INTERVIEW

佐野勇斗

役者の課題に少しは取り組めていると思う 『おとなりに銀河』で“新たな一面”


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:23年04月06日

読了時間:約5分

 佐野勇斗が、現在放送中のNHK夜ドラ『おとなりに銀河』で主演を務めている。雨隠ギドさんの同名漫画が原作。売れない漫画家と流れ星の民の姫であるアシスタントによる不器用な恋模様が描かれる。主人公の漫画家・久我一郎を演じる佐野勇斗。ここ数年は『ドラゴン桜』や『真犯人フラグ』、『テッパチ!』など二面性を持ち時にシリアスな演技が求められる役柄が多かったが、今作では愛嬌たっぷりのコミカルなキャラクターを演じる。そんな佐野は一昨年から話題作への出演が続き、特に昨年は大活躍を見せた。今年に懸ける思いも強く、それが活動の原動力の一つにもなっている。そのなかで迎える本作。どのような思いで臨んでいるのか。【取材・撮影=木村武雄】

佐野勇斗

佐野勇斗

自然体で

――流れ星の民の姫でアシスタントの五色しおり(八木莉可子)との恋愛模様が描かれていますが、原作を読んだ印象は?

 登場人物それぞれが自分の中で思いを抱えているんですけど、人に対する思いやりがすごくあって、読んでいて優しい気持ちになりました。一郎は両親がいなくて“兄貴手”ひとつで幼い弟妹を育児しながら漫画家として収入を立てています。しおりとの恋愛も慣れないところはありますが、一家の大黒柱として芯がしっかりしているところが魅力的だと思いました。

――佐野さんとの共通点は?

 僕は長男なんですけど家族に甘えているので一郎はすごいなと思います。似ているところで言えば、あまり人に頼れないところです。人から「やってあげようか」と言われても「大丈夫」と遠慮するところがあって。一郎と重なるところも多かったので、そこまで意識して役作りはしないでやりました(笑)。でも、まちふみ(妹のまち=演・小山紗愛、弟のふみお=演・石塚陸翔)の存在が大きいですね。最初は緊張も見られたんですけど、1週間経ったら慣れてきて今では家族のようです。

 (スタッフの話によれば、佐野は休憩の合間も小山紗愛、石塚陸翔と遊ぶなどして積極的にコミュニケーションを取っていたという。本当の兄弟のような関係性が築けたのは佐野によるところが大きいと賞賛している)

――人間模様が繊細に描かれていますが、しおり役の八木さんとはいかがでしたか?

 一緒にいればいるほど五色さんみたいに感じてきてピュアでフレッシュ。僕は結構人見知りところもあるんですけど、積極的にスタッフさんに仲良く接していて、八木さんのおかげでとても良いチームになっています。学ぶことも多くて尊敬しています。お芝居も素晴らしくて、本読みの段階から演出で言われたことに柔軟に対応していて、常に台本を持っていますし、引き出しも持っている。お芝居でも違うなと思っていることもまずはやってみる。

――2人の不器用な恋愛も見どころの一つになっています。

 今どきの恋愛はすぐに手を繋いだりするものだと思いますが、一郎としおりはそこまでに行くのに時間がかかるんです。ハイタッチすらも恥ずかしく感じてしまう。そういうもどかしい距離感というのは見どころですし、楽しく演じています。

佐野勇斗

佐野勇斗

久々のコミカルな役どころ

――佐野さんは一昨年から話題のドラマに立て続けに出演されて、特に昨年はZ世代が選ぶ人気俳優でもランキング上位に入って大活躍の一年と言ってもいいと思いますが、ご自身はどう感じていますか?

 一昨年から怒涛と言いますか、ずっとドラマに出演させて頂いて、インスタグラムのフォロワーも顕著に伸びて100万人を達成することが出来ました。今は自分との戦いと言いますか、今年も2本の作品が決まっていて、M!LKとしてツアーもやり続けていて、とてもありがたい状況なのですが、気持ちの切り替えができないところもあって。そういうところで自分との戦いだなと思っています。

――役者としてはどうですか。『テッパチ!』のインタビューの時に、「相手を引き出せる役者になりたい」とおっしゃっていて。『おとなりに銀河』も含めてどうですか?

 『テッパチ!』の時は、町田(啓太)さん(相棒役)に助けられて引き出してもらった部分が多かったのでそう言ったと思うんですけど、今回は若い役者の子(小山紗愛、石塚陸翔)もいて、その子たちの事を引き出せているのか分からないんですけど、2人のおかげもあってすごくいい空気感でできています。空気を作ってくれる八木さんのおかげでもあるんですけど引き出し合えているのかなと。自分の中での役者としての課題に少しは取り組めていると思います。

――役としてはここ最近はコミカルの役はほぼなかったですよね。雰囲気としては『3D彼女 リアルガール』以来かなと。

 実はまだ公開されていない作品があって、それがすごくコミカルなので、僕としてはこの半年、コミカルなものはやっている感覚なんです(笑)。でも確かに言われてみれば世の中としては久しぶりかもしれないですね。この1、2年で僕を知った人は、この姿を見て僕って分かるかな(笑)

佐野勇斗

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高みを目指して

――目標されている方が鈴木亮平さんとも話されていますが、鈴木亮平さんは過去のインタビューで「役者としての完成度はどれぐらいか?」と聞いて「⒛%ぐらい」と答えられたんです。「今の段階で高い数字を出してしまうとどこかで打ち止めになってしまう」と。佐野さんは何%ですか。

 いや…1%。もし亮平さんの話がなかったら10%ぐらいと言っていたと思うんですけど、亮平さんが⒛%なら…高く見積もっても1%もないんじゃないかって(笑)いろいろ経験させて頂いてようやく1%になれたと思います。でも亮平さんが⒛%って信じられない。僕の中では100%以上だと思っているので、そんな1%もおこがましいぐらいです(笑)

――ここ最近のお芝居を見ているともっと高いところのような気もしますが。

 とんでもない!逆に分からなくなってきます。何が正解なんだろうみたいな。なんとなくこうすればこうなるみたいな部分は分かってきていて、でも「そうじゃないよな」って思う時もありますし、逆に「今のは悪くなかったかな」と感じるところもあって…。

――でもそうした試行錯誤の形跡が役者としての深みになっていくような気もします。

 そうだと良いんですけど、でも僕はまだまだですね。だから頑張りたいと思います!

(おわり)

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衣装/スタイリスト
伊藤省吾 (shogo ito)

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