足立佳奈「一番になれなくてもあなたの側に」新譜で見せたラブソングの形
INTERVIEW

足立佳奈

「一番になれなくてもあなたの側に」新譜で見せたラブソングの形


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年02月09日

読了時間:約8分

 岐阜県海津市出身のシンガーソングライターの足立佳奈が2月3日、配信シングル「まちぼうけ」をリリースした。今作は新しいラブソングの一面を見せた「まちぼうけ」に加え、中部エリア ホンダカーズCMタイアップで軽快なビートが印象的な「DRIVE」の2曲を収録。インタビューでは、昨年末にYouTubeでスタートした『あだちの絵日記便』についてや、締め切りギリギリまでこだわり、新たなチャレンジもあった「まちぼうけ」の制作背景、2月12日から始まるツアーへの意気込みなど、足立佳奈に話を聞いた。【取材=村上順一】

苦手意識があるものの方が素の自分を出せる

足立佳奈

――昨年はどんな1年でしたか。

 ステイホーム期間もあって、どうしても落ちこんでしまったり、ポジティブではいられなかったんですけど、逆に自分を客観的にみれたり、冷静にいられた、心が落ち着いた1年でした。その中で、昨年10月に21歳の誕生日を迎えました。20歳になった時は心に揺れ動きがあったんですけど、今回はその揺れ動きはなく、割と落ち着いていて「21歳、何か出来ることないかな?」と、20歳になった時とは違う感覚がありました。

――変化があった1年だったんですね。昨年で一番嬉しかったことは?

 昨年の8月30日に行ったデビュー3周年を記念したライブ『3rd Anniversary Streaming Live “with Love”』の最初のリハーサルです。音楽の中にいられること、演奏者の方々に囲まれて歌えることがすごく嬉しかったです。目の前で色んな楽器が鳴っていて、サポートメンバーのみんなの顔も見ながら歌えることに喜びがありました。

――その中でYouTubeで『あだちの絵日記便』という番組を始められましたが、手応えはいかがですか。

 正直、まだしゃべりながら絵を描くことに慣れていなくて、そこが難しいなと感じています。ライブのMCでしゃべるのとはまた違う感じなんです。あと、この番組はありのままの自分を伝える、というテーマで始めたのですが、本当にありのままの自分を出してしまっても大丈夫なのかなと思ってしまったり(笑)。ちょっと不安な部分もあったんですけど、自分の過去のこともお話したりしていて、改めて思い出すことも沢山ありました。そういった瞬間があるのはすごく嬉しいです。

――絵を描くことはお好きなんですか。

 好きなんですけど、絵は得意ではないんです。なぜ得意ではない絵を選んだのかというと、得意なことをやって私を知ってもらうのではなく、苦手意識があるものの方が素の自分を出せるのかなと思いました。

――そうだったんですね。そして、2021年第一弾となる楽曲「まちぼうけ」がリリースされます。

 これまで色んなラブソングを書かせてもらって、その中で新たに書きたいラブソングのテーマが生まれました。それは一番になれなくてもあなたの側にいたい、というものでした。でもそれは叶わない、そういったラブソングもあっても良いのかなって。それをイメージした時に、過去に「面影」や「ひとりよがり」を作っていただいたCarlos K.さんと一緒に曲を制作したいと思い、お願いしました。すぐに楽曲の打ち合わせが始まって、私からはピアノメインで音数もそんなに多くない曲にしたい、というリクエストをさせていただきました。

――歌のバックで鳴っているピアノも切なくて、導入からグッと来るものがありました。

 この曲のイメージが私の頭の中で出来ていたので、どれだけ具体的に形にしていけるかというのがありました。ピアノは最初から和音というのもありだと思ったのですが、段々音が積み重なっていく感じにしたいなと思いました。なので、敢えて単音で始まることになりました。そして、ブレスから始まる歌い出しというのは、私がやってみたかったことの一つで、それが今回出来てすごく嬉しかったです。

――他にもチャレンジはありましたか。

 はい。いつもだったらクリック(メトロノーム)を聴きながら、レコーディングしていたんですけど、今回Aメロは自分の“間”で歌いたいなと思って、クリックをあえて聴かずにレコーディングしました。思っていることがポロッと口から発してしまうような感じが歌から伝わればいいなと思って、クリックなしで挑戦しました。

――締め切りギリギリまでこだわったとお聞きしました。

 そうなんです。何度もCarlos K.さんのスタジオに行かせていただいて、毎日曲とにらめっこして(笑)。最初は今のBメロのところがサビだったんですけど、Carlos K.さんがもっと良いサビが出来るんじゃないか、という言葉から新たにサビを作り始めました。サビで転調させて、その場でCarlos K.さんと私で歌いながら作って行ったサビなんです。

――私の中ではAメロ、サビ、大サビみたいな解釈でしたが、そういった背景があったんですね。ちなみに歌詞は実体験、想像、知り合いの経験談、など色んなモチーフがあると思うのですがどれかに当てはまりますか。

 実体験と友達の話を織り交ぜた歌詞なんです。私の片思いをした時の経験と友達の一番になれないけど諦められない恋をしているという経験談をもとに歌詞に落とし込みました。

――それを男性目線で書かれていて。

 <「僕だけの君になってくれませんか」>と一行だけ「僕」という一人称を使っているんですけど、<勝手に泣いて 溢れちゃって>という歌詞は女性にもピッタリだったり、女性の気持ちにリンクする部分もあるんです。なので男性目線とは断定せずに聴いていただいた方それぞれの感じ方で聴いてもらえたら嬉しいです。

――<そばにいられるなら騙されていたい>という歌詞もそれだけ「好きだ」という強い想いが溢れていますよね。

 一番になれないことはこの主人公はちゃんと分かっていて、そんな彼女に騙されていたいし、好きな子に飲み込まれてしまいたい、という気持ちももしかしたら生まれてくるんじゃないかなと思いました。実際騙されたいと思う人は、なかなかいないと思うんですけど、<騙されていたい>と言い切ってしまうことで心により刺さるんじゃないかなと思いました。

夢がない人を肯定する「DRIVE」

「まちぼうけ」ジャケ写

――ジャケ写はイラストで今までの作品とは趣きが違いますね。

 今回、ゆのさんというイラストレーターの方にお願いしました。このジャケ写の女の子は「まちぼうけ」の中で男の子が想っている彼女のイメージなんです。歌詞には彼女の姿を表す言葉は入っていないんです。このジャケットを見て、そのイメージが伝わるようにしました。その表情にもこだわりました。

 そして、ジャケ写の実写版のようなイメージでアーティスト写真も撮りました。イヤリングもリンクさせているんです。イラストを使用したジャケ写も初めてのことで、色んな初めてが詰まった作品になりました。

――ところで「まちぼうけ」というタイトルはどこから思いついたんですか。

 男の子側の気持ち、立ち位置になった時に、きっと彼女は彼の気持ちにイエスとは応えないという状況からです。その言葉をずっと待っている状態だなと思って、この「まちぼうけ」というタイトルになりました。

――足立さんは待ちぼうけした事はありますか。

 私が待ちぼうけさせてしまった事はあります(笑)。集合時間もそうですけど、待ちぼうけさせてしまったなって。

――ミュージックビデオ(MV)はどんな感じに仕上がっていますか。

 ジャケットと同様にイラストレーターの「ゆの」さんにご協力いただきました。実写とイラストによるキャラクターのコラボ作品になっています。実写のところは私が撮影したんです。キャラクターは男の子と女の子が登場するんですけど、男の子から見た彼女の表情をMVで見せる事が出来たらと思いました。

――さて、もう1曲「DRIVE」が配信されますが、これは書き下ろしですか。

 この曲は中村(泰輔 )さんに書いていただいたんですけど、以前からあって温めていた曲なんです。ホンダカーズさんのタイアップのお話をいただいた時に、ピッタリ合うんじゃないかなと思いました。中村さんと歌詞の方向性を固めて、仕上げていきました。

――歌詞にある<目指す目的地なんていらない>というワードが印象的なのですが、足立さんもそういった気持ちになった事があったのでしょうか。

 私は兄がいるんですけど、その兄が社会人1年目の時に電話をする機会があって「仕事は楽しい? 頑張ってる?」という会話をしました。その中で「兄は「仕事は大変だし、辞めたいと思う時もあるけど、生きていくためには必要だからやっているんだ」、という話をしていて。

 兄は私に「お前は夢があっていいよな。自分も楽しい事は沢山あるけど、成し遂げたい目標や夢はないから…」と、話していたのが印象に残っていて。でも、それは兄だけではなくて、そういう人も世の中には沢山いるんじゃないかなと思って、歌で夢や目標がないという方の気持ちを肯定することが出来たら良いなと思いました。それで、肯定するならどんな言葉が良いんだろうと考えた時に、中村さんにその旨をお伝えして歌詞を作っていきました。

――<いろんな道を見つけたらいい>という言葉もありますが、足立さんはもしシンガーじゃなかったら、どんな道を進んでいたと思いますか。

 シンガーになれなかったとしても、歌に関わるお仕事をしたいなと思っていたので、きっと音楽の先生を目指していたんじゃないかなと思います。やっぱり音楽が好きということと、歌っている自分がすごく好きなんです。

――2月12日からスタートするツアー『ADACHI KANA LIVE TOUR 2021~ Dear. ~』の意気込みをお願いします。

足立佳奈

 昨年は延期から中止になってしまって、久々に皆さんとお会いできる貴重なツアーになると思うんですけど、少し不安なところもあります。きっと皆さん同じ気持ちを持ってツアーを迎えると思います。 今までだったらみんなが同じ気持ちで臨むということもなかったんじゃないかなって。 今この状況もあってみんなが求めているもの、向かっている方向、望んでいる未来も同じだと感じているので 、ぐっと心が繋がれるライブになるんじゃないかなと思っています。

――ツアーのタイトルが『Dear.』なのですが、このタイトルに込めた想いは?

 どうやってみんなへの愛、感謝、リスペクトの気持ちを言葉で届けられるかなと考えました。 前回のツアータイトルは『" You & I "』であなたと私で楽しい空間を作り上げていこうね、というメッセージを込めたんですけど、この期間でみんなの存在がとても大切で貴重なものになったことで、お手紙でも使う「親愛なる」という意味の『 Dear.』 を選びました。

 その中で自分ができること、イメージなんですけどオレンジ色の温かい光をそのライブで生み出せたらいいなと思っています。今回はアコースティックでしっとりとした空間で、一人一人にしっかりと届けられるように、歌詞を丁寧に歌いたいと思っていますので、皆さん楽しみにしていてください。

(おわり)

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