INTERVIEW

金子ノブアキ

年齢を重ね、芝居も音楽も、
良い意味でブルースになっていけばいい


記者:木村武雄

写真:Maho Korogi

掲載:20年12月24日

読了時間:約9分

 ◆今際の国のアリス
 山崎賢人と土屋太鳳がW主演するNetflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』(佐藤信介監督)。麻生羽呂氏の同名コミックが原作。人生に夢を見出せず曖昧に生きてきたアリスと、どんな苦境でも「生きる意味」を探し続けるウサギが、突然放り込まれた謎の世界“今際の国”で共に信頼を築き「生き延びる」ために理不尽な現実に挑む。金子ノブアキが演じるボーシヤは、“今際の国”の謎を解く鍵があるとされる“ビーチ”の支配者。カリスマ的存在だが内面に弱さが見えると語る金子は、ドラムスとしての性分が芝居、そして本作にも表れていると明かす。それは何か。

Maho Korogi

金子ノブアキ

「音楽」と「芝居」の両輪がもたらすもの

 金子ノブアキの両輪を担う音楽と芝居。しかしその性質はやや異なる。音楽は、思いを表現する、オーディエンスを熱狂させるだけでなく、彼にとっては役を解く存在でもある。

 「音楽と芝居が同じぐらいのペースで動いている時は引っ張られませんが、俳優の仕事が立て込んでいる時は線引きに気を付けています。楽器の演奏を挟むと素に戻れることがあるので、音楽にはメディテーション効果があると思います」

 音楽一家に育った。RIZEのドラムスで、昨年は「RED ORCA」というバンドプロジェクトも立ち上げた。「芝居をしている時は音楽から切り離される…」何気ない言葉に音楽への想いがのる。

 ただ、芝居も子役時代を含めればその歴は長い。彼を形成する大事な要素だ。金子ノブアキはこの両輪で走り続けてきた。「何かの案が浮かんでくる時は、それぞれの逆にいるときです」

 音楽は「メディテーション効果」と言った。しかし、芝居にもそのような効果があるという。

 「僕の性格ですが、音楽に向き合いすぎるとクールダウンが出来なくなることが多い。でも芝居の時はそこから切り離されるので耳は休められる。撮影現場で何かを大音量で聞くことはないですから(笑)。その撮影期間中に耳がクリアになって、また新たなアイデアが生まれてくる。それで音楽のエンジニアさんに連絡することはあります」

 音楽は、ライブ以外にも細部な音を確認するため大音量で聴くことがある。耳には負担だ。突発性難聴を患うミュージシャンは意外に多い。

 金子にとって音楽と芝居はバランサーでもある。「逆にライブやレコーディングをやっている時、関わっている作品やこれからの作品の事が気に掛かる。体は一つしかないけど、心の余白みたいなものはそれぞれ一人分ずつ持っているのは、しばらくやってきて感じています」

 音楽と芝居、それぞれに設けている「余白」。言い換えれば「余裕を持つ」ことでもある。

 「そうしたものは意識しなければ設けられませんが、自然と出来ている感覚はあります。以前は分からなかったんですけど、ここ数年間で恩恵というか、良い部分があるなって。年齢と共に肉体も変わってきて、ケガや痛んでもその回復スピードが少し遅くなっている。でも使う箇所を変えながら痛めているところを避ける。それも一つの余裕に繋がると思うんです」

衰えにも魅力

Maho Korogi

金子ノブアキ

 その余裕は過去の経験から生まれた。運動量が多いドラムスは体への負担が大きい。腱鞘炎だけでなく腰や首にもダメージを与えることがある。ましてやRIZEだ。アグレッシブなプレイで人々を舞い上がらせる一方で、プレイヤーの体は悲鳴を上げている。

 「針を打ったり、整体に行ったり(笑)。何度も何度も失敗して怪我して、痛い目に遭って、もうダメダメなんですけどね(笑)。でもそうやっていくと痛めるラインみたいなのが分かってくるんですよ。これ以上いったらやばいなとか。ツアーも、1回終えて区切ると、次のツアーの初日には前のツアーの感覚を忘れているんですよね、体も記憶も。だから楽しくなると、行ける気がして『わー』っていってやっぱりケガをする。その繰り返し(笑)。でも、傷付いた筋肉は再び結びついて強くなっていきますからね。だからファイナル直前くらいが一番良いピークですね(笑)」

 ライブとなるとリミッターは外れ、その“車輪”は回転数を上げる。ただ、芝居となると冷静だ。体への自制が働く。
 
 「アクションシーンでは無理しないように気を付けるようになりました。音楽も芝居もどっちも同時にやると限界を超えてしまう。『無理、自信がないです』と言えるようになったのは収穫です(笑)。甘えるというか。若い時では考えられないくらい体を図るようになりました」

 年を重ね、変化する体。それを技術でカバーする。でもそれが“味”になることがある。

 「ミュージシャンは、衰えることにも良さがあると思うんです。ものすごく動いていた人が、一で十を語るような時期に差し掛かってくると、かっこいい。そういう先輩を目の当たりにしているので、そうなりたいですね」

 一で十を語る。それは役をまとった金子ノブアキからも感じられる。黙っていても何かを発しているような佇まいだ。

 「音で言うと、インストゥルメーションみたいなものやアンビエントみたいなもの、シューゲイザーがあったりするけど、それぞれは最終的にピントが合い透明度が増してくるところもあるので、音楽の話をするとそういう感覚に近いかもしれない。表裏一体というか」

ボーシヤに投影させた上に立つ者の寂しさ

Maho Korogi

金子ノブアキ

 そんな金子が『今際の国のアリス』では、楽園“ビーチ”の支配者、ボーシヤを演じる。圧倒的な存在感を放つ。

 「“今際の国”というくらいですから、死と背中合わせの所に全員がいるなかで、この先の道標を示しているような人物がボーシヤ。“今際の国”の本当の意味も何となく分かっているんだろうなと感じて、切なく思いました。特に両手に女の子を抱えながら酔っ払ってアリス(山崎賢人)と話すシーンでは、自分の過去を一枚ずつ脱ぐように語って露わにしていく。そして、アグニ(青柳翔)との関係性が縮まる回想シーン。ボーシヤは支配的に見えて、実は周りとの関係値も静かなものを持っているのだろうと思います。でもどこか人間味があるから人はついてくる。激しい表現もするけどそういう所に彼の本質はあるのかな」

 それは、“ビーチ”でナンバー2の位置にいるアグニ(青柳翔)とは対極にあるようにも思える。ボーシヤと実は親友だったのだが、感情は表に出ない。

 「親友であるというところですれ違っていく切なさはあると思う。そのあとは観てもらって感じて欲しいです。共依存とまではいかないけど、『本当はずっとアグニと一緒にいるんだよ』とボーシヤは投げかけている。穏やかな所があるんでしょうね。それが面白かったです。自分はこの“ビーチ”の王様だと言ってるんだけど実はフラットというか、謎に優しさを感じました。暴力で支配しようとするけれど、そこも上手くいかない。上手くいかないものを上手くいかせるために武闘派のアグニ(青柳)に任せていくというか。でもそうしたことも本能的に察している。その上で自分が人の為にできる事は何かを、いびつになりながらも考えている。狂っているように見えて、人として大事な感情は失っていないと思います。上に立つ人は現代社会でもそういう切なさはあると思う。そうしたどうしようもなさを、穏やかな視線で見るとああいうキャラクターになるんだろうなと思います」

 そんな金子には「陰」が似合う。その陰は人の深みにも置き換えられる。一見、狂気に見えるが人間臭さが同居する。映画『Diner ダイナー』、『ギャングース』。現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』で演じる織田家重臣・佐久間信盛は功績を挙げながらもやがて追放される。そうした役も金子が演じることによって多面性が出てくる。ボーシヤもそのなかの一人と言える。

プロセルスが好き、ドラムスとしての性分「利他的」

Maho Korogi

金子ノブアキ

 音楽と芝居、それを両輪とする。そんな金子の原動力は何か。

 「僕はドラムですし、利他的というか、バランスとしてその位置に立つのが得意だと思う。人とやる事が好きだし、人とモノを作るのが好き、その過程も好き。ドラムを叩いている時は、楽器のテックさんがいて、音響、照明がいる。ビデオと撮るなら撮影部さんがいる、そういう意味では、マインドセットは元々持っているんだと思う。俳優部の仕事で映る側にいるというだけで、体と精神が待ち合わせして集まって来る合流地点みたいなところが僕にはある。自分というよりかは周りとのバランスを考えている方だと思います。そのプロセスに立っている瞬間は火事場ですからね。それが好きだし、出来上がって次に行く原動力になる。ミュージシャンだったらマスタリングして納品してリリースされるまでが一番作品を聴いている。俳優としては映像作品であれば、撮影が終われば制作に関わっていない限りは一旦上がる。そして、こんなに立派になりましたよと完成を見せてもらう。そのプロセスが好きです」

 音楽では、バンドの屋台骨であるドラムスとしてリズムを支える。後ろから眺めるボーカル、ギター、ベースの背中。そして熱狂するオーディエンス。俯瞰的な立ち位置とも言える。その性分が、芝居にも表れているようにも感じる。

 「ほとんど同じじゃないですか。だからそういう役が僕のところに巡ってきてくれるというか、そうしたところに対する無理がないから続いていると思う。だけど、無理してきつくなるのであれば考えたほうがいい。ボーシヤはきっと、そのキャラクターや年齢、タイミングを踏まえての配役だったのかなって。この先、年齢を重ねれば役も変わる。でもそれはそれで俳優としての楽しみでもあります。ミュージシャンもそうですが、良い意味でブルースになっていけばいい。それは嫌でもそうなっていく。その流れをボーシヤではないけど、ギリギリであらがいながらしっかり受け入れていくことが重要だと思います」

 そんな彼だからこそ、哀愁のある“ブルージー”なボーシヤは本作に生まれた。

Maho Korogi

金子ノブアキ

(おわり)

取材=木村武雄
撮影=Maho Korogi
スタイリスト=上井大輔(demdem inc.)
ヘアメイク=VANITES 高草木 剛

※山崎賢人の「ざき」は「たつさき」が正式表記
※柳俊太郎の「やなぎ」は旧漢字

作品情報

Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」
原作:麻生羽呂「今際の国のアリス」(小学館「少年サンデーコミックス」刊)
監督:佐藤信介
出演:
山崎賢人 土屋太鳳
村上虹郎 森永悠希 町田啓太 三吉彩花 桜田通 朝比奈彩 柳俊太郎 渡辺佑太朗
水崎綾女 吉田美月喜 阿部力 金子ノブアキ 青柳翔 仲里依紗
脚本:渡部辰城、倉光泰子、佐藤信介
(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT
Netflixにて全世界独占配信中
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/今際の国のアリス

STORY

優秀な弟と比較され続け、人生に意味を見出せず鬱々とした日々を送るアリス。唯一の心のよりどころである親友のチョータとカルベと渋谷に繰り出すと突然、街は無人と化す。不安を感じつつつも、誰もいない解放感にはしゃぐ3人。しかしそこは、様々な“げぇむ”をクリアしなければ生き残ることができない“今際の国”だった…。持ち前の観察力と判断力を発揮していくアリスは、仲間を作らずたった一人で““げぇむ””に挑み続けるクライマーのウサギと出会う。命を懸けるというかつてない体験を通し彼らは、「生きること」に正面から向き合うこととなる。

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