INTERVIEW

井樫彩監督

その人の「闇」に魅力を感じる。
『NO CALL NO LIFE』でメガホン


記者:鴇田 崇

写真:鴇田崇

掲載:21年04月02日

読了時間:約4分

 2016年の公開の映画『溶ける』で、日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品をし、2018年には初長編作『真っ赤な星』で劇場デビューを果たした新鋭、井樫彩の脚本・監督の映画『NO CALL NO LIFE』が公開中だ。原作は壁井ユカコの同名小説で、親からの愛情を知らずに育った主人公の女子高校生・有海(優希美青)と、同じ境遇の不良少年・春川(井上祐貴)が織りなす、痛いほどに切ないミステリー・ラブストーリーとなっている。

 井樫監督は、初長編作『真っ赤な星』(18)で劇場デビュー。山戸結希プロデュース「21世紀の女の子/君のシーツ」(19)、TVドラマ「荒ぶる季節の乙女どもよ。」(20)などを経て、映画『NO CALL NO LIFE』では弱冠24歳にして、ホリプロ60周年記念作という大役もまっとうした。「俳優がとにかく好き」と語る井樫監督は、本作をどう演出したのか。作品に込めた思い、将来像、さまざま聞く。【取材・撮影=鴇田崇】

――今回の映画『NO CALL NO LIFE』は原作がありますが、映画化を進めていく上で苦労したことはありますか?

 今回は小説が原作で、その映画化なのですが、今まではオリジナルばかりだったので、それこそパーソナルな部分を描くことが大半だったんです。初めて自分の身から出ていないものを、映画として撮ることになりました。最初、自分はどういうスタンスでやればいいのかわからず、なかなか世界に入りきれなかったのですが、彼・彼女を好きになる気持ちがわかると、そこを切り口に物語の世界へ入り込めました。自分で経験もしていないのに、入り込めた感覚はすごくありましたね。

――その入り込めた瞬間は撮影中ですか?

 そうですね。ふたりを見ていて、そう思いました。もともとわたしは、俳優っていう人間が大好きなんです。

――優希美青さんが「監督に闇があると言われた」とおっしゃっていました。

 (笑)。そういう人のほうが、魅力があるとわたしは思うんです。お芝居や表現をするとなった時に、彼らの彼女らの実人生も役に影響してくると思っています。どういう人生を歩んできたのか、そういうものが映像にした時に如実に出る。悲しい気持ちになったことがある、何かを失ったことがある、実人生で泣いたり笑ったりしたことがあれば、それが芝居に出る。そういう表現を見ていて、生きていることを追体験する感覚になるので、わたし自身もそこで完全に入り込んで行く感覚はいつもあるんですよね。

――また、自分自身と向き合ったほうが、いい作品になるものでしょうか?

 そうですね。わたしの場合、たとえば不幸なことがあってもネタになると思うタイプなので、あの時の感情がこのシーンにリンクするだろうなとか、わたしも似たようなことを思ったことがあったなとか、仕事に転嫁していることはありますね。

――映画は、一度目と二度目で印象が違うような気がしましたが、その受け止め方・解釈の幅みたいなものはあえて意識していたことでしょうか?

 わからないことが好きなんです。わかりきっていることを表現しても意味はなくて、わからないからこそ小説や映画、アニメなどでわからない気持ちを表現していくわけですよね。シーンによっては明確に答えを提示しないし、観た人に委ねる、ということもしています。

――観た人によって正解が違ってよいという。

 そうですね。あるシーンについて、「あれはこういうことですか?」と聞かれることも多いのですが、わたしが意図したこととは違うけれども、だからといって間違った解釈になっているわけでもない。観た人がそう思うなら、それで良いなと。

――さて、本作はホリプロ60周年記念という節目の記念作でもありました。個人的にはオールスターの、お祭り的な作品ではなく、非常に質の高いある種の青春映画だったことに驚いています。

 周年映画でよくこれを撮ったね、みたいなことは言われます(笑)。キラキラ映画じゃないじゃないかと。60周年映画を撮るという意識はあまりなくて、良い映画を撮りたいと、それだけを考えていました。

鴇田崇

井樫彩監督

――今回、一番の気づきは何でしたか?

 作品を撮るたびに、その時にしか撮れなかったものを撮っているなという感覚があります。その時にベストは尽くしているけれど、毎回反省はありますね。自分が本当にやりたいクリエイティブを可能にするには、もうワンステップ自分が上がらないといけない現状があるので。さらに頑張らなくちゃいけない。そういうことが続いている感じはしますね。

――将来像みたいなものはありますか?

 今アジアでは韓国映画が力を付けている現状があって、日本でも海外に通用する映画を撮らなくちゃいけないなと。みんなそういう気持ちがあると思いますけど、世界に通用するようになりたいなとは思います。日本の人にも伝えたいけれど、海外の人にも伝えたいです。

――同世代でディスカションを?

 します(笑)。しますが、くだらない話が多いかな。この間観た映画の話とか、つまらないだ、どうだとか、好きな人がどうとか、真面目な話は意外にしないですね。たまに演出の違いみたいな話もしますけど、映画業界の未来とかそういう話はしない。でも、みんな野心はある。そういう人が多いと思います。

――最後になりますが、これから映画を観る方々に一言お願いいたします。

 若いふたりのぐちゃぐちゃな恋愛物なので、観ることに体力が必要な部分もあるのですが、キャスト・スタッフ一丸となって画も音もこだわって作りました。ぜひ、スクリーンの暗闇の中で観てほしい作品です。よろしくお願いします。

『NO CALL NO LIFE』
公開中
配給:アークエンタテインメント
(C) 2021 映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会

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