- 1
- 2
女優の山崎果倫(※崎はたつさき)が、11月からNHKで放送が開始されたドラマ『作りたい女と食べたい女』で高木加奈を演じ、NHK BSプレミアムおよびNHK BS4Kで放送されている『赤ひげ4』に、善助の許嫁・おくみとして出演。山崎は、2015年レプロエンタテインメント×Sony Music合同主催AD「DREAM GIRL AUDITION2015」を経て事務所に所属。所属後は『ローファーズハイ!!』で舞台・演技経験を積み、着実に活躍の場を広げている。インタビューでは、山崎の素顔に迫りながら、芝居にかける情熱、役を演じる上での信念など、話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)
大切にしていることは、誰よりもその役を愛すること
――お名前の「果倫」には、どんな想いが込められているのでしょうか。
2つありまして、全体としては、「倫理を果たす」という意味での果倫で、「果」という字に対して、母は実りある人生にしてほしいという想いを込めてくれました。人を大切にするというのは当たり前のことではあるのですが、人と関わっていくことを、より大切にできるような子になってほしいという想いからと聞いています。
――コミュニケーションですね。
そういうことだと思います。私は、本当に嫌いな人っていないんです。傷つけられることも時にはありますけど、その人のことを嫌いになれないんです。きっと理由があってその人はそうなってしまっているので、それを想像することで愛せてしまいます。もし、愛せなかったとしても、寄り添おうとしたその時間だけで満足してしまいます。その性格にコンプレックスを持っていた時もあったのですが、今は名前に見合った性格だなと、自負しています。
――名は体を表すといいますから。例えばお芝居の中で、嫌な役でもその人物は憎めない。
憎めないです。映画やドラマだとよりその背景が明確になっているので、100%嫌いになることはないです。不器用だなとか、なぜこうなってしまった、というもどかしさを感じたりしますけど。寄り添うことは得意な思考回路になってます。
――もしかして座右の銘は「寄り添いあう」?
「意志あるところに道は開ける」です。中学校くらいからの座右の銘なんです。意志が伴わなければ発言もしたくないんです。時にはあまり深く考えずに「そうだね」と相槌を打つこともあるじゃないですか? 私もそういうことはあるんですけど、たわいもない話なのに、家に帰ってから「なんで『そうだね』って言ってしまったんだろう」と反省します(笑)。自分の発言に対して、ちょっとした完璧主義なところがあるんです...。自分に対してめんどくさいなと思いながらも、その積み重ねで人格ができると思っているので、考えてしまうんです。
――では、セリフもすごく意味を考えて発しているわけですね。
普通に生きている中でもそうですし、台本があるお芝居ではこの言葉を言う意味、逆に言わない意味とか、すごく考えてしまいます。
――それがお芝居にも表れていますよね。さて、2022年もまもなく終わってしまいますが、この1年間はいかがでした?
色々あったのですが、これからのための準備期間だった1年でした。今年は皆さんの前に出るのも少なかったんですけど、私なりにすごく成長できた一年でした。マネージャーさんが変わって、そのタイミングで活動の仕方も変わっていきました。一つひとつのお仕事をさせていただく中で、フィードバックしていくのですが、それをこれまでは1人でやることが多かったんです。今はちょっとしたことも周りの方が受け取って下さるので、前に進む速度が上がった感覚があります。まだ公開は先なのですが、撮影も今年はたくさんしたので、その度に反省をして次に活かす努力をしていました。
――この期間に役者としての心構えが変わった部分も?
そこはあまり変化はしていないです。大切にしていることや見えている景色というのは、変わっていなくて、環境が整った感じなんです。こうしなければと固まっていた考え方が、ほぐれていったような期間でした。大切なものだけが研ぎ澄まされていくような感覚がありました。一点集中と言いますか、活動がすごくしやすくなったと感じています。
――お芝居をする上で、一番大切にしていることは?
私が誰よりもその役を愛するということです。それができる権利があるのは、その役を演じる私しかいないと思っているので、愛せるように模索していきます。そして、ちゃんとその役を愛した状態で現場入りします。
――好きになる努力をするわけですね。
その人物に片想いをしているような感覚です。その役のことを想像して考えて、こういうのが好きなのかな?、こういうことを考える人なのかな?とか、詮索しているような感じなんです(笑)。
――自分の好きなものまで変わっていきそうですね。
そういうこともあるんですけど、それはその役を演じている時だけで、撮影が終わるとスッといつもの自分に戻れるんです。例えば地に足がついていない役、想像と現実の区別がつかないような性格の子を演じていて、その時は普段の歩く速度がめちゃくちゃ遅くなりました。自分が好きな食べ物も、何をしたら幸せなのかもわからなくなってしまって。その時はすごく不安になってしまうんですけど、撮影が終わると大丈夫なので、役のことを考えすぎていただけだったんだと気づきます(笑)。
1人で戦っていける職業を見つけようと思った
――ところで、山崎さんが役者さんを目指したきっかけはどんなものだったのでしょうか。
私は16歳の時に愛知から上京したのですが、地元で過ごしていた小中高でいじめられなかった時がなかったんです。その理由はその場所に馴染みづらくて、浮いてしまっていたことが原因でした。それもあって一般的な職業に就くことに抵抗があって。一生このまま周りに馴染めないんじゃないかと、居心地の悪さを感じながら生きていくのは嫌だなと思い、1人で戦っていける職業を見つけようと思ったのがきっかけでした。
――今の山崎さんを見ていて、いじめられていた、というのは想像できないですね。
私、変に正義感が強すぎて、授業中とかにも「先生、それ間違ってます」みたいなことを言ってしまうタイプでして…。間違っていることや長いものに巻かれることが、すごく嫌でした。あと、分け隔てなく誰とでも喋っていたので、周りからぶりっ子だと言われたり。両親もすごく正義感が強いのでその影響なのかなと思います。
そこから色々模索していく中で、読み聞かせとか芸術文化の方で褒めていただくことが多かったので、自然とお芝居、演技というものに興味が湧きました。あと、両親は映画が好きだったこともあり、映画などに出演してみたいと思い、オーディションを受けたのが始まりでした。
――確か、山崎さんは絵も得意だと聞いているのですが、そういった職業への興味は?
デザイナーやイラストレーターは考えました。学生時代にはイラストレーターとしてのアカウントをSNSで作って投稿していたこともありました。でも、役者のオーディションが一回目からトントン拍子に進んでいき、事務所も決まったので、自然とこの道に進んでいった感覚はあります。なので、当時は「役者に絶対になるんだ!」という気持ちではなかったので、苦戦していたら他の道を探していたかもしれません。
――憧れの女優さんはどんな方ですか。
蒼井優さんがすごく好きで憧れますが、私は蒼井さんのように喋らなくても存在感があるようなタイプではなくて。私は天真爛漫な感じだと思っているので、自分に近いイメージの俳優さんだと、すごく高い理想なのですが綾瀬はるかさんのような俳優さんになれたらなと思っています。何があっても笑って収めてしまう魅力があって、それは持ち前の人柄の良さがあるからなのかなと感じています。蒼井優さんと綾瀬はるかさん、お2人のエッセンスを取り入れながらも、私オリジナルのお芝居ができたらと思っています。
感情の振り幅を大切に演じた「おくみ」
――これからやってみたい役もありますか。
私、実在する人物を演じたことはまだないんです。マンガ原作とか実在するキャラクターをやってみたいです。正解があるのですごいプレッシャーだと思うんですけど、やりがいがあるだろうなと思っています。その人になることは難しいけど、だんだんそういうふうに見えてくるのが面白い感覚だなって。それこそ演じるのに愛が必要ですし、実在する人物は是非やってみたいです。
――ちょうど今月は、ドラマ『作りたい女と食べたい女』(NHK)と『赤ひげ』(NHK)に出演されますね。
そうなんです。『作りたい女と食べたい女』では会社員役、キラキラ女子として出演させていただいています。インドアの私がなかなか普段キラキラ女子として、大衆の中で存在することはないので、演じていてすごく楽しかったです。
「赤ひげ」は最終話のメインゲストとして出演させていただくんですけど、恋人のことをまっすぐに愛する江戸の町娘を演じています。衣装合わせに行かせていただいた時に、存分に天真爛漫にやってもらっていい、と言っていただけました。今回シーズン4なのですが、シーズン3まで全部観させていただいて、慈愛と哀愁のあるような役が多い印象で、ここまで明るい役というのは少ないんです。皆さんからバトンを繋いでいただいた役になっています。天真爛漫なのですが、泣けるシーンもあって、感情の振り幅を大切に演じました。「時代劇かあ」と思っているかたも、「赤ひげ」は、現代劇と時代劇の両方を兼ね備えているドラマなので、皆さん楽しめると思います。
――最後に山崎さんの原動力となっているものは?
会いたいと思う人がいるからです。私の活動を心から喜んでくれる人、私の成功を自分のことのように喜んでくれる人がいるというのは、奇跡のような関係性だなと思っています。それを今すごく感じているので、日々そういう方とコミュニケーションを取ることで、1人でやっていることでも1人ではないと思います。オーディションに行く時も、この役を取れたらきっと喜んでくれる、その人たちの喜んでくれる顔が、私の原動力になっています!
(おわり)
- 1
- 2