INTERVIEW

土屋太鳳

妻役に奇縁「何か宿命みたいなものを」:『大怪獣のあとしまつ』でヒロイン


記者:木村武雄

写真:興梠真穂

掲載:22年02月11日

読了時間:約7分

 土屋太鳳が、山田涼介主演の映画『大怪獣のあとしまつ』(公開中、三木聡監督)でヒロインを務めた。誰もが知る巨大怪獣の、誰も知らない死んだ後の物語。その死体処理に奮闘する特務隊員の帯刀アラタを山田が演じ、土屋はアラタを支える環境大臣秘書官の雨音ユキノを演じる。特撮好きで過去には『ウルトラマン』シリーズにも出演しており、本作の出演は「夢のよう」と目を輝かせる。心構えとして「キャラクターの影の部分も伝えたい」とも語っていた土屋は今回、どのように臨んだのか。【取材=木村武雄/撮影=興梠真穂】

環境大臣秘書官の雨音ユキノを演じる土屋太鳳(C)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

特撮経験がヒントに

 松竹と東映が創立以来初のタッグで挑む空想特撮エンターテイメント。「こういう時代だからこそ実現した企画だと思いますし、そういう機会に巡り合えて心から良かったと思います」と心を躍らせる。

 土屋自身も特撮が好きだ。「ウルトラマンゼロはもちろん、『仮面ライダーアギト』の真魚(まな)ちゃんも好きです。真魚ちゃんは日常生活のなかから大切なことを教えてくれました」

 過去には映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』でヒロインのエメラナ姫を演じている。「まさか私が特撮のヒロインになれるとは思ってもいませんでした。勇気をもらえた作品でヒロインを務めさせて頂いたのはとても嬉しかったですし、作品を見た子供たちが将来こうした作品に出る可能性があると思うと、しっかり生きないといけないなと思いました」

土屋太鳳

 特撮好きだからこそ気になっていたことがある。「倒された怪獣はどうやって後始末するのかなとか、倒壊したビルとかはどうなってしまうんだろうと。なので、こうして物語になって、本当にあるのかもしれないというリアリティをもって作られることに驚きましたし、嬉しかったです」

 ただ、実際に大怪獣が目の前にいるわけではない。グリーンバックでの撮影は難しさもあったようだ。「怪獣の大きさを数字で言われても想像しづらくて」。その中でヒントになったのは、過去に出演した特撮での経験。「助監督さんに『特撮では、人は大袈裟に表現しないとウルトラマンや怪獣に負けちゃうんだよ』と教えて頂きました。その言葉を思い出しながら恩返しのつもりで取り組みました」

 いざ出来上がった作品を見て…「なんじゃこりゃーってなりました(笑)」。あまりの迫力に度肝を抜かれた。「希望」と名付けられた大怪獣は高さ155メートル、全長380メートル。想像を超える大きさだった。

ユキノの本質

土屋太鳳

 その大怪獣の後始末を命じられたのは特務隊員の帯刀アラタ。そのアラタを見守るのが土屋演じるヒロインの雨音ユキノだ。ユキノは元特務隊員でありアラタの元恋人。現在は総理秘書官・雨音正彦(演・濱田岳)の妻という役どころだ。土屋は過去に、役者としての心構えを「キャラクターの人間くさい影の部分を伝えられたら」とも話していたが、今回のユキノはどうだったのか。

 「この作品はユーモアのなかに一貫して社会風刺というものが表現されています。そのなかでのヒロインとなると、ヒーローと同じ役割を持ったヒロインなのか、またはヒーローとは全く違う環境の子が日常の大切さを伝える役割を持ったものなのかに分かれると思います。ユキノの場合はアラタと元同僚のプロフェッショナルですので、前者の方だと思います。更に、雨音さんと結婚していてアラタとは元恋人。愛情と恋の違いといいますか、女性としても、女優という言葉を付けて頂いているからには、愛情や恋という部分でしっかり表現できたらいいなと思いました。ユキノは環境大臣秘書官で知性もあります。知性がある方は落ち着いている印象です。言葉や所作、行動も自分が納得してから移ると思います。冷静な部分を物語の前半で表現して、後半はその感情が押し出される。それがアラタへの想いでもあると思います。その幅は意識しました」

土屋太鳳

 ユキノのキャラクター性を「知性があり冷静」と分析した土屋。環境大臣秘書官という要職もそれを際立たせている。しかしユキノの心根は異なるところにある。それを象徴するシーンが、研究室で窓越しに呼び掛ける場面。気づいて欲しいと飛び跳ねるさまは、自身を律する秘書官とは異なる本質が見え隠れする。

 「あの姿がユキノの学生生活の時の本質なんじゃないかと思います。本当はああいう子なんだと思いますが、いろんな事がありトラウマを抱えて今はああいう風になって。でもあのシーンはちょっと、私の素の部分が入っているかもしれないです(笑)」

 土屋は、ユキノの本質を数分のシーンで見事に表現させた。

かっこいい座長・山田涼介

土屋太鳳

 一方、アラタを演じた山田とは本作が初共演となる。

 「すごく素敵な方でした。コンディションが安定しているというか、普段からの立ち振る舞いもお芝居も穏やかでいらっしゃる。座長として引っ張っていくことはすごく難しいと思いますが、涼介さんの存在自体が現場を柔らかくするんです。私が今回映像を観て思ったのは、涼介さんが映ることによって、観ている人たちがアラタに対して愛情が湧くこと。『燃えよ剣』を拝見した時にもそう感じましたし、その組織に涼介さんがいることによって、大切なものを思いだす存在になるというか。グループもやられているから、アドリブを返すのも上手ですし、本当にかっこいい座長だと拝見しながらお芝居をやらせていただきました」

 穏やかな山田が作る雰囲気は、ユキノを演じる上で助けにもなった。「ユキノとして現場で立たせて下さる、呼吸をして下さる。スタートとカットで人がガラっと変わる事もないですし、常に日常の中に本番があったような感覚で助かりました」

演じてきた役に宿命

土屋太鳳

 キャラクターが本来持っている本質を体現させている土屋は、これまでも様々な役どころに挑んできた。

 「高校生を卒業したら妻役を頂いて『いきなりこっちに来たな』とは思ったんですけど(笑)。私自身に何かプランがあるのではなくて、頂いた役がそういう役でした。20歳までに2、3回くらい奥さん役や赤ちゃんを産んでいた役をやらせて頂いて、何か宿命みたいなものがあるんだろうと思います。女性として表現できるものは今後もやっていきたいです」

 昨年公開されたアニメ映画『アイの歌声を聴かせて』では女子高生に扮したAI、シオンの声を演じた。女性は女性だがロボット。抑揚のない機械的な話し言葉だが土屋はそこにもシオンの奥底にある「人間味」を表現させた。

 「エンターテインメントを届ける立場にいるのであれば、引き続きいろんな役をやりたいです。祖父が医者で、ラバウルという激戦区から水木しげるさんと帰って来た人でした。そういう時代ものもやってみたいです」

特別な場所

土屋太鳳

 SNSなどに綴られるメッセージには人々への敬意がみられ、登壇した舞台挨拶ではまずは周囲への感謝の言葉を述べてから自身の話をする。土屋の本質にはそうした気遣いや優しさがある。昨年行われた『アイの歌声を聴かせて』舞台挨拶では、当時は久々の有観客ともあって涙した。そんな彼女の原動力はずばり「ファン」

 「観て下さる方がいて、そこで初めて伝わったという瞬間が得られます。ファンクラブでいろいろとやらせて頂いていますが、自分がやりたい事、繋げ方みたいなものを模索しながら楽しくできたらいいなと思います」

 ファンとの対面の場でもある舞台挨拶は自身にとって特別な空間だ。

 「とても大切です。会える瞬間ですから。役者は意外と孤独というか、作品を作っている時は不安もありますからこうして観たいと思って下さった方がいたと実感すると嬉しいですし、自分が演じた役に対して、その人の人生と重ねてくれる瞬間があればいいなと。それがちょっとの救いになればいいなと思います」

土屋太鳳

 充実感がにじみ出る。そんな土屋に作品は異なるが、シオンの名セリフにかけてこう聞いた。

 記者「いま、幸せ?」

 土屋「はい! とても幸せ!」

(おわり)

ヘアメイク:石川ユウキ(Three PEACE)
スタイリスト:津野真吾(impiger)
衣装:Creat Clair、ma chere Cosette?

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興梠真穂

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