INTERVIEW

宮沢氷魚

個性を伸ばす「仲間」の存在。
『あんのリリック』で俳人役


記者:木村武雄

写真:阿部孝介(トラフィック)

掲載:21年02月22日

読了時間:約7分

 宮沢氷魚が、2月27日スタートのWOWOW『ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-』(夜9時、全2話)に出演する。俳人・堀本裕樹氏の青春俳句小説が原作。芸大生リリックライター・桜木杏と、俳人でコピーライターの連城昴が織りなす“言葉”をめぐり熱く魂がぶつかり合う物語。俳人初挑戦の宮沢はどのように臨んだのか。

模擬句会で詠んだ句

 宮沢が演じるのは、俳人でコピーライターの連城昴。劇中では、自作の俳句を批評し合う集まり「句会」で句を詠むシーンも描かれる。俳句は小学生以来。「俳句を長く親しんできた役柄なので、身振りなども含めて嘘があってはいけないと思いました」と出演が決まってから俳句について調べたほか、キャストとスタッフで模擬句会を実践し、所作を学んだ。そこで宮沢が詠んだ句がある。

 「銀杏の匂い嫌えど嗅ぎにゆく」

 こう解説する。「その頃は秋で街には銀杏が成っていました。銀杏の香りは好きではないけど、秋を感じたいがゆえに、つい嗅ぎに行ってしまう。そんな光景をイメージして書きました」。その句にはどこかピュアさが滲み出ている。

 一方、昴は、コピーライターとしてスランプに悩んでいる。

 「昴は人に相談出来ない、悩みに悩んで自分で答えを見つけだす青年です。僕もそういうタイプで、相談しないというかできない。自分で答えを見つけようと思うところは似ています。ただ、彼は不器用で人に対する優しさや思いやりをうまく伝えられないタイプでもあります。だから俳句やコピーライターという仕事に繋げているのかなと思います」

 昴のキャラクターを「多くを語らず、最初は本心が分かりづらい部分がある」と分析する宮沢は、これまで演じてきた役柄に通じるものがあったと回想する。

阿部孝介(トラフィック)

宮沢氷魚

ミステリアスさは一つの個性

 宮沢はこれまで様々な役柄を演じてきた。一躍有名にさせたのはドラマ『偽装不倫』での杏の相手役だ。そして、主演映画『his』では同性愛者を好演し、それが高く評価され、『TAMA映画賞』で最優秀新進男優賞、『ヨコハマ映画祭』では最優秀新人賞を受賞した。そして、コロナ禍で中止となったが、渡辺謙主演の舞台『ピサロ』で、かつて渡辺謙が演じたインカの王・アタワルパ役に起用された。

 これまで演じてきた役柄は「どこかミステリアスなところがあると言いますか、何を思っているのか本心が見えない人物を演じる事が多かったように思います」と振り返る。

 しかし、ミステリアスさを意識して作り上げているわけではない。根幹になっているのは、自身の「個性」。それはアメリカで生まれ育ったことも影響しているという。

 「僕の見た目が少し洋風な部分もあるので、人とは何か違う要素を持っていると周りから言われることがあります。自分自身はミステリアスだと思ったことはないですが、見ている人は感じるみたい。でも、それが自分の1つの強みというか、引き出しになっていると思います。それを全面的に出そうとしてやっているのではないですが、自然と出る役が多いので、そのまま素直に演じています」

 NHK朝の連続テレビ小説『エール』ではその一端がみえた。裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の娘・華(古川琴音)の運命を変えるロカビリー歌手役・霧島アキラは、控えめな当時の日本人気質には珍しくオープンで、雰囲気もどこか海の向こうの文化を感じさせた。

 「どんな役、人物にもなれるカメレオン俳優と言われる役者さんもいますが、僕はなんとなくそっちではなくて、自分の持っている色、ここで言う個性をしっかりベースとして持って、そこにいろいろ足すことによって、違う役を演じていくタイプだと思っています。どの作品も、そのベースを常にどこかで持っていたいと思っています」

阿部孝介(トラフィック)

宮沢氷魚

個性を伸ばす仲間の存在

 その個性を大事に育もうと思うもう一つの理由がある。それは、仲間の存在だ。

 メンズノンノの専属モデルでもある。先輩には俳優として活躍する成田凌らがいる。モデル、俳優としての先輩であり、仲間であり、そして良きライバルだ。

 「同業の仲間の存在は大きいです。この仕事をやっている人しか分からない悩みがたくさんあるので、一番親身になって聞いてくれますし、適切なアドバイスもしてくれます。でも、ほんの少しの人しか生き残れない世界なので、ライバルという意識も忘れていないです。ライバルでありながら支えてくれる大事な仲間です」

 仲間が出演する作品は全てチェックしている。学ぶことも多い。ただ良いと思った芝居もその技術を盗もうとはせず、自身の「個性」を磨くことを選択している。

 「自分に取り入れてみようというのは不思議となくて、みんなタイプが違うし、人間性も違うから取り入れようと思ってもまず出来ない。そのスキルはその人その人に合ったものだと認識していて、僕は自分で作っていこうと思います」

 宮沢にとっての仲間は切磋琢磨する存在だけでなく、自己の存在価値を確かめる物差しでもある。それはどこか昴にとっての句会に重なる。昴にとって俳句は自己を表現するものであり、句会は認める場でもある。それぞれの句、そしてその感性から“刺激”も受ける。

 「言葉数などの制約があるなかで、情景が鮮明に浮かび上がらせることができるのはすごいと思いました。言葉にも個性があり、その人の感性が見える。昴を通して、そうした感性をもっと養い、そして大事にしていきたいと思いました」

阿部孝介(トラフィック)

宮沢氷魚

広瀬すずに刺激

 その昴は杏の言葉の才能に気づき、俳句の世界へと引き入れる。宮沢は杏を演じる広瀬から刺激を受けた。

 「すずちゃんは僕よりもしっかりしていて、若いのに現場をまとめようとする姿は尊敬します。すずちゃんの役はすごく難しいと思います。ラップのシーンもあるし、スイッチが入ると溜め込んだ思いを早口で言葉にするところもあります。でもそれを普通にこなせていて改めてすごいと思いました」

 初挑戦のラップを見事にこなした広瀬にプロとしての意識の高さをみたという。

 「ラップはすごく上手で、初めてなのにやれてしまうところがすごいと思いました。すずちゃんの言葉はちゃんと伝わってくるし、ただラップするだけじゃなく、そこに言葉の意味や重みを加えて発信する。普通ではなかなかできないことをやっていました。一緒に仕事をして学ぶことが多くて、プロとしてのレベルの高さを感じました」

 その杏と昴は、“言葉”を通じた恋模様も展開される。

 「前半は友情を作り上げ、後半は恋愛に発展していきます。最初は昴にとって杏は友達でありビジネスパートナーでもあるので互いの距離を縮めてくので、恋愛の部分が見えてしまうと良さが出てないと思いました。なので、前半は恋愛的な部分はあまり感じさせないことを意識しました。ただ、後半が恋愛に進展するからといって、俳句とラップ、言葉が中心にあることは変わりないです。言葉を通じて視聴者の方に委ねているところはあります」

 恋愛模様も気になるところだが、宮沢は、言葉をテーマにした本作を通じて考えさせられたという。最後にこう語った。

 「SNSが発展して、言葉がより身近になっている時代だと思います。だからこそ、言葉一つ一つの重みというか、持っている価値がちょっと落ちている気がしています。人を傷つける言葉を平気で言えるようになってしまった時代でもあると思っていて、言葉の持っている威力、魅力も含めて再確認できたらいいなと思います」

 そしてこう続ける。

 「なによりものドラマをきっかけに俳句を好きになってもらえたら嬉しいです」

阿部孝介(トラフィック)

宮沢氷魚

(おわり)

取材=木村武雄

カメラマン:
Atsuko Tanaka
ヘアメイク:
阿部孝介(トラフィック)
KOSUKE ABE(traffic)
スタイリスト:
秋山貴紀(TAKANORI AKIYAMA)

ニット(リドム)¥8,000/シアン PR パンツ(チノ)¥42,000/モールド 靴/スタイリスト私物
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・シアン PR TEL 03-6662-5525 〒150-0002東京都渋谷区渋谷2-2-3 ルカビルII 2F〜4F
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「ドラマWスペシャル あんのリリック-桜木杏、俳句はじめてみました-」
前編:2月27日(土) 後編:3月6日(土) よる9時から
WOWOWプライムにて放送。WOWOWオンデマンドにて配信。
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