22/7(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

 22/7(ナナブンノニジュウニ)が2月28日、パシフィコ横浜・国立大ホールで、7thシングル「僕が持ってるものなら」発売記念ライブを行った。昼公演を終えて迎えた夜公演は、この日をもって卒業する帆風千春のラストライブ。リーダーとして慕われてきた帆風らしく涙ながらも心温まる最後となった。【取材=木村武雄】

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 3年前の2月27日、デフィア有明でライブを行った。その時の彼女たちは5000人収容の大会場でライブが出来る日を想像できただろうか。そして、こんなにも早く仲間との別れが訪れることも…。

 デビュー当時からリーダーとしてグループを牽引してきた。未知のジャンルでもあるデジタル声優アイドルグループとしての船出は決して平坦なものではなかった。コンセプトを理解してもらうことに始まり、ファンにキャラクターとメンバーを合致させてもらうことも求められた。いまでこそ認知されているが、そうした初期をリーダーとして支えてきた。彼女の功績は大きい。

 本人自身も一メンバーとして様々な葛藤を抱えてきたはずだ。しかし、11人の長女のように優しく微笑み温かい目線でメンバーを包み込んでいた。その姿はメンバーに大きな影響を与え、そして卒業後の未来を新たに描き、それを背中で見せようとしている。悲観ではない未来ある卒業。そして、これまでの楽曲はこうした喜怒哀楽を飲み込んで成長、やがて紡がれていく。

 この日のライブはそんなことを感じさせた。

22/7

22/7(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

ラストライブ

 帆風のラストライブの始まりは「シャンプーの匂いがした」。これまでに何度も披露してきた歌だ。ティンパニの重奏が力強さを感じさせる。帆風の新たな未来を後押しするかのような選曲だった。大きなステージで力強くのびのびとパフォーマンス。ただラストの秒針音は、12時のシンデレラのように、佐藤麗華として、22/7としての魔法が解ける帆風千春のラストの時を刻んでいるようだった。

 「未来があるから」を披露してからのMCではそれぞれが挨拶。そして、「風は吹いてるか?」「ロマンスの積み木」「Rain of lies」「何もしてあげられない」をノンストップで、且つドラマチックに届けた。

 ここからは7thシングル披露コーナーへ。紅白に分かれた“甘ロリ”白組(西條、白沢、海乃、涼花、武田=一時活動休止中=)による「キウイの主張」、“パンクゴシック”紅組(天城、倉岡、宮瀬、河瀬、帆風、高辻)による「雷鳴のDelay」を披露。

 更に疾走感のある「タチツテトパワー」、キュートなナンバー「好きと言ったのは嘘だ」、そして、表題曲の「僕が持ってるものなら」を立て続けにパフォーマンスした。

 帆風は「最後のシングルをここまで1曲ずつ披露して、特別な時間だなと思っています。私がもてる全てのものを残りの時間に出していきたい」と思いをぶつけると、西條がセンターに立って曲名をコールする。「ムズイ」。

 更に「願いの眼差し」と続けて、ラストは青春を描いたバラード「循環バス」。帆風の22/7としての活動が青春であるかのような選曲で本編の幕は閉じた。

佐藤麗華に感謝

 この日の公演は有観客だったがコロナ禍による感染予防のため収容人数は半分。声出しもNG。そのためアンコールは静けさのなかで、帆風のカラーである赤色のペンライトが徐々に灯った。優しくゆっくりと揺れる赤の灯。

 やがて、ステージに立つ2本のエンタシスが赤色に染まり、スポットライトが中央を照らす。浮かび上がるのは横を向く帆風。数メートル離れた先にはマイクスタンドがぽつりある。正面を向き直し、神妙な面持ちでそれを見つめる。程なくしてイントロが流れ、それを合図に、軽快なステップを踏みマイクの前に立った。

 佐藤麗華(帆風千春)のソロ曲「優等生じゃつまらない」

 帆風は2019年。定期公演を通じて歌に磨きをかけていた。もともと歌唱力には定評があったが、更なる高みを目指すため、自身の癖であった大きな声で歌うことを見直し。声量は下げてもしっかりと通る伝えた方とメリハリのある歌唱を目指した。その成果が集大成となってこの場で歌う「優等生じゃつまらない」に表れていた。募る感情を全て吐き出そうとはせず、歌声の強弱をコントロールして心情を浮かび上がらせる。表現者としての幅の広さを伺わせた。努力は結実した瞬間だった。

 歌い終え、息を切らせ笑顔で挨拶する。「ありがとうございます」

 響き渡るのは観客の拍手。

 息を呑み、改めてこのライブをもって卒業することを伝えた。

 2016年12月24日。最終オーディションで22/7のメンバーに選ばれた。「これから何が始まるんだろうとわくわくしていたのを思い出します」

 そして続ける。

 「声優になりたくて、勉強やオーディションを受けてきたけど何度も落ちて、諦めた方がいいいのかなと、次ダメだったらこの道を諦めようと思った時に22/7のオーディションがあって。ありがたいことに受かって、4年と5カ月。ここでしか見られない景色を沢山見ることが出来ました。そのなかで特別だったのが佐藤麗華というキャラクターとの出会いでした」

 声を詰まらせ、大きく息を吸う。

 「佐藤麗華は真面目で優等生でしっかりしていて、頂いた時は、演じ切れるのかなと不安がありました。私は、人に甘えてきてリーダーになると友達に言ったら千春で大丈夫?と言われるぐらい。でも佐藤麗華という役を頂いてからこの役に見合う人になりたいと思って。自分を変えるきっかけを与えてくれました。沢山の夢を叶えさせて頂きました。そのなかで新しい目標を見つけることが出来ました。声優としてステップアップしたい。沢山元気づけられたそういう世界に、自分の声で沢山の表現で魅力を伝えられる人になりたい。そんな気持ちに気づかせてくれた佐藤麗華にありがとうと伝えたいです。そして、メンバーの皆にも沢山ありがとうと伝えたいです」

帆風千春

帆風千春(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

メンバーからの手紙

 再びメンバーがステージに集まった。

 「きょうまで本当に一緒に活動してくれてありがとうございます。頼りないリーダーだったけどありがとう。卒業も背中を押してくれてありがとうございました。一人一人が魅力的で素晴らしい人たちなのでこれからも愛されると思います」

 そう感謝する帆風に、メンバーは手紙を書いた。一部抜粋。

白沢 居心地が良くてつい話し込んじゃう。過ごす毎日が本当に楽しかった。声優としてアーティストとしてのちはるんが本当に大好きで何度も心を打たれてきました。人を魅了して活力を与える才能があるので自信を持って下さい。与えてくれたパワーを自分のために惜しみなく使って下さい。手紙を書いている今も多分呼んでいる今も涙が止まりません。寂しいけど前に向かって進んでいくちはるんを心から尊敬。私の誇りであり大好きな存在でした。

白沢かなえ

白沢かなえ(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

天城 ついにこの日が来たんだね。結成当初よく2人で自主練していたね。そのとき卒業スピーチごっこして楽しかったです。卒業が正式に決まってから本当は毎日辞めないでと言いたかったけど、お互いの自分たちの目標をよく話し合っていた仲だからこそそれが出来ませんでした。残りの毎日ずっとべったりしたかっけど、卒業を実感してしまうからあえていつも以上に離れた距離で我慢していました。卒業したら我慢した分一杯遊んで下さい。

天城サリー(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

宮瀬 一人の人として大好きです。プライベートで出かけたり、初期からお互いの夢について話すことが出来た私にとっては最初からすごく大きな存在でした。ちはるんの変わらない夢、いつかはその日が来ると思っていましたが、きょうが来て寂しい。でもおめでとうの気持ちの方が大きくて。泣かないで笑顔で送り出すと心に決めてきました。これから違う道に歩いて行くけど、お互いの道で一緒に頑張ろうね。ちはるんの夢をずっと応援しています。

宮瀬玲奈(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

河瀬 初めてレコーディングを見学させて頂いた時に歌っていた「君の知らない物語」を聞いてからちはるんの歌声は憧れです。一緒に歌っている時の歌声、声優として演技している時の声、何気ない日常会話での笑い声、沢山の声に救われてきました。初めての事だらけで不安だったときも近くで優しく声をかけてくれたおかげで乗り越えられました。いつか成長したと思ってもらえるように作り上げてきた22/7を引き継いで行けるように頑張ります。

河瀬詩(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

西條 初期の頃から外を歩くときはちはるんの腕を掴んで歩いていて、番組も怖いなと思ったらちはるんの方を向く癖がついていて、この4年間ずっと守ってくれていたなと思っていつか恩返ししようと思っていたはずなのに、いざちはるんが泣いている時に何していいか分からなくて。いつか強くなったねと言ってもらえるように、ちはるんが私に相談してもらえるぐらい、ちはるんがいなくてもちゃんと22/7で頑張ります。この4年間、誰よりも強く正しくいてくれてありがとう。大好き。

西條和

西條和(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

涼花 ちはるんとの思い出はいっぱいありすぎて思い出せません。きっと毎日楽しくて何気ない日々が思い出になっていたんだと思います。ちはるんとメンバーになれて、一緒に活動ができて本当に良かった。本当に本当にありがとう。ちはるんの夢をずっとずっと応援しています。最後にいっぱいのありがとうとこれからも頑張ってねの気持ちをこめて魔法をかけるね。ちはるんにたくさんの幸せが訪れますように。ちはるん大好き。卒業おめでとう。

涼花萌(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

海乃 本当に努力家で尊敬するところばかりでした。自分の技術を向上させるためにいろんな努力をしていたし、苦しいことも数えきれないほどあったと思うけど心配をかけないために絶対に口には出さないし見せない。ちはるんみたいな人が本物のプロだと思います。そんな素敵な人と少しでも仲良くなれて良かったです。これからも仕事面でずっと意識していく人だと思う。今までナナニジを支えてくれて本当にありがとう。沢山抱えさせてごめんね。歩んでいく道が幸せなものでありますように。

海乃るり(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

倉岡 ちはるちゃんが卒業する未来なんて今まで考えたことなかった。私はいつもちはるちゃんに甘えてばかりでした。何をするにしても相談していたし、本当のお姉ちゃんみたいに慕って、頼りにしていました。そんな役回りだし、個性を尊重してくれるからメンバーの影に隠れてしまうことも多々ありました。優しすぎるから自分よりもメンバーばかりを優先にしていました。本当にありがとう。本当にすごい人です。すごく魅力的です。卒業してもっと輝いてくれることを願っています。

倉岡水巴(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

高辻 いろんな話をしたね。オタクトーク、悩み、将来の夢。最初会った時からは考えられないぐらい自分のことをさらけ出せてとっても嬉しいです。私からしたらお姉ちゃんでもあるけど、本当は誰よりも末っ子気質だし、頼られるよりも甘えたい人だよね。だけど、リーダーという最も頼りにされる役割を優しくメンバーに寄り添った形で全うしてくれました。ちはるがいるから今のナナニジがあると思っています。尊い大切な存在です。出会ってくれてありがとう。

高辻麗(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

武田(高辻代読) 自分の夢に突き進む姿はかっこよくて美しくて、何より尊敬しています。初めてカラオケに行ったときの感動は今も覚えています。知らない曲ばっかりなのに歌が上手くてこんなに楽しいことあるって思いました。それから大ファンです。歌が上手くてももっと上を目指して努力し続ける姿を近くで見てきました。努力は才能だと思う。その才能を信じてちはるんらしく前に進んでほしいです。夢が、積み上げてきた努力が発揮できることを心より楽しみにしています。

最後までリーダー

 天城が最後にステージで円陣を組みたいと申し出て、この場で最後の円陣を行った。

 鳴りやまない拍手。

22/7(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

 ファンへの感謝の言葉を送る帆風。「私に夢を見えていいんだよと勇気をくれたファンのみなさん、メンバーのみんな、22/7はとても大切な場所です。本当にありがとうございました」

 そして、最後に披露したのは、「空のエメラルド」。

 帆風は過去に、「ふさぎこんでいるように見えるけどサビは爽やかで未来を感じるような曲」と語っていた曲だ。

 帆風の歌声から始まる。涙するメンバーもいれば、笑顔に努めるメンバーもいた。それぞれがそれぞれの表現で帆風との最後のパフォーマンスに臨んだ。

 ライブが始まってもう2時間半。魔法は解けようとしている。

 最後に河瀬がメンバーカラーの花束を帆風にプレゼントした。

 帆風は「隣にいるのが当たり前だなって今でも思っちゃうけど、これからは自分で決めた道を胸張って歩いて行けるように頑張ります。本当にありがとうございました。本日は本当に本当にありがとうございました」

 そして、最後のコール。

 「以上、22/7でした。ありがとうございました!」

 マイクを通さず再び「ありがとうございました!」

 握っていたメンバーの手が離れていく。揺れる赤のペンライト。

帆風千春(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

 一人残った帆風は改めてファンに思いを告げる。

 「きょうという日に赤のペンライトをいっぱい振ってくれてありがとうございます。またどこかでお会いできるようにがんばっていきますので、これからも22/7の応援宜しくお願いします」

 帆風千春、22/7の活躍の場を広げた功労者であり、努力家であり、メンバーが慕うお姉さん的存在。その最後は彼女らしく涙ながらも笑顔溢れるものだった。

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