INTERVIEW

川野浩司監督

時代の移ろいも「今が大事」
映画『ツナガレラジオ』の狙い


記者:木村武雄

写真:

掲載:21年02月06日

読了時間:約7分

 若手俳優によるウェブラジオ番組『おしゃべや』(ニッポン放送)から派生した映画『ツナガレラジオ~僕らの雨降(あふり)Days~』が2月11日に公開となる。番組パーソナリティーを務める西銘駿、飯島寛騎、阿久津仁愛、井阪郁巳、橋本祥平、深澤大河、ゆうたろう、板垣李光人、立石俊樹、醍醐虎汰朗が、過去に存在したラジオ局を復活させるために奮闘する若者を演じる。メガホンを握るのは、映画『通学シリーズ』などを手掛けた川野浩司監督。10人のイケメン俳優をどう撮ろうとしたのか。【取材・撮影=木村武雄】

良い表情を意識

 夢に破れた10人の若者が、神奈川県伊勢原市の雨降山にかつて存在していたラジオ局「雨降FM」の復活に奮闘するなかで、自分自身を取り戻していく青春物語。若手イケメン俳優が10人揃うともあって、川野監督が最初に意識したのは「10人をいかに素敵に撮るか」。

 「良い表情を引き出したいと思い、写真集のようにカメラ目線で自分が得意の表情を出すということではなく、その時その時の喜怒哀楽をしっかり表現しようと思いました。そのため、他の映画と比べると表情のアップが多いかもしれません」

 様々な表情を切り撮るだけではなく、10人が均等に輝くことも意識した。

 「過去に黒澤明監督が仰っていたのが、物語を描くには7人がベストということでした。裏を返せば7人が限界。今回は10人ですからどうしようかと考えました。もちろん主役もいますが、なるべく均等に皆が主役になるようにという話でしたので、1人だけシーンが少ないとか、印象が弱いというのは避けないといけないと思いましたが、果たしてできるのかやってみないと分からないというのが本音でした」

 出来上がった作品には、一人一人にドラマがあり、個性や表情が映し出されている。その狙いは成功したともいえる。一方、現場での10人はどうだったのか。

 「遠慮されている様子も見られましたので、『もっとやっていいよ』と伝えた記憶はあります。どこまでやっていいのかを探っていたかもしれませんし、演じるキャラクターにもよるかもしれません。ただ、ゆうたろうくんと李光人くんはだいぶお任せにしました。彼らの空気感はおじさんには出せないです(笑)。衣装も含めて2人がプロデュースしてやりました。こっちがやったら絶対にダサくなりますからね(笑)」

 当初は控えめだった10人だが、もともとペアでパーソナリティーを務めていたこともあり、現場の雰囲気を掴めば息はぴったり。「みんな楽しんで伸び伸びとやっていました。あの山に来るのが楽しいような雰囲気がありました」といい、「なるべくナチュラルな芝居を意識させたかった」という川野監督の想いは自然な形で出来上がった。

 雨降山のロケーションにも助けられた。

 「輝く瞬間、輝く場はこちらが作って行かないといけませんが、今回は苦労していないです。状況やストーリー、その時の空気感によって自然に輝いていました。鳥も鳴いていますし、川も流れていれば音も聞こえてきます。参道やアフリカフェのセットとか、あの場所にいたらいい顔になりますよ。こちらが何か演出するということはやらずに自然とキャラクターが出来上がり、いい表情になっていました」

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

 その一方で、イッセー尾形の存在は彼らに刺激を与えたという。

 「イッセー尾形さんがいなければ、締まらなかったと思います。みんなも触発されていた部分はありました。共演シーンがない役者さんは映画を見て『こうやってお芝居をやらないといけない』と感じたと思いますし、一緒にお芝居した西銘君とかは以降、自分のアイデアを言うようになりました。こうしてベテランの方と共演して伝承していかないといけないですね」

 本作では、『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィの声優を務める田中真弓が特別出演、美声を轟かせている。

 「普段の現場とは雰囲気が違うので緊張なさっていたようですが、。それが面白かった。無理矢理踊って頂きましたし、歌はご本人に選んでいただきました。」

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

(C)2021「雨降ラジオ」製作委員会

90年代の音楽を起用した理由

 本作の見所のもう一つは「音楽」だ。

 「ラジオの話ですので音楽は大事だと思いました。雨降FMが90年代にあったという設定も含めてその時代の曲を選びました。プロデューサーからは90年代は、勇気付ける、背中を押してくれるような名曲が多いので、勇気づける曲を掛けて欲しいと言われましたが、編集しているときに何か曲を当てないと、選曲したものがそのまま通って。完全に私の趣味になっています(笑)」

 エンディング主題歌は奥田民生の「イージュー★ライダー」だ。

 「単純にエンディング感がありました。編集しているときに曲が頭の中で流れたんです」

 選曲の起点になったのは、JUDY AND MARY「RADIO」。

 「あまり歌詞では選んでなくて。ジュディマリの歌詞はドストレートですが、歌詞はそこまで意識していない。どちらかというと曲の雰囲気です。この間、テレビで甲本ヒロトさんが『みんな最近歌詞を聞きすぎている』と言っていたのがすごく響きました。具体的にこの曲はこういう曲です、と説明してしまうとイメージが付いてしまうので面白くないんですよね」

 選曲は川野監督が行い、アレンジやレコーディングは成田旬氏が担当した。劇中では10人が当時の楽曲を歌っている。

▽西銘駿×飯島寛騎
「ラストチャンス/Something ELse」(1998)「歌うたいのバラッド/斉藤和義」(1997)

▽ゆうたろう×板垣李光人
「ハミングがきこえる/カヒミ・カリィ」(1996)

▽橋本祥平×深澤大河
「サヨナラ/GAO」(1992)

▽阿久津仁愛×井阪郁巳
「RADIO/JUDY AND MARY」(1994)

▽立石俊樹×醍醐虎汰朗
「カルアミルク/岡村靖幸」(1990)

 世代ではない彼らは、当時の曲は真っすぐに歌った。

 「おそらく彼らはこれらの曲をあまり知らなかったので、感じた通り素直に歌ったんだと思います。どのシーンで使うかは知っていたと思うのでシーンに合わせて特別な気持ちになったと思います」

川野浩司監督

世代を繋ぐ音楽

 「映画は広げていかないといけないと思います。彼らのファンだけに向けたものなら、映画にする意味はないのではないかと思います」。年齢層幅広く楽しんでもらう。その役割を担ったものの一つに「音楽」がある。劇中歌は「歌詞ではなくメロディなどから選曲した」と語った川野監督だが、1曲だけ歌詞から選んだものがあった。チェッカーズの「I Love you, SAYONARA」だ。その世代の人はこのイントロで当時へとタイムスリップする。

 「それが狙いです。この映画の主な観客層は10代や20代。でもそれだけではなく、40代や50代も楽しめるようにしたいと思いました。チェッカーズの曲が掛かるということだけでも観に来られる人がいると思います。なんとなく子供に付き合って一緒に観に来てくれた親がいつの間にか泣いていたとなったら最高ですね。世代を超えていく内容でもありますので。実は若者だけの話ではなく、イッセーさんと若者達の交流や家族愛とかもある。だから『ツナガレラジオ』というタイトルになっていると思います」

 そんな川野監督。時代の変化をどう感じているのか。

 「最終的には今が大事だと思っています。昔はこういうのがあった、それがあるから今がある。時代は流れていきますから、今の何かを否定するつもりはないです」

 年齢、そして経験を重ねれば、余裕は生まれるが、新鮮さは失われる。

 「若い頃は知らないことだらけだから全てが新鮮で感動もしやすい。でも歳をとって来ると経験しているので上回れない。その繰り返しですよね。だから世代世代が繋がっていける。『ツナガレラジオ』は本当に良いタイトルだなと思います。思い返してみると90年代にそういう曲が多かっただけで、選曲した曲を今聴いても良いですからね。色褪せない。それはなぜかということのほうが大事かもしれないです。世代を超えて繋がる。それは音楽も映画も、そうして伝承していくんです」

川野浩司監督

(おわり)

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