INTERVIEW

玉木宏

「ぷしゅぷしゅに寄り添うような気持ち」アフレコで大事にしていたこと:『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年05月18日

読了時間:約9分

 俳優の玉木宏が、5月19日に公開される『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』に声優として参加。タオルの妖精・にゅうを演じる。本作はテレビ東京系で放送中の赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』初の映画化。0歳から楽しめるはじめての映画体験をコンセプトに制作された。約50分間のオリジナルストーリーとなる本作は、主人公ぷしゅぷしゅ(声・岩本彩楓)のほっぺを探しに、新キャラクターのにゅうと共に宇宙へ飛び立つ。番組でお馴染みの仲間たちも登場する。インタビューでは、にゅうの声を担当した玉木に、『シナぷしゅ』の魅力や、アフレコで意識していたこと、玉木が生まれて初めての映画体験エピソードについて、話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

内容をちゃんと理解できているんだ、という感動があった

村上順一

玉木宏

――ご出演を決めた経緯は?

 きっかけは、とある取材の時に、「『シナぷしゅ』が好き」と話したことでした。プロデューサーさんがそれを見てくださっていて、『シナぷしゅ』のグッズを送ってくださったんです。そのお礼の手紙で「声で参加できたら嬉しい」と書いたんです。それを今回形にしていただいて。

――玉木さんからの逆オファーですね。

 親になり、自分の子どもが好きな番組に参加したい、という気持ちがだんだん出てきました。その思いを 言葉にして伝えたら、こうやって形にしていただけて、すごく嬉しかったです

――参加が決まってお子さんは、どんな反応がありましたか。

 参加を伝えたものの理解はできていなくて、出来上がった作品も一緒に観たのですが、それでもまだ理解はしていなかったです(笑)。CMなどでテレビに僕が出ている時はリアクションをしてくれるのですが、声だけでは気づいてはくれなかった(笑)。ただ、ぷしゅぷしゅのほっぺがない、ということがずっと気になっているみたいで、最後まで夢中で観ていました。なので、内容をちゃんと理解できているんだ、という感動はありました。

――お知り合いの方に、参加されることについて、お話されたりもしたのでしょうか。

 はい。みんな「いいなあ」と言ってくれました。同世代の父親と話す機会が多いのですが、『シナぷしゅ』はみんなが見ている番組だったので、羨ましいみたいです(笑)。もう、僕は鼻高々な感じでした(笑)。

――台本を読まれた時、どのようなことを思われましたか。

 映画化されることにまずびっくりしました。どんな映画になって、どのように話が繋がって、どう終わっていくんだろう、と思っていたので、台本を読んで「なるほど」と思いました。また、その後に映像を観て、納得感がありました。

――玉木さん演じるにゅう、かわいいですね。

 監督のお子さんが、タオルをすごく大事にしていて、そこからヒントを得られたとのことなんです。きっとどこのお子さんも、大事にしているものがあると思います。にゅうは、そばに置いてほしいキャラクターだと仰ってました。

――玉木さんが子どもの頃、そばに置いていたものはありましたか。

 小さい時に持っていた物は、あまり記憶にないんです。ただ、子どもの時のおもちゃを取っておけばよかったと思いました。昔のおもちゃは、プレミアがついていたりするので(笑)。逆にいま自分の子どもが持っているものを選択して、残しておいてあげたいと思ってます。

初めての映画館は祖父と一緒に行った『ゴジラ』

――にゅうが発する言葉がすごく面白かったのですが、にゅうを演じるにあたり特に意識したことや、苦労したことはありますか。

 大きな苦労はないのですが、「にゅ」という言葉だけで、いろんなニュアンスを表現しなければいけない。優しい気持ちの「にゅ」、何かを発見した時の「にゅ」など、いろいろなパターンがあって。その中で一番大事にしていたのは、ぷしゅぷしゅに寄り添うような気持ちでした。

――監督から、玉木さんにこう演じてほしいといったリクエストはあったのでしょうか。

 まず、台本をいただいた段階で、「にゅ」のニュアンスを自分なりに予習していこうと思ったのですが、正解が全くわからなくて。実際に現場へ入って声を出してみて、監督と一緒に正解を探りながらやっていました。丁寧に少しずつ進めていった記憶があります。

――本作に参加したことで、新たに発見したことや気づいたことはありましたか。

 普通の話し言葉ではない「にゅ」だけで、表現することの難しさを感じました。それもあって、ぷしゅぷしゅの声を担当している(岩本)彩楓ちゃんは、すごく上手だなと思いました。

――色んな「にゅ」の言い方がありますが、玉木さんが好きなニュアンスは?

 ぷしゅぷしゅがちょっと落ち込んでいるところを、慰めるように優しい気持ちで、「にゅうにゅう」と言うニュアンスが気に入っています。

――『シナぷしゅ』が元々お好きだった玉木さん。どういったところが魅力だと感じていましたか。

 いろいろなコーナーがあって、この番組はこうだとか、あまり固執してないところです。子どもの年齢が変わって、今まであまり反応しなかったコーナーにも反応するようになっていたりするので、成長や変化を楽しむことができる。ニュアンスカラー(何色と断言できない曖昧な色)系で、色があまりパキパキとしていないので、すごく目にも優しいです。そして、心地よい音や音楽が使われているので、スタッフの皆さんと、愛情たっぷりに作られた番組なのではないかと思いました。

――本作で1番好きなシーンは?

 どのシーンというよりも、ぷしゅぷしゅのほっぺがなくなって、色んなことをまたいで最後まで繋がっていく面白さです。個人的にヨロレイヒやヒカリの森の黒うさぎがお気に入りなのですが、今回映画化されて、TV版とは違う良さがいっぱい出ていると思います。

――テレビ番組とは違った、『シナぷしゅ』を映画館で見ることの醍醐味はどんなところにあると感じていますか。

 僕の子どももこの作品で映画館デビューさせようと思っています。親御さんは、子どもをどのタイミングで映画館デビューさせようか、すごく考えると思います。 本作は劇場で声を出しても大丈夫ですし、明かりも真っ暗にしすぎないなど、子どもと一緒に楽しんで観ていただける作品になっています。子どもと一緒に行きやすい、それが一番の醍醐味だと感じています。

――お子さんの映画館デビューに最適な『シナぷしゅ』ですが、 玉木さんが初めて映画館デビューした作品は覚えてらっしゃいますか。

 保育園の年長の頃だったと思うんですが、祖父と一緒に行った『ゴジラ』だったと思います。 劇場入りしたのが遅い時間だったので、一番前のど真ん中の席しか空いていなくて、内容は覚えていないのですが、「なんか首が痛いぞ?」という記憶しかないです(笑)。今回の『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』でも、親と一緒に映画館に観に行った、という記憶がお子さんに残ってくれたら、いいなと思っています。

継続していることは必ず何かに繋がる

村上順一

玉木宏

――ご自身の今後の活動やお仕事に繋がるような手応えも感じてらっしゃいますか。

 手ごたえかどうかわからないのですが、0が1になったので、継続していることは必ず何かに繋がる、マイナスはないと思っています。今、出せる全てを出したつもりではいるのですが、もし次があれば、さらにいいものができるのではないかなと思っています。

――洋画の吹替もやられていますが、声優業に対するやりがいはどんなところに感じていますか。

 自分が体で演じるよりも非常に難しいと毎回思っています。声ひとつでシチュエーションに合わせなければいけないので、不用意に動いたりすると、台本のペーパーノイズが入ったりしますし、体は動かさず、声だけで世界を作る難しさがあり、本当に声優さんはすごいなと思います。僕らは普段実写でやろうとすると、生っぽくすることを心掛けますが、逆にアフレコは生っぽくするとすごく埋もれてしまうものだと思いました。言葉を粒立てなければいけないと思いますし、粒立てながらもリアルに見せることがすごく難しい。そのさじ加減はいつも探りながらやっているつもりです。

――声優業の仕事で鍛えられた部分は、俳優業にもプラスになっていますか。

 もちろんなっています。セリフはリアリティを持って、普段の話し言葉のように話さなければいけないのですが、内容が伝わらないと意味がない。じゃあこの作品の中で何を伝えたいんだろうと考えた時に、単語を大事にしようという思いが生まれました。言葉というものに重きを置けるようになってきたと思います。

――にゅうがグッズ化されるとしたら、何が欲しいですか。

 形として残るならなんでもグッズになってほしいです。あとは、SNSのスタンプがほしいかな(笑)。

――今回、chelmicoさんが主題歌を担当されますが、どんな印象がありますか。

 本当に『シナぷしゅ』の世界観に合った楽曲だなと思いました。chelmicoさんのことは存じ上げていたのですが、まさかこんなカタチでご一緒できるとは思っていなくて。音楽からすごく優しさがあって、今回の楽曲も優しさに溢れているなと思いました。

――ちなみに、chelmicoさんにお会いしたら聞いてみたいことはありますか。

 どんな日常を過ごしているのか聞いてみたいです。というのも僕は、ミュージシャンやアーティストの日常を聞くのが好きなんです。例えば、過去にKing Gnuの井口(理)くんとお話しした時にも、すごく面白いなと思いました。俳優とはまたちょっと違う思考を持っているんです。

――お話を聞いている中で、驚いたことはありました?

 井口くんとの話だと、「僕が音楽を始めるきっかけになったのは『のだめカンタービレ』です。『のだめ』を観ていなければ、僕は今ここにいないです。」と、あのドラマが音楽シーンの第一線で活躍されている方に、こんなにも影響を与えていたのかと驚きました。そういう作品に自分が参加できたというのも、すごく嬉しかったです。

――もしかしたら、『シナぷしゅ』のにゅうを見た小さな子に影響を与えるかもしれないですね。

 タオル屋さん、今治で働く人もいるかもしれない(笑)。

――ありえますよね! そんな玉木さんは、今どんなことを考えて活動されていますか。

 これまでは「自分は俳優だから」と固執して考えていた部分もあったので、ミュージシャンやいろいろな方と触れ合うことで、俳優業に還元されることが沢山あるなと思いました。今は色んなことに触れたいと思う時期で、今まで以上に楽しいです。

――そうなると、趣味も多くなっていきますよね。

 増えていきますね。子どもにキャンプをやらせてみたい、と思うこともあります。ですので、時間がいくらあっても足りないんです。

――時間が足りないと思えることは、人生が充実している証でもありますよね。玉木さんが思う、人生を充実させる秘訣は?

 趣味が増えることによって、今日は天気が良いからこれをしよう、雨だったらこれをしようと、選択肢が増えるんです。遊ぶことによって心も整えられると思いますし、息抜きできる何かを持っておくことが大事だと思っています。

(おわり)

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