スピラ・スピカ「コロナ禍だから気づけたことも」悲しみに向き合い見たもの
INTERVIEW

スピラ・スピカ

「コロナ禍だから気づけたことも」悲しみに向き合い見たもの


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年12月15日

読了時間:約9分

 3人組ロックバンドのスピラ・スピカが9日、7thシングル「サヨナラナミダ/ほしのかけら」をリリース。本作の「サヨナラナミダ」はオリジナルアニメーション『戦翼のシグルドリーヴァ』エンディングテーマとなっており、カップリング曲には冬にぴったりのインディーズ時代の人気曲「雪が降った日」のリアレンジバージョンを収録。インタビューでは本作の話題を中心に、コロナ禍という特殊な時期に3人が何を思うか、そして数多く発表している『ガンダムビルド』シリーズの楽曲の話や最近のトピックなど幅広く話を聞いた。【取材=平吉賢治】

幹葉もさすがに落ち込んだコロナ禍

「サヨナラナミダ/ほしのかけら」初回盤ジャケ写

――コロナ禍で生活が一変してしまいましたね。

幹葉 まずは「まさかライブができなくなるなんて!」とバンドとして一番ショックでした。私は皆さんの想像どおり明るい性格なんですが、さすがに落ち込んだ時があって。自分はこんなにもライブが好きで、先の未来にライブがあるから生きてこれていたことに改めて気づきました。そんな中、6月に予定していたライブの開催延期を発表した時に、ファンのみんながチケットの払い戻しをせずに「いつか開催される日を信じて待とうよ」みたいな感じでずっと大切に持っていてくれる方が多かったんです。あと、SNSなどで「こういう時だからこそスピスピの曲を聴いて元気を出そう」という投稿を見た時に、ファンのみんなに凄く救われました! それが一番大きかったです。

寺西裕二 個人的には、音楽に対して改めてゆっくりと向き合う事ができました。まず、ギターを始めたころやインディーズ時代の心の指標にしていたもの、そして、今のスピラ・スピカとしての楽曲やバンドのあり方など全部振り返りました。自分達の楽曲がどのようにお客さんに伝わっているのかなども含め、自分がやってきたことに意味があるんだなと、改めて認識し直しました。振り返りの中で曲作りや意識、演奏面などでも新たな発見があり、経験値を重ねた期間だと思います。

ますだ バンド活動の中で一番大きく占めていたライブがなくなったことで、心にぽっかりと穴があいたみたいで。でも、そういう時だからこそ自分のベースを見つめ直そうと、改めて昔コピーしていた楽曲を弾いたりしました。例えば『けいおん!』などのアニソン主題歌や、バンドだとTHE BACK HORNさんなどの楽曲です。原点回帰というか、当時のことを思い返しつつ、今どう活かそうかと試行錯誤しながら自分のベースと向き合う期間でした。

――そんな中、バンドとしての活動は?

幹葉 みんなにライブやイベントなどで直接会うことはできないけど、ありがたい事にリリースが決まっていたので、CDでスピラ・スピカの音楽を届けたり、ラジオの出演などの活動をしていました。メンバーとも会えずでしたから、それぞれの家でマイクを立てて、リモートで収録というやり方に変えたりしていました。

ますだ YouTubeの“テラマス動画”もリモート撮影してましたね。

――「サヨナラナミダ」はTVアニメ『戦翼のシグルドリーヴァ』EDテーマですが、作品の世界観に寄せた部分もある?

幹葉 完全に寄り添って自分が物語の中に入り込んだ気持ちで歌詞を書きました。この曲は、作品のシナリオを先に読ませて頂いたんですが「これは今までに経験のしたことのない世界だ」と思いました。とてもシリアスな世界で、、脅威となる存在と人類が戦う戦争のお話なんです。

寺西裕二 犠牲をシリアスに描いて伝えている作品というか、人の犠牲によって成り立っているという部分がちゃんと描かれていて、ちょっと重めな展開もあったりするんです。

幹葉 いつもはシナリオなどを読んで、スピラ・スピカと登場人物の気持ちが重なるシーンをピックアップしてそれを軸に書くことが多いけど、今回は自分の過去の経験となかなか重なることがない物語なんです。それが初めてのことだったので、それをどう歌詞に落とし込んで自分達が何を伝えていったらいいかという部分にぶつかりました。私は感情移入しやすいタイプなので、その経験がないなら自分が物語の世界観に入り込んで主人公になりきって、その気持ちを代わりにスピラ・スピカとして歌おうというところにたどり着きました。レコーディングは心がすり減るくらいの気持ちで歌いましたね。ここまで悲しみの真っ只中を歌っている楽曲はスピラ・スピカには今までになかったので、新たな挑戦でした。

――確かにスピラ・スピカは明るいイメージがあるので今作は新たな一面ですね。

幹葉 デビュー曲「スタートダッシュ」や、『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』OPテーマ「リライズ」などはわかりやすく明るく前向きな曲で、歌詞の最後は希望や未来が見えるような終わり方が多かったんです。今回の「サヨナラナミダ」の最後は<会いに行くよ>という歌詞で一見希望を歌っているように見えますが、この曲自体がもう会うことが叶わない人への想いを歌っているので、本当に会うことが叶わない人を想い続けることは幸せなのか、それとも悲しみなのかということを、聴き手に委ねてみようと思ったんです。

――確かに最後の<会いに行くよ>はいろんな捉え方ができますね。歌詞の解釈を委ねるという点も新たなアプローチ?

幹葉 そうです! 私は歌詞を書く時に「最後は明るく終わりたい」というのがあって。先に結末を決めて、そこに向かってスピラ・スピカが手を引く、背中を押す、希望の光で導くよということを歌ってきたのですが、今回は悲しみに寄り添うというテーマで挑みました。

――これまでとは違う挑みという点は一貫していますね。それはプレイ面にも反映されている?

寺西裕二 そうですね。物語の内容に対して鎮魂歌的な側面も持った方がいいのかなと思い、歌を主軸においてギターも「寄り添い」をテーマとすることであまり主張しすぎないようにしています。

――でもギターソロはけっこうドーンと弾いていますよね。

寺西裕二 確かにドーンと出ていますね(笑)。思いっきり弾き倒している所もありますが、ギターソロでは想像力をはたらかせて聴いてもらえたらなと思います。ギターで“泣き”を意識したプレイをしたので、聴き手の感情を持ち上げる流れが作れていたら良いなと。。

ますだ この曲ではベースは全体的にゆったりしつつ、歌と絡み合うようなフレーズを意識しました。1番のサビの終わりから間奏の部分のベースラインは、和音で切なく感じるような響きをとり入れたりと”エモ”い要素を入れたりしました。

“静と動の悲しみ”の対のテーマ

「サヨナラナミダ/ほしのかけら」通常盤ジャケ写

――「ほしのかけら」のテーマは?

幹葉 この曲はステイホーム期間に制作したんです。「サヨナラナミダ」が出来て、2、3曲目をどうしようと話し合っている時、このコロナ禍だから気づけたこともあって、初めて悲しみの気持ちに向き合うことができました。過去を後悔する気持ちや、今のどうしようもない運命に「なんで!」って強く当たってしまいたくなる激しい気持ちの悲しみです。悲しみって“静と動の悲しみ”があると思って。「サヨナラナミダ」では“静の悲しみ”を歌っているので、もう1曲は激しく“動く悲しみ“を歌にして、対にできたらいいなと思ったんです。

――なるほど。「サヨナラナミダ」は“静の悲しみ”、「ほしのかけら」は“動の悲しみ”と。その点もふまえて録音もした?

寺西裕二 はい。2曲とも同じ悲しみをテーマに、両方とも寄り添っている曲になっているのですが、「ほしのかけら」は音もロック感が強めで攻めた演奏をしています。

――「雪が降った日」はインディーズ時代の曲のリアレンジですね。このバージョンは冬を感じるテイストですが、もともとの雰囲気は?

幹葉:「雪が降った日」ができたのは5年くらい前なんです。

寺西裕二 もともとはグリーン・デイとブリンク 182(ともに米バンド)を足して割ったような感じのパンク感のあるサウンドでした。今回のアレンジはテンポ感や譜割りなどはそんなに変わらないので、ちゃんと曲の持っていた温かさを残しつつ、サウンド面がこの時期に合わせてクリスマス感が加わったりと変わりましたが、僕的には意外と曲の印象はそんなに変わっていないんです。

――なるほど。ところで、「リライズ」「Twinkle」「ハートフル」など、ガンダムシリーズのテーマソングがあったりと、スピラ・スピカはガンダムとの絆が深いようですね。

幹葉 私は『ガンダムビルドダイバーズ』がガンダムの世界の入り口だったので、そこから色々観たりしながら、まだまだ勉強中です。。40年もの歴史があるので! ガンダムは色んなシリーズがあって、いろんな人が楽しめると思います。

寺西裕二 最初に担当させて頂いた「スタートダッシュ」をリリースした時に、ガンダムの制作サイドの方から「スタートダッシュ」を聴いて励まされたと言ってもらえて、。僕達の曲で勇気をもらってくれているんだなと凄く感動しまして。タイアップ曲もちゃんと作品の一つとして動いていると感じました。

幹葉 「リライズ」では“繋がり合うことで生まれる奇跡”と歌っているんですが、そこから本当にガンダムとの繋がりによって起きた奇跡がたくさんあって! 制作の方や声優の方々も曲を聴いてくださって、私達の歌詞の一部がアニメのサブタイトルになったりしたんです。制作の方、作品のファンの方、私達と、みんなの絆がどんどん深まって、それゆえに起こる奇跡がたくさんあったんです! 私達からしたらガンダムという作品に出会えて感謝しかありません。

ますだ かなり大きいよね。

幹葉 この間、森口博子さんとラジオ局でお会いしてご挨拶をさせて頂いた時、森口さんが「私達ガンダムに出会えて良かったよね!」と仰ってくれて、私も改めてそれをしみじみと感じました。ガンダムのおかげで今のスピラ・スピカがあるので、ひとつ一つの作品に寄り添っていくこと、全力で向き合うことで生まれる奇跡を学びました。

――なるほど。ところでプライベートな近況もお聞きしたいのですが、最近なにか衝撃的なことはありましたか?

寺西裕二 音楽とは全く関係がないんですけど、よく家の窓際の塀を歩いているネコがいて、最近そのネコが僕の存在に興味を持ち始めた様子だったんです。「お前、最近よく見るなあ」と猫に喋りかけたら僕の方に来たので、窓を開けたらネコパンチを食らいました(笑)。

幹葉 手は大丈夫だったの?(笑)。

寺西裕二 ネコの爪が手に刺さって(笑)。軽めのネコパンチだったけど痛かったし大きい声出しちゃいました。それまで互いに信頼関係が築かれつつあるなと思っていたのが見事に打ち砕かれて。ネコに裏切られた気持ちです(笑)。

――衝撃的ですね。

幹葉 私はハッピーな衝撃がありました! スピラ・スピカは今、プロサッカークラブ・ジュビロ磐田の2020シーズンソングを歌わせて頂いているんですけど、その関係で静岡放送で実況生中継に参加してきたんです。アナウンサーと解説者に並んで私がいるという感じで。その時に「勝利の女神頼みます!」といっぱい言われてそれが凄いプレッシャーで!前日は緊張で寝れないほどだったんです。

――さぞかし眠りも浅かったかと。

幹葉 普段は深い眠りであまり夢を見ないんですけど、その日はたまたま夢を見たんです。その内容が「2対1で勝つ」というもので、実際に翌日は本当に2対1で勝ったという正夢になったんです!

――勝利の女神になれましたね!

幹葉 もうホッとしたし、本当に嬉しかったです!

ますだ 僕の衝撃的なことは個人的なことなのですが、甥っ子が生まれて「ついに自分も叔父になったか」と思って。

幹葉 ほっこりした衝撃だね(笑)。

――三種三様のエピソードでしたね(笑)。それでは、One-Man Live2020『届け、エール!』の意気込みをお聞きします。

寺西裕二 ライブが11カ月くらいできなかったぶん溜めていたエネルギーを、お客さんと共にチャージショットし合おうじゃないかと思っています!

――特殊な時期で大変なこの頃ですが、みなさまにメッセージをお願いします。

幹葉 まずライブができるのがめちゃ嬉しいです! 私が自粛期間中にみんなから救われた感謝の気持ちをやっと直接音にしてお届けできるので、そこでみんなにエールを送ろうと思っています。今回は配信ライブもあるので、「絶対会いに行くからね」という約束がある中、配信ライブでも配信ならではの楽しいワクワクを考えています。とにかく溜まっていたぶん全部音楽にしてみんなにお返ししていくので、楽しみにしとってほしいです!

(おわり)

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