大野朋来、舞台経験を経て歌手デビュー「心がけているのは“体技心”」
INTERVIEW

大野朋来

舞台経験を経て歌手デビュー「心がけているのは“体技心”」


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年12月30日

読了時間:約10分

 ミュージカルなど舞台で活躍する大野朋来が、デビューミニアルバム『LIFE DESTINATION』をリリースした。上京して約15年、満を辞してのメジャーデビューとなった。そんな新たな門出を後押しする7曲が収録されたアルバムは中西圭三や山田タマルらが楽曲提供。そして、大野が全曲作詞に挑戦した。ソウルフルでアーバンなスタイリッシュサウンドに、大野の躍動感のあるエネルギッシュな歌声が伸びやかに映える、大野のさまざまな面を感じられる1枚に仕上がった。インタビューでは音楽に触れた原体験から、楽曲「カスミソウ」で描かれる支えてくれた人たちへの感謝、そしてシンガーとしての目的地、展望を聞いた。【取材=村上順一】

視野が広がった舞台での経験

『LIFE DESTINATION』ジャケ写

――いきなりなんですけど、大野さんはNGなものや、事柄はありますか。

 実はメロンが苦手なんです。他の瓜科は大丈夫なんですけど。食べるとアレルギーで次の日に地球儀みたいなパンパンな顔になってしまうんです(笑)。果汁が入ったメロンパンもダメで...。

――差し入れでもメロン系は多そうですし、それは辛いですね...。さて、大野さんが音楽、歌というものを意識し始めたきっかけは?

 歌い始めたのは中学生の時のコピーバンドでした。同級生と組んで当時流行っていたグループのコピーをしていて。カラオケでちょっとしたオーディションみたいなのを友達とやって、それで僕がボーカルに決まって。そのバンドで歌う事が楽しいと思えたのが原点です。

――11月のライブでも当時歌いたかったGLAYの「カーテンコール」をカバーされてましたよね。

 そうなんです。当時僕が「カーテンコール」を歌いたいと提案したんですけど、みんなから却下されて(笑)。やっぱり中学生だったのでみんな、バラードより激しい曲を選びたがるんです。それでいつかこの曲をやりたい、と思っていたんですけど、なかなかタイミングがなくて、今回やっと歌う事ができたんです。

――そのバンドでメジャーを目指すみたいなことになっていくのでしょうか。

 高校に進学してその時のメンバーは散り散りになってしまいました。各々入った学校でバンドを組み始めて、僕だけ取り残されるような形になって。それで僕は僕で「新しいことを始めよう」と思ったんですけど、何をしたら良いのかもわからなくて、とりあえず沢山音楽を聴こうと思いました。そこでブラックミュージックに傾倒し始めました。聴いて行くうちに独特の雰囲気にのめり込みました。

――主にどんなアーティストの楽曲を?

 スティーヴィー・ワンダーが最初に好きになって、アッパーな曲だとアース・ウインド & ファイアーとか。特にスティービー・ワンダーは擦り切れるくらい聴きましたから。そこからマーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイとかも好きになっていきました。

――ミュージカルをやるようになったきっかけは?

 名古屋の専門学校を卒業して、上京してからバンドを組みました。バイトをしながら活動をしていたんですけど、それがなかなか上手く行かなくて。バンドが自然消滅みたいな感じになってしまった時に、知り合いの事務所の方からミュージカルのお誘いを受けました。それはすごく小さな役だったんですけど、初めてステージに出てみて、とても楽しくて舞台も良いなと思いました。そこからお仕事を続けてもらえるようになったんです。なので自ら飛び込んだというよりも、自然とその世界に入っていった感じです。

――大野さんの歌声を聴いて誘って頂けた感じでしょうか。

 身長があってステージ映えしそうだから、と言ってもらえたのを覚えています。最初はおそらくそれだけの理由だったと思います(笑)。最初に舞台に出た時は一人で歌うシーンはひとつもなくて、その時に川島なお美さんや今拓哉さんの姿を見て、こういう世界もあるんだと知り、毎日が楽しかったです。ミュージカル座の『ロイヤルホストクラブ』という劇で新人ホスト役をやって、その後に10caratsというグループに入って活動していました。

――舞台での経験は今どのように活きていますか。

 それまでは自分の好きな曲しかやっていなかったですし、ライブハウスでの活動が主でした。舞台だと発声方法も変わりますし、魅せ方もバンドとは全然違うんです。それがすごく勉強になって自分の視野が広がった感じがしています。舞台の経験がライブでも活きていたら嬉しいです。

「僕にとってのカスミソウです」と伝えたい

――11月11日にメジャーデビューされましたが、どのような流れがあったのでしょうか。

 10caratsを辞めて、どうしようかなと思っているときにお話を頂いて、6月頃から本格的にデビューに向けて動き始めました。メジャーデビューしたい、という思いで東京に来たので、そのお話を頂いた時は本当に嬉しかったです。音源を制作している段階では実感はまだ湧いていなくて、CDが出来て手に取った時に「メジャーデビュー出来たんだな」と実感して、心に熱いものがありました。

――今作『LIFE DESTINATION』は全曲で作詞されていますが、バンド時代にも作詞はされていて。

 作詞はしていたんですけど、バンドを解散してから書いていなかったんです。

――ブランクがあったんですね。

 僕はゼロから詞を書く事が得意ではなくて、曲が出来上がってきて、音を聴いたインスピレーションで作詞するタイプなんです。どの曲もすごく素晴らしい楽曲だったので、すぐにインスピレーションが湧いてスラスラ書けました。

――中西圭三さんが提供していただいた曲に歌詞を書くというのはプレッシャーもあったのでは?

 それはなかったと言ったら嘘になりますね(笑)。でも、それ以上に喜びの方が強かったです。圭三さんのような日本を代表するブラックミュージック、ソウル系のアーティストに曲を書いて頂けたというのは、自分の中での財産になりました。曲を聴く前はプレッシャーはあったのですが、聴いた瞬間にイメージが湧きました。

――「カスミソウ」は大野さんの想いが反映された歌詞ですよね。

 この曲の歌詞にフィクションはなくて、真実を書きました。自分を支えてくれた人たち一人ひとりのために歌詞を書こうと曲を聴いて思いました。

――「カスミソウ」というタイトルにしたのは?

 僕は花束を作る時にかすみ草を絶対入れるんです。それは主役となる花を支えてくれるイメージがあって、力強さを感じるんです。僕がその花の中の主役といったらおこがましいですけど、僕は色んな方に支えられてここまで来れたと思っているので、その方達一人ひとりに、「僕にとってのカスミソウです」と伝えたくて。バンドをやっていた時に支えてくれた方や、両親や親戚、みんな僕を見捨てずに支えてくれました。

――デビューするまでに一番辛かったことは?

 やっぱり中々デビュー出来なかったことです。上京してから15年掛かってしまいましたから…。デビューが決まったと発表させていただいた時に本当に沢山の方々からメッセージをいただいて、これだけの人が支えてくれていたんだな、とより実感して。今のコロナ禍の状況ではライブをするのも簡単ではなくて、そういった中でCDのような人の手に届くものというのは、より実感があると思うんです。

――アルバムタイトルの『LIFE DESTINATION』は目的地という意味ですが、どのような想いを込めてつけたのでしょうか。

 今までの人生を振り返ってみて、ここがイチからのスタートだなと思い、人生の目的地に向かって歩いて行く覚悟このタイトルにしました。楽曲を制作する前からこのタイトルは決めていました。 

――様々な作家さんが関わられていますが、こういう曲が歌いたい、といったリクエストはされるんですか。

 こういう曲が歌いたいという大きなリクエストは出しましたけど、そこまで細かくは指定はしていなくて。あまり細かく指定してしまうと作る側のインスピレーションも消してしまうと思ったので。あとはおまかせで書いていただきました。

――楽曲制作は結構タイトなスケジュールだったとライブのMCで、サポートメンバーで今作のサウンドプロデュースを務める伊勢賢治さんがおっしゃっていたのが印象的でした。

 タイトでしたね(笑)。「メジャーとはこういうものなのか!」というぐらい。とはいえ歌詞はスラスラと書けたので良かったんですけど。伊勢さんは同時期に他の仕事も重なっていたので、よりそう感じたのかもしれません。 伊勢さんはマルチプレイヤーなので本当に忙しくて、24時間いつ寝ているのと思うぐらい。もう頭が上がらないです。

――伊勢さんと一緒にやるようになったきっかけは何だったんですか。

  Michael Jacksonのトリビュートライブがありまして、そこで知り合いました。そのリハの時に初めてあったんですけど「一体何者なんだろう?」とていうのがあって。サックスを吹いた音が本当にすごくて、そしてパーカッションを叩き始めたり、すごい人なんだとわかって。その時に意気投合してこのライブが終わってからも一緒にやりましょう、となったんです。2人でライブもたくさんやりましたし、それこそ17人もいる大所帯ファンクバンドをやったり。僕がソロでやるときには必ず参加していただくスーパーマルチプレイヤーなんです。 

――ライブの時も凄かったですからね。ライブといえば大野さんのトークもめちゃくちゃ面白いですよね。

 本当ですか? ありがとうございます。ただいつもすごい喋りすぎて、スタッフから巻きの指示が入るんです。「早く歌って」と言われますから(笑)。 でも僕は楽曲の説明もそうですし、お客さんとのコミュニケーションもあった方が楽しいと思っているので、ライブに関してはそういうスタイルでやっています。コミュニケーションというところは、今のコロナ禍ではなかなか難しいところもあるんですけど。

30回くらい歌ったMV撮影

――今回レコーディングはいかがでしたか。

 仲の良いミュージシャンのスタジオだったので、2〜3時間くらい喋っちゃって、「いつになったらレコーディング始まるんだろう」といった感じなんです。自分の初めてのアルバムだったのでエンジニアさんがOKを出しても、一度聴いてみて、自分自身が納得しないことが何度もありました。エンジニアさんのことは信用しているんですけど、やっぱり作品となると厳しくなってしまいます。あと僕がコーラスを担当する場合はその場で伊勢さんがラインを考えて歌うんですけど、本当に難しいんです。それは主旋律のレコーディングよりも時間は掛かりました。 

――コーラスに注目していただきたい曲は?

 「カスミソウ」と、僕のコーラスではないんですけど「ポケットの勇気」です。 「ポケットの勇気」はコーラスの完成度が高くてびっくりしましたから。あと2曲目の「I Believe U」 はいつも僕のライブでもコーラスをしてくれている、こさかりょうこさんが作曲してくれて、コーラスも歌っていただいているんですけど、僕との付き合いも長いので、すごく僕好みのコーラスをしてくれるんです。そこにも注目していただきたいです。

――シンガーソングライターの山田タマルさんも「ひととせ巡る頃に」という曲を提供されていますね。

 この曲も「カスミソウ」と同様にタマルさんのメロディーを聴いた瞬間にすぐにイメージが浮かびました。この曲のメロディーからはすごく四季とか花の風景が見えたんです。 ミュージックビデオも僕がイメージする通りに作っていただけたので、出来上がった時は本当に感動しました。

――ミュージックビデオ(MV)は演じるという部分もあると思うんですけど舞台とは違う感覚ですか。

 そうですね。 今回初めての撮影だったということもありましたし、曲を録り終えてからすぐの撮影だったので歌詞も不安な所があって。 あの日30回くらい歌ったと思うんです。 通常MVはリップシンクでやるものだと思っていたんです。けれど今回は実際に歌った方がいいということになって生で歌って撮影しました。 それもあって撮影が終わった頃にはもう声が擦れて(笑)。 でも自分が想像していた以上のものが完成しました。  

――さて、次の展開というのはどのように今考えていますか。

 もちろん次の作品というのも考えていますし、コロナで難しいかもしれないですけど2021年はライブを沢山やりたいなと思っています。 その中で新しい曲も発表していけたらなと思っています。 

――楽しみです。大野さんにとって音楽や歌とはどういった存在ですか。

 それは常日頃考えていることではあるんです。 いろんなタイプのミュージシャンがいて朝から晩まで音楽漬けという人もいると思います。僕も音楽は大好きで、ないと生きられないと思うんですけど、音楽も僕も生活の一部であって音楽以外の周りのところもすごく面白いなと感じています。 当たり前の生活をしたり、落語を見に行ったり、旅行に行ったりいろんなことがあります。楽しいことや悲しいことが音楽に生きてくると思っているので、僕は音楽だけに100%というわけではないんですけど、音楽のために生きているとは言えます。 

――音楽=生活なんですね。ちなみに落語がお好きなんですか。

 落語好きでよく見に行くんです。興味はなかったんですけど、知り合いから一度見てみない? と誘われて何年か前に一度見たんです。でも、その時は何にも感じなかったんです。時間が経ってからテレビでもう一度、落語を見た時にやっぱりすごいなと思って。

 自分もライブでは喋る立場ではあるので、それを踏まえた上で重ね合わせて見たら自分とは全然違うなと思って。それで最初は自分の勉強のために見に行っていたんですけど、だんだん自分が面白いから見たくて通うようになって。 古今亭文菊さんという方の落語がすごく綺麗で衝撃を受けました。音楽もそうですけど技術があるとどこまでも大きく見えるんだな、というのを感じました。

――よく技術じゃない、といった話になる時もあるじゃないですか。でもやっぱり技術は重要ですよね。

 僕は技術は必要だと思っています。よく“心技体”って言うじゃないですか。でも僕は逆の“体技心”だと思っています。 というのもやっぱり健康な体があってのことで、そこに技術があると最後の心に繋がって、自信になっていくと思っています。 なので僕はそれをいつも心がけて生きています。

(おわり)

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