“誰にも似ていない声”? ロザリーナの魅力に迫る

ロザリーナ
ロザリーナが3月31日、2ndフルアルバム『飛べないニケ』をリリース。本作は、2020年1月29日リリースの1stフルアルバム『INNER UNIVERSE』から約1年振りとなる、新曲7曲を含む計10曲収録。ロザリーナはデビューから、ドラマや映画の主題歌を担当したりTikTokなどのSNSで注目を浴びたりと、独自性溢れる歌声を響かせ、多くのリスナーを魅了し、各方面から話題を集めている。ここでは、そんなロザリーナのアーティスト像に迫りたい。
どんな注目を浴びている?
ロザリーナとは、一聴して魅了される歌声の持ち主で、その歌声を鮮やかな色彩の音楽性で拡張し続けているアーティストと言えよう。その魅力と、デビューからの活躍の詳細について触れたい。
2018年4月にロザリーナは「タラレバ流星群」でメジャーデビュー。類まれな歌声を持ち、キュートなルックスとエッジの効いたサウンドと、その才能に触れた関係者やクリエイターからは賞賛の声が上がる。
これまでどんな作品を発表して注目を浴びてきたか、一部抜粋すると以下のものが挙げられる。2019年4月、アニメ『からくりサーカス』主題歌「Over me」、同年6月、NHK『みんなのうた』に書き下ろした楽曲「I.m.」、昨年 7 月に三井アウトレットパーク『横浜ベイサイド篇』CM ソングとなった「moon & sun」、 同『25 周年記念 SALE 篇』CM ソング「NEVERLAND」、ドラマ『ナイルパーチの女子会』主題歌の「涙の銀河」、TikTokで「何になりたくて、」が注目を集めるなど、メジャーデビューから約3年間で、他にも様々な活躍を見せている。
そして、ロザリーナは2016年にキングコング西野亮廣作の絵本「えんとつ町のプペル」テーマ曲を歌唱し、2020年12月25日公開アニメ映画『映画 えんとつ町のプペル』のエンディング主題歌「えんとつ町のプペル」を担当。
2019年のインタビュー時に、「ターニングポイントとなる人との出会いは?」と聞くと、「西野亮廣さんとの出会い」と、答えていた。そこからは、ロザリーナにとって「えんとつ町のプペル」テーマ曲、同作品の映画エンディング主題歌を担当したことは大きなポイントなったことがうかがえる。
注目の魅力ポイントは“等身大の歌声”
ロザリーナはデビューから独自性溢れる歌声でリスナーを魅了し、それは本作でも感じられた。チルアウトなサウンドテイストの1曲目「Full of lies」をはじめとする各楽曲では、ロザリーナの歌声が浮遊し、包み込むように耳を覆い、聴き手の心に届く。
ロザリーナの歌声は非常に耳に残りやすくも“聴き心地が良い”という点が光る。スモーキーさ、ハスキーさ、ウィスパー成分、煌びやかな声の倍音成分、これらが交わった独特の魅力があるボーカルは彼女の持つ大きな武器の一つだろう。
以前のインタビューで歌い方について聞いたところ、「個人的には特別な歌い方をしているつもりはなく、普通に歌っているだけです」と語っていたことが印象的だった。そこからは、彼女の等身大の独自性がボーカルとして表れているという解釈ができるのではないだろうか。
耳に残りやすく独自性があるその歌声は、ある種「特徴的なボーカルだが、真似をするのは非常に難しい、誰にも似ていない声」とも捉えられる。
“共感覚”と呼ばれる、ひとつの刺激に対して五感の複数部分でイメージできるというものがある。例えば、「音や声を聴くと、色として同時にイメージできる」というような、ある種の特殊な感覚を持つ人がいるという。その“共感覚”では「ロザリーナの歌声は何色なのか?」と、ふと思ったが、おそらく一言で表せる色ではない、深く鮮やかなカラーと表現されるのではないだろうか。
色濃く鮮やかな色彩の音楽性
ソングライティング面においては、主観的にはどちらかというと海外寄りのテイストを感じられる。しかし、そこに日本語の歌詞がごく自然に乗っているという面は、さりげない点かもしれないが着目したいポイントだ。そこからは、歌声の独自性もさることながら、歌い回し、リズム面においても、ナチュラルなグルーヴでさりげなく聴かせるというスキルが垣間見える。
本作では、冒頭からのHIP HOPのビートやリッチな低音のアプローチ、ピアノの音色、そして「盾」や「Dream on」のようなアコースティックギターのサウンド、「NOAH」で聴けるコーラスの神聖なフィーリング、さらにはバンドサウンドと様々なテイストが交わり、それぞれカラフルなアプローチの楽曲を聴くことができる。そして、どの楽曲もロザリーナという色彩が強く滲み出ている。
シンガーソングライターの特色として挙げられるのは、「歌声」であったり「歌詞」、あるいは「作曲面」、「メッセージ性」と、どこか突出した部分がフォーカスされることが多いと思われる。
しかし、ロザリーナの場合は“忘れられない声”と表現できる歌声がまず大きな武器であり、そしてソングライティング面や作詞面、あらゆるサウンドカラーとの親和性が高い。「歌声が特徴的で印象に残りやすい」という点だけではない魅力のポイントは多岐にわたる。
「本音を書くということ――嘘は書きたくないというところは、ずっと一緒」という、ロザリーナ自身の言葉がある。それは、本作でもあらゆるサウンドスタイルで具現化されている。彼女の表現する世界観はデビューから本作まで様々なアプローチを見せてきた。等身大の彼女自身に秘められたポテンシャルは今後もあらゆる表現で出力され、さらなる飛躍を見せるのではないだろうか。【平吉賢治】