INTERVIEW

吉田美月喜

「役に対して自己中でいろ」、『ドラゴン桜2』で学んだ経験を主演作『メイヘムガール』で


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年12月04日

読了時間:約7分

 吉田美月喜が、映画『メイヘムガール』(藤田真一監督)で主演を務めた。コロナ禍など制限だらけの毎日にいら立つ女子高生が突如、超能力に目覚めたことで始まる青春物語。吉田は主人公の山崎瑞穂(※崎は立に可)を演じる。内に思いを秘める女子高生役は最近では、主演を務めた短編映画『Petto』(枝優花監督)やTBS日曜劇場『ドラゴン桜』でも演じているが山崎はその2作とは異なるキャラクター。演じる上でどのようなことを意識したのか。そんな吉田は今年4月に上演された初舞台『エゴ・サーチ』(鴻上尚史演出)では圧倒的な芝居で大反響を受けた。自身はこの舞台での経験はどのようなものになったのか。この後も主演作の公開を控えるなど勢いに乗る彼女に現在地を含め、本作に賭ける思いを聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

初舞台で得たもの

――『エゴ・サーチ』のお芝居圧巻でした。初舞台でありながら堂々と演じられていて、舞台前と舞台後では変化があったのではないですか?

 本番中はただ楽しんでいました。色んな方からも「楽しんでやっているのが伝わってきた」と言って頂けましたし、大変と思うことは特にありませんでした。でも日によってお客さんの反応が違うのはびっくりしました。初めての経験でした。

――全力で演じ切った印象ですが、あそこまで思い切りできたのは共演者の影響も大きいのではないですか?

 カンパニーの中で年齢が一番下でしたので、みなさん見守ってくれました。「こんなにカンパニーのみんなが仲がいいことはなかなかないよ」ってみなさんがおっしゃるくらい仲良くて。初めてだけどみんなが全部受け止めてくれるだろうという安心感があったので思い切りできたと思います。混乱して取り乱すシーンとかがありましたが、何の心配もなくできたのはそういうところだと思います。

――周囲の反応はどうですか。

 家族も見に来てくれたんですけど、初めて生で自分の演技を見せたのですごい恥ずかしくて。成長というか、ここまで育ててくれた両親に「こういう仕事をやっているんだよ」って生で見せられた嬉しさがあったのと「声が通っていて良かった」と褒めてもらえたので安心しました。

――舞台で演じる楽しさも覚えたと思うんですけど、自信にも繋がりましたか。

 舞台を経験したことがあるというのは自分の中で強みになったと思いますし、自信にもなったと思います。

――気持ちの上ではあまり変わっていないですか。

 同じ演技のお仕事なんですけど、舞台は映像とは完全に違っているような感覚でした。今後映像の仕事をしていく中で、舞台で経験した「見せ方」とかは活かせていけるとは思うんですけど、映像と舞台が私の中では「全然違うもの」という感覚になって。今までは同じ演技で、こういうところが違うからこっちではこういうところを気を付けなきゃいけないと思っていたんですけど、経験してみると全然違うと感じたので、映像とは違う経験をしたという意味での強みができたという印象です。

――ふたりの「吉田美月喜」がいるみたいな感じ?

 そうですね!ふたりの吉田美月喜が誕生しました(笑)どっちも極めていきたいなと思いました!

吉田美月喜

役に自己中でいろ

――さて『メイヘムガール』の山崎瑞穂というキャラクターはいろんな顔を持っている女の子ですが、どういうふうに捉えてどう演じようと思いましたか。

 台本を読んでも、実際に現場で演技してみても思ったのが、良い部分も悪い部分もリアルだなと感じました。高校生だから好きな事にまっすぐにいけるし、流されることもできるっていうのが分かりやすく描かれていて。私自身も好きなことをやらせて頂いていますが、大人になるとどんどん自分の中で理性が働いてやってはいけないことや挑戦自体が出来なくなったりする部分も増えきて。でも瑞穂はそういうできない不満とかをふっ飛ばすくらい自分の好きなことができているので、いいのか悪いのか分からないですけどうらやましいなと思いました。結果は置いといて、瑞穂が大人になったときにこういう経験もあったなと思えていたらいいなと思いました。

――溢れ出すエネルギーは若い人特有だと思いますが、瑞穂は終盤で欲に歯止めがきかなくなって。その辺はどう表現しようと思いましたか?

 『ドラゴン桜2』のときに「役に対して自己中でいろ」というのを教えて頂きました。観て下さる方からどう捉えられるかは分からないですけど、その生きている役は自分の思っている通りに動いているだけだから、周りからどう見えるかじゃなくて、役として自己中心的に生きるっていうのを学んで。今回の瑞穂を演じるときも、周りから見たら生意気で反抗期で冷たい女の子に見えるかもしれないんですけど、本人としては自分の最善であって自分のやりたい事があるので、まっすぐ「自己中」に演じようと意識しました。特に瑞穂は自分のイライラやモヤモヤをしっかり放出する役でしたので、放出したところで周りからどう見られるかというのを考えながらやると観る方もモヤモヤすると思いましたので考えずに「自己中」にやっていました。

――『ドラゴン桜2』と同時期に撮っていた『Petto』のときは気付いてなかったんですか。

 まだ気付いていなかったです。

――同じ女子高生で何かを抱えている役柄としては、その2作品ともキャラクター性が似ているところはあって。でも違いがしっかり出ているので、どういう風に捉えて演じられたんですか?

 『Petto』の春乃は「悩んでいてどうしたらいいか分からない。どうにかしたいけど将来不安だし…」っていうのを心の中で感じている部分が多くて。『メイヘムガールズ』の瑞穂は超能力、アクションが入ってくるので、そういう部分で表に感情を出せる役でもあると思いました。なので、そういった意味では全然違かったかもしれないです。

吉田美月喜

井頭愛海と再共演

――超能力を何かやりたいから使っているんじゃなくて、感情のはけ口としても使っている要素があるということですね。そう思うと面白いですね。共演の井頭愛海さん(大森あかね役)とはいかがでしたか。

 頼りにさせて頂きました!今回、メイン4人(ほか神谷天音、菊地姫奈)の年齢が近くて、和気あいあいと雑談したりしていたので楽しい時間に助けられた部分もありました。以前『鬼ガール!!』のときは愛海ちゃんが主演で私が親友役だったのでお互い演技のことについて相談したりしてすごく仲良くなれて。今回あかねとは親友ではないけど近い存在ではあったので、お姉さんみたいな感じで気軽に話すことができてすごく助けられました。

――瑞穂とあかねの距離感は話し合って作ったんですか?

 特に話し合っていませんが、今考えると撮影が始まった瞬間に愛海ちゃんがそういう雰囲気を出してくれたのかもしれないと思います。

――それと今回ワイヤーアクションにも挑戦されて。

 すごく楽しかったです。撮影の最後2日間でまとめて撮ったんですけど、初めてのことでルンルンで!(笑)難しかったこともあったのですがなんとか出来ました。ワイヤーアクションを撮り終えて「楽しかったな」と思いながら家に帰ったんですけど、すごく疲れていたので思ったより体力を使ったんだなと思いました(笑)

――体幹いいんですね。

 小学生のときに、体幹トレーニングを習っていたのでそれが役に立ったのかもしれないです!今考えるとやっていて良かったなと思いました。

吉田美月喜

怖くも切なくもあり

――ところで瑞穂は欲を全面的に出していきますが、欲を出すことはいいことなのか悪いことなのか、欲を出している人の方が成功しているようにも感じますが、その辺どう捉えていますか。自分は欲に素直でありたいとかありますか。

 私は欲に素直だと思います。ただ、この仕事をやっているからなのか周りからどう見えてるのか考えてしまいますが、それを考えながらも自分のやりたいことはやっている気がします。瑞穂は、高校生の強みかもしれないですけど自分は自分と思っていて、自分の思っていることができているというのは大人になってから振り返った時にいい経験になったと思えるんじゃないかなって。『メイヘムガール』の終わり方が、瑞穂の人生の途中で終わっているように感じられて。今後4人がどうなっていくのかは描かれていないので、そこは観ている方に委ねて想像して頂きたいです。

――瑞穂って途中で人格が変わるじゃないですか。あの辺はどういう風に演じたんですか。

 自分の欲に対してまっすぐにいれば人間ってああなるものだと思っているので、それをまっすぐに出しました。

――でも顔がすごく怖かったです。憎しみじゃなくて邪魔するものは全部倒してやるみたいな。

 恋は盲目って本当にその通りだなと思いましたし、瑞穂もまっすぐ自分の欲に向かってやっていますが、今回の作品はコロナ禍というのもあって、瑞穂自身も悩みもあって、そういうところが憎しみというより自分の悩みとの葛藤みたいなところもあって。怖いシーンですが、切なくも見えるかなって思います。

吉田美月喜

(おわり)

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