サザンオールスターズが2020年12月31日、横浜アリーナで無観客配信ライブ『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020 「Keep Smilin’ 〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」supported by SOMPOグループ』を開催した。「ほぼほぼ年越しライブ」というタイトル通り、無観客配信ライブでコロナ禍でのリスクを考慮し、万全の形で直前に収録したライブの模様を、大晦日の22時から年越しのタイミングにかけて配信。2020年に二回配信ライブをおこなったサザンが音楽シーンに与えた影響を考察しつつ、エンタメ復興の狼煙となる配信ライブの模様を以下にレポートする。【取材=平吉賢治】

ソーシャルディスタンスを超えた心の繋がり

(撮影=関口佳代)

 サザンは2020年6月25日に医療従事者、ファン、スタッフへの感謝を込めた初の無観客配信ライブをおこなった。年末に差し掛かり、再び新型コロナウイルスが猛威をふるう中、「こんな1年だったからこそ、新しい年は皆様と一緒に迎えたい!」という桑田佳祐の言葉に端を発し、恒例の年越しライブを6年ぶりに開催。

 2020年に二回の配信ライブをおこなったサザン。各公演で音楽シーンに与えた影響は計り知れないだろう。エンタメ界で誰もが立ち尽くしたとも言えるコロナ禍という特殊な事態。「集まってはいけない」「ライブができない」という、これまで当たり前だったことが制限される中、サザンは果敢な姿を、斬新な景色を、音楽家にとっての“希望の轍”を残した。無観客という状況を逆手にとった様々な演出、見せ方。さらなる進化を形として示し、行動するエネルギー。2020年、サザンはそれら全てを提示し、夢いっぱいの愛と情熱を表現した。

 本公演で桑田が述べた「横浜アリーナに来てくれたそれぞれの魂――」というメッセージ。それは、「離れていても、どこまでも楽しく共有できるエンタメの在り方」「ソーシャルディスタンスを超えた心の繋がり」「音楽の力の強さ、尊さ、美しさ」「コロナ禍を乗り越えるパワーが我々にあるということの証明」それらを全て要約したような言葉とも捉えられるのではないだろうか。

 サザンは粋で、パワフルで、愛に満ちた音楽の力をどんな時であっても人々に届け、奮い立たせてくれる稀有な存在。「困難を乗り切って行こう」「今は耐えて未来を明るく見据えよう」「でも、“今はこうやって楽しもうよ”」というスタイルを華々しく披露してくれた配信ライブだった。

 「今年こそは生で、直にみなさんとお会いしたい!」と、公演最終曲を前に桑田は伝えた。その希望を胸に、輝かしい未来を見据えることができる。特殊な現状であっても、新たな見せ方で楽しませてくれるサザンという存在は、音楽業界、エンターテインメント業界において、そして我々にとっての希望の光そのものだろう。

会場をフル活用する粋な演出の数々

(撮影=西槇太一)


 
 サザンは、あらゆる面から“粋”と表現するにふさわしいバンドではないだろうか。本公演「Keep Smilin’ 〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」というタイトルひとつとっても、“笑顔を”という前向きなフレーズ、そして“お疲れ様でした!!”というねぎらいの心。“嵐を呼ぶ”という心ふるわせる頼もしいフレーズ。さらには“マンピー!!”という茶目っ気と遊び心。喜怒哀楽の感情と、日本中の人々を勇気づけるメッセージが端的に収まっている。

 公演は全23曲。桑田のスライドギターが光るイントロからゴージャスに始まる「ふたりだけのパーティ」から絶好のオープニング。おそらく、コロナ禍ということを意識した、“みているあなた”とサザンのパーティというそれこそ粋な楽曲からスタートを切る。あらゆる音楽性を網羅したサウンド、巧みに言葉を綴りメロディを優雅に泳ぐようなボーカル、グルーヴに関してはサザンにしか醸せないフィーリング。あらゆる音楽のテイストをサザン流に昇華させ、唯一無二のオリジナリティをライブで放つ。

 そして、原由子の情熱的な打鍵からの「My Foreplay Music」。荘厳なオルガンの音色と、天と地をブルーのレーザーで照らす神々しい演出でスタートする「東京VICTORY」。ライブへ没頭する要素を余すことなく広げ、サザンはライブ会場での観覧とは別種の“新世代エンターテインメントの形”を提示する。言うまでもなく、サザンは40年以上日本の音楽シーンのトップを走り続け、ありとあらゆる影響を与え続けてきた。そして2020年大晦日、さらなる進化形を音として、演出として表現し、全方位に光を照らした。

特別な大晦日の過ごし方

(撮影=西槇太一)

 MCで桑田は、「この1年、本当にお疲れ様でした」と、医療従事者やエッセンシャルワーカーのみなさんをはじめ、ファンやスタッフ等関係者、そして視聴者など全ての人に、温かい所作と言葉で伝えた。そして、「今年はとにかく特別な1年でございました。特別な大晦日ではございますけど――今回は、お一人でこれを観られている人も多いんじゃないの?」と語り、“普段とは違う大晦日”になってしまっているであろう視聴者を慮った。そして、メンバー紹介で「肩の怪我から不死鳥のごとく復帰してまいりました!」と桑田が言葉を寄せると、手術後、音楽活動を一時休止していた松田弘は華麗なドラムソロを決め、「やった! 最高だよ、弘」という桑田からの愛のメッセージを受けて完全復活をアピールした。

 MC明けには「愛は花のように(Ole!)」から情熱的な空気感が広がり、照明で真っ赤に染められた会場は一転、清涼感あふれるライティングの中、「走れ!! トーキョー・タウン」へ。あまりに変幻自在ながらもライブ自体のグルーヴは強固。無観客ライブでこのような流れを創り出せるのはサザンならではと言えよう。

 港の景色を思わすSEからの「LOVE AFFAIR~秘密のデート〜」ではロマンチックな空間が一気に膨張。ここからは本公演のハイライトと感じさせる展開だ。曲中、終始輝く空気感は至高のエンタメのひと時。色気たっぷりの雰囲気は、ジャジーなテイストにアレンジされた次曲「ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)」に引き継がれ、とろけるようなムードを醸す。楽曲中盤で鋭いギターサウンドと桑田のシャウトが弾け、脳天を突くような展開で心を鷲掴みにしてくれる。そして、炎と原色の照明、色気全開のダンサーが艶やかに踊る中「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」へ、怒涛のテンションのまま「BOHBO No.5」へと続き、キレキレのダンスで舞いつつ歌唱する桑田、燃えるような演奏で魅せるサザン。「無観客ライブ」という、特殊な形式であることを忘れてしまうほどのインパクトを画面越しに受け、心が乱舞する視聴者は数え切れないのではないだろうか。

 「BOHBO No.5」の後奏でBPMをやや落とし、「マンピーのG★SPOT」へと曲をジョイントし、本編ラスト灼熱の瞬間。桑田は、ライブタイトルからとったと思わしき「嵐」という文字が記されたズラを被り、ハッピーな衣装に身を包んでのパフォーマンス。ステージ上には“和”のお祭りダンサー、日本の祭りの風景が映し出されたスクリーン、そして客席にもダンサー、神輿、のぼり、うちわ、紙吹雪と、文字通りお祭り騒ぎの最高の光景だ。

 圧倒的フィナーレ感の中、桑田は本編の最後に、メンバーとステージ上にいる全ての人、スタッフ、そして視聴者に向けて感謝の意を述べ、「横浜アリーナに来てくれたそれぞれの魂たちよ、ありがとうございます! 音楽関係、エンタメ業界は負けないからな!」と、頼もしいメッセージを寄せた。

 アンコールでは客席に付けたライトで“2021”の文字を照らし、「希望の轍」「夕方 HOLD ON ME」と楽曲を連ねる。そしてライブラスト曲「勝手にシンドバッド」では歌詞を<暮れも正月もなく 人の命守る 医療従事者の皆さん そして家族の方々を守ろう 収束が見えて来ない みんな苦しいけど コロナ禍を乗り越えて いつか素敵な未来を 迎えよう>と替え歌にするという、愛に満ちた粋なはからいと共に大団円を迎えた。

セットリスト

『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020 「Keep Smilin’ 〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」supported by SOMPOグループ』
2020年12月31日@横浜アリーナ 無観客配信ライブ

1.ふたりだけのパーティ
2.My Foreplay Music
3.東京VICTORY
4.いとしのフィート
5.恋するマンスリー・デイ
6.あっという間の夢のTONIGHT
7.君だけに夢をもう一度
8.夜風のオン・ザ・ビーチ
9.LONELY WOMAN
10.Ya Ya(あの時代[とき]を忘れない)
11.愛は花のように(Ole!)
12.走れ!! トーキョー・タウン
13.世界の屋根を撃つ雨のリズム
14.栄光の男
15.はっぴいえんど
16.LOVE AFFAIR~秘密のデート〜
17.ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)
18.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
19.BOHBO No.5
20.マンピーのG★SPOT

ENCORE

21.希望の轍
22.夕方 HOLD ON ME
23.勝手にシンドバッド

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