INTERVIEW

吉田美月喜

初舞台「毎日が充実」 『エゴ・サーチ』で主人公の恋人役


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年04月09日

読了時間:約7分

 吉田美月喜が、4月10日に初日を迎える舞台『エゴ・サーチ』に出演する。鴻上尚史氏が作・演出を務める作品で、2010年の初演、13年の再演を経て今回3度目の上演となる。自分の名前を検索してその評価や評判を調べるエゴサーチをきっかけに失われた記憶や届かなかった思い、苦悩などそれぞれの思惑が集まって真実が明らかになる。主人公・一色(演・今江大地)の恋人・小田切美保を演じる吉田は本作が初の舞台。Netflix『今際の国のアリス』やTBS日曜劇場『ドラゴン桜』、短編映画『Petto』で好演してきた彼女が初舞台で何を見せるのか。【取材・撮影=木村武雄】

初舞台

 取材するのは、『Petto』以来約8カ月ぶりだった。初々しさがあった初めての取材から回を重ねるごとに凛々しさが増しているが、この日はまたそれを感じさせた。

 記者「また顔つきが変わりましたね」

 吉田「会う度にそう言って下さいますね。ありがとうございます」(笑顔)

 記者「会う度に成長されているように見えるので」

 吉田「本当ですか!? 嬉しいです」(笑顔)

 『ドラゴン桜』では、高校生バドミントントップクラスの岩崎楓(平手友梨奈)とペアを組む清野利恵を演じた。岩崎への嫉妬心を持ち続ける難しい役どころだったが、見事に演じ切った。そして、『Petto』では夢と現実に揺れ動く女子高生を瑞々しく演じた。

 作品は彼女を成長させ、そして自信を持たせる。

 吉田「いま、とても充実しています」

 それが顔つきにも表れている。長い期間、共演者と苦楽を共にし、そして役を生き続ける舞台ならなおさらだ。

 「長期間にわたってほぼ毎日、共演者の方と一緒に稽古しているので刺激を受けていますし、すごくワクワクしています。とても充実した時間を過ごしています」

 吉田にとっては初舞台だ。

 「もちろん不安もあります。でも皆さんが優しくて面白くて。不安よりも楽しみの方が強いです」

 同じ舞台に立つ先輩の結木滉星は彼女の姿を「初舞台とは思えないぐらい堂々としている」と感心する。

 彼女は、稽古場を水を得た魚のように優雅に“浮遊”している。

 そんな彼女が演じる小田切美保は一色の恋人であるが、想いさえも恋人にも気づいてもらえない、ある秘密を抱える謎めいた女性だ。難しい役どころでもあり、どう演じるか腕の見せどころでもある。吉田はどう向き合っているのか。ここから一問一答。

吉田美月喜

演じる美保の強さ

――舞台に挑戦したいと思っていたそうですが、稽古場はどうですか?

 舞台はなにもかも初めての経験で、オーディションも稽古もどう進んでいくのか全く分からなくて(笑)。稽古2日目ぐらいまですごく緊張して、共演者の方ともそれほど話せなくて。でも今は和気あいあいとしていて楽しいです。

――ドラマとでは役の作り方も違うと思いますが、小田切美保という役にどう向き合っていますか?

 美保は明るくて元気な子ですが、初めはその明るさだけを感じ取って演じようと思いました。でも美保はいろんなことに葛藤していて、それに対する戸惑いや恋心とかも大切に演じたいと最近は思っています。鴻上さんが「この表情はもっとこうした方がいい」「繊細な気持ちを持って」と言って下さるのでそれを取り入れつつ、自分なりの美保を演じられるように頑張っています。

――美保の人物像で鴻上さんから言われたことは?

 「ただ明るいだけじゃなくて強さもかなり持っている子」というのは言って下さっていて、特に葛藤するシーンは私の表情が演じていると自然に曇りすぎてしまうようで「美保は強い子だから」と指摘を受けます。

――台本を読んだ印象だと美保に強さは感じなくて。

 美保のモデルとなった方がいらして、その方の本を鴻上さんから頂いて読みました。その方はすごくチャーミングだけど、自分の思っていることをしっかり文章にされている方。美保のセリフの中にもその小説に出てくる文章があって、強い意志を持った方が美保のモデルになっているので、その強さをちゃんと出しつつも、葛藤して演じられたらいいなと思っています。

――ネタバレになるので曖昧な表現にしますが、どうしても美保の姿は第三者から見ると悲しく映るんですよね。

 私もそうで、特に一色に会うシーンは台本を読んでいるだけでは悲しい気持ちの方が大きくて。でも鴻上さんのイメージはそうではなくて、「なんで私のことを覚えてないの!」と悲しく言うよりも、本当に疑問に思っているみたいな感じで言ったり、ちゃんと自分を持った上でしっかり伝えるようにしています。

――美保は最初“現状”に気付いていませんが、やがてそれを知る。でもそれを知った後も変わらずで。

 そうなんです。気付いた後も美保はいろいろ気持ちが暴走して「え?そっち行く?」というところもあるので、その中でもしっかり自分を持っているのがすごいなって。それはたぶん美保一人だったらそうなっていなくて、共に行動するクミラー(演・村上航)の存在がすごく大きいと思います。クミラーがいるから美保はちゃんと自分の葛藤と向き合えるし、ぶつかっていけるのかなと思います。

――本人の自意識と他者から見える姿の違い、それを演じるのは難しいと思います。でも確かにクミラーがいるからこそ、そういう思いになれているかもしれないですね。

 一人だったら落ちて行ってもおかしくないのですが、隣にクミラーがいるからこそ思いっきりぶつかっていくことができるのかなと思っています。

喜劇の要素も

――キャラクター同士の関係性はどう作っていますか?

 ゆっくり話せる時間があるので、例えば一色役の今江さんとは今まで一色と美保はどういうデートをしてきたのか、どう呼び合っていたか、距離感はどうなのかということを話しています。クミラーとは掛け合いが多いのでセリフ合わせをしています。クミラー役の航さんが「ここはもう少しこうしてみたら?」とか「風景を想像してみたら分かりやすいかも」とアドバイスして下さるのですごく助けられています。

――それぞれの関係性によってテンポも異なると思いますがその辺は?

 クミラーとの掛け合いは面白くていいと思っていて、ポンポンポンと行くように練習しています。ただ、面白いシーンをどう面白く演じたらいいのかが分からなくて悩んでいて。そんなときに航さんが「確かにお客さんから見たら面白いけど、それが何で面白いのかというと、そのキャラクターが本気でそれをやっているからなんだよ。本気で葛藤しているから、その姿が滑稽でお客さんに面白く見える。面白くしようとするんじゃなくて、キャラクターの感情に対して真剣に思いっきりやると自然と面白くなるから」と言って下さって、面白くしようという意識ではなく、役の感情を真剣に真っ直ぐに表現すればいいことに気付きました。

――本人は真面目にやっているけど滑稽に見えるというのは喜劇の要素でもありますね。それと同じように何か発見したことは?

 オーディションを受けた時の鴻上さんからの言葉ですが、初めてというのもあってちょっと不安になりながら演じていたら「演じているときは反省しちゃだめ、終わった後に思いっきり反省して、演じているときは自分は最高の女優だと思いなさい」と言って下さってハッとしました。普段の自分自身だと言いづらいセリフがあるんですけど、そういうのも恥ずかしがって言うのではなく「自分は最高の女優だ」と思い切りやることが一番大切なのかと気づかされました。行動や言葉一つとっても意味のある、感情のあるようにしないといけない、そういうのが分からないままオーディションでお芝居して、それを鴻上さんが見抜いて下さいました。

――今、美保になりきれていますか?

 演じている時は美保になりきれています。終わってからすごく恥ずかしくなることはたくさんあるんですけど(笑)。航さんもかなり本気でぶつかってきて下さるので、それにぼやぼやと返すのは失礼ですし、航さんも私の芝居を受けて瞬時に判断しながら返して下さるので、稽古場でいろんなことを試しています。私も本気でぶつかって美保を演じています。

――そういえば初めての舞台がマスクでの稽古という特殊な環境ですね。

 ようやくマスクを外しての稽古が始まりました。特に印象に残っているのはクミラーとの面白いシーンで、「航さん、こんなに面白い顔をされていたんだ」ということでした(笑)。マスクで稽古をしていると、近くで人と話すシーンでも近くに寄っていると思っていたものが、マスクを外すと「いや、ここまで気持ち的に近くないな」というのに気付かされることもあって。それが面白かったです。

吉田美月喜

作品自体にパワー

――改めて本作についてどう思いますか?

 キャラクター全員がちゃんと自分の信念を突き通しているのがかっこいいと思いました。いろんなキャラクターとの絡みの中で生まれる新しい感情や、作品自体にすごくパワーがあって、だからこそお客さまも観た後に元気になれるような、何か勇気をもらえたと思ってもらえるような舞台だと思っています。

――舞台という経験はご自身にとってどういうものになりそうですか?

 いろんな演じ方を知ることができてすごく勉強になっていて、改めていろいろな役を経験したいと思いました。今までも「将来いろいろな幅を増やしたいからいろいろな役をやってみたい」と言っていましたが、舞台と映像での演じ方が違うということに気づくことができましたし、自分の中で演技の幅が広がったと思うので、改めていい経験になっているなと思いました。

――本番に向けて楽しみにいていることは?

 私はこれまでの演技の届け方は画面越しでしたが、舞台はお客さまに直接お届けできる場であり、その面白さと空気感を味わえると思うと今からすごく楽しみです。もちろん緊張や不安もあります。今回の共演者のみなさんに聞くと「初日は緊張してセリフ飛びそうになるよ」と言われたので、セリフが飛ぶことだけはならないようにと思っています(笑)

(おわり)

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