嵐莉菜

 嵐莉菜(18)、奥平大兼(18)、アラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデー、川和田恵真監督が7日、都内で行われた映画『マイスモールランド』公開記念舞台挨拶に登壇した。

 在留資格を失い、普通の高校生としての日常が奪われてしまった17歳の在日クルド人の主人公サーリャ(嵐莉菜)が、理不尽な社会と向き合いながら、自分の居場所を探し、成長していく物語。世界三大映画祭のひとつ『第72回ベルリン国際映画祭』で日本作品初の「アムネスティ国際映画賞」特別表彰を受けた。

 サーリャの家族は、嵐莉菜の実家族が演じた。それぞれがオーディションを受けて実現した偶然の配役で「まさかこんなことがあるなんて」と驚いていた嵐莉菜。家族揃っての舞台挨拶に「信じられない光景。うちの家族にとっても貴重な経験です」と表情を緩ませた。

 実の家族だからこそ芝居にもリアリティがあった。川和田監督は「食事のシーンは食べているだけで家族そのもの。最後の面会のシーンは父と娘の関係性だからこそのシーンだと思う」。

 嵐莉菜も面会のシーンは思い出深いとし「撮り終えた後に監督が涙を流して下さって。自分の演技で人を感動させられたという初めての経験でした」

 サーリャの父を演じたアラシもそのシーンを挙げ「リハーサルで本気で叫んでいいと言われたので叫んだらリオンが本当に怒ったと思って泣いてしまって。それで撮影が一時中断して…」と回顧。監督も「本当のお父さんが怒ったら怖いよなって申し訳ない気持ちで。でもその映像はそのまま残っている」と明かした。

 サーリャの妹を演じたリリは、家族でラーメンを食べているシーンが印象的だったとし「お父さんの笑い方につられて笑ってしまって、楽しかった。いつもああいう和気あいあいとした感じで家族でラーメンを食べています」とはにかんだ。

 リオンくんは、奥平が演じる聡太がサーリャの家で食事をするシーンを挙げ「大兼さんとカレーライスを食べたところ。おいしかった」としっかりと答えた。

左から川和田恵真監督、奥平大兼、嵐莉菜、リリ、アラシ。手前はリオンくん

 家族が出演したというだけでも異例だが、嵐莉菜にとっては本作が映画初出演にして初主演を飾った特別な作品だ。公開を迎えるまで「長かったようで、でもこの場に立ったらあっという間だったなって。こんなにたくさんの方にがこの作品を観て下さってとても幸せな気持ちです」と晴れやかな表情で語った。

 この日は、川和田監督が在籍する映像制作者集団「分福」を率いる是枝裕和監督が川和田監督に手紙を寄せた。川和田監督は目に涙をため「ずっと是枝監督の背中を追ってきたので励まされます。ここで止まらず作品を届けていきたい。この2人(嵐莉菜と奥平大兼)とご家族と出会わなければこの作品は作れなかった」と感謝した。

 これを受け、嵐莉菜は「多くの人と作った作品。私も嬉しい」とし、最後の挨拶では「オーディションの時からこの作品への思いが強くて、絶対にこの役をやりたいと思っていましたし、そこから1年が経って、皆さんに見て頂いていることがすごく嬉しくて、幸せな気持ちでいっぱいです」と語り、口元を震わせた。

川和田恵真監督、奥平大兼、嵐莉菜

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