橋本裕太「オーディションは結果を気にしない」その真意とは
INTERVIEW

橋本裕太

「オーディションは結果を気にしない」その真意とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:22年02月26日

読了時間:約8分

 シンガーの橋本裕太が、ソニーミュージックによる『Next Asian Stars オーディション』の審査員に抜てきされた。同オーディションはアジア進出を目標とした人材を2月4日から2月28日まで募集。近年、世界でアジアへの注目度はどんどん高まっており、2017年にメジャーデビューした橋本は、2019年に中国の上海に活動拠点を移し活動の幅を広げた。2021年3月に中国サバイバルオーディション番組『Youth With You3』に出演したのも話題となり、weibo(中国版twitter)ではフォロワー110万人超えという数字が、彼の人気を物語っている。インタビューでは、今年デビュー5周年を迎える橋本にここまでの活動を振り返ってもらいながら、オーディションの審査員に選ばれてどのように感じているのか、そして自身はどのような気持ちでオーディションに臨んでいたのか、など多岐に亘り話を聞いた。【取材=村上順一】

毎年新しい壁に出会えている

アルバム「1,300miles」通常盤ジャケ写

――北京オリンピック、日本人の活躍もあり、かなり盛り上がっていますが、中国で活動している橋本さんはどう感じていますか。(※取材日は2月中旬)

 現地はすごく盛り上がっていると聞いています。というのも、ちょうどオリンピックが始まった頃に日本に帰国することになったので、体感は出来ていないのですが、SNSで見て盛り上がってるなって。日本人が活躍しているのを見るとすごく嬉しいですし、同じ仙台出身の羽生結弦選手が中国でもすごい人気なので、ジャンルは違えど僕もそういう存在になれたらなと思います。

――羽生選手とはお話されたりしたことも?

 いえ、友達の友達というくらいでお会いしたことはなくて。

――いずれ対談を期待しています! さて、橋本さんは今年でデビュー5周年を迎えられますが、どんな5年間でした?

 自分の中で常に新しいことに挑戦していた5年でした。これまでカバーをしていた僕が初めて自分の曲をリリースして、ライブもおこなった1年目。お芝居に挑戦させていただいた2年目。今は中国でチャレンジさせてもらっていたり、毎年新しい壁に出会えているなと思います。良い意味での壁で、それを必死で登っている感じがしています。それがすごく心地よくて。

――そう思えるのがすごいです。大変なことだと思うのですが。

 確かにその瞬間は大変なんですけど、すぐそれも忘れてしまうんです(笑)。そして、あの時大変だったけど、やっておいて良かったと思えることもたくさんあって、けっこう頑張れてしまうんです。僕が好きな言葉に「今はすぐに過去になる」というのがあります。例えば今すごい緊張していても、それもすぐに過去になるし、それを気にしているのは意外と自分だけだったりして。そうするとそんなに大変なことなんてないんだろうな、と思えるようになれて。それが自分が前向きに変われたきっかけにもなりました。

――それはどんなタイミングで?

 中国に行ってオーディション番組に出演した後くらいだったと思います。なので、そのオーディション番組に出演していた時は、怖かったですし、逃げたいという気持ちも正直あって...。もちろん楽しみな部分もたくさんありましたが、言葉も通じない、知り合いもいない、文化も違うので不安はありました。でも、その番組が終えた時に「やって良かったな」と思いました。思い返してみると毎回そうだったなと。

――やってきたことに間違いはなかったと。いま文化の違いというのも不安要素とのことでしたが、「郷に入っては剛に従え」という言葉もあります。橋本さんは中国で生活していくにあたって、どのようなスタンスで活動されているんですか。

 生活面では中国の人になりきってみよう、と思いながら生活しています。でも、ステージ上では自分でしか出せないものを大切にしようと思っているので、自分らしさを大事にしています。なので、生活と音楽活動では考え方が変わるのですが、やっぱりその方が何事も楽しめますし、結果的に楽なんですよね。

――活動していく中で大変なのは言語だと思うのですが、どのように克服していったのしょうか。

 今も克服できているわけではないんですけど、その言語が好きだということと、現地に行ってたくさん会話をすることが重要だと思います。僕は2019年から中国には興味があったので、勉強することにすごく前向きでした。そして、寮に住んでいたので24時間中国語で話さないといけない、というのもあり、周りの環境にすごく救われたなと感じています。

――お友達も出来て。

 出来ました! そのおかげで冗談を言えるくらいには中国語も話せるようになってきました。

――ところで、音楽面で日本と中国での反応の違いみたいなのは感じますか。

 僕のオリジナル曲はけっこうポップなものが多いので、日本では「可愛い」とか「乗れるね」など言っていただけるんです。でも、中国では僕が普段中国語で話しているからなのか、「裕太が日本語で歌っていると頭良さそうに聞こえるね」って。母国語で歌って褒められるという変な感じがあります(笑)。僕が日本語で歌うことを中国の方が好きでいてくれて、本当にありがたいです。

 あと、生配信ライブをやると日本の曲をリクエストしてくださったりとか、番組で歌った楽曲で、一曲だけ日本語の曲があるんですけど、それが一番好きだから歌って欲しいと言ってもらえたりもするので、すごく嬉しいですね。

――ちなみに中国に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。

 2019年に中国語の曲を歌う機会があったのですが、その時にすごく面白いなと思いました。発音も難しいので、うまく出来なくてすごく悔しかったんですけど。そこから中国語にすごく興味がわいて、勉強し始めました。その中で中国の方と知り合いになったり、留学したのがきっかけとなり、「もっと中国のことを知りたい」と思うようになっていきました。

――実際に行ってギャップを感じたりしましたか。

 これは中国に限らずなんですけど、海外は日本と比べると皆さんストレートにもの事を話す、といったイメージがあったのですが、実際に行ってみたら全然そんなことはなくて、根本はみんな同じなんだと思いました。

――どんな体験があったのでしょうか。

 僕が中国の学校に入学した時のことです。当日にクラスがわからなくて道を生徒さんに聞いたんです。ジェスチャーで教えてもらったんですけど、結果迷ってしまいまして。そうしたら、その教えてくれた人が心配で付いてきてくれていて。

――すごく親切な方と出会ったんですね。

 それが中国に行ってすぐの出来事だったので、僕が思っていた世界のイメージとは違う、良いギャップを得ることができました。

準備すればするほどちょっとした失敗が悔しい

「Next Asian Stars オーディション」

――安心をもらって。さて、今回「Next Asian Stars オーディション」の審査員として参加されますが、今どんな心境ですか。

 正直、僕で大丈夫かなと思うところもあるのですが、僕が審査員として参加させていただくならば、皆さんと話せる機会があるのならば、中国に行って経験したことや、今後こうやって盛り上げたいとか、そういったお話をできるような審査員でいたいです。そして、一緒にアジアを盛り上げていける仲間に出会えるワクワク感がすごくあります。

――心構えとしては厳しくいきたい、とかありますか。

 厳しくやってみたい願望はあるのですが、たぶん僕は厳しくできないと思っています(笑)。なので、僕らしく、皆さんと同じ立場に立って出来たらいいなと思っていて。なぜ歌が好きなのかとか、そういった根本的なところを話せる審査員でいたい、一緒に盛り上げていけるスタンスで臨みたいです。

――橋本さんは当時、どんな意識で「Youth With You3」などのオーディションに臨んでいました?

 良い意味で結果を気にしない、というのがありました。オーディションは毎回課題曲があって、その度にお客さんの前でパフォーマンスすることになります。なので、ここにいる人たちが楽しんでもらえたらいいやというスタンスでした。その場にいる人が楽しめなければ、画面の向こう側にいる人もきっと楽しくないんじゃないかなと思いました。そう考えないと、我が強いパフォーマンスになってしまうとどこかで思っていて。

――オーディションで悔しいと感じた瞬間は?

 リハーサルでうまく出来ていると思っていたことが、本番で出来なかったことが一度だけありました。パフォーマンスがボロボロだった時よりも悔しくて、準備すればするほどちょっとした失敗が悔しいと感じました。人間なのでミスをしない、というのは難しいと思うので、そのミスをどれだけ小さくしていけるか、というのが課題でした。一瞬、その曲から気持ちが離れてしまったりすると、自分は「まだまだだな」と感じるので、突き詰めていきたいところでもあります。

――橋本さんがいま追求していきたいことは?

 日本の良さを中国に伝えていくこと、中国の音楽など「こんなに良い曲があるよ」とか、今の僕が言うのもおこがましいのですが、それを伝えていける存在になれたらと思っています。その中でまずは中国語でしっかりと歌えるようにしたいです。

――中国語で歌唱している曲を聴かせていただきましたが、全く問題ないように思えますが。

 ありがとうございます。今も歌えないわけではないんですけど、まだまだ問題点はあるんです。日本語の曲を中国語でカバーしたり、その逆もやっているので、それは今後も継続してやっていきたいです。

――中国で代表的な曲といえば?

 「水星記」という曲は、中国の多くの方が知っている曲です。太陽と水星をテーマにした曲なのですが、太陽と水星は近くにいるけど決して出会うことはない、それをラブソングとして昇華した曲なんです。メロディもすごく良いので、日本の皆さんにも是非聴いていただきたいですし、これからも中国の美しい楽曲を届けていきたいです。

(おわり)

作品情報

橋本裕太 世界デビューアルバム『1,300miles』

2022年6月22日リリース

完全生産限定盤: 13,000円+税

通常盤:2,728円+税

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