川嶋あい×藤巻亮太「生き方と向き合えた」コラボ曲で見えた気付きとは
INTERVIEW

川嶋あい×藤巻亮太

「生き方と向き合えた」コラボで見えた気付きとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年04月06日

読了時間:約10分

 川嶋あいと藤巻亮太がコラボレーションした「どうにか今日まで生きてきた feat. 藤巻亮太」が3月12日に配信リリースされた。このコラボが実現した経緯は、2019年度に藤巻がナビゲーターを務めたJ-WAVEの震災復興支援ラジオ番組「Hitachi Systems HEART TO HEART」に川嶋がゲスト出演したのがきっかけ。「どうにか今日まで生きてきた feat. 藤巻亮太」は、川嶋が作詞、藤巻が作曲を担当し、直接の打ち合わせの後、電話でのやりとりを繰り返す中で完成した1曲。川嶋は同曲の作詞について「こんなにも自分の人生を思いながら書けた曲は初めて」と語った。インタビューではお互いの印象から、楽曲制作での気付き、音楽の力を感じた瞬間など、代表曲に卒業ソングを持つ2人に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

お互いの印象

川嶋あい×藤巻亮太

――資料を拝見していたらお2人はデビューが2003年で同期だったんですね。

川嶋あい えっ、そうなんですか!

藤巻亮太 そうでしたか。すごい! 僕はインディーズでのデビューが3月でメジャーデビューが8月なんですけど、川嶋さんは?

川嶋あい 2月14日なんです。私はレミオロメンさんの曲を昔から聴いていたので、ずっと先輩だと思ってました。

藤巻亮太 イメージの逆転現象が起きました(笑)。

――藤巻さんにとって3月というのは「3月9日」という曲もそうですけど、重要な月ですね。

藤巻亮太 確かにそうなんです。「3月9日」という楽曲は元々、幼馴染の結婚式のために作った曲なんです。“サンキューの日”、つまり“ありがとうの日”に結婚するということで、すごく良い日だなと。この曲はドラマ『1リットルの涙』の影響もあって合唱曲として歌っていただいたり、卒業シーズンとも重なり広がっていったんですけど、卒業式のことは全く意識していなかったので、皆さんに新しい意味を持たせていただいた、という感じなんです。

――幼馴染の方はこの曲が広がっていったことにどういう反応を?

藤巻亮太 彼は淡々としていて「すごいね」みたいな(笑)。僕の中ではその幼馴染に向けて作った曲なので、その意味は今も変わっていないです。

――川嶋さんはバレンタインデーにデビューされて、イベントの日で覚えやすくていいですね。

川嶋あい はい。いまだにバレンタインデーになると「デビュー日だね。おめでとう!」と周りの方たちから言ってもらえるので嬉しいです。

――さて、今回のコラボは2019年、藤巻さんがナビゲーターを務めたラジオ番組に川嶋さんがゲスト出演された事がきっかけで繋がったとお聞きしています。当時お互いどんな印象を持っていましたか。

藤巻亮太 そのラジオ番組が震災復興に関する番組だったということもあり、復興に向けてどのように関わってきたかということを2人で話し合うものでした。その時から、川嶋さんはすごく生きることに対して芯がある、凛とされている方だなという印象でした。幹がしっかりされている美しい木というイメージで、言葉は柔らかいんですが、説得力がある、その印象はいまだに変わらないです。

川嶋あい 藤巻さんは温かくて、柔らかくて毛布みたいな方だなと思いました。不純物がないと言いますか。私の中で藤巻さんの楽曲は、複雑でカッコいいロックをやっているというイメージがありました。それはコード感から感じるんですけど、それもあって私の中で少し近寄り難そうなイメージもあったんです。でも藤巻さんはそういう感じではなく、話す言葉もすごく優しくて。無添加でオーガニックなんです。裏表がなくて自然体なんです。

――確かに今こうやってお話を聞いていても優しさを感じます。藤巻さんは話す、ということに対して意識していることはありますか。

藤巻亮太 僕は昔、しゃべること、MCとかすごく苦手だったんです。でも、一人になってからしゃべる場面が多くなって、ちゃんと整理して伝えなきゃいけない、ということがこの10年で増えてきました。意識としては聞いてくれる方がわかりやすいように話さなければ、と変化してきた部分でもあるので、嬉しいです。

――その共演から少し時間が経つんですけど、印象が変わった部分もありました?

川嶋あい 一緒に作業して変わったというより要素が増えていきました。藤巻さんの新しい一面、ミュージシャンとしてだけではなく、すごいプロデューサーだなと思いました。

藤巻亮太 僕も同じく、要素が増えていった感じです。凛として強いだけではなく、すごくしなやかで、もしかしたら、執着されているものがないんじゃないかなと思いました。色んなことに対してクリエイティブなんです。僕の中でクリエイティブな人というのは掴むのも大事なんですけど、捨てるのが上手い人だと思っています。川嶋さんはこれは違うと思ったら、どんどん手放していける人ですごいなと。

川嶋あい (笑)。確かに私は本当に執着しない性格なんです。今回藤巻さんとずっと電話で制作のやり取りをしていたんですけど、やってみて気づいたことが自分は良い意味でこだわりがないなということでした。

藤巻亮太 それはすごく深いなと思いました。SDGs(Sustainable Development Goals)が今話題になっていますけど、そういったことにも積極的に活動されていて、使命感だったり突き動かされているものがある方なんです。執着はないとご自身でも仰っていますけど、エネルギーをすごい持っている方だなと思いました。このコラボ以降の川嶋さんの楽曲がどうなるのか、というのも楽しみになりました。

川嶋あい どんな曲ができるのか、それは私自身もすごく感じています。

川嶋あいの原動力とは

――さて、今回どのような制作の流れだったんですか。

川嶋あい 対話していく中で楽曲の方向性が決まっていきました。対話の中で自然と生まれていくことにも何の抵抗もなかったんです。藤巻さんはゴールが見えていらっしゃって、そこに導いていただいた感覚がありました。

藤巻亮太 いやいや、決してゴールは見えていたわけではないんです。ただ、川嶋さんが歌うべきこと、書くべきことが絶対にあるという確信はありました。それは、自分の執着ではなく「周りの人に応えたい」というお話を電話でしていて。それが川嶋さんを動かしているモチベーションだったんです。そのためだったら自分のエゴはいらない。その中に自分をどう感じられるかというのもあって。

川嶋あい そうなんです。そのお話をしてからまた書く言葉も変わっていきました。

――今回は川嶋さんが作詞、藤巻さんが作曲を担当されていますが、逆のパターンもありえたんですか。

藤巻亮太 どちらが担当するかは決めてはいなかったです。むしろ、最初は僕が作詞で川嶋さんが作曲、というのをスタッフさんも考えていたんじゃないかなと思います。川嶋さんが変化を起こすべく僕を呼んでくれたというならば、歌詞で新しい言葉に出会って行くことが、川嶋さんの変化としては大きいのかなと思い、作詞していただいた感じはあります。

 歌詞を書くというのは時にすごくしんどいと思います。でも、そこに挑むというのは大事なことで、何かを突破するきっかけにもなります。この世界を見て、必要なことを言葉にしていくことも大事なんですけど、この一度しかない人生の中で感じている何か、自問自答して出てくるものも大事で、その二つを行き来するのも大変なんです。

川嶋あい もし、逆だったら藤巻さんはどうされていたと思いますか。

藤巻亮太 たぶん、川嶋さんに歌詞、言葉についてすごく色々質問したんじゃないかなと思います。これを歌うとしたらどういう気持ちなのかとか。

――いずれそのパターンでのコラボも聴いてみたいです。制作の中で気づきもありましたか。

川嶋あい 今回私は曲が先にあって、歌詞を書かせていただいたんですけど、それは藤巻さんのコード感に言葉を乗せたいと思ったからなんです。その中で私の世界観を大切に、というのがあったので、変えても良いんだという気づきもありました。

藤巻亮太 川嶋さんと一緒に作業して、言葉の世界観の大切さも再認識できて、貴重な経験になりました。この曲がこの時代にある意味というのもすごく感じることができ、大好きな曲になりました。タイトルも懐かしいフォークソング的な感じなんですけど、逆にこのタイトルは新しい、一周回ってすごく良いんじゃないかなと思っています。

――タイトルもメッセージ性が強いですよね。ところで今回、曲はいくつかご用意されていたんですか。

藤巻亮太 1回目のミーティングから自分の中でこういうメロディが良いなと思ったものをいくつか作っていました。そして、川嶋さんが最初に作ってきてくれた歌詞の中にこの「どうにか今日まで生きてきた」という言葉があって、直感的に「これだ!」と思いました。この言葉の向こうに川嶋さんが書くべき何かがあるように思えたんです。あと、僕が作ったメロディにこの言葉がハマっていたので、この曲でいこうと決めました。でも、この歌詞には最初、対象となる「あなた」というのがいなかったんです。

川嶋あい 最初はただ自分の事を歌っている歌詞でした。そこに「あなた」という対象を入れたらどうか、というご提案をして下さって。それで「あなた」を入れたらすごく世界が広がりました。

藤巻亮太 「どうにか今日まで生きてきた」という言葉は川嶋さんの言葉だけど、今ではみんなの言葉でもあるんじゃないかなと思ったんです。大袈裟かもしれないけど、コロナ禍もあり、嘘ではないリアルな言葉だと思いました。

――曲として印象的なのがイントロや間奏、エンディングでも登場するコーラスのイメージは最初からあったんですか。

藤巻亮太 これこそコラボの醍醐味でした。一番が終わった後にインター(間奏)があって、そこでこのメロディをウーアーで歌っていました。そこに川嶋さんが「言葉をつけてみたらどうですか」と、書いてきてくれたのがこの英詞なんです。本当にこの言葉がすごく良いなと思いました。まだこの時イントロは出来ていなくて、ブラスのフレーズが何となくあるという感じでした。ここにもう一度あの英詞を登場させられないか、と思いイントロとアウトロになったんです。

――イントロから川嶋さんの歌に入るところは、転調によって世界観が変わりますね。

藤巻亮太 これはアレンジをして下さった河野伸さんが、歌いやすさも含めて転調した方が良いだろうと考えて下さって。僕もこれは転調したらより音楽的に深くなるなと思いました。すごく転調が多い曲なんですけど、コラボだからこそ生まれたものの一つだと思います。デュエットではなく、川嶋さんがソロで歌うときは転調しないで歌うのも面白いかなと思います。

――お2人でのレコーディングはいかがでした?

川嶋あい レコーディングでも藤巻さんにすごく助けていただきました。ピッチや表現方法など細かいところなんですけど、この曲が目指すところをブレずに導いて下さって。藤巻さんのレコーディングでは、歌声の力に圧倒されました。その姿をみてこれはやっぱり藤巻さんの曲だと思いましたし、プロデューサーとしての藤巻さんを感じられたレコーディングでした。

音楽の力を感じた瞬間

川嶋あい×藤巻亮太

――この「どうにか今日まで生きてきた」を聴いて救われる方もいると思うんですけど、お2人は音楽に救われた経験はありますか。

藤巻亮太 救われたのとは少し違うのかもしれないですけど、音楽の力を感じた瞬間というのはありました。つい最近の話なのですが、学校の卒業式にサプライズで歌わせていただいたことがあったんです。昨年はコロナの影響で生徒さんも修学旅や文化祭など全て中止になってしまったという話を事前に聞いていたんですが、一つの情報として捉えていたというのが正直なところでした。

 でも、サプライズで幕が開いて生徒さんが目の前に見えた時に、ひとつの情報だったその言葉が生身の言葉に変わってしまい、歌えないぐらいこみ上げてくる感情があったんです。それがどのように伝わったかは定かではないんですけど、その時に僕は音楽が持っている力というのを感じました。その時に自分ができることだったら何でもやります、という気持ちになれたんです。

川嶋あい 私も同じような気持ちになりました。歌が始まるとその歌がさらっていく瞬間というのがあると思うんです。特に大事な式典とかだと特別な時間ということもあり、歌の持っている意味を感じて、自分の曲なのにその歌詞を改めて振り返って噛み締めている自分がいるんです。あとそこにいる生徒さんや先生方の気持ちも考えてしまって、ここまで自分の歌詞を一言一言噛み締めて届けた、というのは今回が初めてでした。全ての人にとって歌が全てではないとは思うのに、でもあの瞬間は歌が全てなんじゃないか、と思えるような空間だったんです。

――貴重なご経験されたんですね。最後にこれからの音楽活動への意気込みをお願いします。

藤巻亮太 このコロナ禍で「自分に一体何ができるのか」ということを問い直す機会になったと思います。改めて自分は歌を作って歌っていくことしかできないと感じました。一回一回のチャンスをすごく大事に全身全霊で臨んでいきたい、ライブが出来るのも当たり前なことではないので、その重みを大事に活動していきたいです。

川嶋あい 今回、自分自身の生き方にすごく向き合えたんです。私が一番落ち込んだときはいつだったかなとか、勇気を出して立ち上がったときはいつだったかな、と幼少期から振り返って歌詞を書いたんです。こんなにも自分の人生を思いながら書けた曲は初めてで、精神的に前に進めた自分がいて、最初の歌詞から考えると「この子、成長したな」と感じられたんです。それもあってこの先、自信を失くしたり、後ろ向きな気持ちになることもあるかも知れないですけど、絶対また強くなれると信じて、この曲も、自分の生き方も大切にしていきたいです。

(おわり)

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