森高千里が暮れも押し詰まった2020年12月29日、配信ライブの第3弾『今度は森高千里が選ぶ1回目2回目のライブ配信では歌わなかったマイフェイバリット・マイソングス~森高千里ライブ2020 FINAL』を開催した。

 オープニングは前回同様に他のアーティストのカバー曲で、CAPSULEの「more more more」が選ばれた。その際、衣装はフューチャリスト(近未来)的デザインで、テクノな曲調にぴったり。身振りで無機質な魅力も醸しだし、実に新鮮だった。

森高千里

 やがて彼女の“マイフェイバリット・マイソング”へ。興味深かったのは、それがどんな基準で選ばれたかであった。以下、単なる実況中継ではなく、印象に残った楽曲を軸に書いていく。

 それは彼女口からも示された。いわく、「いま、“この曲をライブで歌いたいな“と思った作品」ということである。もちろん、ここで言う「いま」は、様々な意味を含んでいたのだろう。

 例えば「心頭滅却すれば火もまた涼し」なら、詞を書いた当時は想像の域を出なかった「人生」という大きなテーマを、時間を経て歌うからこそ込み上げる感慨にこそ「いま」が投影されたのだろう(それにしてもこの歌は、改めて聴くと、じわじわと心に滲みてくる歌詞が秀逸だ)。

 彼女が実に楽しそうに歌っていたのが「鬼たいじ」だったが、この作品を披露する時には、「時代を先取りしていたかも」という言葉が添えられた。本人は作品名こそはっきり示さなかったものの、つまりは『鬼滅の刃』を“先取りしていた”からこそ、「いま」、それを披露する価値が見出されたのだ。その際、カメラ・ワークも躍動し、カメラに寄ってアップで映る彼女の笑顔が臨場感満点であった。

 他にも“マイフェイバリット・マイソング”の基準は、日常の中でふと口ずさむことの多い作品ゆえにフェイバリットなものとか、YouTube でのセルフ・カバーの時に、映像の仕上がりも含めて手応えを感じたからフェイバリットのものまで、様々だったようだ。

 個人的に嬉しかったのは「ギター」だった。アレンジ含めた完成度が高い。曲全体に鳴り響く力強くも哀愁あるエレキ・ギターのフレーズが、歌と密接に繋がっている。自分もギターを上手に弾けるようになって、次は相手にそのフレーズを聴かせたい…。そんな主人公の想いを、ギターの音色が代弁するのだ。歌い終わるやいなや、森高は今後もギターを習得することを諦めず、さらなる高みを目指すと宣言した。ならば今後のライブでは、その部分も楽しみだ。

 今回は会場のライブ・ハウスに、500人を越えるファンが集まっていた。しかしコロナの状況ゆえ、声をあげての声援はできず、もどかしさもあったのだが、ステージも後半戦に入り、彼女のある“決心”が伝わってきてハッとした。毎回、会場を熱狂の渦に巻き込む「夜の煙突」が始まったからだ。ステージ上はひと足先に、通常通りのテンションを取り戻したかのようだった。それは希望だった。

森高千里

 「ハエ男」から「あなたは人気者」へ、その想いは紛れもなく続いていった。ふと想えば、「ハエ男」はよくぞ1回目も2回目も選曲されず残っていたものである。そして「あなたは人気者」といえば、会場全員がお約束のダンスで盛り上がる定番曲だが、集まったファンの人達が振り付けを忘れていないことに、感心しきりの彼女なのだった。最後はしっとり「今日から」が歌われ、幕となった。

 この日を含めた3回の配信ライブを振り返るなら、ツアーが延期となった2020年とはいえ、改めて彼女の豊富なレパートリーに触れる機会ともなり、来るべき全国ツアーへと期待は限りなく膨らんだのだった。 なお、前回と今回のライブに接し、彼女のステージを支えるミュージシャンの力量にも、改めて感動した。どちらも曲目が異なる一回きりのライブではあったが、彼らは全身全霊で楽器を響かせていた。

 配信の画面には、最後の最後に本人直筆のメッセージが映し出された。そこに記されていたのも、全国のファンと一日も早く会える日を願う気持ちだった。【小貫信昭】

セットリスト

「今度は森高千里が選ぶ1回目2回目のライブ配信では歌わなかったマイフェイバリット・
マイソングス~森高千里ライブ2020 FINAL」 @ZEPP HANEDA

M-1.more more more (CAPSULE カバー)
M-2.今度私どこか連れていって下さいよ
M-3.地味な女
M-4.心頭滅却すれば火もまた涼し
M-5.鬼たいじ
M-6.マイ・アニバーサリー
M-7.照れ屋
M-8.ALONE
M-9.雨のち晴れ
M-10.晴れ
M-11.さよなら私の恋
M-12.ギター
M-13.忘れ物
M-14.夜の煙突
M-15.ハエ男
M-16.あなたは人気者
M-17.今日から

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