声優・アーティストの逢田梨香子が12月17日、東京・中野サンプラザホールで1stツアー『逢田梨香子 1st LIVE TOUR 2020-2021 「Curtain raise」』の東京公演を開催した。彼女の1st アルバム『Curtain raise』を伴うこのツアーは本来4月に開催される予定だったのだが、新型コロナの影響で開催が12月に延期となっていた。この日は昼夜2回の公演が行われ、そのうち夜の部の模様をレポートする。

 開演前のステージ上は、今回のツアータイトルが記された幕で覆われていた。そこから場内が暗転してアルバム『Curtain raise』の冒頭を飾るプレリュード「Curtain raise」が流れると、客席が白のペンライトに包まれるなか、その幕がゆっくりと上がっていく。延期から8ヶ月、いよいよ待ちに待ったライブの開幕だ。

 幻想的な「Curtain raise」からそのままアルバムの曲順通りに「Mirror Mirror」のヘヴィなイントロ鳴らされると、まずそこで目をひいたのは今回のツアーからタッグを組む、バンマス/ピアノ・野間康介率いる生バンドの存在だ。この曲にぴったりなガツンと耳にくるヘヴィネスは、おそらくひさびさの生ライブとなるであろうオーディエンスにとってもインパクトのある体験だったに違いない。そしてステージ上のバンドから視線を上げると、ステージ上段には黒のドレスに身を包んだ逢田が立つ。

逢田梨香子【撮影=渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)】

 彼女のボーカルもまた、この曲とこのバンドの音圧に負けないぐらいパワフルなものだった。ステージを踏み締めて立つような佇まいからまさに全身で声を発するように、パワフルでありながら彼女らしいしなやかさも聴かれるその声に、観客も序盤から一気に引き込まれていく。過去に観客を前にしたステージでは、およそ1年前にオフィシャルメンバーサイト「Us」の公式イベントでも披露していて、そのときも成長を感じさせるパフォーマンスが見られたのだが、今回はそこからさらに進化した、実に驚くべき表現をステージ上で見せていた。

逢田梨香子(撮影=田中聖太郎)

 歌唱についてはもちろん、音に乗せたステージングや観客とのやりとりなど、中野サンプラザの広い舞台を存分に活かしたものになっていて、本来公演が行われるはずだった4月から8ヶ月でさらに自身を仕上げていったのだろう、力強いパフォーマンスが序盤から展開されていった。

 一方MCでは、「みなさんこんばんは!」というとにかく大きな第一声とともに、歌唱のときとは一転してキュートな笑顔を見せる逢田。今年8月にオンラインイベントがあったとはいえ、目の前に観客がいるスタイルはそれこそ1年ぶりというのもあって、「みんながいるー! うれしい! ありがとう!」ととにかく楽しそう。「しっとり大人っぽい楽曲や座って楽しめる曲も多いので、一緒に楽しい時間を過ごしていけたらうれしいです!」とこの日の抱負を語っていたが、まさにその言葉通り、以降のセットはしっとりとしたアコースティカルな楽曲から観客も参加できるポップなものまで、まさに『Curtain raise』の多彩な表現をステージ上から丁寧に打ち出していた。

逢田梨香子(撮影=田中聖太郎)

 また観客も、歓声は送れないけど思い思いの色のペンライトとともに座ってじっくり聴いたり、時には立ち上がって一緒に盛り上がったりと、さまざまなスタイルで逢田との時間を楽しんでいる雰囲気がひしひしと感じ取られた。そうした空間での逢田のパフォーマンスも、楽曲に応じてさまざまな表情を見せ、冒頭に感じた進化をさらに更新するようなパフォーマンスが中盤以降も続々と見ることができた。

 なかでも中盤で見せた逢田が敬愛するアーティスト・やなぎなぎ提供の「Tiered」での表現力は素晴らしく、白い衣装をみにまとったその姿もあいまってかくも神秘的な美しさを見せていた。座ってじっくり聴き入るとまた格別という、今のシチュエーションにもピッタリだったことで実に感動的なモーメントとなった。また、デビューEPにも収録された「FUTURE LINE」も絶品だった。デビュー以降、さまざまなステージで披露してきた曲なだけに彼女のパフォーマンスの違いがわかるというか、よりビルドアップされた歌唱や軽快なステージングなど、すべてにおいてのレベルアップが感じられた。

逢田梨香子(撮影=田中聖太郎)

 その一方でまた印象に残ったのは、歌っているときの”眼差し”だ。まるで観客一人ひとりと視線を合わせるかのような目の動きは、そこにいるファンに向けて歌っているのだということがしっかりと伝わるし、また彼女の歌声の豊かさには何よりファンの力が大きいのだということがしっかりと伝わってきた。

 延期を経て特殊な環境下で制限のあるライブというなかで、その制限というものを感じさせない構成や、そうした環境にフィットできる逢田梨香子楽曲の魅力というものを存分に感じることができたこの日。それは同時にこの1年半あまりのキャリアのなかで成長を重ねてきたアーティスト・逢田梨香子が、ひとつの集大成ともいうべき素晴らしいパフォーマンスを堪能できた日でもある。

 2021年は2月に開催されるツアーファイナルの大阪公演、そして2月24日に2nd EP「フィクション」のリリースが控えている。この日よりさらに成長を果たし、開花した姿を見ることができるのは、きっとそう遠くないのだろう。【澄川龍一】

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