INTERVIEW

乃木坂46岩本蓮加

真っすぐさが役柄に、大切にしている「継続は力なり」:『世の中にたえて桜のなかりせば』で映画初主演


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年03月31日

読了時間:約7分

 乃木坂46岩本蓮加が、宝田明さんとダブル主演を務めた映画『世の中にたえて桜のなかりせば』(三宅伸行監督)が4月1日に公開される。終活アドバイザーのアルバイトをしている不登校の女子高生の吉岡咲(演・岩本蓮加)が、一緒に働く老紳士の柴田敬三(演・宝田明)と共に様々な境遇の人々の「終活」を手助けしていくうちに、生き方と向き合い始める物語。岩本にとって長編映画初出演にして初主演となる。そんな彼女が演じる咲は真っすぐでピュアさが溢れる。その真っすぐさはそう簡単に出せるものでもなく、彼女に元来備わっている人柄が反映されたともいえる。ただ自身は意識して演じてはいない。だがその素質を見抜いていたのは生前の宝田さんだった。他界される4日前に行われた舞台挨拶で「彼女には品がある。大女優の片鱗がある」と絶賛した。岩本自身はどういう思いで臨んだのか。※インタビューは宝田さんが亡くなる以前に実施。【取材・撮影=木村武雄】

最初の撮影で迎えた山場

――主演での出演が決まった時の心境は?

 衝撃でした。「私でいいのかな」と思いましたが、がっかりさせたくないですし、期待に応えたいと、演技は初めてに近いですが自分なりに精一杯頑張りたいと前向きな気持ちで臨みました。台本の読み合わせ前に三宅監督に練習する時間を作って頂きました。セリフの言い回しや感情の乗せ方とかを試行錯誤して何度も繰り返しやって、そこで学ぶことが多かったです。本当にやって良かったと思います。

――実際の撮影現場ではどうでしたか?

 三宅監督は「もっとこうしてほしい」ではなく「どうしたらいいと思う?」と一緒に考えてくれましたので、ほぼ初めての映画出演で難しいところもありましたが、すごく恵まれていたと思います。心強かったです。自分では分からなかったんですけど、スタッフさんに「どんどん顔つきが変わってくるね」と言われることがありました。確かに完成したものを見たら、最初に撮ったシーンと最後に撮ったシーンでは表情に違いがあって。そういう変化が見えたのは面白かったですし感動もしました。そういうところにも注目してほしいです。

――最初に撮ったのはどのシーンですか?

 咲にとっての山場の、(咲の担任で国語教師の)南雲先生(演・土居志央梨)をスマホで動画を撮っている同級生の女の子とケンカするシーンです。最初に撮ったシーンでしたのでまだ現場にも馴染めてなくて、どうやって演じたらいいんだろうと迷いもあるような状態でした。試行錯誤しながら精一杯演じましたが、出来上がった映像を観ると私の中ではまだ咲ちゃんの顔というより私に近いなと。でも最後に撮ったラストシーンは咲ちゃんとして観れました。咲ちゃんがいろんな経験や出会う人を通して成長していく物語でもあるので、成長して顔つきが優しくなれた瞬間があのシーンにはあって、その変化が表れて自分自身も感動しました。

――そのケンカのシーンは激しく感情をぶつける芝居で、クランクインして間もない中では相当大変だったのではないかと。

 唯一、リハーサルできなかったシーンでもありましたので大変でした。大きい声を出したり、泣いたり、胸ぐらを掴んだり、一人では成立しないシーンでしたので現場に入ってやってみようかと。でもどう動いたらいいんだろうと戸惑ってしまって。何回も撮り直してすごく大変だった記憶があります。

――でも最初にあのシーンができたから、一気にその世界に入れたのではないかと。

 あの経験が最初にあったからこそ、他のシーンもスッと入り込めて演じられたと思います。山場を乗り越えたという感じがありました。

――必ずしも順撮りではなかったと思いますが、その辺りも難しかったのではないかと。

 すごく難しかったです。ちゃんと頭の中で想像しないとうまくいかないというのは実感しました。宝田さんをはじめベテランのキャストさんたちはそれができていてすごいなと思いました。台本を読み込んで自分で理解してちゃんと役に寄り添うというのがどれだけ大事なことなのかというのを学びました。

――役を掴めた瞬間は最初に撮ったシーンの他にありますか?

 リハーサルの段階では他のキャストさんとの掛け合いはほとんどできない状態でした。自分の中ではこういうふうにしようという考えがあっても現場に行って実際やってみると気持ちの入り方が全然違っていて。本番が始まってキャストさんとの掛け合いでどんどん咲が形成されていった感じでもありました。

乃木坂46岩本蓮加

乃木坂46岩本蓮加

咲の核、自然と表れた「ピュアさ」

――そもそも咲という人物をどう捉えて演じようと思いましたか。

 咲ちゃんは、いろんなことに悩んで諦めかけてるというか、学校生活も手放そうとしているところがあって。私にはそういう経験がないので、不登校になった咲ちゃんの気持ちを理解するのに時間がかかりました。台本にはどういう家庭で育ったのかまでは書かれていないので、咲ちゃんがなぜこういう境遇にあるのかというのは自分なりに考えました。南雲先生と一緒にいる時は甘えて年相応な感じがして自分にも重なる部分があるかなと。複雑な学校生活や家庭環境がなければ天真爛漫な明るい女の子だったのかなと思ったので、そういう内面がもうちょっと表に出ればいいなと思いました。

――岩本さん自身、過去に辛いと思った時期があったと話されていますが、この物語、そして咲に重ねた部分はありますか?

 私には結構「明るいような女の子」という印象が強いと思うんですけど、それは根本にはあるけど、やっぱり辛いことは辛いですし、乗り越えないといけないと思う場面はたくさんありました。咲ちゃんもたぶんすごく明るい女の子だと思うんですけど、いろんな環境や影響があって陰の一面も見られるようになったと思うので、そういう部分では似てる面も多くて重ねて見ていたと思います。

――ただその根にある真っすぐでピュアな咲の人物像は、岩本さんだったから出せたのではないかと思います。

 ピュアさは、私にしか出せなかった部分なのかな…。12歳の頃の方がピュアさは出せたかもしれないです(笑)。でもそう言って頂けてすごく嬉しいです。純粋だからこそ悩んでしまう部分はあると思います。経験を重ねていけば切り替えることもできると思いますが、向き合いたい気持ちがあるからこそ真剣に悩むと思いますし、いろんな人に出会って一人の女の子として成長していくというのもあると思います。

――その清純さは咲を演じる上でとても重要な核だったと思いますが、三宅監督や宝田さんから言われたことは?

 表情や目線の使い方を褒めて下さいました。演技のことで褒められることなんてないと思っていたのですごく嬉しかったです。いろんな役者さんのいろんな演技を見てきた方にそういう言葉を頂けて自信にも繋がりましたし、もっとお芝居をやりたいという欲も出てきました。

――女優としての才能を開花させた作品だと思いますが、この経験を今後どう活かしていきたいですか。

 宝田さんを始め大ベテランの皆さんの演技を間近で見て学ぶことがすごく多かったです。今後、演技のお仕事を頂けたらこの経験を活かしていきたいです。アイドル活動のなかでも表現というのは大切なので活かしていきたいです。

乃木坂46岩本蓮加

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モットー「継続は力なり」

――出演が決まった当初、メンバーの反応はどうでしたか? 特に同期の3期生は芝居経験者もいるのでどういう話をされていたのかと。

 決まったときはすごく喜んで「絶対、見に行くね!」と言ってくれました。同期はすごくホーム感があるんです。安らぐというか、皆の顔を見ると安心しますし、支えになっています。

――咲は自分の生き方を見直すわけですが、ご自身の原動力は? 過去には「自分の気持ちを言葉にすることが大事」とも話されていましたが。

 「継続は力なり」という言葉を大切にしています。ただ私は「夢」というものを明確に抱いたことがなくて。でも何か成し遂げたいものができたときに、絶対に続けないと何事も始まらないなと思っているので、ほんの些細なことでも例えば、何か勉強しててクリアしたい課題とかが出てきたときも、くじるけることがあっても絶対にやめない。ずっと継続してやればきっとうまくいくんじゃないかと思っています。私はそれをモットーにして何事も頑張ってます。

――それは自身の体験談から?

 そうです。昔から習い事を多くやってきました。もしダンスもやめてしまったら実力が落ちてしまいますし、続けてきたからこそ、今こうしてファンの方にも褒めて頂けて、メンバーにも「ダンスが上手」って言ってもらえていると思います。ただ…後悔してることで言うと…、新体操も習っていたんですけどやめてしまったらプライベートで柔軟体操をやらなくなるからあっという間に体が硬くなって(笑)。陸上とかも習っていたけどあっという間に足が遅くなるし…(笑)。今も続けていたら絶対に変わらなかったと思うので、継続は本当に大事なことだなってひしひしと感じます。

――それはギターもそうですね。

 ギターも趣味程度ですが細く長くやっていて、暇のときに触ったりするから上達はせずとも現状維持をなんとか保ってます(笑)。

(おわり)

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