続く新曲は、pachae初となるタイアップソング。発行部数300万部以上を記録している漫画が原作で、2022年にドラマ化もされた『妻、小学生になる。』のTVアニメ版のオープニング主題歌として書き下ろされた。2020年に行われた『murffin discsオーディション』の準グランプリアーティストである「pachae」。大阪で活動中の3人組のポップスバンドである彼らは、ボーカル&ギターを担当するコンポーザーの音山大亮がDTMで作り上げた一癖二癖ある楽曲を、超絶技巧的演奏テクニックを持つギターのバンバとキーボードのさなえによって緻密に構成されたバンドアンサンブルを展開。“ハイブリッド・シティーポップ”サウンドでリスナーを魅了している。インタビューでは3人にバンドの強みから、新曲「アイノリユニオン」の制作エピソード、ライブで大切にしていることについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

「パ」の次に来るかわいい響きが「チェ」

――バンド名、覚えやすくていいですね!

音山大亮 ありがとうございます。ぱ行の「ぱ」を使いたくて、僕の中で「ぱ」の次に来るかわいい響きが「ちぇ」しかなかったんです。

音山大亮

――ということはバンド名は音山さんが決められて。バンド名を初めて聞いたときの感想は?

バンバ うろ覚えですけど、僕らが集まったときにはpachaeで、とにかく長いバンド名じゃなくて良かったと思ったのを覚えています。

音山大亮 可愛さを売りにして行きたかったし、僕の中でバンドは可愛いによって作られるみたいなところもあります。

――ドラムとベースが以前在籍していたと思うのですが、3 ピース編成にこだわりも?

音山大亮 メンバーが抜けただけなので、こだわりはないです。ただ、pachaeはギターとキーボードと上物が目立っているバンドだから、その上物だけが残ったというのは、もしかしたら何かあるのかなと思っています。昔はボカロっぽい曲も多かったですし、楽器を聴かせるといった面では、リスナーもベースがどんな音なのか知らない人だっているかもしれないし、目立っているギターやピアノは耳に入ってきやすいかもしれないです。特にpachaeはそれが目立っている曲が多かったから、上物が残ったんだと思っています。

――ドラムとベースは打ち込みなんですか?

バンバ 今は素晴らしいサポートメンバーの方に演奏していただいています。

音山大亮 最初の方に出した「タイムマシン独奏曲」と「エゴイスティック・レスキュー」という曲は僕が打ち込んだ音源ですが、それ以外は基本的に生音です。

――紅一点、女性が1人ですが、2人の男性メンバーとの活動はいかがですか?

さなえ 最初5人のときは何をするにもちょっと不安はありました。でも、今はもう全然そういった不安もなく楽しく過ごしています。ただ、2人ともけっこう体が大きいのでちょっと威圧感を感じるときはあります(笑)。いつも目線が上にいってしまうので、自分が小さくなったみたいな感覚があります。

音山大亮 この業界は女性が少ないと思うので、女性でも男性のように振る舞わないといけない瞬間もあるかもしれないと思っています。

――皆さんが思うpachaeの強み、武器はどこにあると考えていますか?

バンバ 同期を使わずに、生演奏のみでライブをしているというのは、一つの強みで僕らの特徴でもあると思っています。

バンバ

さなえ 曲がとても複雑なので、それもオリジナリティにつながっていて、唯一無二の音になっているところが武器になっていると思います。

――本当に曲の難易度高いです。これを同期なしでライブで演奏するのはすごいと思いました。

音山大亮 あっ、あと“ボク”の可愛いさも武器です。ボクがとってもキュートで可愛いらしいと書いておいてください(笑)。

――あはは(笑)なぜそんなにも可愛いものが好きなんですか?

音山大亮 世の中のものって、かっこいいより可愛いものの方が多いと思っています。例えばかっこいいと言っても、尖ったソファーとか選ぶ人って少ないじゃないですか? 服のコーディネートなど男性はかっこいいって表現するけど、服単体で選んでいる時は可愛いって言葉を使っている気がしています。世の中、可愛いが蔓延っているなと思っていて。カッコいいと可愛いはほぼ同じ意味で使っていて、結構みんな同義語ものとか、みんな可愛いで生きていると思います。かっこいい感じから入ると、もうかっこいい一択になってしまいプレッシャーがあるので、可愛いがいいんです(笑)。

こだわったキャラクターの気持ちに寄り添う言葉選び

――10月7日にリリースされたアニメ『妻、小学生になる。』主題歌の「アイノリユニオン」ですが、このテンポ感でこのグルーヴは気持ちいいです。デモ段階からこの雰囲気で曲を作ろうと考えていたのでしょうか。

音山大亮 最初から僕の中で「サビは絶対これだ!」というのがありました。Aメロ、Bメロはそれに従ってもらったみたいな感覚なんです。

――どのような流れで曲を作り上げていくのでしょうか。

音山大亮 僕の中で名曲にすべき曲は、まず弾き語りで作っていきます。そうするとみんなに覚えてもらえやすいといった感覚があります。良いメロディを作るのであれば、1 本の楽器から作らないと難しいと思っています。楽器から作ると楽器は面白くなるんですけど、歌のメロディーも楽器に近づいてくるので、ギターのフレーズっぽくなったりしてしまいます。アコギかピアノかでもすごく変わるんですけど、今回はギターを使用して、歌詞にメロをつけて、その後にアレンジを考えるというパターンでした。

――バンバさんは最初に曲を聴いたときの印象はいかがでした?

バンバ 展開が多くてすごくいい曲だと思いました。そう思いつつ、難しい曲だなと思いました。

――デモはどのような状態で渡すのでしょうか。

音山大亮 ギターとかほぼ楽器が入っている状態です。今バンバには音作りとか、ソロを作ってもらうなど、いろいろお願いしているところなのですが、今までのpachaeは1 音 1 音を僕が作って、それを演奏してもらう。僕は難しい曲を作るので、それを弾けるメンバーに出会わなければならなかったんです。

――ギターソロ、ジャジーでクールですが、これはバンバさんが弾いているんですよね?

バンバ これは僕は弾いていなくて、音山が考えて弾いています。

音山大亮 実はなかなかギターソロができなくて、どんなソロにするかすごく悩んで、ジャズ風にするかポップス風にするか最後まで悩みました。締め切りが迫っていて、滑り込みでギターソロができました。自分も完璧には弾けないけど、今からバンバに渡して練習する時間もないし、レコーディングも僕が弾くことになりました。いまのところライブでもソロは僕が弾くことになると思います。

――バンバさんが今回こだわったところは?

バンバ 特にアウトロのタイム感にこだわりました。ぜひそのタイム感を皆さんにも感じてもらえたら嬉しいです。

――タイム感、pachaeのスタイルだと特に重要だと感じました。さなえさんがこの曲を最初に聴いた時の印象は?

さなえ 最初から最後までずっと楽しい曲だと思いました。歌詞もメロディーに気持ちよく乗っかっていて、スーっと入ってきました。作業していても、それを止めたくなるぐらい感動したのを覚えています。

さなえ

――歌詞で印象的だったフレーズは?

さなえ <僕らは僕らの居場所へ帰ろう>です。ちょっと切ないけど、<帰ろう>というワードから次のステージ、前へ進む感じがするところが、『妻、小学生になる。』の原作を読んだ時の感情とピタッとハマったので震えました。

――演奏でこだわった、意識されていたことは?

さなえ シンセの音色を可愛い感じにしたいと思いました。あとはラテンっぽいセクションが出てくるのですが、そこが難しかったので、うまく弾けるように練習を頑張りました。大変なのですが、演奏していてすごく楽しいです。

――音山さんが本作でこだわっていたところは?

音山大亮 歌詞です。アニメ『妻、小学生になる。』のストーリーで急展開があるので、歌詞でそれをうまく表現したいと思いました。原作を読んでいる途中で全てボツにして全部書き直しました。1話にフォーカスして歌詞を書くと最終話で矛盾が起きてしまう。話がガラッと変わる作品なので、どの時間軸にも当てはまるような歌詞を謎かけみたいに書く必要があったんです。1 話で聴いても、最終話で聴いても、主人公たちの気持ちに寄り添っていると感じる言葉選び、それ以外の言葉を入れないようにするのはこだわったところです。大変でしたが制作過程はとても楽しかったです。

――考えるのもすごく楽しいと。

音山大亮 やっぱりクリエイトするというのはこういうことなんだと思いました。アニメを観て最終話まで絶対追ってほしいです。12 話まで見て、その後もう一回1 話を観て曲を聴いてみる。背景も頭に入れて聴くと歌詞は面白いと思います。アニメでは流れていない2 番もそういう言葉がふんだんに入っているので、注目してもらえたら嬉しいです。

――ちなみに歌詞を縦読み、斜め読みしたら新たなワードが出てくるといったそういうギミックみたいなものもありますか。

音山大亮 そういうのも好きですけど、今回の曲に関してはないです(笑)。

プロとしてのライブの在り方にすごく悩んだ

pachae

――11月から「pachae presents 『Trick or Trick』 vol.3」がスタートしますが、皆さんがライブに臨むにあたり、どんなことを意識してステージに上がっていますか。

バンバ 僕は「熱」を持ってステージに立つということを意識しています。事前準備としては、シンプルに体を動かして心拍数を上げるようにしています。またルーティンとしてライブ前に歯を磨きます。そうすると口の中がスッキリとしてとても気持ちいいんです。これは皆さんにおすすめしたいです。

――さなえさんは?

さなえ pachaeは難しい曲が多いので、「難しそう」って感じさせないような空間作りです。会場にいるみんなで楽しめるようにしたいというのは最近すごく考えてます。

――ライブ前のルーティーンありますか?

さなえ ハンドクリームを塗ることです。そのクリームから良い香りがするのですが、その香りに包まれながら演奏したくて(笑)。

――リラックスできそうですね! 音山さんがライブを行うにあたり、いま考えていることは?

音山大亮 MCでみんながよく言いそうなことは、あまり話さないようにすることです。友達と話しているような自然な言葉で話せるかどうかを大事にしています。もちろん、皆さんも心を込めて話していると思うし、それはちゃんと伝わるのですが、どんな業界でも「定型文」みたいなものってあると思っていて。たとえば、かっこつける瞬間や、みんなに愛を伝える瞬間など、何も考えずにさらっと言えるような人に生まれたかったと思うことがあります(笑)。でも、僕はどうしても冷静になってしまうから、それができなくて。

――考えてしまうんですね。

音山大亮 「ライブに来てくれてありがとう」なら、そのまま「ありがとう」で十分伝わると思うし、それ以上の言葉を無理に増やそうとすると、どこかキザっぽくなってしまうんです。みんなに何かを伝えるときに、よく聞くようなフレーズが出てくると、自分でも「これ、みんな言ってるよね」と思っちゃって。そんなことを考えてしまうと、自分が本気で話せなくなってしまいます。正直、考えすぎかもしれませんが、プロとしてのライブのあり方について深く悩みました。結果的に、自分らしく、自然に伝えたいことを伝えるのが一番だと思っています。

――MCでアルペジオを弾きながら話すのもいい感じですが、音山さんはそういうのはあまりやらないんですか?

音山大亮 アルペジオをしながら話す時もありますが、基本あまりやらないです。今年に入ってから弾きながらしゃべることもやってみたのですが、途中で弾くのを止めました。やるにあたって自分が弾いているとは感じないコード進行、これだったら僕の頭の中で自然と流れているくらいのものを探して(笑)。意識していなければないほど自然になります。こんなコードがいいかなと思った瞬間負けで、無意識で弾けるコード進行が理想なんです。言葉がメインなので、アルペジオを弾きながら喋りたいと思ったら弾きますくらいの感覚なんです。

これがあるから頑張れるものとは?

――さて、3人の中でいま話題になっていることはありますか。

バンバ これは難しい質問ですね…。みんなそれぞれで完結させて、個人経営が集まっているようなバンドなので(笑)。

音山大亮 自分一人で生きていくのが好きなタイプが集まったバンドなんです。でも、さっき横浜中華街に行こうという話題で盛り上がったよね?

さなえ うん! それ3人で話していたよね。

――では、個々というところで、音楽はもちろんだと思うのですが、いま自分を形成しているもの、これがあるから自分は生きていけるといったものはありますか。

バンバ 最近だと日本酒です。これがあれば頑張れると言いますか、自分の中で区切りをつけられる感覚があります。好きなのは日本酒と焼酎で、焼酎は変わり種が特にお気に入りなんです。「カルダモン」や「だいやめ~DAIYAME~」が好きなので 、1 日の終わりはそれらのお酒で締めくくります。

――1日の終わりに美味しいお酒いいですね。さなえさんの“これがあるから頑張れる”といったものは?

さなえ 私は食べることが好きなので「食」です。自分で作って食べるのも好きで、今ハマっているのは発酵食品です。味噌、納豆、ヨーグルト、チーズが好きなのですが、そうやって自分が好きなものをあげていったら、発酵食品が多かったことに気づきました。また、「発酵食品ソムリエ」という資格があって、その資格を取得するために、いま勉強しています。

――すごいですね! 最後に音山さん。

音山大亮 これがないと生きていけないものは抱き枕です。ひんやりした抱き枕を持っているのですが、それが家で待っているというだけで疲れが取れます。一人になる時間が僕の生命力をみなぎらせているような感覚もあります。

――ひとり時間がお好きなんですね。

音山大亮 ずっと一人でいたいかと言われたらそうではなくて、みんなといる時間があるから、一人になりたいと初めて思えるわけで、一人になった時はすごくリラックスします。誰もいない空間に抱き枕があって、香ばしい匂いを嗅ぎながら寝る。古いものなのですが、買い替える気はないですし、どこに住むことになっても持っていくくらい、ないと困るものの一つです。

(おわり)

【作品情報】

4th DIGITAL SINGLE
「アイノリユニオン」 配信中!
https://pachaemusic.lnk.to/Aino-Reunion

pachae「アイノリユニオン」ジャケ写

【ライブ情報】

11/9(Sat)ツタロック DIG LIVE Vol.16 @Shibuya Spotify O-EAST

■pachae presents 『Trick or Trick』 vol.3

11/16(Sat)香川 TOONICE with Deneel
11/20(Wed)愛知 CLUB UPSET withペンギンラッシュ、KADOMACHI
11/22(Fri)大阪 OSAKA RUIDO with 不眠旅行 and more…
11/28(Thu)東京 shibuya eggman with Mellow Youth and more…
各日対バン有り
全日程共通
OPEN 18時30分 / START 19時00分

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村上順一

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