INTERVIEW

平山浩行

「作り手の気持ちが加わるとより美味しくなる」初主演映画で伝えたいこと


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:22年11月04日

読了時間:約7分

 俳優の平山浩行が、初主演映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』(11月4日より全国公開)に出演。醸造家・安蔵光弘を演じる。平山はTBSドラマ『高原へいらっしゃい』(2003年)でデビュー。映画では『臨場 劇場版』、『本能寺ホテル』など、数多くの作品に出演。メガホンを握るのは、前作『ウスケボーイズ』がアムステルダム国際フィルムメーカー映画祭にて最優秀監督賞を受賞し、国際映画祭で高い評価を得ている柿崎ゆうじ監督。日本のワイン業界を牽引した麻井宇介(浅井昭吾)の意思を受け継ぎ、日本を世界の銘醸地にするために奮闘する醸造家・安蔵光弘の半生を描いたドラマ。インタビューでは、安蔵光弘氏を演じるにあたり考えていたことや、作品の見どころなど話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

世界を代表する醸造家を演じられる喜びがあった

平山浩行

――この作品に出演が決まった時は、どんな心境でしたか。

 お酒にすごく興味があったので、参加できることが嬉しかったです。醸造家の体験が出来るので、どんなものなのかという興味を持ちました。この作品を通してワインの勉強もできるだろうなと思ったり。

――平山さんは昔バーテンダーをやられていたのも、お酒に興味があったからなんですね。

 そうです。そこでワインも含め色々勉強したのですが、ワインはワインバーじゃないと本格的に勉強するのは難しいので、今回、この作品を通して日本のワインを勉強できるという期待もありました。

――脚本を読まれていかがでした。

 すごいストーリーだなと思いました。安蔵さんは日本を世界の醸造地にしようというのを実現させてしまう方なので、世界を代表する醸造家を演じられる喜びがありました。監督に安蔵さんはどんな方なのか質問した時に、「イメージはあるけどそこは一旦忘れてもらって、そこは平山さんでいってください」と仰ってくださって。真似しなければいけないというプレッシャーはありませんでした。

――安蔵光弘さんという実際の人物を演じるということに関しては、どう感じていましたか。

 難しさはあります。実際に安蔵さんにお会いして、色々お話を聞きたいと思っていたところ、ちょうど安蔵さんがこちらにワクチンを打ちにくるタイミングで、その時にお会いすることができました。あまり時間もなかったものですから、深いところまではお聞きできなくて。でも、メルシャンをお借りして撮影できたので、安蔵さんがいらして下さった時もあったんです。その度にこの時はどんな気持ちだったのか聞くことができました。リアルに忠実に撮っているのだけれども、映画の要素もあるので、監督のイメージと擦り合わせながらの撮影でした。

――安蔵さんと実際にお話しされての印象は?

 一緒に食事もさせていただいたのですが、ワインを試飲する姿は真剣で、食べること飲むことが本当に大好きな方だというのが伝わってきました。普通に喋っていると醸造家というのを忘れてしまうくらい気さくな方なんです。こんなにも優しい方が素敵なワインを作っているんだなと感銘を受けました。

――共演者の方とお芝居についてお話しされたりも?

 今回の現場に限らず、共演者の方と食事に行ったりすることもあるのですが、みんな役から離れると普通なんですよね。現場から離れるとまた違う人としてお会いできると感じる方がすごく多いんです。たまに僕の方から疑問に思ったことを聞いたりもしますが、そういう時は「気持ちだよ」みたいな精神論が返ってきたり(笑)。

――平山さんが安蔵さんと重なる部分はありましたか。

 監督からは「安蔵さんと見た目は全然違うんだけど、どこか似ているんだよね」と言われて、それってなんでだろうなと考えました。おそらく、演じる上で僕が安蔵さんを思って演じていたので、それがそういう風に感じさせたのかなと思います。その人を演じるというのは一見自由がないのでは?と思うのですが、実際はそんなことはなく、自由に演じさせていただいた中で、監督から似ていると言っていただけたのは、すごく嬉しかったです。

――この作品の中で憧れるなあと感じた方は?

 榎木さんもそうですし、辰巳(琢郎)さんは、僕がデビュー当初からお世話になっているので憧れはあります。また、和泉(元彌)さんは、『ウスケボーイズ』から出演されていて、ソムリエとしてワインを開けるシーンがすごく美しかったんです。お芝居は気持ちで掛け合うシーンもあるのですが、技で魅せる美しさは和泉さんにしかできないものがあり、憧れましたし、尊敬できるところが沢山ありました。そして、竹島(由夏)さんもすごいなと思いました。一瞬で夫婦のような空気感を作り出していて。皆さん役にピッタリな方ばかりでした。

――この作品を通して発見や気づきはありましたか。

『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』

 初主演ということで、主役の仕事とはどうなんだろうと思っていたのですが、ずっと朝から晩まで撮影だったものですから、そういう繊細なことを考えている時間もほとんどなかったんです。食事も取れないぐらい撮影はすごく大変だったのですが、ものすごく撮影に集中できました。

 ただ撮影ですごく良かったところは今回ワインのお話なので、お酒を飲みながら撮影ができたことです。普通だったら忙しいときはお酒を飲んでいる時間もないじゃないですか。こんなにおいしい現場は中々ないなと思いながら撮影してましたね(笑)。

――1日中、飲みっぱなしの撮影の日もあったのでしょうか。

 いえ、朝からお酒を飲んでいるわけではなくて、その日の最後の撮影で飲むことが多かったです。セリフを言わなければいけないので、しっかり味わって飲めないのが残念でしたが、良い経験をさせていただきました。

――ちなみに平山さんはお酒強いんですか。

 結構強い方だと思います。あまり顔にも出ないんですよ。

――印象的だったシーンは?

 竹島さんが演じる正子とデートをするシーンがあるのですが、そこで入ったお寿司屋さんのシーンは、すごく印象に残っています。実はあのシーンが撮影のクライマックスでした。好きな人と初めてデートするシーンなので緊張感もありましたし、自分も緊張感をもって撮影に臨みたいなと思っていたのですが、監督からはもう少し肩の力を抜いて欲しいとリクエストがあったので、緊張感もありつつリラックスした雰囲気で撮影に臨みました。

役者というものが僕の生きがい

平山浩行

――榎木孝明さん演じる麻井さんが「若いうちはなんでも挑戦をしたほうがいい」といったセリフも本当にそうだなと思いました。

 やりたいことをやれと言われても、やりたいことってそんな簡単には見つからないじゃないですか。もう本当に見つけたもん勝ちですよね。何をしたらいいかわからない、というのはそれが普通だと思うんです。なので興味がないことでも一回やってみると、自分に向いているかがわかるんです。そこに飛び込む勇気が出てくると、色んなことのゴールに近くなるんじゃないかなと思っています。

――平山さんが今チャレンジしたいことは?

 具体的なものではないのですが、常に新しいチャレンジをしていきたいという気持ちは持っています。役者というのは経験したもの全て役に活かせることができます。なので何でも挑戦してみたいと思っています。

――いまはどんなことにハマっているんですか。

 いま僕は釣りにハマってるんですけど、釣った魚を自分でさばいて調理して、お酒を飲む。自給自足とまではいかないですけど、それが楽しくて。これがまた仕事として成り立って行く可能性もあるわけで、それはすごく面白いことだなと思っています。あとは、いつかワインを作ってみたいと思っています。

――そんな平山さんの活動の原動力は?

 この歳になってくると身体、健康のことを考えてしまうのですが、そういう時にやりがい、生きがいとは何なんだろうと思うことがあります。人というのは何かを課せられていると、それが生きる意欲になって、精神的にもすごくいいと思っています。なので僕の場合は仕事自体が活動の原動力になっているなと感じていて、役者というものが僕の生きがいなんだと思っています。

――この作品を観た方にどんなことを感じてもらえたら嬉しいですか。

 日本のワインを飲んでみたいと思っていただけたら嬉しいです。普通に飲んでも美味しいのですが、そこに作り手の気持ちが加わるとより美味しくなります。是非、映画を観て料理と合わせて飲んでいただきたいなと思います。

(おわり)

スタイリスト:久保コウヘイ
ヘアメイク:鎌田順子(JUNO)

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村上順一
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